801. 奇跡の人(1962)
《ネタバレ》 小学校低学年の頃だと思いますが、日曜洋画劇場で見たのが最初。そもそもなんで見ていたのかよく覚えていませんが、とにかく引き込まれて目が離せません。時間を忘れて見入っていました。途中のCM中にふと気がついたら、私以外の家族は翌日に備えて布団の中。しかし今さら寝ていられないと、最後まで見通しました。あの「ウォー」の場面では大感動。やはり、見ていてよかったです。おそらく、映画を見て感動したのはこの時が初めてでしょう。振り返ると、その後洋画劇場をさかんに見るようになり、中学時代は「ロードショー」誌を愛読し、今ではこんなサイトに投稿しているのも、あの時の感動があったからだと思います。私にとっての映画の原点であり、決して忘れることのできない一本です。 久しぶりに見ましたが、わかっていても最後は感動します。私は映画やドラマを見てもまずほとんど泣かないのですが、今回は涙があふれてきました。まだまだ自分も感受性が鈍っていないと自画自賛。誰が言ったのか、「人は人間として生まれるのではない、人間になるのだ」という言葉がありますが、まさにそれを表した映画です。人間らしさとは何なのかという大きな問題を、重くなりすぎずに提示している名作。 [DVD(字幕)] 10点(2010-09-22 21:12:12)(良:1票) |
802. マーティ
《ネタバレ》 これはよかった。誠実な男女の出会いを描く一方、子供の結婚によって孤独となる親の問題を扱っていて、現代でも十分通用するところがあります。晩婚化が進んでいるのでなおさら。普通のカップルが登場するだけなのに、これほど魅力的な物語が展開するとは、まさにマジック。アーネスト・ボーグナインといえば、こわもてのおじさんというイメージがありますが、まったくちがった役で意外性があり、しかもぴったりはまっています。適度にユーモアもあって楽しめます。知名度は低いと思いますが、隠れた秀作ですね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-21 19:53:46) |
803. アガサ/愛の失踪事件
ダスティン・ホフマン演ずるアメリカ人記者が気取った成り上がり者という風情で、どうにも魅力に乏しい。かといって、アガサの意図するところは秘密にされているので、こちらにも共感できない。結局どっちつかず。アガサのどこに惹かれたのかも不明確。終始退屈で、DVDが発売されないのも道理です。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-09-20 17:07:10) |
804. 終着駅 トルストイ最後の旅
《ネタバレ》 ラスト、走り去る汽車を見ながら思った。ソフィアはきっと、夫には自分だけの人でいてほしかったのだろうと。しかしロシアの宝となり、トルストイ主義の「教祖」に祭り上げられた今となっては、それもかなわないこと。であっても、自分ひとりの夫でいてほしい。これはたいへんなワガママなのでしょうが、考えてみると一人の人だけを愛するというのはワガママなことなのかもしれません。してみると、トルストイは「すべての宗教に共通するのは愛だ」と言っていましたから、宗教というのはたいへんワガママなものということになります。宗教の間で争いが絶えないはずです。 それはともかく、いまわの際にトルストイが求めたのはほかならぬ妻であり、彼もこの時ばかりは公人の立場から逃れて一人の人間に立ち戻れたようです。であれば、これはハッピーエンドの映画ということになるのでしょう。 もともとトルストイにあまり関心はなく(それでも『戦争と平和』と『復活』は読んだ)、ヘレン・ミレンが出ているということで見たのですが、期待に違わぬ芝居を堪能できました。トルストイ役のクリストファー・プラマーも枯れた演技で、臨終の場面など妙にリアルでギョッとします。ジェームズ・マカヴォイは前半の妙にオドオドしたところがはまっていました。チェルトコフをあからさまな悪役に描いていたのは適切かどうかわかりませんが、映画としてはなかなかよかったと思います。 [映画館(字幕)] 7点(2010-09-19 17:20:11) |
805. 戦場にかける橋
《ネタバレ》 これは、ニコルスン中佐のキャラクター作りがすべてでしょう。この方、相当イギリス人としてのプライドを持っていて、正直アジア人を見下している。だから日本の捕虜となっても、自分(たち)の方が優秀であるという信念を捨てない。ジュネーヴ条約を盾に取っていますが、実のところ日本人から高圧的に命令されるのが嫌なだけで、その証拠に自分が指揮を執って期日に間に合わないとなると、将校に仕事をさせるし傷病兵も駆り出す。橋を造る会議の時も、全部自分たちで仕切って斉藤大佐たち日本兵は聞いているだけ。そうやってイギリス人の優秀さを見せつけようとしたあげく、目先のことだけにとらわれて大局をを見失ったわけです。戦争にあっては、個人のチンケなプライドなどたいして意味をなさない。捕虜になればなおさら。まさに戦争は“Madness”であります。 少々長いですが、前半のニコルソン対斉藤、中盤におけるシアーズの立場の変化(けっこう笑える場面が多い)、終盤でのジャングル進行と、それぞれ見どころがあって飽きませんでした。特に日本兵に見つかって追跡するところは、サスペンスもありよかったです。しかしいずれにせよ、列車が来るまでの10分間が見ものであることはたしかです。 [映画館(字幕)] 8点(2010-09-17 19:54:10) |
806. ナイル殺人事件(1978)
《ネタバレ》 久々に見ましたが、伏線の用意周到ぶりはお見事。たとえば、ジャッキーがリネットにサイモンを紹介するとき「私と同じで貧乏」と言ったりとか。トリックも大胆で素晴らしいし、船上の殺人というのも、ある程度必然性が感じられます。ただ、狭い船の上とはいえ、2度とも殺人を目撃されるのは、できすぎという感じ。アンジェラ・ランズベリーがエキセントリックな役を演じていますが、全然笑えない。ベティ・デイヴィスとマギー・スミスの有閑コンビがかなりおかしかった。他の容疑者はおおむね印象が薄く、健闘していたのはオリビア・ハッセーくらいでしょうか。あと、ピーター・ユスチノフはポワロにしては恰幅がよすぎます。そんなこんなで、悪くはないけど『オリエント急行』よりは数段落ちます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-15 19:17:37) |
807. さらば友よ
《ネタバレ》 いいですね。男同士の友情物語に、ミステリーのからめ方がうまい。序盤の2人の出会い、中盤での地階でのやりとり、終盤では真犯人捜しと、いろいろな面で楽しめます。まあ、債券をわざわざ金庫に戻すという時点で、おかしいとは思いましたが(どこかに隠して、場所を教えればいい)。しかし「ワーテルロー」にはやられました。良質なミステリーは、こういう細かいところが面白いです。2人を引き立てる警部の助演ぶりが渋い! [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-13 20:43:54) |
808. ミス・ポター
《ネタバレ》 なかなかの良品でありました。絵本作家としての思い、恋愛と両親との対立、ミリーとの友情、乱開発への反対などが、無理なく収められています。時間が短いこともあってやや薄味ですが、個人的にはあまりしつこくやられるよりはよかったですね。サクサクと話が進むので、ストレスを感じることもありません。主演のレネー・ゼルウィガーが決して美人ではないことが、本作ではプラスに働いたと思います(実際のビアトリクス・ポターは、才色兼備だったそうですが)。ミリー役のエミリー・ワトソンも好演で、間にはさまれたユアン・マクレガーは少々旗色が悪いですね。最後はずいぶんとあっさり終わりましたが、ノーマンとの恋愛が軸なので正解でしょう。駅でのキスシーンが印象的でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-12 11:53:52) |
809. サイコ(1960)
《ネタバレ》 この映画ではシャワールームや最後の地下室のシーンが話題になりますが、今回見て面白かったのは、マリオンが逃亡中社長に見られちゃうところから、ベイツ・モーテルにたどり着くまでです。特にあのグラサン警官の撮り方といったら、もう絶品。ヒッチコックの巧さが十分堪能できます。雨が降る中、口をひん曲げながら運転するジャネット・リーも、ナーバスな犯罪者の様子をよく表しています。後半はややトーンダウンするのですが、その代わり話をバンバン先に進めてしまうのも、いいやり方だと思います。 怖いかどうかで意見が分かれているようですが、これは見終わってから怖くなるタイプですね。ちょっと変わっているものの、一見すると人畜無害な青年であるノーマンが、実はサイコな殺人者であったということ。異常な人間が正常な人間に紛れて、自分の隣にいるかもしれないという恐怖があります。だからこそ、この映画を見たあとシャワーを使うと、たとえ自宅であっても後ろを気にしてしまうわけです。そういう理性に訴えかける恐怖なので、エモーショナルなものを期待したら、当てが外れるでしょう。物陰に隠れていきなり脅かすような、お化け屋敷ふうの恐怖を描いているわけではないのです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-10 20:17:55)(良:3票) |
810. きな子~見習い警察犬の物語~
実は題名に偽りありで、見習い警察犬ではなく、見習い警察犬訓練士のお話。要は若者の成長物語で、黄金パターンの展開。まったく予想通りの筋で、意外性はまったくありません。ここまでパターン通りだと、ある意味あっぱれ。しかし、番場ファミリーはなかなかいい味を出しています。この一家を含め出演者はそれぞれ好演ですが、肝心の夏帆ちゃんにはもっと頑張ってほしかったところ。また、終盤を除いてむりやり盛り上げようとするところがなかったのも、好感が持てます。主人公が熱血していないところが今風でしょうか。警察犬の訓練士を取り上げたところは新しいと思いますが、訓練の場面があまりなかったのは残念でした(差し障りがあるのかも?)。私が見たときは家族連れや高齢者が多かったのですが、ファミリー向けでしょう。 [映画館(邦画)] 7点(2010-09-08 18:19:55) |
811. 地球の静止する日
《ネタバレ》 スチル写真でゴートやクラトゥは見慣れていますが、映画自体を初めて見ました。宇宙船やゴートはデザインがシンプルで、ゴテゴテしているより未来性を感じさせます。手をかざしただけで始動するというのは、製作時期を考えればすごいアイデアなのではないでしょうか。ロバート・ワイズの演出がリアリスティックでいいし、バーナード・ハーマンの音楽もこの手の作品に合っています。ストーリー自体は、クラトゥが地球人に紛れたりと意外な方向に進みました。まあ「フムフム」と見ていたのですが、最後のクラトゥの演説に至ってずっこけてしまいました。 「地球人がこちらの平和を乱すのなら徹底的に潰す」みたいなことを言っていますが、平和平和と言っても戦闘行為自体を否定しているわけではないようです。むしろ相手に攻撃させないため、相手よりも強力な戦闘力を所有することが必要だという考えに聞こえます。核兵器の抑止力に関するクラトゥ氏の意見を聞いてみたいところですね。結局、アメリカ人の思考回路は、当時からほとんど変わっていないのでしょう。いまだに拳銃所持に対する規制をまったく行わないお国柄ですから。なんにせよ、強力な戦闘力を背景に相手を恫喝するような行為は、気分が悪いです。実際問題として、絶大な力を持った存在がにらみを利かせれば、下手な争いは起こせず平安な時期が続くでしょう。しかしそれが、クラトゥ氏が感銘を受けた「人民の、人民による、人民のための政治」といえるのか。いろいろと考えさせられるところがありました。平和の使者であるような顔をしながら、最終的には軍事力に頼る。いかにも東西冷戦時代のアメリカが作った映画、という気がします。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-09-07 19:42:03) |
812. 大脱走
《ネタバレ》 こどもの頃テレビでよく見ました。改めてスクリーンで見られるのは、たいへんありがたいことです。脱走劇よりも捕虜同士の友情物語という側面が大きかったように思います。特に前半でのヒルツとアイヴィスはポイント高し。あと出番は少ないのですが、所長がいいキャラクターをしてますね。非常に印象的でした。物語としては長いはずですが、長さを感じないのは人物設定と各俳優の芝居のおかげでしょう。うまくはまったキャスティングがお見事。 [映画館(字幕)] 8点(2010-09-06 21:57:27) |
813. 深く静かに潜航せよ
《ネタバレ》 対戦相手が日本軍ということで複雑な思いもありますが、ゲイブル/ランカスターのコンビは強力。ストーリーもテンポよく、特に潜水艦同士での位置の探り合いはサスペンスもあって引き込まれました。ほとんど視覚の使えない潜水艦で、センサーがいかに重要かが改めてわかります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-05 16:44:03) |
814. 第十七捕虜収容所
《ネタバレ》 この監督らしく、ユーモアがあり各人物も個性的で、複数のエピソードを飽きさせることなく見せてくれます。スパイ捜しかと思いきや正体は勝手にわかり、唯一正体を知るセフトンを中心としたサスペンスになりますが、これが利いている。元々舞台劇だったということで動きは少ないのですが、それが気にならない面白さ。ただ、まとまりがよすぎて今ひとつこれというポイントに欠ける憾みがあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-02 21:14:22) |
815. パピヨン(1973)
《ネタバレ》 これは凄い。中身も凄いけど、それを映画にしたというのも凄いです。時間と金と人をふんだんに使って、凄いドラマが展開されます。人間の崇高さと醜さを共に描いて、余すところなし。特にあの修道女はキツイなぁ~。ただ後から考えると、脱獄囚をかくまったと知れたらどうなるかわからないというところも、あったのかもしれません。それだけあの監獄が恐ろしいということですか。さすがにちょっと長いという気がしたので、その分マイナスです。しかし映画好きなら、一度は見ておきたいと思わせる作品でした。 [映画館(字幕)] 9点(2010-09-01 18:29:52) |
816. 続・忍びの者
話の進行に無理がない分、1作目よりいいと思います。特にクライマックスは、やはり見ごたえあり。ただ、忍者の非情さについてはやや薄くなったかと思います。そのため、人によっては1作目の方を高く評価するかもしれませんね。完全に話がつながっているので、前作から順序立てて見るのがおすすめです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-08-31 18:07:40) |
817. 忍びの者
《ネタバレ》 題材としては面白いし、わりとリアルなアクション場面など見るところもありますが、物語の進行が早すぎ。なんでこうなるんだ? というところもあって、よく言えばテンポがいいのですが、もう少し経緯を説明してもらいたいところです。すぐ死ぬ猛毒のはずが、信長が助かっちゃうのもなんだかなぁ。最初は頭領になると張り切っていた五右衛門が抜け忍になるのは、結局女にうつつを抜かしたからで、あまり同情できない主人公です。そのあたりに現代的な視点をいれたのでしょうが。皆さんおっしゃるように、伊藤雄之助・加藤嘉・西村晃など脇役が非常によかった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-08-30 19:26:03) |
818. サンシャイン・クリーニング
《ネタバレ》 本来姉が主人公なのでしょうが、ノラの方がいいキャラをしてますね。ただ、自分の責任で借金ができたんだから、旅に出ないで働けよ~と思いますが。過去に囚われてしまった姉妹が、清掃業を始めるというのがいいです。あったことの痕跡をすべて消してしまうことに対する疑問。過去へのこだわり。ローズはなんとか乗り越えることができたようですが、さて妹は? 登場人物の「その後」が気になる作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-08-24 19:43:48)(良:1票) |
819. 四谷怪談 お岩の亡霊
《ネタバレ》 なかなかのできでした。本作の伊右衛門は、自分のために利用できるものは利用する、邪魔なものは排除する、幽霊が出てもかなり冷静に対処し、あくまで実力で対抗しようとするなど、現実主義のところがあります。非情にしてニヒルですが、伊勢屋の跡継ぎの話を断ってあくまで仕官を望むなど、侍としての矜持も忘れてはいません。そんなところから、どこかハードボイルドなところが感じられます。ある意味現代的と言えるでしょう(もちろん、製作された時点での現代ですが)。本作は四谷怪談の映画としては後発ですから、こうした味付けが出てくるのでしょう。そんな伊右衛門に佐藤慶はよくはまっていました。与茂七は出番が少なく、直助が最期にいいところを持っていったこともあって、印象が弱くなってしまいました。実際、本作での佐藤慶と小林昭二は、かなり存在感が大きいです。この2人を見る映画ですね。 [地上波(邦画)] 7点(2010-08-23 22:30:01) |
820. 地下室のメロディー
《ネタバレ》 少々期待はずれでした。序盤とか金庫破りを実行するところはよかったですが、中盤でだれました。ちょっとドロンだけでは保たなかったか? また、2大スター共演といっても、ギャバンが立てた計画をドロンが実行するということで、上下関係は明らか。対等の立場の方が面白くなると思います。最後は、あのシーンをやりたいがために無理な展開になってしまいましたね。事件の直後に警察が到着したのだから、事情聴取は終わっているはず。もう一度話を聞くにしても、適当な部屋で行うのが常識的でしょう。要するに、関係者があんなところをウロウロしているのが不自然です。それで全部ぶちこわしになってしまったのは、かえすがえすも残念です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-21 22:04:49) |