821. 秋刀魚の味(1962)
《ネタバレ》 50過ぎて同窓会に来られる人ってのはある程度の人生の成功者なわけで(来られない人にこそ様々な人間模様やドラマがあるのだろうが、この監督はそういう事には興味はないのかもしれない)。そんな中にも若い奥さんもらった同級生がいたり、恩師が行き遅れの娘と同居してラーメン屋やってたりと、いろいろと違いや差が出てくる。主人公は艦長まで勤めたエリート軍人なのだろうが戦争には負け、妻を早くに亡くしているが、子供3人には普通に育ち、孫は居ないが1人は結婚してるし、そんなに悪くもない人生。それでも他人が気になって、あわてて娘を嫁に出したものの迷いがあったり、他方バーの若い女が気になったりと、結局は他人との比較でしか自分の人生の良し悪しを測れない高齢者入りする戸惑う男の哀しみは程よく描かれている。自分の社会的引退と共に高度成長入りしていく社会とが調度交錯していく時代の変わり目の一瞬を切り取った作品であり、50年以上経過した日本の価値観や時代背景、視聴者の世代や環境によっては中々理解し難い所もあるのかなとは思う。 [DVD(邦画)] 6点(2016-03-08 14:12:22) |
822. 34丁目の奇跡(1994)
《ネタバレ》 流石にリメイクの方が洗練されている。が、子供を使った安易な決着の付け方という偽善的な部分は残っているので、存在証明としてホンキの神学論争をより深く展開したらさらに面白くなったような。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-03-08 11:35:04) |
823. お早よう
《ネタバレ》 これは中々ヒネリが効いていて、風刺も感じられるのだが、ちょっとツッコミが甘かったのでサラリとしすぎているというか。あえてそういうテイストを狙っているのかもしれないけど。まず、挨拶ってのは子供から見たら無駄に思えるのでしょうけど、大人にとっては重要な事ではあります。が、他方「挨拶は殺人の始まり」とも言えるわけで、人付き合いの難しさはそこにあるわけです。子供たちはオナラしたり、アイラブユーとか平気で口にしたり、頭にくれば口をキカナイという裏表のないホンネ100%で生きてるわけですが、大人達はホンネとタテマエを使い分けて、どうにかうまくやろうとする。でも、そこには誤解があったり、疑心暗鬼があったり、真意が伝わらない等々のすれ違いやギャップがある。そういう世代間や家族・近所・男女のコニュニケーションの距離感やあり方、そして危うさについて表現したかったのでしょうけど、登場人物が多くて話が発散してしまった。ラストはキレイにまとまってますけど、もうちょっとグサっとしたものがあってもよかったなあという気はします。 [DVD(邦画)] 6点(2016-03-07 14:15:54) |
824. 序の舞
TV版で30分程度カットされているせいか、上村松園の人生をナゾッタだけのダイジェスト版のようで、深みが感じられなかった(たぶんエロシーンが大幅カットされているような)。母親側には所謂女として自由に生きられなかった毒母的怨念みたいなモノがもっとあってよかったし、名取裕子も環境に振り回されてばかりで、上村松園の持つ芯の強さのようなモノが感じられなかった。もっと「戦う女」を前面に押し出してもよかったのではないか。『焔』の創作シーンはおそらくフィクションだろうし、映画とは言えこれはちょっとヤリスギだなあとシラケテしまう所もあった。現代の価値観から当時の女性活躍難しさを推し量る事は困難ではあるが、この辺はもっと大胆にやってもよかったのでは。と言えるのも2016年から1984年を論じているに過ぎなくて、84年当時としてはこれでもよくやっている方なのかもしれないが。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2016-03-07 10:16:31) |
825. カトマンズの男
中身のないただのドタバタコメディーなのだが、笑うというよりも、よくやるよなあと呆れるというか感心するというか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-03-04 10:58:11) |
826. 寒椿
原作未読なのでどこまで改変されているのか不明だが、いろいろと難のある作品ではある。宮尾登美子は女の生き様を描く作家のハズだが、西田演じる女衒の存在がデカクなってしまい、誰が主役かわからない中途半端な作品になってしまった。ラストの殺陣は降旗ならではで、五社ならこうはならなかっただろう。少年のナレーションも不自然だし、全体的に出来損ないの東映ヤクザ映画的だし、配役もミスキャストで、西田は硬軟使い分けて熱演していたとは思うが、やはり過去に見てきた緒方や仲代に比べると違和感はぬぐえない。ナンノも文芸向きではなくミスキャストだし、適役だったのはかたせ梨乃ぐらいか。で、結果として見るべき点はナンノの貧乳だけになってしまったような。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2016-03-04 09:52:55) |
827. 娚の一生
榮倉奈々は好きな女優なので最後までナントカ見る事はできたが、ストーリーはどうしようもない。まず、榮倉奈々が不倫に疲れた女には見えない。そして、豊川悦司もキャラ作りに無理があり、演技が不自然。そもそも人間の生活・暮らしなど、どうしようもないモノではあるのだが、それをダラダラと映像化・作品化されてもなあという印象。田舎町の生活の雰囲気は出ていたが。現実逃避願望のある女性向けかな。 [地上波(邦画)] 4点(2016-03-03 15:49:58) |
828. 陽暉楼
女を撮るのはウマイと思うんだが、池上季実子は華がないし、浅野温子は文芸向きではないし、キャストがイマイチかな。AKBのような集団モノとして見るしかないのだろうけど。そもそも必要なのかと思われる恋愛部分の描き方が中途半端で「女の生き様」というテーマが弱まってしまったような。男の方は全体的に存在感が薄く、緒形拳には凄みは感じるものの扱いが中途半端。原作をかなり改変して脚本を弄ったようだが、結果、物語があるようで無いような映像で魅せるだけの作品になってしまい、『鬼龍院花子の生涯』と比べてしまうと面白みはない。昭和初期の時代背景、高知の雰囲気は味わえる。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2016-03-03 12:19:07) |
829. 小早川家の秋
《ネタバレ》 「ああもうこれでしまいか、もうしまいか」については最近よく考える。どんな生き方をしようとも、これが人間最後の本音だろう。「ついに行く 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを」の世界観。娘たちが好きなように生きていく事を決心するラスト。父親の精神は受け継がれている。死んだらしまいではあるのだが、受け継がれるモノがある事が救いではある。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-03-01 11:24:08) |
830. 河内山宗俊
80年前という時代性、80年という時代経過をどう考えるか。若い監督が80年前に作った作品と考えれば評価すべき点もあるのだろうが、そういった事情を抜きにすると、正直言って「色褪せている」と感じた。そもそも台詞が聞き取りにくいのでストーリーの詳細がよくわからない。これは仕方のない事なのでTV放映時には字幕を付けるべきなんだろう。あとは役者の演技や所作だがコントっぽい(あえてそうしているのか?ならラストへの展開が腑に落ちない)印象で、やっぱり古臭くて見ているのがツラかった。若い原節子にも魅力は感じない。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2016-03-01 09:27:57) |
831. 許されざる者(2013)
《ネタバレ》 復讐は、1、両者で和解してどちらかが謝罪・補償するか、2、第3者が介入して裁くか、3、どっちかが死ぬ のどれかで決着がつくまで続くわけですけど、原則として3は避けなきゃイカンわけで。この時代背景・場所柄?で1,2が機能しなかかっための3ではあるのでしょうけど、新政府・旧幕府とか、アイヌの民族とか意欲的なのは理解しますけど、少々盛り込みすぎで設定に少々無理があったかな。結果的に「許されざる者」としての教訓というかメッセージが弱かったように思います。雄大な風景はよかったですけど、とってつけたようなポット出のセットはちょっとショボイかな。さらには、村人と官憲の数が同じぐらいってのもどうなのかと。 [地上波(邦画)] 3点(2016-02-29 15:52:12) |
832. 鬼龍院花子の生涯
《ネタバレ》 まず大前提として、ヤクザと侠客は違います。一応、鬼政は自称侠客。でも、ちょっと単純かつ天然系で、よく言えば純粋で正義感もある。だから労働組合とも愛称がいい。そもそも侠客って本来左翼的なハズだし、だから東映任侠モノは学生運動のヒーローだったわけだし、この組み合わせは興味深く感じた。もっと2人の関係を深堀してもよかった。侠客の娘が労働運動に傾倒する男の妻になるのは、ある意味必然であり、松恵が2人を繋ぐキーパンであるべきなのだが、この辺の関係性の描き方がちょっと弱かった。原作未読だが、どうやら松恵は狂言回しで花子をとりまく人々の物語という構成のようなので、松恵の父と夫の3人が軸とならずに、結果的にこうなってしまうのは仕方のない事ではあるが、脚本はもっと改変してもよかったのではないだろうか。が、夏目効果で映画がヒットしたという事は宣伝が上手かったのだろう。 役者は皆すばらしい(子役の仙道敦子も夏目雅子に引けを取らない)のに、花子役だけは受け入れ難い。どうにかならなかったのだろうか。今となっては本来中心人物である花子が空虚な存在感のない人物になる事によって、うまい具合に「花子をとりまく人々の物語」となっているとも言えるのだが、制作当時その意図があったのだろうか。実話をベースとした話のようだが、松恵の父と夫の3者3様の正義のあり方に信念を貫き通す事による滅びの美学もあるし、3人に関係するその他の人々にも人間ドラマを感じる事はできた。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-26 13:59:19) |
833. 銀の匙 Silver Spoon
《ネタバレ》 設定にヒネリはあるものの、ストレートな青春映画で爽快感はある。逆に言えば、登場人物が皆善人ばかりで、少々退屈な所もある。主人公にもう少し影や屈折した思いがあってもよかったし、酪農やりたくないのに無理に学校に来てる子とか居てもよかったかな。あと映画の締めとして、父子の和解はしっかりと描いて欲しかった。ちょっとサラリとしすぎ(原作にはもうちょっといろいろあるのかもしれないが)。何度か出てくる「経済動物」という業界用語?については考えさせられた。別に食用だけでなく、ペットや動物園も経済動物だし、従業員を家畜扱いする経営者によって過酷な労働を強いられ心身を病んでる人間だって経済動物だと言えるのかなと。 [地上波(邦画)] 6点(2016-02-26 10:37:08)(良:1票) |
834. 藏
肝心要の烈役が、子役がダメだし、一色紗英も大根で顔も文芸向きじゃないので、主人公の苦悩・奮闘が伝わってこない。本来は宮沢りえだったのが急遽代役になったようだが、もうちょっとキャスティングをどうにかできなかったのだろうか。原作未読だが、脚本は悪くないし、映像は雰囲気出ていたし、他の俳優陣(かなり豪華)の演技はよかっただけに残念。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2016-02-25 15:40:53) |
835. おろしや国酔夢譚
原作未読。これだけ壮大な話を2時間でまとめるのは無理があり、その点で評価が下がってしまうのは仕方ないが、それでも光太夫たちの過酷な各々の人生模様のようなモノは十分に伝わってくる。運命を受け入れつつ、人生を選択していく事の困難さについても考えさせられる。単なる歴史モノに留まらない、雄大かつ深遠な人間ドラマ作品に仕上がっていると感じた。できれば大河ドラマか、少なくとも4~5時間ぐらいの長編で見てみたい。誰かリメイクしないかな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-02-25 11:26:47) |
836. 江戸城大乱
太平の時代に跡目争いの陰謀アクションを製作してしまうと、どうしても無駄な殺人シーンが多くなってしまい、結果的に史実からかけ離れてしまって、「そりゃないでしょ~」という作品になってしまう。でも、自分も史実に詳しいわけでもないので、「こんな事あるわけね~だろ?」とツッコミながら、自分でいろいろと調べるようになるので、勉強するキッカケにはなるかな。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2016-02-24 12:08:26) |
837. フィラデルフィア・エクスペリメント(1984)
実話?をベースとした設定は中々面白いのだが、肝心の40年後の世界の物語が薄く、正直どうでもいい実験云々の描写が長いのが残念。牧場のシーンはもっと掘り下げて欲しかったな。タイムスリップモノは基本的に大目に見て楽しみたいのだが、それでも作りはかなり雑に感じる。人生80年と考えると、40年前、40年後って微妙なスパンで、人生の折り返し地点にいる自分自身についてもいろいろと考えさせられてしまった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-02-18 11:57:52) |
838. コマンドー
たぶん昔見たような気もするのだが、中身は全く覚えてなかった。この頃はスタローンの二番煎じみたいのが出てきたなあという印象で、あらすじ見てもランボーぽいのかなと思ったら、肉体推しオンリーで想像以上に軽くて中身がない事に驚いた。音楽・テイストが80年代米映画という感じで懐かしくもあり、シュワルツェネッガーはバブル時代ど真ん中の思い出深い俳優ではある。(その後、まさか政治家になるとは思わなかったが) [CS・衛星(吹替)] 5点(2016-02-18 10:15:22) |
839. ハンター(1980)
《ネタバレ》 子供の頃にTV放映で何度か見てよく覚えている作品。電車のシーンとか、蜂の巣型の駐車場から車が川に落っこちるシーンとか。シカゴで実物を見た時は感動しました。でもイチバン覚えているのはラマーズ法かな。子供ながらに「ヒッ・ヒッ・フー」の呼吸法には違和感があったし。その後は結局定着しなかったんですかね? マックイーンは子供の頃好きでよく見ていましたが、これが遺作で50歳で死んでいたという事は知りませんでした。名優の作品は遺作効果で評価もいろいろなんでしょうけど、余命わずかで死を覚悟し撮影に臨んだ作品と思えば、作品としてはちょっとアレでも、子供の頃の思い出深い作品でもありますし、点数はカサアゲしてしまいますね。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2016-02-17 10:58:40) |
840. トラック野郎 度胸一番星
《ネタバレ》 桃次郎との結婚が決まったマドンナが死んでしまうという脚本はいかがなものか。だから、ラストの疾走へのつながりがなくなってしまい、タヌキが助手席というのも違和感があり、どうなのかと。原発反対派がカネで賛成派に迎合していくシーンは今見ると感慨深い。それにしてもつくづく思うのは、トラック野郎はテーマが「反権力」なんだよな。只管己の主義主張のために警察権力に逆らう。文太が晩年に反原発運動に加担したのも何かの因縁を感じる。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2016-02-16 14:22:40) |