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あにやん‍🌈さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2517
性別
ホームページ http://coco.to/author/aniyan_otakoji
自己紹介 レビューを相当サボってしまってるの、単に面倒になっちゃってるからなんですよね。トシのせいか、色々とメンド臭くなっちゃって。
映画自体、コロナ禍以降そんなに見に行かなくなったのだけど、それでも年に70~80本は見てるワケで(でも今年は50本行かないかな?)、レビュー書けよ自分、って思ってる、でもなんか書かない、みたいな。
これからは今までよりも短文でレビューを上げてゆきたいな、と思う次第であります・・・微妙だけど。.

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61.  若おかみは小学生! 《ネタバレ》 
 交通事故で両親を亡くしたおっこ、でもずっと涙を見せないの。  その気持ちを抑え込んでるのがわかるので泣けて、それが絶対どこかで破裂しちゃうのでしょう、ってわかるので泣けて。そして・・・  おっこが泣かないのは、泣いてしまったら両親の死を認めてしまうことになっちゃうから。でも、そのクライマックスが、あまりに過酷な運命の巡り合わせで、もう。   でも、そんなおっこを包む世界の優しさに癒されて。  おっこが暮らすことになる温泉旅館の人々とお客さんたち、温泉街の人々、学校の友達、そして、おっこにしか見えない幽霊と子鬼。  様々なふれあいを通しておっこが両親の死を受け入れ、乗り越え、成長してゆく姿が描かれるのね。   2人の幽霊は劇中では実際に存在しているのだけれど、おっこのイマジナリーフレンドの象徴で、その姿が見えづらくなる、別れがやってくるというのが、おっこの成長を示していて。それはとても切ないのだけれど・・・   最初はイヤなクラスメイトに思えた大ホテルの令嬢なピンふりも、真面目で精いっぱいに生きていて、おっこに真剣に接してくれる良いコだし、ここに出てくる人々みんなが本当に魅力的。   『のんのんびより ばけーしょん』に続いて脚本はさすがの吉田玲子。  群像の中で人と人との繋がりを、甘いだけでなく、時に厳しく、時に切なく描いてみせるのは彼女の真骨頂と言えるのかも。   蛇足だけど水領がソフトトップを走行中に開けちゃって「!」ってなったのだけど、最近のポルシェって時速50km以下ならオープンできるのね。私が乗ってたクルマとは時代(と価格)が違うわ。    ジブリ的という評価もあるけれど、少なくともおっこはジブリのヒロインよりももう少し現代的でおバカなカンジなのが良いわ。絵柄もエンドロールのイメージボードにはまだジブリ臭があるけれど、実際の映像はジブリとは違った魅力があるし。中盤のショッピングモールなんかはジブリ映画には出て来ない要素でしょうねぇ。ジブリ的なるモノをトレースせず、独自性があるからこそいいの。  色々と模索されている「ジブリの後継」の中ではこの映画のスタッフはかなりいい線を行ってる気がするわ。  ここ数年公開された様々な家族向けのアニメ映画の中でも抜きんでた良質な作品ね。
[映画館(邦画)] 9点(2018-09-28 16:36:27)(良:1票)
62.  カメラを止めるな!
 これはネタバレを読んでしまってはダメ、なるべく情報をシャットアウトして見るべき映画なので、点数だけ参考にしてね。   アタシはゾンビ映画ってモノに対してなーんの思い入れもなくて、つーかニガテで、映画マニアにゾンビ映画好きが多い理由がどうにも理解できなくて。  大丈夫なゾンビ映画は『ウォーム・ボディーズ』『ゾンビランド』『高慢と偏見とゾンビ』だけ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』すらダメってレベルだからねぇ。  んで、そんなアタシでも存分に楽しめるのがこの映画。   無名な役者しか出てこなくて、安っぽくて、映像なんか『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の反対の極に存在するようなしょっぱいシロモノ。そして、そこにこそ意味がある映画。  有名人でリメイクしたとしたら台無しになっちゃうでしょうね。   脚本の妙味とエンドロールに込められた思い、それはたとえゾンビ映画好きでなくても、映画ファンならば誰でも共感できるものだと思うわ。   チネチッタではリピーターらしきおっさんが聞こえよがしなリアクションをとる事で、初見の人間に対して結果的にネタバレ状態になるという事態を巻き起こしやがりまして、100パーセント楽しめたのかどうか、ちょっと微妙な思いをしたのだけど(不粋なスノッブ野郎は滅びればいいの!バカ!)、それでも十分面白かったので、お薦め。
[映画館(邦画)] 9点(2018-07-16 20:02:56)(良:1票)
63.  犬ヶ島 《ネタバレ》 
 ウェス・アンダーソン監督作品って、映像表現は面白いと思っても、映画自体にはそんなに心動く事は無かったんですよね。でも、今回は本当に素晴らしかったです。   日本をディストピアとして描いてるので抵抗感を抱くかもしれませんが、その和風ディストピアっぷりがとても刺激的で面白くて。  大量の個性的なデザイン、画面いっぱいに詰め込まれた意匠が溢れ出てくるような感覚(っていうか実際に溢れているというか。シネスコサイズですが、ビスタの上下黒帯で画面外に字幕を出すスタイル。画面内に情報が多過ぎて、文字情報も大量で、その多くが日本語表記であるがゆえでしょうか。吹替版はどうなっているのかなぁ?)。  『七人の侍』のテーマ曲をそのまま持ってきたりしていて、黒澤明作品からの影響が強いのは明らかなのですが(そもそも『野良犬』ですし)、それ以外にも日本映画リスペクトが多く見られて、元ネタをあれこれ考えるのも楽しく。博士のモデルは平田昭彦でしょうかねぇ。   平行移動とかシンメトリーとか、毎度のウェス・アンダーソンらしさ炸裂、だけど意外にドラマに心動かされる部分が多くて。特に犬達の物語が切ないんですよね。そこには差別や独裁、弾圧、洗脳といった過去の歴史が反映されていて。そして、優しさや希望といった前向きな想いが込められていて。   日本を舞台にしたアメリカ産ストップモーションアニメーションには『KUBO クボ 二本の弦の秘密』があって、作品的な印象は全く異なるように思えますが、共通点が色々あって(動物と旅する少年とか、罪に対する赦しとか)、あちらの人が思う日本観がなんとなく見えてくる感じなのが面白いです。   スタッフロールまできっちり日本語併記な、日本で溢れたアメリカ映画、その奇妙で気持ちいい感覚をたっぷり堪能しました。
[映画館(字幕)] 9点(2018-05-25 21:30:52)
64.  リズと青い鳥 《ネタバレ》 
 『響け!ユーフォニアム』のテレビシリーズは見ておらず、映画の1作目を見ただけで、それもあんまり、って状態(ダイジェストなので薄っぺらい感じで)でしたが、スピンオフである今回の映画は『響け!~』の知識が全く無くても問題なく楽しめる作品だと思います。むしろ知識がジャマをしてくる?   山田尚子監督と吉田玲子脚本コンビとしては、『けいおん!』と『聲の形』という2つの極の間を漂うような作品で、純化された世界で少女達のキモチの揺らぎを描いています。表情に乏しく言葉少なく自己表現が苦手なみぞれと、明るく饒舌だけれども必ずしも内面に正直ではない希美。その心の機微を繊細に、そして雄弁に表現してゆく映像と音楽が心地良く、静かな静かな映画がじわじわ染みてくる感じで。  広い余白とディティールアップの連続という、山田監督らしい構図で溢れた映像、反復される仕草やモチーフ。その、たっぷりと行間を取る演出法で、豊かな情緒を生み出しています。   童話部分は陸奥A子的タッチの世界で(「ハッピーアイスクリーム!」も彼女のマンガで知りましたしね)、全編、少女文学世界というか昭和少女マンガ世界(『りぼん』とか『マーガレット』とかの集英社寄り感)の感覚を匂わせていて、そこに思い入れのある人には殊更響いてくるものがあるようにも思います。   2人の少女の、自分を見つけ未来に向かって踏み出す大切な時間を丁寧に描いた作品、かなり近い題材な市川実日子&小西真奈美の『blue』、アーラン・モイルの『タイムズ・スクエア』と共に私のお薦めです。
[映画館(邦画)] 9点(2018-04-26 21:22:18)
65.  レディ・プレイヤー1 《ネタバレ》 
 世界一有名な映画監督が莫大な資金と大量の人材を動員して作った、ただのDAICONオープニングアニメ(知らない人はぐぐってね)。『マトリックス』と『ロード・オブ・ザ・リング』と『アバター』と『サマーウォーズ』と『スコット・ピルグリム』と『シュガー・ラッシュ』と『ピクセル』と『ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル』を袋の中に入れてガンガン叩いてからバーッとぶちまけたような映画。つまりオリジナリティ無し。よくある物語を既成のキャラで画面を埋め尽くしてみせただけ。そして、だからこそ最高。   サブカルチャー、ポップカルチャーに古く、長く、深く浸ってきた人間ほど楽しめるって点では異様にハードルの高い映画。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『AKIRA』は基本中の基本として、『シャイニング』と『アイアン・ジャイアント』を見てないと話にならない状態な上、MO、MMO、そしてSF系FPS、TPSをプレイしていてナンボ、音楽は80年代中心、アニメ、映画、ゲームの細かいネタが多過ぎて、まるでどこまでついて来られるか試されているような、おたくのリトマス試験紙のような映画。  一応、リアルこそが大切ってテーマが語られはするものの、そんなものは当然タテマエで「こんなのが好きなんだろ?」ってとんでもない情報量とパワーでガンガン見せてきて圧倒されまくり。3Dメガネをかけた視界いっぱいのIMAXのスクリーンはVRにも通じて、そのおたく世界に没入する陶酔感。そして、さすがにここに登場する要素の全部はフォローできていない自分が残念。もっとも元ネタあらかた判ったからって誰かが褒めてくれる訳じゃないし、むしろどん引きされるだけですけどねー。  でも、よくある物語=王道であるがゆえに楽しめるかどうかは別として完全に置いてきぼりを食らうというワケではないので、その点だけはご安心を。脚本はツッコミどころ満載ですが(実際にこのVR世界があったら最初のカギはほんの数十分でゲットされる事でしょう)、むしろツッコんでください、くらいに思ってそうですし。   もうトシもトシだし、なんて思ってたスピルバーグが、今もこんな中二病丸出しのパワフルなアトラクション映画を作っちゃうんだねぇ、と嬉しくなりました。スピルバーグの本領はやっぱりその見世物っぷりにあると思うので。
[映画館(字幕)] 9点(2018-04-20 22:27:21)(良:1票)
66.  KUBO/クボ 二本の弦の秘密 《ネタバレ》 
 東京国際映画祭にて鑑賞。   日本が舞台なのに、日本での公開が今になってやっとなのが切なく。もう半年くらい前にアメリカのアマゾンでブルーレイを買っていたのですが、ずっと見ないで我慢してました。スクリーンで見られる、その日が来る事を信じて(そして、そういう作品が実は他にもいっぱいあって、大体はビデオスルーになっちゃう・・・日本での海外アニメーションの扱いを物語っております・・・ )。   ライカお得意の「美しくて不気味」な個性が意外なほどに日本の色によく合って。アメリカ産でありながら見事な伝奇として完成されています。そして、ここまで日本で(外国人は全く出てきません)、そして悲しい内容で大丈夫?ってところを成立させちゃうのがライカなのだなぁ、と。その切なさもまたライカ作品ならではの世界。  『コララインとボタンの魔女』では気にならなかったけれど『パラノーマン ブライス・ホローの謎』から『THE BOX TROLLS』と目立ってきたデジタルプロセスの多さは今回も相変わらずなのですが(そこまでやるのならばもうCGでいいんじゃない?って)、でもここまで世界が完成されていると、これがライカの個性、表現法なのだなぁ、と。   キャラクターもライカらしい個性的(クセの強い)なデザインでありつつ、親しみやすく。特に不気味なのにやたら魅力的な叔母さん達にはウットリ。全編、これまでのライカ作品には無かったキレのあるカッコ良さにも溢れています。   ここいちばんの重要なシーンがいちいち閃光のみで省略されてしまって、何がどうなったのかはその後の展開で察してね、っていうのがちょっと残念な感じではあるのですが、日本人的にはちょっと懐かしさすら覚える(コマ撮りアニメの昔話ですからね)世界、その実直な作りにひたすら感動させられるのでした。 【追記】  日本語吹替版を見ましたが、一部キャラに有名人を起用しているものの、特に問題は無く、むしろ日本語となる事でやっと完成されたとすら思えるのでした。また、エンディング曲が吹替版独自の曲に差し替えられていて、そういうのは大抵作品を穢してしまうものですが、吉田兄弟の音は甘い女性ヴォーカルのオリジナル版以上にピッタリと映画に馴染むのでした。サントラ自体が三味線の音を多用しているだけに。
[試写会(字幕)] 9点(2017-10-30 22:51:59)
67.  メッセージ 《ネタバレ》 
 『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』のバイラス星人とか『ペンギンズ』のテレビシリーズの宇宙イカ(あるいはイカっち)とか、イカ型生物は侵略者ってイメージが存在していて(『侵略!イカ娘』なんてのもありましたな)、この映画の宇宙人はその先入観を元にデザインされているのだなぁ、と。固定概念や先入観こそはコミュニケーションにとっての障害物、ってお話ですからね。   人はいつか時間さえ支配できる、ってセリフは『ガンダム』でしたっけか。これは時間を支配できるまでにはならないけれど、時が見える(ララァか、っていちいち『ガンダム』だな)ようになった人の話。そこから逆に浮かんでくるのは、では時間が見えない現実の我々はどういう選択が最良なのだろう?という問いかけ。個人から他人、組織、国家や思想、宗教に至るまで、この世界を生きる術を示します。  無理解や恐怖によって断絶してゆく個と閉ざされてゆく未来。イカのバケモノから発せられる、「言霊」をビジュアル化したかのような言語や文字の概念を超えた深遠なもの、それを理解しようとする姿勢が相互理解を生み、進むべき道が見えてくる、と。主人公は切ない未来をも認識する事になる訳ですが、同時にかけがえのない時を得られる事も知る、のならば、時が見えない我々はせいぜい今この時のかけがえのないものを大切に、未来を閉ざさず少しでも良いものへと導く努力が必要なんじゃない?と。今、こんな時代、こんな世界だからこそ、必要な映画。   女性主人公が宇宙人とのコミュニケーションを通してミクロとマクロとが繋がってゆく物語という事で『コンタクト』が容易に浮かびますが(爆破テロだし北海道だし)、これもまた優れたSFのカタチを示した映画でした。映像や音楽、キャラクター造形に雑味のない、独自の世界観に酔えました。
[映画館(字幕)] 9点(2017-06-04 22:10:46)
68.  美女と野獣(2017) 《ネタバレ》 
 見始めてしばしは「アニメーション版の単なるベタ移植なら、実写映画にする必要は無いんじゃないかなぁ」と思ってました。ストーリー的に変わったところも無いし、曲も一緒だし、って。  それにエマ・ワトソンはベルのイメージとは違う気がしましたし(エマは永遠の少女みたいな印象で、それなりに成熟した感のあるベルに比べると幼いんじゃないかと)、野獣の顔がハンパに優しさを醸してる、野獣としてのシャープな凶暴さが足らないんじゃないかとも。   でも、映画が進むうちにどんどん惹き込まれていって。キャラクターやエピソードがそれぞれアニメーション版に忠実でありつつ、もっと踏み込んでいる、もっと深いところを探っている印象なんですよね。展開もアニメーション版に忠実であるがゆえの唐突さ、あっけなさがあったりはするのですが(ベル、あっさり野獣に心を開き過ぎ)、1つ1つの事柄にひと手間かけて奥行を与えている、丁寧な仕事してます、という感じで、それが更なる深い感動を生んで。  特に野獣とお城に住まう存在に対して更なる愛情を注いでいるように思え、それぞれのキャラクターが描くドラマが面白く、クライマックスの城に侵攻してきた村人達への反撃シーンの盛り上がりも更にエキサイティングで。  野獣はアニメーション版では正直なところ、ラストで人間に戻った時に「誰だよお前」って思ってしまったのですが、今回は目が一緒なので、ああ、野獣が人間に戻ったんだな、って流れを感じられました。そういうところは実写の強みですねぇ。  エマは、どうしてもハーマイオニーのイメージは拭う事ができませんが、色々な表情を見せて彼女ならではの魅力的なベルを創造していました。  そしてガストンは更にクズっぷりが増して。   美術は2014年のフランス版の退廃美も印象的で魅力的でしたが、こちらは王道の美しさといった風情。画面に溢れる色彩の情報量に目が眩みます。全体的に映像が暗めなのが少々残念。   観終わってみれば、オリジナルのアニメーション版の総てをバージョンアップしてみせました、という印象。これぞ『美女と野獣』なナンバーの晩餐会のシーンやダンスシーンはアニメーション版を超えたとは言い切れないものの、新しいナンバーの追加も含めて全体的に手を加えて厚みと奥行きが生まれています。クラシックとなりつつあるアニメーション版とは別に、今のテクノロジーで更新された実写版を心の底から楽しみました。これが今のディズニーの力なのだなぁ、って実感できる映画でした。
[映画館(字幕)] 9点(2017-04-21 20:55:03)(良:3票)
69.  グレートウォール(2016) 《ネタバレ》 
 中世の中国を舞台にした荒唐無稽な怪獣ファンタジー。『スターシップ・トゥルーパーズ』と『パシフィック・リム』と『ワールド・ウォーZ』と『300』と『ロード・オブ・ザ・リング』と『エイリアン2』を混ぜてチャイナ風味にしたような映画、ツッコミどころは満載。  黒色火薬を手に入れようとやってきた西洋の面々は、ただ手で運べる程度の量を入手すれば結果オーライなの?とか(製法を知らなきゃ意味ない訳だけれども、ブツさえ手に入れればあの時代でも成分の解析ができたとでも?)、マット・デイモンの人殺しとしての過去の背景がセリフだけで詳細不明なままとか、女王からの通信が途絶えると共に一切無力化する(死んじゃう?)怪物とか、大してドラマも描かれないのにドラマチックにどんどんと散ってゆく人々とか。  もうレジェンダリーが中国資本傘下になったのでこういう映画ができました、っていうサンプルみたいな映画。   戦闘シーンも既視感たっぷり、だけれどもアクロバティックな戦い方の数々とか、チャイナなデザインの鎧や盾が大量に並ぶ様にこの作品ならではの魅力を感じられました。引きの画になると途端にCGでござい、って状態でチャチになってしまうものの、CGではなくライブで撮られた隊列の画などは、その物量っぷりに圧倒されました。   でも、それらを評価したところでせいぜい6点といったところでしょうか。チャン・イーモウ作品としてはあまりに大味スペクタクルな画ですし。   個人的に最大の評価ポイントはもうただ1つ、美しくてカッコ良いジン・ティエン。予告編のビジュアル時点でワクワクさせて貰ったのですが、本編では期待以上に大きな役柄で画面に映ってる時間も長くて、むしろマット・デイモンは彼女の引立て役でしかないんじゃないかっていう。まるで『真・三國無双』のキャラ、星彩や月英がそのまま実写で動いているような感じで、戦うキレイなお姐さんの姿にほれぼれ。『キングコング:髑髏島の巨神』での飾り物にすらなれていない空気状態とは大違い、っていうか殆ど別人に見える状態なのは、スタッフの皆さんのウデの違いってところかしら?  キレイでカッコいいお姐さんがアクションしてればそれだけでいいのか?って言われたら、それだけでいいんです、としか答え様が無いです。もう彼女を眺めてるだけで最高の映画。それだけで十分。はい。
[映画館(字幕)] 9点(2017-04-14 22:01:11)(笑:1票) (良:2票)
70.  SING/シング 《ネタバレ》 
 潰れかけた劇場のオーディションに集う、それぞれに悩みや問題を抱えた者たち。その、ありがちな群像劇がCGアニメーションによって擬人化された動物で描かれる事でなんて魅力的に輝くのでしょう。   様々な動物がごっちゃに暮らす社会というと『ズートピア』を連想させますが、この作品世界では特に種の違いによる差別や摩擦を描いてはいません。サイズ差や生態によるネタこそ存在するものの、各動物の特徴はあくまで個性を際立たせるために機能しています。キャラのデザイン的な特徴によって、それぞれに紡がれるドラマが大きなメリハリを持って伝わってくる感じ。決してハイレベルとは言えない、同時期に公開している『モアナと伝説の海』に比べてしまえば結構チープなCGだったりするのですが、個性的な外観に、人間的な、細かな表情を組み合わせる事で(単純な喜怒哀楽だけではなくて、微妙なニュアンスを持たせようと試みています)、そこに血の通ったキャラを見出せます。  私が好きだったのはロジータとアッシュ。この二人、結構複雑な表情を見せてくれるんですよね。ムーンとマイクは登場時点での印象が大変悪くて「この映画、大丈夫かいなぁ」と思ったものの、そのキャラなりのドラマを見せてくれますし。   魅力的なキャラ造形によって、夢を諦めない、殻を破る、人に流されない、底辺から抜け出す、そういう、よくあるメッセージが、嫌味なく素直に伝わってきました。何より、クライマックスの怒涛の盛り上がりはとてもエキサイティングでしたし。   最初に字幕版、次に吹替版を見ましたが、個人的には字幕版の方がいいと思いました(IMAXの12.1chと小さめなハコの5.1chという差はありましたが)。吹替版は演技と歌とを両立できている人が限定的だったり(長澤まさみは見事に両立していました)、字幕版に比べるとやはり歌のインパクトが薄くなってしまったり。山寺宏一はいい加減海外アニメーションの吹替をし過ぎているでしょ、って思いましたが、喋り自体は個性的で良かったです。でも、『マイ・ウェイ』の字幕版のシナトラっぷりに比べてしまうと、やっぱり物足りなくて。また、ミーナ役をMISIAが演じているという事で、これは凄いコトになってるんじゃないかと思ったものの、実際に聴いてみるとMISIAは唯一無二、どう聴いてもMISIAにしか聴こえないという。MISIAが上手いのは当たり前だものねぇ。
[映画館(字幕)] 9点(2017-03-21 22:34:44)(良:2票)
71.  モアナと伝説の海 《ネタバレ》 
 最初は物語が凡庸な印象でした。王道の冒険譚、行きて帰りし物語。決してモアナから離れない物語に、村の危機にタイムリミットを与えるとか、幼なじみでも設定して村と二元的な描写をした方が幅が出るんじゃない?って思いました。だけど二度目を見て、そうじゃなくてこれはモアナのパーソナルな物語、内宇宙を描いているのだと。マウイすらもモアナの内面を示すためのキャラクター。  シンプルな物語の中に沢山の情報が盛り込まれていて、漫然と見ていると色々と見過ごしてしまう感じです。まあ、沢山盛り込まれたパロディ、オマージュに目が眩んでしまうって面もあるのですが(よく言われている『マッドマックス 怒りのデスロード』『ウォーターワールド』以外にも『レイダース 失われたアーク』とか『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』とか『スターウォーズEP1』とかどっちゃり入ってて)。   モアナはディズニーのヒロインでありながら恋愛的要素皆無、戦うヒロイン。でも、それはそれまで築いたディズニープリンセスの否定、ではないと思うんですよね。ディズニーのヒロインはその時代その時代に合った闘争をしてきている訳で(外への志向や自分の立場からの脱却を示すのはシンデレラからアリエル、ベル、ジャスミン、メグ、ムーラン、ラプンツェル、エルサとアナ、ジュディまで共通したキーワード)、これもまたディズニー伝統の中にある作品だと思います。自分は何者で何を成すべきか、普遍的な自己の確立の物語。   映像はここまで来たか、というレベル。全てが人工なCGで雄大な大自然を美しく描きます。そもそもCGである事を意識させる隙すらありません。海と空のブルーに、カラフルな南洋の花の色を散りばめた世界、その色彩感覚だけでもうっとり。   吹替版、字幕版、そして輸入盤3Dブルーレイと見ましたが、吹替、字幕それぞれに良さがあって、優劣は付け難いです。吹替版のモアナの歌声には強く心動かされましたが、マウイはやはりドウェインのイメージがあっているかな。また、3Dの立体感はそこそこ。いつものディズニーらしい、極端な立体感を見せたりはしない感じ。でも、国内での3D上映が無いのはやっぱり残念です。『アナと雪の女王』であれだけ稼いだ国なのに冷遇されてますね。日本での公開が遅いので公開日の前日にはアメリカのアマゾン経由でブルーレイが手元に届きましたし。もう少し日本のディズニーファンも大切にしてね。   CGの技術は競い合って毎年大幅に更新されているような状態ですが、その競争を芸術作品として心で触れる事ができるのはとても喜ばしい事だと思います。
[映画館(吹替)] 9点(2017-03-14 23:38:56)
72.  ラ・ラ・ランド 《ネタバレ》 
 最高のシネマスコープと最高の音、それだけで十分、他に何を望みましょう?   ってわけにもいかないので。だけどミュージカルとしてはそこそこかなぁ、と。確かにデジタル処理に頼らない冒頭の長回しとかエマとゴズリングのデュエットダンスの長回しとか、気合いというか意気込みを感じます。でも、この映画、そんなにはミュージカルそのものに興味ある訳でもないよね?って。オマージュこそたっぷりだけど(ゴズリング見ていてジーン・ケリーか? やっぱりジーン・ケリーだな? みたいな、あと『巴里のアメリカ人』はもちろんだけど『世界中がアイ・ラヴ・ユー』も入ってない?とか)、これぞミュージカル、みたいなのは主にさっさと前半にブチ込んで(ミュージカルの醍醐味の1つである俯瞰でバーンと見せる群舞はオープニングにチラっとしか無いしねぇ)、あとは夢と現実の狭間で揺れる二人のドラマに絞られていって。   ここに見えるのは表現者の心。エマとゴズリングが代表しつつ、映画の中に実際のお仕事として、作品として表現されてゆくという。ベタベタ懐古主義の平和ボケ映画に見えつつ(ワープディメンションなシネマスコープロゴからのアスペクト比は初期シネスコの1:2.55だし)、クリエイター達のお仕事っぷりが虚実交錯しながら二人のドラマの中に集約されていっているような気がします。  表現者のリアルと理想とハートと作品と、そういうものがそのまま1本の映画の中にぎゅっと詰まって、なので一筋縄ではいかない、アレもコレもな映画になっている感じがして。受け手としてはそこに身を任せて、その混沌の中から自分が反応したもの、ひらめいたもの、感じたものを大切にするのが吉、って思いました。   私はこの映画を見ていて無性に写真が撮りたくなりました。
[映画館(字幕)] 9点(2017-02-28 22:14:53)(良:1票)
73.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
 海に接する場所、霧の中に消え、霧の中から姿を現し、この映画に描かれる日本という閉塞的な世界には一貫して神の視点がありません。地理や位置関係を示す視点、生活や人物の関係性を語る視点、そういう作品世界を俯瞰する描写が存在せず、ひたすらロドリゴ神父の見聞きする世界のみがあって。その閉塞された混沌世界の描写は、己の信仰心と対峙する神父の葛藤を明確に浮き彫りにさせます。  絶対的な神を持たない民族の信仰の姿はキチジローに代表されて、それは今に至るまでずっと同じ日本人の姿を示しているところが面白いです。陰鬱な映画なのに、布教どころか自己の信仰すらも歪ませてしまいかねない、八百万の神を持つこの国の特異性を妙に面白く(自嘲的に)感じてしまう私でした。   踏み絵も拷問も処刑もお役所仕事、みたいな描かれ方もまた日本人らしさを示していて、なんとなく可笑しく思えてしまって、でも海の向こうの人から見れば恐ろしい事なのだろうなぁ、と。    だけどリーアム・ニーソンのキャスティングによってフェレイラ神父がクワイ=ガン・ジンに重なってしまい、そう言えばアンドリュー・ガーフィールドってヘイデン・クリステンセンに似てなくもなくて、ダークサイドに堕ちたクワイ=ガン・ジンがアナキンを誘う映画みたいに見えてしまい。オビ=ワンがいればなぁ、みたいな。日本はダークサイドか。   しかし蜩はあの時間には鳴かないのではないかいな?
[映画館(字幕)] 9点(2017-02-13 22:15:23)(良:1票)
74.  ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 《ネタバレ》 
 今から11年半前、『シスの復讐』のレビューに書いた希望がこうして実際に一本の映画となった事に驚き、その上で自分がなんとなくイメージしていた設計図奪取作戦がいかに陳腐かを思い知らせてくれる作品でした。   冒頭からしばしはノレませんでした。ごちゃごちゃしたシチュエーションの羅列で、とにかく映画を見る上で必要な情報を伝える事に必死という感じ。帝国と反乱軍との間でうごめく人々のやりとりを描くって、アニメの『反乱者たち』でもたっぷり見せられてきてるモノなので、それと同じレベルのものをずっと見せられるのかいな、って思うとちょっとゲンナリって感じでした(エピソード7も大半はそんな状態でしたし)。  だけどドニーさん登場あたりから、この映画ならではの魅力が出てきて、『スター・ウォーズ』世界を舞台にした無名の戦士たちのハードな物語に心奪われてゆきました。  フォースもライトセイバーも無い人々が帝国軍の圧倒的な戦力に立ち向かってゆく、その絶望的なシチュエーションの先にある微かな希望。見ている側はその希望の正体を知っているがゆえに、心躍り、燃えます。  終わってみれば、シリーズで唯一の泣ける『スター・ウォーズ』。それはこれまでのシリーズの知識があってこその感動ではあるのですが(最低でも『エピソード4』だけは見ていないとこの映画の価値は判らないかと思います)。   オープニングのスクロールがない、ルークのテーマ曲が流れない、舞台説明の文字が表示される等、本シリーズとの差別化が図られている中、ご贔屓ジアッキノの音楽は見事にジョン・ウイリアムズをリスペクトし、このハードなドラマを盛り上げてくれます。   フォースを胸に、その生身の体を使って戦う等身大の人々、それは『スター・ウォーズ』ファンの姿に重なるんじゃないでしょうか。ここに描かれた戦士たちこそはファンの心を映し、ファンを代表してそこに立ち、命を賭して帝国軍と戦った、そこに感動しない訳にはいかないでしょう。  38年もの昔に見た『エピソード4』が、これから先、全く違った視点で見られる、今に至って作品イメージが更新されるって、なかなか貴重な体験ですね。
[映画館(字幕)] 9点(2016-12-18 21:10:07)
75.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
 東京国際映画祭で鑑賞。   原作がマンガというフォーマットを最大限に活かした名作だったので、アニメ化には大きな不安を抱いていました。原作は絵の表現がそのまま主人公すずの描く絵と内面の心理描写とに反映され、すずの一人称的世界を構築していたのに対して、アニメは共同作業による三人称世界ですから、原作をそのまま置換する事はできない訳で。後半のある時点からの大きな変化を描く重要な部分を映像で表現するのは無理、その代わりをどうするのか?と。  結論から言えば、完璧ではないけれど、アニメならではの表現を模索していて、それなりに上手くいっていたように思います。少なくとも同じ作者の『夕凪の街 桜の国』の無惨な映画化に比べれば、原作に過剰な思い入れのあるファンでも納得のゆく作品に仕上がっていました。   基本は原作に忠実で、原作の絵柄を丁寧に再現し更に細やかにアニメートさせ、エピソードを上手くすくっています。  精密に描かれた戦中の広島と呉の世界に、声と動きを与えられたすずが生きていて、彼女が巻き起こす笑いが楽しく、それがゆえの後半の痛みも厳しく。  手の描写にこだわるのは原作からすれば当然と言えるのですが、その当然の事をきちんとできているかどうかが重要なわけで。これはとてもきちんと真面目に作られています。   リンのエピソードがかなり割愛されてしまっているのはとても残念なのですが、そこを描くとPGー12指定の映画になりそうな気もしないではなく、仕方ないのかな。  鬼いちゃんと座敷わらしのエピソードはもう少しハッキリと浮かび上がらせて欲しかったですし、ラストの邂逅も淡々とさりげなさ過ぎな気もします。  ですが、魅力的な存在感を放つすずを通してあの時代を暮らした人々の生が輝き、現在に繋がるこの国の人の営みを実感させてくれて見事です。   誠実な作りのアニメ映画、これもまた日本のアニメの力を示しています。どうか多くの人に見て貰いたいです。
[試写会(邦画)] 9点(2016-10-31 23:11:59)(良:3票)
76.  少女(2016) 《ネタバレ》 
 繊細で残酷な映画。全編をヒリヒリとした空気が漂い、心を締め付けてきますが、その切ない痛み、居心地の悪さがむしろ不思議な快感と感動を呼びます。   二人の少女が負った傷は他者の悪意の象徴。様々な悪意の中で傷付き、壊れ、死が囁きかけてくる、徐々に悪化してゆくそこから逆に得るもの。  幾つもの(痛い)エピソード、映像がパズルのように散りばめられ、組み合わさって1つのカタチを織りなしてゆく、それが心地良さを生んで。二人の少女、冒頭とラスト、共通する2つの映像(夕陽を駆ける二人、それぞれが防波堤を歩く、足が「治る」瞬間、二人の繋がりが遮られる刹那、水の中に沈んでゆく)、幾つもの対を成すものによって構成されて、その対比の組み合わせが大きなうねりを創り上げています。  因果応報を示す繋がりはファンタジー的ですが、ゆえに1つの作品の中に閉じ込められた、閉塞された世界が完成されています。  その世界を創造するロケーションも効果絶大、二人の身近にある海が生と死の境界を示していて。   闇を抱えて生と死の狭間を彷徨う女子高生を演じる本田翼と山本美月がとても良いです。   実はシンプルな友情物語、ヨルはまた来るのでしょう。
[映画館(吹替)] 9点(2016-10-09 21:51:48)
77.  ハドソン川の奇跡 《ネタバレ》 
 2回の墜落イメージは貿易センタービルにぶつかった2機を表しているのでしょう。9.11を背負った映画である事に間違いはありません。ニューヨークの深い傷。これは新たな傷をつけないように努力した人々の物語。   余計なアクセントを差し込まない、事故のリアルで生々しい描写は、その結末が判っていても恐ろしい臨場感を持って迫ってきます。その短い間の、震え上がるような恐怖と、そこに居合わせた人々の生。それぞれがそれぞれの役割を果たす事で成し遂げられた奇跡。  クライマックスのシミュレーターこそは逆にその奇跡の後押しをする事になる、コンピューターには人的要因は理解できない、のだけれどコンピューターが人の価値を立証してみせた訳です。さんざん最新のVFXによる墜落映像を見せておきながら、肝心のクライマックスではシミュレーターのショボいCG画面が主役になるという構図が面白く。イーストウッド主演の『人生の特等席』では前時代的なコンピューターVS人間の図式を単細胞的に描いていてゲンナリしたものですが、イーストウッド本人は必ずしもソレを頭ごなしに否定せず面白く使いこなしている感じがします。   トム・ハンクスが良いです。昔からのオーバーアクト(いまだに『ビッグ』での少年が大人になってしまったパニック演技がチラついてしまうっていう)が抑えられる事で、プロとして事に冷静に対処する強さと、9.11を自らが再現してしまいかねなかった恐怖に苛まされる弱さと、英雄として持て囃される事に対する戸惑いとを1つのモノにしていて。機内に残された乗客がいない事を確認する姿は、決して英雄的ではなく、必要な仕事をこなしてゆく男の姿でした。   余分な贅肉のない、簡潔にして濃密な96分、齢86にしてイーストウッドはなお軽妙洒脱に映画を駆けてます。
[映画館(字幕)] 9点(2016-09-26 22:20:44)(良:1票)
78.  映画 聲の形 《ネタバレ》 
 耳が聞こえないというのは、この映画では障害ではなく個性であるのだと思います。これは障害者の映画ではなく、いじめの映画でもなく、個人と個人についての普遍性を持った映画、なので障害やいじめに固執すると矮小化してしまう、そこを山田監督は真面目に丁寧に、バランス良く描いています。   それぞれの自分を守るための戦いが生む摩擦、その戦いから逃走する事で更に生まれる摩擦、ひたすら繰り返される闘争の傷とその痛みの容赦の無さ。映画はそこに真正面からぶつかっています。他者のパーソナリティを受け入れると共に自分のパーソナリティも受け入れる、それがどれだけ大変な事か、どれだけの傷を乗り越えてゆかなければならないか、その闘争について映画もまた表現の闘争を繰り広げている訳です。ゆえに受け手は見ていて古傷が痛む訳ですが、映画が戦っている以上、受け手もまたその戦いに向き合い、見届ける必要があって。   そんな映画の心を示す映像表現の数々が秀逸です。アニメならではの心象風景とリアルとの共存を端的に示す、顔の上のバッテンマークは勿論ですが、足だけ、顔が欠けている、誰かが収まっていていい筈なのに空いている、そんな不安定な構図が重ねられて、ほのぼのとした絵柄とは裏腹なヒリヒリとした痛みを伴う緊張感をずっと投げかけてきます。   同じ監督と脚本家、そして同じ京都アニメーション製でありながら、この作品とは正反対に位置しているとも言える『けいおん!』(摩擦は意図的に最小限に抑えられています)では複数のキャラのモノローグによって人称がブレて、流れがおかしくなってしまう箇所も見られましたが、今回はモノローグにも制限が与えられ混乱をきたす事がない点も成長が感じられます。   決して心地良い時間を運んでくれる映画ではありませんが(そもそも主人公のパーソナリティを受け入れられない人もいるかと思います)、そこに向き合う事に大きな意味のある作品です。その闘争の真摯な姿勢を高く評価したいと思います。
[映画館(邦画)] 9点(2016-09-26 21:05:11)(良:4票)
79.  ゴーストバスターズ(2016) 《ネタバレ》 
 大変に気持ち良く見られた映画で。    女性が「女性らしい役割」を求められていない映画であり、だから(観客を含めた)男のために着飾ったキャラもいなければ、優雅さ優美さを求めてもおらず、カッコいいも面白いもお下品も、性差のボーダーを取り払った表現になっていて。  一方で徹底的に男を無能でダメな存在としておちょくっておりますが(旧作のメイン役者達ですらも!)、さんざん「そういう役割」を求められ続けた者の復讐の映画としての気持ち良さがあって。クリヘムはアレですね、昔の映画やドラマで向井真理子さんが吹替えを担当していたタイプのキャラの男版。その徹底した姿勢は旧作のビル・マーレーの役に対する贖罪というか価値観の変化の表明のようにも思えます。  これは単なる変種ではなく時代の要求であると思うのですよ。   旧作のリメイクとして様々な引用をしつつ、今の技術によっていっぱい(それこそ画面からハミ出すほどの)ゴーストを出して、その進化を楽しめるのもポイントでした。美術やVFXなんか旧作の色彩にちゃんと則ってましたしね。リチャード・エドランド風味。   あと、吹替え版と字幕版、両方見ましたが、吹替え版も悪くありません。メイン2人は喋れる芸人ですし、それをプロの声優が固めてる感じで。静ちゃんと鬼奴はアレですがちょいとしか出てきませんし。   今から32年前の3G対決のうち、期せずして『ゴジラ』と『ゴーストバスターズ』が再び対決する事になった訳ですが(『グレムリン』はどうした)、『ゴジラ』は実のところ32年前のアレとさして印象は変わらず、それに比べて『ゴーストバスターズ』はかなり成長したように感じるのは、単に当時期待してた旧作にガッカリしたせいで元々ハードルが低かったから、だけではないと思うんですよね。
[映画館(吹替)] 9点(2016-09-13 21:49:35)
80.  キャロル(2015) 《ネタバレ》 
 車の窓越しのルーニー・マーラの表情から始まるこの映画、全編象徴的に世界を隔てるものが登場します。窓、車、家、部屋、扉、そしてカメラのファインダー。その内側の繊細で壊れ易い女達の世界と、外側から無神経に境界を踏み荒らし侵害する男という性と。   我がケイト・ブランシェット姐さま、瞳の演技だけで堂々の存在感。だけど視線の演技はルーニー・マーラも負けておりません。二人の揺らぐ視線がその儚げな愛を切なく綴ってゆきます。   ラスト、窓の奥の世界から飛び出したルーニーは男達に囲まれた世界で何も通さず真っ直ぐケイトを見つめます。真っ直ぐ見つめ返すケイト。そこにあるのは全てのフィルターを取り払った真実の愛なのかもしれません。
[映画館(字幕)] 9点(2016-04-08 20:05:56)
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