61. 巴里の空の下セーヌは流れる
夜明けから翌朝までの一日の物語。多くの人の喜怒哀楽が絡まり合う脚本が実にお見事。最も印象深いシーンは少女に対する彫刻家の優しさで、人の心の奥底は分からない事を示してくれます。聞き覚えがあると思ったらフランソワ・ペリエだったナレーションが過剰なのが玉に瑕。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-25 01:46:56) |
62. 魔術の恋
《ネタバレ》 今でもアメリカではマジシャンと言えば第一人者と呼ばれるハリー・フーディーニの伝記ドラマ。存在を初めて知りました。ベスとのなれ初めから成功を収めて亡くなるまで、脚色が加えられているようですが、実に丹念に描かれて見応え十二分。流石にフィリップ・ヨーダンの脚本は見事です。ベス同様にもう余生は穏やかに過ごせばいいのにと思うのですが、命を懸けて観客を喜ばせたい「脱出王」の性が何とも悲しい。実生活でも夫婦の二人の華やかさも、これぞ映画スターの華やかさで見惚れました。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-23 01:41:30) |
63. お熱いのがお好き
マリリン・モンロー出演のみ知っている本作。ジョージ・ラフト目当てで鑑賞。ワイルダーの笑いと毅然とした態度の塩梅に何時も酔わされている者としては、ドタバタ喜劇に楽しめたものの酔いは回らなかった。敵役ギャング一味は飾り物の子分とステレオタイプの親分で物足りないものの親分演じるジョージ・ラフトのパリッとしたいでたちには若きジゴロが齢を重ねたらこうなるのかっ!と目が釘付け。30年代ギャング映画へのオマージュを感じる場面の数々、バターミルク(ジェームズ・キャグニー)、コイントス(ジョージ・ラフト)、本人の目の前でコイントスをして粋がる若造がエドワード・G・ロビンソンJr、鳥肌もののワイルダーならではの演出に+1点。「完璧な人間は居ない」は撮影時暴君で手を焼かされたというマリリン・モンローへの思いなのだろうか。 [DVD(字幕)] 8点(2019-03-13 13:19:00) |
64. 80日間世界一周
初見。長くて他愛ない冒険物語ながらも、TV番組のアップダウンクイズ、兼高かおる(先日亡くなられたそうで、合掌)世界の旅、世界の車窓からが浮かび、子供心に外国旅行に憧れた記憶が甦りました。奇跡の様な絢爛豪華なゲスト出演者の中での極めつけ、バスター・キートン、マレーネ・ディートリッヒに感動。主人公たちのように財力・知力・腕力・行動力でもって本作を作り上げたプロデューサー、マイク・トッド(1958年飛行機事故死が惜しまれる)に敬意と感謝を込めての8点。 [DVD(字幕)] 8点(2019-02-11 14:17:25)(良:1票) |
65. 東京暗黒街・竹の家
国辱映画として名高い本作でしたが、まさしく掘り出し物の逸品で、何でも自分の目で確かめなきゃならんと改めて思う次第。室内描写は珍妙なものの悪意は感じられず許容範囲。私は昭和38年生まれですが、カラーで描かれた昭和30年の東京・横浜の街並みが感慨深く、デパート屋上での嬉しくて仕方がなかった記憶が甦りました。その舞台を背景にギャング団と潜入捜査官とマリコさんが繰り広げる物語も実に見応えあるもので、サンディ、エディ、グリフの三角関係が奥行きを与えていてサンディ役のロバート・ライアンが絶品でした。印象深い演出がてんこ盛りの中で圧巻はデパート屋上に於ける銃撃戦で何時までも記憶に残るであろう見事なシーンでした。 [DVD(字幕)] 8点(2019-01-19 19:39:47) |
66. 探偵物語(1951)
《ネタバレ》 9割方が21分署内で繰り広げられる刑事たちと犯罪人たちの群像劇は個々のエピソードが繋がってゆく見事な脚本で見応え充分。罪には罰を、犯した罪は償う。当然の事であって、マクラウド刑事の姿勢を支持するものの、結婚前のメアリーの過去を罵る「ちっちゃい男」ぶりには幻滅。チャーリーに素手で立ち向かうラストに、信念を貫くのとこの世への絶望感が入り混じった、他の生き方が出来ない男の哀れさを見せつけられ胸が詰まる。カーク・ダグラスはドンピシャのキャスティング。リー・グラントはほんわかとした存在感だったものの必要な登場人物だったのだろうか疑問が残る。邦題は鑑賞史上屈指の誤訳。 [DVD(字幕)] 8点(2019-01-13 22:17:25) |
67. 北北西に進路を取れ
《ネタバレ》 初見。以前からこの日に鑑賞を予定していた本作。ジェームズ・メイソンが振り撒く悪のオーラに浸り切りたい! ケーリー・グラントを手玉にとって最後は華を持たせて滅び行くお姿に身悶えるで! 満を持しての鑑賞でした。 エレガントで親玉としての威厳はあるけれど怖さが足りない。そして何と言ってもエバ・マリー・セイントに本気で惚れているところが求めたものと違っていました。ただ、その胸中があからさまでなく滲み出る表現は天下一品、唯一無二。また、マーティン・ランドーを殴りつける件(プラス1点)に親分子分以上の共依存関係を感じとれました。 ラシュモア山でジェームズ・メイソンがケーリー・グラントの手を踏み躙るシーンが観れなかったのにガックリしているところへ放たれた捨て台詞。「そりゃあ、ないわ、何ちゅう演出ですねん、ヒッチさん」 微妙というか物足りなさで歯痒く別の意味で身悶えました。 ジェームズ・メイソン以外では、タイトルバック及び音楽の鋭い切れ味が印象深く、トータルで判断して娯楽作品の一級品と言えます。 [インターネット(字幕)] 8点(2019-01-01 20:26:09) |
68. 私は告白する
《ネタバレ》 告解は「人殺ししました」であっても絶対他言しない。神父の掟を守り抜こうとするローガンが濡れ衣を着せられて追い詰められてゆくのを固唾を呑んで見守る。恩を仇で返す犬畜生にも劣るケラーのお蔭で、鑑賞翌日歯が浮いてしまって困った事に。ケラーとその妻とルースの告白を聞くローガンの胸の内をモンゴメリー・クリフトが魅せてくれる。タイトルの「私は」はケラーの妻を指しているように思えるもので、そのシーンに堪らず大泣き。何時もの洒脱さが影を潜める監督らしからぬ、それでいて見応えある秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-08-26 01:07:46) |
69. 六番目の幸福
気の強さに鼻白む事があるイングリッド・バーグマンですが、本作での強さは何があっても信念を曲げず自分で困難な道を進む勇敢さと他者への思いやりも持ち合わせるものでひれ伏しました。ジェナイにとっての6番目の幸福とは逃げ出さない事に思えます。そんな彼女にジワジワと惹かれてゆくリン大佐の心模様もさることながら、滋味深い県長が絶品で彼女との別れのシーンでの万感胸に迫る姿に涙が溢れました。作品公開を待たず53歳で他界したロバート・ドーナットのラストパフォーマンスをこの先忘れる事はないでしょう。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-03 00:33:35)(良:1票) |
70. ジュリアス・シーザー (1953)
本作の主人公はブルータスであり、最初から最後まで思い迷っていた青臭い理想主義者を演ずるジェームズ・メイソンの実直な演技に魅入るものの心揺さぶられる事は無かった。一方で謀反の首謀者にして権力欲の塊カシウスを演ずるジョン・ギールグッドの飢えた狼のような眼差しが絶品。彼が現れる度に画面が不穏な空気に包まれ、ジェームズ・メイソンをも凌ぐ気迫に圧倒されました。もっと長い尺で登場人物の心の内を見せてもらいたかった。 movie legends 同士のツーショットのお宝映像に大感激で購入したDVDは私の大切なたからものになりました。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-18 01:45:12) |
71. 砂漠の鬼将軍
「ワルキューレ」「将軍たちの夜」でヒトラー暗殺未遂事件、ロンメル元帥に関して多少の知識有り。元帥の軍人としての葛藤が主に描かれており、ヒトラーをはじめとしてSSが欠片も持ち合わせていない騎士道精神に背筋が伸びる思い。今生の別れでは妻の気丈さが悲しみに輪をかける。遺品のコートを着用したジェームズ・メイソン渾身の演技に見惚れた傑作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-05 00:56:58) |
72. 必死の逃亡者
犯罪者、被害者一家、官憲、それぞれの必死さが生み出す緊張感が途切れることのない展開。加えて一家の絆の強さにじわじわと感動が湧きあがり、「パパ、僕も人質になるよ」「バカな事を。お前は悪い子だ、パパに楯突いてばかり」に涙腺決壊。ボギーを自分の引き立て役にした感があるフレデリック・マーチにキュンキュンさせられ通しで、ラストの手招きにまた涙。ボギーの手下2人がアホアホでなかったら10点でした。どのようなジャンルでも一級品に仕上げる巨匠に拍手喝采。 [DVD(字幕)] 8点(2018-03-17 20:20:19) |
73. 第十七捕虜収容所
描かれる捕虜収容所生活は、捕虜達は愛国心に溢れるでもなし、独軍は管理者としての厳格さはあるものの陰惨さはなし。更に密造酒、鼠レース(爆笑)、覗きの行列(「早くしろ!俺の順番には婆さんになってしまう・・・」爆笑)、チョビ髭達の「ジーク・ハイル!」(爆笑)、大量の煙草、等々実に能天気なもの。オスカーを逃したのが残念なアニマル役のロバート・ストラウスに大笑いさせられる。スパイが判明する件から結末までは一転して手に汗握る緊張感に包まれる。孤高を貫く男(渋すぎる)セフトンの言うとおりあれしか方法はないにせよスパイの最期に息を呑む。ユーモアと非情さの塩梅が絶妙なワイルダー監督の名人芸をいつも通りに堪能させてもらった快作。 [DVD(字幕)] 8点(2017-11-05 09:51:09) |
74. 真昼の決闘
《ネタバレ》 決闘に至る過程から決闘模様と結末まで爽快感のカケラもないものの胸を熱くさせられた西部劇。遺書をしたため覚悟を決める保安官とわが身に火の粉が降りかからぬように傍観者を決め込む者達。両者の対比は赤狩り真っ盛りの時代に製作陣が個々の価値観を問うているように思えます。試練に直面した時の振舞を考えさせらる名作。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-16 23:07:47) |
75. 眼下の敵
洋上で遭遇した2艦の果し合い模様は実に見応えがありました。双方の艦長のリーダー像には心底脱帽でしたので、一見有り得ない結末も違和感なく見れました。 [DVD(字幕)] 8点(2017-07-02 19:04:50) |
76. 鉄道員(1956)
《ネタバレ》 初見。サンドリーニの視点で淡々と描かれたホームドラマなれど泣かされ通しだった。怒り、悲しみ、自責の念で絶望感に苛まれても、自身で体を痛めつけるような事だけはしてはならない、人生に於いて不幸せと交互に訪れる幸せを少しばかり味わって息を引き取ったアンドレアを見て痛感する。耳にしたことがあるテーマ曲と共に胸に沁み入る作品。 [DVD(字幕)] 8点(2016-02-08 01:14:31)(良:1票) |
77. 野いちご
自分に厳しく他者にも厳しく。他者の弱さを受け入れられない。他者の為に尽力することが出来ない。過去を顧みて後悔に苛まれるのは老境に入り「死」の恐怖を自覚したから。身につまされるものがありました。どんなに遅くとも後悔したからには残された時間をどう生きるのか、救われるラストシーンに励まされます。 [映画館(字幕)] 8点(2013-08-31 00:05:30)(良:1票) |
78. 消された証人
物語の9割方が証人、検事、刑事の描写である毛色の変わったギャング映画。証人と刑事の心模様の推移はなかなか見応えがありました。特筆すべきは検事を演ずるエドワード・G・ロビンソン。控えめな役柄であっても一本筋が通った姿は圧倒的な存在感で始終目が釘付けでした。内通者が誰かを悟ったシーンは10回くらい見直してしまいました。後味の良い結末は爽快感がありました。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-26 00:48:04) |
79. 地下水道
地べたを這いずり回る以上に過酷な下水道を這いずり回る姿。実話ベースなので自由を渇望する3つのグループに一縷の望みも見いだせず、それぞれの結末も救いの無いものでした。ソ連赤軍のした事を知るにつけ二度と観れない作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2012-12-20 00:14:32) |
80. 誓いの休暇(1959)
《ネタバレ》 初見。アリョーシャの帰郷の道中譚。 純真で正義感が強く人情に厚いアリョーシャを始めとする善男善女ばかりで、血しぶきもなく鬼畜も居らず。 一見穏やかなれど、ラストシーンにおける国家によって息子を毟り取られるが如き母親の様相に、これ以上ない戦争の無情さ非情さを見せつけます。 「もう、離さない、私のアリョーシャ!」 永久の別れと分かっているだけに堪らない。胸を掻き毟られるものがありました。 [映画館(字幕)] 8点(2012-06-10 18:13:14)(良:1票) |