61. セッション
突出している人間はどこかが大きく欠落しているように見えるもの。一つのことを追求していくと、周りが見えなくなって他人に不寛容になることもあるし、邪魔なものを徹底して排除しようとしてしまう。しかし、大きな目標の達成のためにはそういうこともせざるを得ないということか。ラスト10分くらいは観ている人の多くがただただ圧倒されるでしょう。皆がおよそ同じような感情を抱くということがこの映画の完成度の高さを表していると思います。ただ、出来上がりすぎていて、逆にこちらが入る込む隙がないというか。映画の方が一方的に喋っている感じがするのが少しだけ気になった。あと少しだけ余白があれば大好きになっていました。 [映画館(字幕)] 9点(2015-04-22 00:02:16) |
62. インヒアレント・ヴァイス
なんとも不思議~な、“グルーヴィ”な映画でした。複雑なプロットですが、そこは重要ではない。頭を使って観るものではないですね。明るい絶望感の漂うLA(街そのものがヤク中)、キャラの濃い登場人物たち(おかしな名前ばっかり)、お洒落な台詞(フランクになろう)、70’sの音楽・・・とにかく目に入るものと耳に入るものに酔いしれました。クスリやってみたい!とはギリギリならなかったけど、フローズンチョコバナナは食べたいなー。誰かの目の前で下品に頬張りたい。そして、後半のあのサービスシーンに関しては本当にありがとうございました。僕も前に座っていた男性客も足を組んで観ていました。 [映画館(字幕)] 8点(2015-04-20 09:29:18) |
63. ザ・スナイパー(2005)
大好き。陽気な殺し屋ジュリアンと、生真面目なサラリーマンのダニー。この二人の不思議な友情の物語です。二人の対比が絶妙なんです。とっかえひっかえで女をひっかけて遊ぶジュリアン、学生時代から付き合っている妻を愛し続けるダニー。特殊な生業ゆえに一般人には分からない孤独を抱えるジュリアン、平凡だが悩み多い人生を自分なりにしっかり生きるダニー。二人はたまたま“出張先”が同じだったことから出会う。パッと見では正反対に見える二人ですが、不思議とウマが合った。クライマックスでは、お互いの生きるべき道を相手に示し合います。これぞ友情!公衆の面前をパンツ一丁で堂々と歩くピアース・ブロスナンは見物ですよ。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-13 21:36:44) |
64. 暴走特急 シベリアン・エクスプレス
ここまでロシアに関わりたくなくなるような話をされ続けるとは思いませんでしたね。後半は少し茶番な気がしましたが、全体的には好きな雰囲気でした。暗い画が良い感じ。登場人物の描き方も好きですね。コイツは何を考えているんだろうって思いながら見られて楽しかった。主人公のエミリー・モーティマー、初めて拝見しましたが、カッコいい美人さんですねえ。ベン・キンズレーのロシア訛りも楽しい!そして、ウディ・ハレルソンがやたら良い人だったのがひたすら面白かったです。しかし、「何をする!俺たちはアメリカ人だぞ!」ってそこ強調するところなのか? [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-04-13 21:34:23) |
65. くちびるに歌を
いやー懐かしい。中学生だった当時は練習から本番まで何もかもが嫌だった合唱コンクールも、今となっては良い思い出です。あの時に出会った思い出の曲たちが流れ始める度に時の流れを実感しました。完成度の高い映画です。いわゆる“泣き所”のシーンもこれ以上だと大袈裟になってしまいそうなギリギリのラインで絶妙に気持ちの良い感動ができるようになっていました。画もひたすら美しい。ただ、少し無難にまとまりすぎているような気もします。原作ありきなので仕方ない部分もありますが、出来ればもう一歩踏み込んだ映画を観てみたかった。子役たちの演技、とりわけナズナとサトルを演じた二人は素晴らしかった!そして木村文乃、美人! [映画館(邦画)] 7点(2015-04-13 16:01:27) |
66. バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
商業主義に中指を立てつつも、結局は自分のキャリアや野望を捨てていない。アーティストとして生きることのもどかしさを滑稽に、そして切なく描いているように思えました。何故、自分はこの世界にいるのか。自分のやりたいことをやるだけではダメなのか。もっと高みを目指さないとダメなのか。自己満足ではダメなのか。自分はダメなのか。・・・それでも自分はアートを創り上げてみせる。自分はこうやって生きるんだ。・・・そんなアーティストたちの叫びたちが聞こえた。ワンカットに見えるように撮られているので、途切れのない一つの劇のようでした。圧倒的な台詞量がこれまた劇っぽい。アツい映画でしたよ。 [映画館(字幕)] 9点(2015-04-13 01:57:16) |
67. バベル
登場人物の取る行動に理解ができないことが多かった。「何故?」の連続。でも、人間ってそういう生き物なんです。目の前にいる人間だって、頭の中では何を考えているかなんて分からない。そして、軽い気持ちで取った行動が自分はもちろん周りの人間の人生まで大きく変えてしまう。長い歴史の中で人間は分断されていった。同じ種族の中で。それぞれが集団を作り、独自の言語を生み出し、互いに境界線を引いていく。他人に対する不信感が生み出す悲劇。ちょっとした行動で深まる溝。そんな中でも人と人は繋がっていく。繋がろうとする。良い映画だと思いますよ僕は。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-12 12:29:39) |
68. プリデスティネーション
観終わった後、この映画のプロットを思い出して、その理屈というか筋を最後まで考え抜くこと。それができるかどうかでこの映画の評価は変わってくるんじゃないかと。僕はそれをだいぶ早い段階で放棄しちゃいました。てへっ。でも、楽しかった。二人の人物が結構な時間を掛けて会話をするシーンがあるんですが、そこだけでめちゃくちゃ引き込まれましたね。洒落たダイアローグに卓越した演技力。カメラワークもさりげなく良い感じ。後にカルト映画になるかも。 [映画館(字幕)] 8点(2015-03-17 03:41:18)(良:1票) |
69. エイリアン
ずっとドキドキしていました。本作のポイントは、異星人との戦いを地球から遠く離れた場所で描きながら、その怖さのスケールが伝統的なホラー映画と同じであることだと思います。恐怖が身近に感じられたんですよ。まるで大きなゴキブリと戦う感じです。殺虫剤を手に取り“ヤツ”を捜し回るものの、動きがすばしっこくてどこに行ったか分からない。そういう日常的な恐怖ととても似ていたので、この映画は怖かった。宇宙船内の近未来的な音を効果的に使って怖さを煽っていますが、これも家の中のどこかで何かが軋む音が聞こえてくる感覚に近かった。シガーニー・ウィーバーの絶妙な半ケツも怖さのあまりにどうでも良くなりましたね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-03-02 13:36:08) |
70. オンリー・ゴッド
観ている最中、拷問を受けているような錯覚に陥りました。しかし、それは「何でこんな面白くないものを観ないといけないんだ!」みたいな意味ではなくて、「自分は一体何を観ているんだ・・・」という感じ。最後までとにかく不安な気持ちになるんです。でも、それが結果的に満足感に繋がりました。濃厚な時間を味わえたし、物凄く感覚が研ぎ澄まされた気がします。映像は大変美しく、色彩も豊かで良かった。赤が映えていました。内容は正直よく分かりません。母と子の関係の話なのかな?そして、あの警官。ノーカントリーの“あの人”を彷彿とさせます。罪人に制裁を与える絶対的な力。ゴスリングの「早く脱げえええ!!」には笑いました。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2015-01-10 16:58:30) |
71. FRANK -フランク-(2014)
芸術は競うものじゃなくて、自分の中にあるものを外に出すコミュニケーションの一環である。当然のことだと思うけど、この競争原理に基づく社会に生きているとどうしてもそれを忘れてしまう。誰が一番なのか、どうすれば有名になれるのか、そういうことを考えてしまう人間はその時点でアーティストではないんだなと思いましたね。フランクを本当に理解している人も、そうでない人も、皆が彼に何かしら魅力を抱いているのは、彼が真のアーティストだからなのでしょう・・・。砂漠のシーンは今年で一番笑いました。可愛くて切ない、良い映画でした。 [映画館(字幕)] 7点(2014-12-14 22:33:35) |
72. ゴーン・ガール
娯楽性だけに注目するととてもレベルの高い映画だと思います。しかも、かなり笑えるんですよね。ちょっとしたジョークがあちこちに挟み込まれていて、面白いです。でも、この有り得ないような話の展開そのものを笑いに変えてしまう演出に何よりも感心しました。緊張感も程よく持続させているし、刺激的なシーンもあるので、とても楽しく鑑賞できます。ただ、欲を言えば、もう少し作り手の私的なエッセンスも組み込ませてほしかった。この監督の作品を観ているといつも思うのですが、棘があまりないんですよね。良く言えば職人的、悪く言えば無難な印象。でも、楽しかった! あの顎を指で隠す仕草、真似しようと思います。 [映画館(字幕)] 8点(2014-12-11 23:12:00) |
73. ドライヴ(2011)
主人公がとにかくクールで、「自分もこんな男になってみたい」と思いながら鑑賞していました。この感覚は、僕が子供の頃に映画『バットマン』を観ながら「バットマンになりたい!」と強く願っていたのと似ている気がします。この寡黙なドライバーから、スーパーヒーローのような資質を感じました。荒っぽさはあるものの、真っ直ぐと自分なりの「正義」を実行する。男の憧れですね。本作はとにかく画が最高に綺麗でした。台詞も極力抑えられていて、映像で表現しています。俳優陣の演技も一級品。音楽もスタイリッシュでカッチョイイ。アーティスティックな作風ですが、娯楽性もあるので見やすいと思います。酔いしれちゃいました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-12-08 23:34:23) |
74. パルプ・フィクション
ジョン・トラボルタが投げキスするのを真正面から撮ったシーンがあります。これがめちゃくちゃダサいのに、めちゃくちゃカッコいいんですよ。「カッコいい」と「ダサい」は表裏一体どころか、ほぼ同質なのかなと思いましたね。この映画が全体的にそんな感じでした。「どんな感じだよそれ!」と思った方も居られると思います。そんな方々は是非見てください。見ると分かります。分かると思います。とっても馬鹿らしくて、最高にクールな映画です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-12-04 18:30:20) |
75. グランド・ブダペスト・ホテル
ユーモラスなキャラクター、色鮮やかなセット、おとぎ話のような世界観・・・他の映画にはないユニークなモノがぎっしり詰まった作品でした。が!ペースがず~っと「一定」だった気がしました。緩急がないんです。しかもそのペースが速いから追いかけるのが大変。例えるなら、ステーキを永遠に出される感じ。とっても美味しいんだけど、野菜とかデザートも欲しいし、料理と料理の間を空けてくれないとすぐお腹いっぱいになって食べ切れなくなる。「これじゃあ、まるでお前の故郷だ」など好きな台詞やシーンは沢山ありますが、似通ったジョークが続いてしまうと飽きてくる。全体的にもう少しバリエーションが欲しかったかなと。 [映画館(字幕)] 5点(2014-12-04 18:19:15) |
76. スノーピアサー
「設定に無理がある」と言われていますが、そんなことはどうだって良いんです。完成された体制に囚われてしまっている人間社会を表現するのに『列車』がピッタリだっただけです。列車の中で食べ物が供給されるのも現実的に考えたら確かに無理があります。しかし、これも他の生き物や野菜を統制的に飼育・栽培する人間の営みを表現しているに過ぎない。列車内には階級差があり、先頭に行けば行くほど豊かな暮らしが繰り広げられているなんて、めちゃくちゃ分かりやすいじゃないですか。物語は設定や事の成り行きが全てじゃないんです。それらは枠組みでしかなくて、本質を見落としています。これは『革命』の実態に迫った映画です。 [映画館(字幕)] 7点(2014-12-02 09:25:07) |
77. ラブ・アゲイン
ラブコメというジャンルそのものをネタにしているような、とてもクレバーな作品だと思いますね。それでいてアッと驚くストーリー展開で不意打ちを与えるのがこれまた素晴らしい。エッチなジョークも下品すぎなくて、ちょうど良い。これくらいなら子供に見せても大丈夫・・・だよね?ね?・・・映像も割と凝ってて、キャストには美男美女が揃っているので見栄えもグーです。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2014-11-30 23:47:10) |
78. 複製された男
なんか嫌~な夢を見ている感じ。起きた後も何故か脳にこびりついて、しばらく忘れられない・・・そんな映画。中毒になりそう。ただ、「これ、実は深い意味がありまっせ!」って言わんばかりの演出が気になった。そういうのはさり気なくやってこそだと思う。あからさまにそんな演出をやりすぎると、かえって一義的な解釈しか出来なくなるんじゃないかな?それだと面白さ半減です。とは言え、観る者を不安にさせる雰囲気は好きです。 [映画館(字幕)] 7点(2014-11-30 23:37:02) |
79. 誰よりも狙われた男
そりゃ酒とタバコに溺れるわな・・・。ホフマン氏の演技は相変わらず凄まじかったです。最初は「ん?」となったドイツ訛り(かな?)にもほんの数分後には違和感がなくなり、「世界の平和のため」に己の存在を消して格闘する男の姿だけがそこにありました。熱っぽさがないのに熱っぽい。抑えた演技なのにパワフル。名演です。他の役者たちも素晴らしかったし、冷たい印象を与える演出も良かった。綺麗にまとまった渋い作品でした。 [映画館(字幕)] 7点(2014-11-30 23:33:49) |
80. ゼロ・グラビティ
他の方々が既に仰っていますが、これは映画館で観ないと無意味です。真っ暗な映画館は本作にピッタリな環境だし、大きなスクリーンで観ないと立体的な迫力を味わえないし、本作の絶妙なSEの使い方は映画館の大音響で初めてその効果が存分に発揮されます。これはもう、ブルーレイとかDVDを発売しないで、月に一回くらいのペースで劇場で上映し続けた方が良いんじゃないかと思います。映画というよりはアトラクションですね。それでいて映画的な美しいショットも楽しめます。ただ、繰り返し観たくなるストーリーではないのが弱点。 [映画館(字幕)] 9点(2014-11-30 23:29:49) |