761. ピクニック(1936)
《ネタバレ》 ジャン・ルノワールはこの「ピクニック」が初めてだった。これは俺が一番好きなルノワール作品。ルノワールは「ゲームの規則」や「大いなる幻影」よりもこういう小品の方がメチャクチャ面白い。 とても優しく切ない映画だが、ルノワール特有の水、水、水の描写が最も際立った映画だと思う。40分の短い時間にとても楽しく、とてつもなく悲しい恋の話が描かれていく。 短編映画の魅力が何なのかというと、時間に追われるスリル、時間と格闘するような緊張を味わえるところ。 それは中篇の犯罪映画「十字路の夜」における高密度のスリルにも言える。 この映画は川の流れの美しさで癒されるが、同時に許されぬ想いに身を焦がす男女の愛をサスペンスフルに描いている部分もある。「大いなる幻影」で銃に狙われる一瞬の緊張よりも、男女が一線を超えてしまう一瞬の方が緊張する。 緩やかな流れる川は、結ばれない男女を冷めた眼で見守る傍観者(監督のルノワール自身)でもあるようだ。 皆さんもポイ捨てだけは絶対しないように。物も女性も。 この映画では傍観者の川も、「南部の人」や「スワンプウォーター」では容赦なく人々に牙を向ける。 この作品の後に「ゲームの規則」とかを見るのがいつも楽しみです。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-27 00:47:24)(良:1票) |
762. 緋色の街/スカーレット・ストリート
《ネタバレ》 「飾窓の女」のオチが気に入らない俺は断然「スカーレット・ストリート」。 序盤はラング得意のじっくりドラマを描く展開で見せ、徐々に複雑かつ深刻な状況に主人公を追い詰めてしまう。些細な出来事がどんどん膨れ上がる恐怖。 主人公が描いた美人画(どう見ても「メトロポリス」の雰囲気バリバリの絵です。本当に(ry)が強烈だ。 「飾窓の女」に出てきたショーウィンドウの絵よりも強烈だぜ。言っちゃ悪いが、アッチはキレイすぎて毒が無い。サスペンスはやっぱり猛毒が無いとな。悪夢が一生続くような毒がさ。 寝ても覚めても悪夢が主人公を蝕み続けるラストが素晴らしい!こういう「飾窓の女」が見たかったのよ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 14:40:22)(良:1票) |
763. スピオーネ(1928)
《ネタバレ》 この度は、運営様、並びに御協力して下さった皆様に「再びレビューさせてもらえる許可」を頂いた事について、深い感謝をしてもしきれません。 フリッツ・ラングがサイレン期に撮った、元祖ジェット・コースター・ムービーとも言うべきスパイ映画の傑作を!同じくラングの「蜘蛛」にも通じる冒険活劇のエネルギッシュな興奮、スパイ同士のロマンス。 冒頭から大量の文字・情報が入ってきて引き込まれるし、カーチェイスのスリル、列車の脱線、眼が“イッている”感じの狂気!ヒロインが椅子に拘束されている様子はエロいです。太腿が。流石ラング御大。 日本大好きな?ラングがまたも奇妙だが日本愛を感じさせるような人物を登場させます。どんだけ切腹好きなんだよ外人(それでも「ハラキリ」や「メトロポリス」のヨシワラよりはまともな形で登場しているかな)。日本、ロシアまで世界的規模で情報が交錯する!「メトロポリス」のように、主人公が巨大な闇に飛び込んでいくような恐怖がたまらない。 諸悪の根源を演じるのは「ドクトル・マブゼ」でも強烈だったルドルフ・クライン・ロッゲ!ラストの“道化”としてピアノの演奏で物語を締めくくるシーンが忘れられない。 エドガー・G・ウルマーの美術は相変わらず素晴らしいぜ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 14:39:08)(良:1票) |
764. 暗黒街の弾痕(1937)
《ネタバレ》 「俺たちに明日はない」より粋 これは、傑作である。だが、単純なフィルム・ノワールの傑作というワケではない。 ルーベン・マムーリアンの「市街」と共に二人の男女の逃避行を描いた恋愛映画でもあると思う。 男は善人だった。あんな優しげな表情をした男も、一度刑務所に入れば世間は冷たい。刑務所から出ない方が幸せだったのかもしれない。 ただ一人、愛する妻だけが男を信じている。 男は無実の罪で再び獄中に送られる。 世間は「人殺し!」と叫ぶ、男は人間も神父も神も信じられなくなる、それでも女は男を信じ続けた。 荒んだ男の心を、女はひたすら信じて癒した。 だが男の傷がいくら癒えようとも、背負った十字架は何処までも二人を死の運命から逃さない。 逃げて、逃げて、逃げて・・・気付けば、産んだ赤ん坊に名前を付ける暇すら失っていく。 それでも二人は明日を信じて生き続けようとした。 ようやく霧の晴れたその向こうに、二人は空高く登っていけたのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 03:36:30) |
765. アリバイなき男
ジョン・ヒューストンの「アスファルト・ジャングル」に引けを取らない強盗映画の傑作。 フィル・カールソンは余り評価されて来なかった人物だが、このフィルム・ノワール作品は中々良く出来た映画だと思う。 常にマスクを被せられた三人の男。 それぞれの顔を知っているのはボスだけであり、三人は互いの顔すら知らない。 恐るべき速さで銀行を襲い、映画はここから物語を始める。 車を使われたというだけで職も名誉も失われてしまった主人公。絶望は怒りへと変わる。 ボスの顔も解らず不安に苛まれる強盗団の男達は、彼らを執拗に追う主人公に追い詰められ板挟み状態だ。 「アスファルト・ジャングル」やキューブリックの「現金に体を張れ」に比べると少し物足りないかも知れないが、それでもジリジリと追い詰められる三人の姿は中々のもの。 完全犯罪を目論むボスの存在がとにかく不気味だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 23:28:13) |
766. 怒りの河
この作品の原題は「河の曲がり角」。 強盗だったジェームズ・ステュアートが改心していく様子、そして更に悪に堕ちて行くアーサー・ケネディの対比。 善人顔のステュアートが強盗というのは「決断の3時10分」並に窃盗力に欠けるが、そんな男が以前は犯罪に手を染めていた・・・「人間見かけじゃ判断できない」という演出なら上手くいっていると思う。 ラスト付近の狭い幌馬車における格闘は、互いが息切れしながら争うなど生々しい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:54:38) |
767. 汚れた顔の天使
ベン・ヘクトと組み、ジェームズ・キャグニーの演技を惹きだしたこの傑作は間違いなくカーティスのベスト。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:42:17) |
768. 反撥
正に「キチガイに刃物」映画。 ポランスキーといえば色んな意味で「ヤバイ」類の監督として有名だが、特にこの作品はポランスキー作品でも屈指の怪奇映画だろう。 取り敢えずポランスキー初期の傑作群を発掘した「TUTAYA」GJ。 ストーリーは最初淡々としすぎる感じもするが、段々狂気に染まり壊れていく彼女の戦慄が飽きを忘れさせてくれる。 オマケにヒロインの狂気じみた場面で「テレレレレ!テレレレレ!テレレレレ!」のBGMは卑怯だろ(笑) あれで笑うなという方が無理だっつーの。 ヒロインは極度の男性恐怖症と潔癖症であり、無理やりキスをするものなら、うがい&歯磨きという有様だ。 こんな事されたら誰でもショック受けるわ。 一緒に住む姉は妻のいる夫と夜毎ズッコンバッコン。 隣で寝る妹には良い迷惑である。 オマケに毎晩ベッドで暴漢に襲われる悪夢にまでうなされんだぜ? これで狂わない奴が本当の異常者かも知れない。いやヒロインキチガイなんだけどね。 ポランスキーのホラーじみた演出も手伝い、本作はサイコ・スリラーとしてどんどん血に染まる。 しつこい男は嫌いよ!えーい殴りつけてやる! あたしの体に触らないで!そんな事するなら頚動脈かっさばいてやるんだから!! ヒロインが「やっちゃう」度に荒ぶるドラム。クッソこんなんで腹筋が! 後の「仁義なき戦い」である(絶対違う) 一番印象的だったのが彼女の子供の頃の「写真」、そしてオープニングの「眼」。 瞳に始まり瞳に終わる・・・そんな映画。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:35:37) |
769. 土
《ネタバレ》 内田吐夢が農民たちの生活を極限まで突き詰めた作品。 キング・ヴィダーの「麦秋」でもここまで地味じゃなかった。 これほどリアリティを持った農民は「七人の侍」にもいなかっただろう。 「七人の侍」で息子を野武士に殺された婆さんがいた。 その人も戦火で家族を失った辛い中を生きてきたという顔だ。 このように軍役や戦中・戦後の混乱をくぐり抜けた面構えの俳優が多かったが、この「土」に出てくる爺さんオッサン連中の面付きはもっと凄い。 辛い農民生活を身を削りながら耐えてきたという、そういう面付きの連中が多い。 フィルムは歳月を経て劣化が進んでいる箇所もあり、画質や音の悪さ、さらに冒頭とラストのシーンが欠如してしまっている。 欠如した部分は字幕で補われているが、劇中の絵で語る場面は言葉を必要としない凄味が伝わって来る。 物語はある農村の家族の生活を辛辣に描いていく。 主人公は祖父が残してしまった借金の完済に追われる身だ。 家を残してくれた父親を敬う反面、借金を残した父を恨んでもいた。 まるでドキュメンタリー映像でも見るかのような農村の様子。 ボロボロになった衣服、干からびた大地、多少の水ではすぐに渇いてしまう大地。 そこに大粒の雨が振り再び田は潤う・・・。 更には雷鳴のような音を立てて開く農家の戸。 娘がこっそり とうきびを狩りに行く場面。 ガラリと空く戸が緊張感を引き上げる・・・。 嫁入りで賑わうささやかな宴会。 火災の映像も凄い。 家が燃えてしまった残念だが、命あっての物種だ。 終盤で主人公が落ち込む様は情けないとも思ったが、自分の家が焼けたら誰でもああなってしまうだろう、抜け殻のように。 父を恨む息子、理由を知らない周りの人々は「なんんと親不孝な」と主人公を詰る。 しかし父親も責任を感じていた。 死が迫る父親、父親のために立ち直る主人公。 ラストの部分が欠如していたのは残念だが、恐らく感動的なラストで締めくくったのだろう。字幕がそう補完しているし。 内田吐夢はよく作品のテーマが余り「受けるイメージが無い」のでいつも資金繰りで困ったらしいが、映画仲間や知人から余ったフィルムや費用の援助をしてもらっていた。 それは毎回映画をヒットさせるという事と、何より人々に与える感動が内田吐夢の信頼となっていたからだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:28:03) |
770. Kids Return キッズ・リターン
《ネタバレ》 北野武のヤクザ映画は余り好きじゃないけど、「あの夏、一番静かな海」と「キッズ・リターン」は大好き。 少年から青年になっていく子供たちの多感な時期を描いた青春ドラマ。 この映画には色んな「あの頃の自分」がいるんだよな。 授業サボッてた奴、 真面目だった奴、 カツアゲされた奴、 されなかった奴、 見て見ぬフリをしていた奴、 スポーツやってた奴、 恋をする奴、 学校辞めた奴・・・色んな「自分」が見え隠れしている。 登場人物は一目見ただけじゃ印象に残らない奴も多い。 それを毎日会って話している内に馴染みになるように、じんわりと染み込ませてくれる。 大人になろうと一生懸命背伸びして、馬鹿やって、何をやっても長続きしない。 ただ、報われないだけが人生じゃない。 失敗から学んで別の成功をする奴だっているし、努力を続けて報われる奴だっている。 時折出てくるあの漫才コンビは良い例だね。 馬鹿にされてもプラス思考でコツコツ頑張り、夢を叶えた。 自分のために、誰かの夢になるために。 この漫才コンビはたけし自身を表現したものだと思う。 この話の下敷きは漫才師になった「たけし」自身と、 たけしが以前ボクシングに打ち込み始めた頃に東洋フェザー級チャンピオンとして活躍していた「関 徳光」のエピソード。 漫才師になった自分と、ボクシングに打ち込んだ関光徳。 そっからこんな爽やかな良い映画が生まれた。 「もう終わっちまったのかなぁ?」 「バカヤロウ、まだ 始まってねぇよ!」 [DVD(邦画)] 9点(2014-03-23 21:17:24)(良:2票) |
771. 愛怨峡
《ネタバレ》 溝口健二と言えば「女を必ず酷い目に遭わすか死に追いやる鬼畜野郎」と考える人も少なくないだろう。 だがそんな溝口作品にもハッピーエンドで終わる作品がある事を貴方は知っているかな? それがこの「愛怨峡」だ。 いかにもドロドロとした愛肉劇と殺し合いが起きそうな物騒なタイトルで、「愛憎峠」と間違えやすい題名だが、本作はそれほど陰惨な最後を迎えない。 むしろ誰がどう見てもアレはハッピーに近いラストだろう。 俺は溝口作品にこういう作品が一つでもあって嬉しい。 溝口健二だって人間だ。 神様でも閻魔様でもない。 たまにはこういう終わり方があるべきだ。 だからこそ俺は溝口に惚れた。 大体オープニングからしてズッコケるような感じがする。 物騒なタイトルと裏腹に楽しげなBGMが流れるオープニング。 クレジットの溝口の名前だけやたら崩れている時点で完全にアレです。 家の中を流すように映すカメラワーク、 走る列車から覗く自然の風景→都会のネオンへの切り替え。 距離感と時間経過を列車の風景だけで見せる。 これぞ映画だね。 子のためを思うからこそ預ける辛さ・・・今回の溝口は母親を描こうとした。 時の流れの解りにくさはあったが、アコーディオン?弾きになった芳太郎とおふみの衝撃的な再会で時間経過を辛辣に描く。 時の流れの残酷さ、だがおふみはこの2年で身も心も荒むどころか見違える程に強くなった(化粧の濃さも)。 2年前は弱々しい感じがあったが、心も面付きもたくましくなった彼女は頼もしく見えた。 熱を出した子を寝ずに看病する“母親”、 タバコ片手の“キャバレーの女”という匂いと二面性を感じさせる。 「ヨッちゃん」も素晴らしいかったね。 自らを「ヤクザもん」と呼び、自分を解っている男なわけよ。 オマケに愛する女のために一芝居を打ってまであえて身を引けるその男気。 本音を打ち明けるのも長年苦楽を共にした親方だけという、溝口作品きっての男の中の男だ。 夫婦漫才は山場でもあり伏線でもあった。 アンタがヤクザもんだって? だとしたら最高の“ヤクザ”もんだぜ兄貴・・・兄貴と呼ばせて下さいヨッちゃん兄貴! 溝口がここまで男を描いてくれて感動してしまった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 21:08:33) |
772. 群衆(1928)
ニューヨークの人の群れと摩天楼をぐるりと移してくダイナミックなカメラワーク。 そこから一つのビルの窓にクローズアップし、ぎっしり並んだ会社の机の群れ。 そこで黙々と作業を続ける男たち。 「昼休み」の知らせと共に一斉に飛び出す人の群れ! 凄いシーンだ。 ストーリーは極ありふれた題材。 ひとりの男が家族を持ち、その家族と仕事の間で揺れながら暖かいドラマを展開していく。 実に地味な題材、それをダイナミックに描くヴィダーの手腕。 最後まで暖かい、無音の世界から音が聞こえてくる良いラストだった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 20:50:14) |
773. 世にも怪奇な物語
《ネタバレ》 未だと「世にも奇妙な物語」と言われそうなタイトルだ。 ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニ・・・変態ばっかじゃねえか(笑) 内容もエロっぽい。 この作品、総合的には★4つの80点。 ただ、個々の作品の評価は以下の通り。 ●黒馬の哭く館:ロジェ・ヴァディム 個人的評価:★★★(ヘンリー・フォンダがいないので不満) フォンダ兄弟を拝むためだけにあるような作品。ヴァディムの嫁自慢。弟がそんな変態野郎にブチ切れたのか「だったら俺にくれ」と姉と近親相姦をしようとする話(大嘘)。 父親のヘンリー・フォンダも揃っていたら★+1になったかも(何じゃそりゃ) ●影を殺した男:ルイ・マル 個人的評価:★★★(ドロンパのファン向け) アラン・ドロンがドッペルゲンガーに悩まされるだけの話。 黒髪ブロンドのブリジット・バルドーが最高にキレイなのとドロンパファンだけ見ればok。 ●悪魔の首飾り:フェリーニ 個人的評価:★★★★★(大満足) これが大当たり。 三作目。 これもエドガー・アラン・ポーの原作の映画化なのだが、フェリーニは見事に別の作品に作り変えてしまった。 フェリーニでは珍しいホラー映画、そして最高のホラー映画。 フェリーニのこの映画を怖がる目的で見ようとする奴は何も解っていない。 ただ純粋にフェリーニの不気味で繊細な演出を味わうのが醍醐味だろう。 舞台は現代のローマ。 麻薬と酒に溺れたかつての名優。 彼が見た少女は酒や麻薬の幻覚?それとも・・・というお話。 昼は賑やかなローマも、夜になると静まりかえる不気味さ、 誰もいない街でフェラーリを猛スピードでぶっ飛ばす。真夜中に一人って怖いよな。 そんな孤独への恐怖があるからか、主人公の顔の白さがまた不気味だ。 「コイツもとっくに幽霊なんじゃねえか?」ってくらい。 ニーノ・ロータの生気を感じられない不気味な音楽が雰囲気を盛り上げる・・・ラストも衝撃だった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 20:45:56)(良:1票) |
774. 決断の3時10分
エルモア・レナードの短編を原作とする「ユマ行き3時10分発」。 ストーリーの完成度は未だリメイク版に引けを取らない。 人間ドラマが主体の西部劇だが、ファーストシーンにおける居並ぶアウトローと取り囲まれる駅馬車の様相はワクワクするなという方が無理だ。 本作は強盗団の首領を捕縛し護送するというシンプルなもの。 首領を抑える事で強盗団そのものを押さえつけ、強力な盾であり敵に次々と襲われる餌でもある。 そんな命懸けの任務に集う仲間たち。 駅馬車を利用した隠蔽劇、 立場を超えた絆、 ラスト20分に渡る駆け引きは見応えあり。 走り去ろうとする列車における一瞬の戦いは面白い。 ただ奥さんが駆けつける必要はあったのか? アレで敵に襲われた人質なんてなってたら洒落にならない。 ラストの雨の場面がキレイだった事。美しい。 強盗団のボスを演じるグレン・フォードの顔は、一見に善人に見える「極悪人」だ。 見た目はニコニコ面でとても悪党には見えないが、不敵な笑みで主人公を嘲笑う時の表情は不気味である。 怖い顔のヴァン・ヘフリンは正義漢の塊だが、焦りと苛立ちが内に潜む凶暴性を見せる。 元々は家族を食わせるために参加した普通の人間。覚悟はしてきたがいざ妻と再会するとなると家族への愛情を覗かせる。このヴァン・ヘフリンは「シェーン」よりも好きな父親だね。 たった一人で戦い抜く姿は「真昼の決闘」よりもハラハラドキドキしてしまう。ゲイリー・クーパーが愛妻なら、ヴァン・ヘフリンは本来敵である筈のグレン・フォードに助けられる。孤独だと思う人間ほど誰かの支えで助けられている。人の支えの大きさを思い出させる。 あとフェリシア・ファーが可愛かった。特に胸が(ry [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 20:43:02) |
775. ビッグ・トレイル(1930)
《ネタバレ》 ジョン・ウェインのデビュー作という一括りで片付けるには勿体無いフロンティア精神に溢れた作品。 本作の内容は後の「小さな巨人」や「ソルジャーブルー」、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に先駆けたテーマが描かれていた。 それはインディアンとの共存が可能か可能でないか。 幌馬車隊は道案内としてインディアンたちと交流を結ぶ。 他のインディアンのグループたちとも交渉し、絆が結ばれようとしていた。 正しそれは交流したグループだけの話であり、事情を知らない別のグループとの戦いを避けられるという保証は何処にも無い。 インディアンたちも、味方同士で殺し合わなければならないという理不尽さを目の当たりにする。 本作はジェームズ・クルーズの「幌馬車」さながらに西部開拓民たちの力強い生き様を雄大に描く。 壮大な幌馬車隊がくぐり抜ける大自然の猛威。 河を渡り、 森を切り開き、 砂漠を超え、 嵐を乗り切り、 雪原を突破していく。 さらにはインディアンの襲撃、組織内における対立など内と外での戦いも絡んでくるのだ。 最初40分は幌馬車隊の生活模様と出発をじっくりと描きやや退屈だが、 人々のコミカルなやりとり、 月下でのダンス。 幌馬車の群れを円形にしてグルリと囲んだ中での団欒。 40分目におけるバッファロー狩りの迫力。 命懸けの河渡り、押し流される人々の描写が怖い。 そこに戻って来たウェイン、幌馬車の渡河を手伝う。 さらっと戻ってくるウェインのカッコ良さはこの時から感じられる。 50分目におけるインディアン(シャイアン)との交渉。 あの時のウェインは尻を撫でているようにしか見えない(笑) 結婚式の直後に流れる不穏な空気もまた凄い。 幌馬車隊内におけるささやかな結婚式、裏では男たちの殺し合い。 この光と闇の描写。 終盤におけるインディアンとの戦闘の迫力。 危機を乗り越えた幌馬車隊だが、生き残った者と背後の簡素な墓標の対比。 犠牲を乗り越え、それでも人々は前へ前へと突き進む。 安住の地を目指して・・・。 そしてラストの一瞬の決闘。 「銃」ではなく「ナイフ」というのが憎い演出。 最初あれだけピカピカの服装だったウェインが、砂や雪にまみれてヨレヨレの格好になり、また戻ってくる。 何度でも戻ってくる男のカッコ良さ。 穏やかなエンディングが何とも言えない。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 20:04:42) |
776. 戦場よさらば
戦場よさらば 「第七天国」といい、ボザージの描くロマンスは嫌味が無い。 ダグラス・サークほど際立ったものは無いけど、じっくりかつ丁寧に戦争と恋愛の絡んだドラマを見せてくれる。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:21:13) |
777. 第七天国(1927)
第七天国 素直に好きと言えない男。「ダイアン チコ 天国」の言葉でしか愛の言葉を言えない恥ずがしがり屋。 そんなウブな少年を、戦争の悲劇が襲う。だが、そんな悲劇が二人をより強く結びつけるとは皮肉なものか。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:18:02) |
778. 成功の甘き香り
ショービジネス界の内幕を暴く傑作フィルム・ノワール。 秘密を暴く事が生業のコラムニストも、裏では妹と肉体関係を匂わすような疑惑に満ちた存在というのが皮肉だ。 ニューヨークの夜間撮影の美しさは素晴らしい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:15:08) |
779. 拾った女
反プロパガンダ映画の傑作フィルム・ノワール。 冒頭から一気に引き込まれる見事なファースト・シーン。 短いショットの積み重ねで我々を退屈させてくれない。ストーリーもスリからタレコミ、共産主義のスパイと複雑に絡み合う。 セルマ・リッターに女優賞を贈らなかったハリウッドの何たる見る目の無さよ! [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:12:17)(良:1票) |
780. その女を殺せ
フライシャーの傑作フィルム・ノワール・サスペンス。 証人を護送する列車、だがその列車には証人を消そうとする殺し屋たちが潜む。誰が犯人なのか?その恐怖とスリル。 絶えず横に吸い付くように走る車が不気味だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-23 00:07:24) |