801. 海を飛ぶ夢
《ネタバレ》 何よりも、台詞の一つ一つがいちいち含蓄と示唆(と皮肉)に満ちていて、会話のやりとりを聞いているだけで心地よい。また、素朴な人道的感覚には反する結論であるにもかかわらず、不思議に開放感(爽快感とすらいえるかも)が漂っているのは、主人公の「意志」に徹底して焦点を当てて、そこからぶれていないからです。だから、宙を飛んでいく主人公の空想の視点も、単なる映像イメージではなく、作品の重要な一部としての説得力をもって迫ってきます。ただ単に登場人物の行動がどうのこうのというだけでなく、見た人にそれぞれ自らの生きる意味まで考えさせるという点において貴重な作品。なお、邦題もセンスが良いと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2008-08-21 00:20:45)(良:2票) |
802. キサラギ
そりゃ確かに、ごく限定された空間内で次々に謎を裏返して興味を引っ張るテクニックはかなりのものですが・・・何よりも、舞台用の脚本をほとんど映画用に書き直してないんじゃないかと思えるくらい、台詞が説明的でくどすぎ。また、役者の演技もステージコントみたいで、やたら騒がしいです。面白い内容ではありましたが、元の脚本が優れているだけという気もします。ただし、作品の根底を流れるオタク讃美の魂は称賛されるべきであり、むしろ真相がどうのこうのよりもそっちの方がこの作品の核として成立していると思うので、そこに+2点。 [DVD(邦画)] 7点(2008-08-21 00:10:50) |
803. ライフ・イズ・コメディ ! ピーター・セラーズの愛し方
ジェフリー・ラッシュについては、むしろ、変な設定の中で変な人を努力して演じようとしているのが目について今ひとつ入り込めなかったのだが、エミリー・ワトソンはやはり素晴らしい。途中から出番がなかったのが残念です。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-08-01 04:31:12) |
804. マリー・アントワネットの首飾り
《ネタバレ》 ヒラリー・スワンクがこういう役をやっていると、上手くいかないときは啖呵の一つかパンチの一つでも出そうな気がして、逆境に耐える人物にも口八丁と色気で詐欺を遂行する人物にも見えない。それに輪をかけて、ただ事実経過を描いただけで、何で主人公がそこまでしてその詐欺にこだわったのか、その内面が描かれていないのです。衣装や美術関係の頑張りが、かえって空回りしています。 [DVD(字幕)] 4点(2008-07-31 00:23:53) |
805. フォーチュン・クッキー
《ネタバレ》 導入部からは普通のドタバタコメディの予感がしてくるのですが、豊富に仕込まれた笑い所の数々と、カーティスとローハンの息の合ったやりとりによって、予想以上の作品となりました。特に、カーティスが実に楽しそうに演技をしていて、こっちまで楽しくなってきます。ただし、母→娘の理解のベクトルは描写されているのに比べ、その逆の方向の描写が弱いのが少し残念。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-07-12 03:15:50) |
806. グッバイ、レーニン!
《ネタバレ》 設定はかなり面白そうなのに、予想外にあまり楽しめませんでした。まず、ゆらゆら揺れるカメラと変に加工してるっぽい画像がよくない。こういうのは人の心理を誠実に追ってこそ感動できるのだから、もっと素直に撮ってほしいものです。また、登場人物の行動がちまちましているだけで、突き抜けたものがなく、せっかくの設定を生かし切っていないのも不満でした。唯一、映画として機能していた、空を運ばれるレーニン像のシーンに5点。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-06-28 03:41:24) |
807. JUNO/ジュノ
《ネタバレ》 十代の妊娠というテーマ設定はあくまでも出発点であり、そこからきちんと登場人物の心理の行方を追っているのが良い。特に、困難な状況の中でも、一見して無軌道で礼儀知らずに見えつつも実は真摯に誠実に状況に向き合っている主人公のキャラクターが魅力的。また、演技面では、頭良さそうな中にも弱さや心の揺れを表現しているジェニファー・ガーナーの貢献が大きいと思う。義母や親友のさりげなくも確実なサポートの立ち位置もいい感じ。 [映画館(字幕)] 7点(2008-06-24 01:59:43) |
808. ベジャール、バレエ、リュミエール
何の予備知識もなく見てしまったので、どのシーンにどういう意味があるのかよく分からないところが多かったです。が、各ダンサーの引き締まった動きや、どの場面でも情熱とエネルギーあふれるベジャール氏のパワフルさは印象的でした。普段見ることのないジャンルだったので、とりあえず好奇心は満足できました。 [DVD(字幕)] 6点(2008-06-12 00:59:35) |
809. ラベンダー
肝心の主人公2人のやりとりからしてあまりにも適当だし、どこで何がしたいのかがほとんど分かりませんでした。2000年作品とは思えないほどの画質の古さと色彩の悪さにも参りました(天使の羽からして安っぽすぎ)。最後の方なんかは、思いつくシーンを無理矢理つぎはぎしたのがミエミエ。冒頭いきなりの入浴シーンというチャレンジングな手法に2点。 [DVD(字幕)] 2点(2008-06-04 02:37:34) |
810. ヴィレッジ(2004)
《ネタバレ》 何となく鬱蒼とした、幸福感の感じられない村の映像と、凝っているように見えて作り物っぽさも漂っている衣装・美術関係、そしていかにもなそれっぽい音楽。これらすべてがオチのためのミスリードだというオタク魂が何とも心地よい。謎の設定が大風呂敷を広げすぎという気もするが、この作品では末節の問題です。また、それとは別に、村ができあがった理由についても、過剰な犯罪被害者保護の傾向への皮肉めいたものが感じられて興味深い。 [DVD(字幕)] 6点(2008-06-02 02:17:08) |
811. エディット・ピアフ~愛の讃歌~
伝記ものというのは、主人公のキャラクター性や展開のドラマ性が一定程度保証されているというアドバンテージを有しているはずなのですが、この作品は見ていて面白みがありませんでした。過去と現在の行ったり来たりは人生の軸をぶれさせていますし、ゆらゆら揺れるカメラも、かえって作品の焦点をぼかしています。何よりも、人間関係や事件関係にとらわれすぎて、歌うということそのものに対する彼女の喜び、誇り、哀しみ、苛立ちという感情がほとんど表現されていないのがよくない。 [DVD(字幕)] 4点(2008-05-29 23:34:37) |
812. 白いカラス
《ネタバレ》 過去と現在の重心の置き方が不安定、ホプキンス視点かと思っていたら突然第三者の作家の視点になる切り替わりも不安定、ホプキンスとキッドマンという不釣り合いな、かつ持ち味を生かすことのできないミスキャスト。せっかくの素材がぐしゃぐしゃにされています。これだけのキャストを入れておいて、みんなが同じような喋り方で同じような演技をしているのも不思議。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2008-05-23 02:38:33) |
813. ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女
《ネタバレ》 何よりも呆れたのは、主人公4人組が、最後まで、自ら何かをするということがなあんにもなく、成長もなければ挑戦もないということ。子供だから武力に劣るというのは分かるが、それなら知力とか技術とかチームワークでそれをカバーすればいいのに・・・。基本的に子供向けの作品らしいのですが、子供にこんなものを見せたら、他力本願の楽な道指向ばかりが強くなって、教育上逆効果だと思います。ビーバー夫婦に2点。 [ブルーレイ(字幕)] 2点(2008-05-20 01:11:28)(良:1票) |
814. レジェンド・オブ・ゾロ
《ネタバレ》 勧善懲悪ヒーローものとしては無難な出来。コメディチックな夫婦喧嘩の挿入も面白い。だけど、単に善が悪をやっつけるというだけなので、当然のことながら、話の深みは前作より落ちるかな・・・。見ているときは楽しいけど、後にはあまり残らない。 [DVD(字幕)] 5点(2008-05-19 01:55:41) |
815. チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
《ネタバレ》 予告編とキャスティングから、主演2人のハッピーでラブリーなロマコメを勝手に想像していた私がアホでした。主人公はアフガンの難民キャンプを見回って涙しますし、各地を駆けめぐって予算の確保に奔走します。基本的に真面目な作品です。ですが、全体的にあまりにもとんとん拍子に進んでしまうので、それはそれで拍子抜けしてしまう感じ。きちんとやろうとしたら、120分以上はかかるはずでしょうね。もっと、様々な立場の人たちのいろいろな思惑まで踏み込んで描いてほしかった気がします。 [映画館(字幕)] 5点(2008-05-19 01:40:22) |
816. SAYURI
《ネタバレ》 英語での会話ももちろんそうだし、言われなければ何時代のどこの話なのかもはっきりしない、セットもところどころ明らかに安っぽいなど、インチキくささ満載の作品なのですが、この作品はむしろそこを味わうべきかもしれません。ただし、形を作りあげて満足してしまったのか、人物描写の掘り下げにはまったく至っていません。戦前・戦中・戦後といろいろ展開していながら、壮大さや拡がりもあまり感じられないですね。演技面では、コン・リーの迫力にみんな押されてしまってるような感じですが、作中の台詞どおりに目に力のある大後寿々花は今後がなかなか楽しみ。この2人に5点。 [DVD(字幕)] 5点(2008-05-15 02:31:02)(良:1票) |
817. チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
何というか、人にものを見せるんだったらもっと真面目に作ってほしい。お馬鹿映画でもそれは同じ。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2008-05-07 02:15:41) |
818. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
《ネタバレ》 最初の15分間で、下積み時代の孤独な発掘作業をすべて表現している手腕は見事。また、その後も、画面内に余計なものを登場させず、ひたすら荒涼たる平原での地味な発掘をじっくりと見せてくれる。ダニエルの表現力、存在感は、いささかも低下することはなく、150分以上ほとんど出ずっぱりながら、テンションがまったく途切れていない。他方、ポール・ダノは良い俳優だとは思うが、ダニエルとの完全一騎打ちバトルというのはさすがに荷が重かったのではないか。主人公の静かなる狂気に対抗し、これを裏打ちするためには、神父もまた別な方向からの狂気を示していなければならないが、そこまでは遠く到達していなかった。 [映画館(字幕)] 6点(2008-05-06 04:43:07) |
819. ヴェロニカ・ゲリン
《ネタバレ》 このような強靱な意志と前向きな目的のある主人公をケイト・ブランシェットに演じさせれば、それだけでつまらなくなるわけがありません。警察や勤務先で何か言われたときにさっと切り返すときの表情もいいし、撃たれたり殴られたりしたときの弱気オーラの表現も見事です。ただ、93分はいかにも短すぎですね。特に序盤の進行がえらく速く感じます。ケイトももっといろいろ演技したかったのではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-05-03 02:22:20) |
820. シャーロット・グレイ
《ネタバレ》 フランスでのレジスタンス戦線という素材に着目し、しかもせっかくケイト・ブランシェットの起用に成功したんだったら、女性戦士としての訓練なり闘争の場面を存分に入れて、素材描写の価値を高めることはいくらでも可能だったはず。しかし、この作品では、中途半端にロマンスっぽい雰囲気とか子供とのやりとりとかに浮気しているため、全体の軸が崩れかかってしまっている。終盤の、屋敷内でドイツ軍兵士に銃を突きつけるケイトの表情などはものすごいものがあったので、こういう場面をもっと見たかったと思うのだが。そもそも、レジスタンスを描写の対象としていながら、作戦内容とか指示系統などのディテールにふれていないので、その点からも説得力に欠ける結果となってしまっている。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2008-05-02 04:07:50) |