841. 処刑人
冒頭の教会シーンが異様に意味深なんだけど、てっきり過去に何かがあって何かを成し遂げようとする兄弟の話なのかと思ってたら全然違った。うーん、この教会のシーンはいったい何だったんだ?頭の切れるFBI捜査官のデフォーが殺人現場からプロファイリングしてゆく過程で、我々も殺人シーン(というよりアクションシーン)を見てゆく。そこでそのガンアクションのかっこよさとデフォーの頭の切れっぷりを同時に堪能する。さらにやりすぎデフォーに大笑いする。銃撃戦再現シーンのデフォーは完全に『プラトーン』のセルフパロディでしょ。女装は衝撃。何が衝撃って見た目の強烈さもたしかに衝撃なんだけど、何よりもその必然性の無さが衝撃的。笑うところなんだろうけどあまりに気持ち悪くて半笑いだし。予想とはずいぶんと異にする展開の作品でしたがじゅうぶん楽しめました。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-08 14:32:53)(良:1票) |
842. バッテリー
岸谷五朗と天海祐希の親二人のリアクションがいちいちクサくて冒頭からひきっぱなし。お話自体もかなりクサイんだけど、こういうのもたまにはいいかとギリギリ思わせてくれたのは、たぶん主人公の王子様ルックな顔立ち(両親のどちらにも似てなさすぎ)と汗臭いイメージの野球との実に魅力的なアンバランスさに意識がいってたってのもあるだろう。ど田舎の風景にも不似合いなこのキレイな顔の少年の、一人だけ浮いてる(馴染まない)存在は、偶然にも(?)主人公の劇中の浮いた存在にもリンクするのだが、そのことを度外視しても、この浮きっぷりはちょいと面白い。と、思って見てたのに、大人が出てくるとやっぱり異常にクサくなる。最後はそこまでクサくしますか!寒すぎる。原作未読です。 [DVD(邦画)] 3点(2008-02-07 12:54:23)(良:1票) |
843. ゆれる
兄はこういう人物である、あるいはそうあってほしい、あるいはそうに決まってる。信頼と嫉妬によって作られる願望と偏見。思い込み、思い違い、記憶違い、主人公である弟から見たドラマが主人公自身の曖昧な記憶をもって、地味なドラマにミステリアスな装いをかぶせる。とはいってもやっぱりミステリアスな展開が全て弟の心情からくるものでしかなかったのだと解かるラストあたりでは、正直、「ずるいなあ、この展開」と思ってしまった。ま、「ずるいなあ」の中には「うまいなあ」ってのも含むんですが。ただ、いくら主人公から、つまり弟から見たドラマとはいえ、兄の心情が実に曖昧でその曖昧さが一見作品の魅力にもなってるようでもあるのですが、個人的にはどうも腑に落ちん。心の中という実に曖昧なものを説明を排除して見せてゆくんだけど、けして映像で見せるのではなく過剰な表情で見せてゆく。気持ち悪いくらい過剰なのにけっきょく何考えてんだかよくわからんってどうなのよ。どうとでもとれる表情を過剰にするって、変じゃん。 [DVD(邦画)] 4点(2008-02-06 11:32:44) |
844. 手紙(2006)
差別は当たり前。危険な情報を得れば当然防衛本能が働き、危険と思われるものとは距離を置きたいと思うのも当然。だから差別は当たり前。どこに逃げてもダメ。危険ではないと判断してもらうにはそこで踏ん張る。そこで理解してもらう。そうやって時間をかけて理解してくれる人間を増やしてゆく。・・・まあ、セリフで言わないとなかなか伝わらんわなあ。マジメに丁寧に作っているのはわからんでもないが、メッセージを間違いなく伝えようとすることに最も力が入っていて、けっきょく一番安易な方法を選んでしまった作品。いや、はなからこの安易な方法しか頭に無いか。あと、沢尻エリカ、、演技は若手ナンバー1なのは間違いないだろうことはよーくわかったが、前半と後半と別人になっちゃってるじゃん。時間の経過とか環境の変化とか成長とか垢抜けたとかじゃなく、あれは別人。もちろん彼女が悪いんじゃなく監督が悪い。 [DVD(邦画)] 3点(2008-02-05 11:08:01) |
845. ブルース・ブラザース
レイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、ジェームズ・ブラウンという大御所くらいしか知らない、はっきり言ってこの手の音楽ジャンルが趣味でない私でもそれなりにノレてしまうのだから、R&Bに精通した人ならたまらんでしょうねえ。実はこの映画を音楽映画として観たことがなく、ひたすらおバカなコメディとして観てずっと満足していたのだが、今観たら、歳の功ってやつで音楽映画の部分も楽しめるような気がする。なんとなく。最後に観たのもずいぶん前なのだが、ド派手なカーチェイスや高速道路からの落下中の告白の面白さも印象に強いんだけど、一番印象的、というかむしろ私にとっての今のところの『ブルース・ブラザース』ってのはジョン・ベルーシとキャリー・フィッシャーの恋物語なのだ。かなりシュールだけど。ここでのキャリー・フィッシャーってばレイア姫よりもずっと謎に満ちてて、それでいてストレートな眼差しがキュートで、出演時間はけっこう短かったかもしんないけど、彼女の演じた役柄の中ではダントツで好き。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-02-04 15:30:10) |
846. 間宮兄弟
兄弟が休みの日に昼寝をするシーンにヘリコプターの音が被さるというのはあきらかに森田監督自身のヒット作『家族ゲーム』のパロディ。弟のお菓子や笹かまぼこの食べ方も『家族ゲーム』での伊丹十三の目玉焼きチューチューを彷彿させる。その家族(兄弟)にとっての日常を繰り返される画で見せてゆき、その一見特異な日常が実は現代の日本の文化の縮図的に描いてみせるそのやり口を見てもこれは現代の『家族ゲーム』といえる。異なるのは『家族ゲーム』は社会風刺をしながらもけして肯定も否定も表立ってしなかったが、『間宮兄弟』で描かれるオタク文化はどちらかというと肯定的に描かれているというところ。風刺に辛辣さが微塵もない。もちろんこの幸福感にも似た緩やかさこそが監督の狙いなのだろうけど、映画としての面白さを奪っているように感じる。様々な問題を孕む社会をすべて受け入れるという懐の大きさを描いているのだとしたらなおさら。 [DVD(邦画)] 3点(2008-01-29 10:38:10) |
847. アメリカン・ヒストリーX
ノートンの筋肉隆々とした裸体とスキンヘッドからくる危険なオーラ全開の冒頭部には、かなりひき付けられたのだが、そういった怖さが画面に出ていたのはこの冒頭部のみで、一番怖くなけりゃならん集会のシーンが全く怖くない。要するにノートンだけが演技力でもって怖さを演出していただけの作品。アメリカにおける人種差別の根深さもノートンの髪長かりしころの表情だけが表現しているだけで、作品そのものはむしろ差別の根深さを消し去るような実に浅はかな展開とありがちなエンディングで語ってしまう。お話の内容でも、刑務所での長い年月をかけた体現が考えを変えさせたのは解かるが、それをたかだか数分で言って聞かせるだけで弟が改心するというのもかなりムリがある。 [DVD(字幕)] 4点(2008-01-28 13:31:57) |
848. ジョンQ-最後の決断-
『狼たちの午後』を彷彿させる社会派ドラマではあるが、社会派ドラマについてまわるリアリティを追求せずに、登場人物たちを極端にキャラ分けする寓話的とも言える手法で見せてゆくというのは昨今のメジャー映画事情に明らかに逆行していて、そのぶん非常に分かり易い。この分かり易さこそが良きハリウッド映画だったのではないだろうか。主人公はただ子供を助けたい一心で犯罪に及ぶのだが、映画は極端なキャラクターでもって歪んだ社会を次々と露呈させることで主人公の行為を許容させようとする。営利最優先の病院経営者は病気の人間を助けるという病院の本来あるべき姿を消し去り病院システムの問題をさらけ出させる。名声に執着する警察署長は早急さにこだわりより良い解決策を考えることもなく警察の本来すべき仕事をせずに警察システムの問題をさらけ出す。ガードマンも金に見合った以上の仕事をしようとしない姿は金が全ての社会をさらけ出し、メディアの主人公の訴えには腰が重く事件が起きてはじめて動く姿にはやはり金銭および名誉至上主義をさらけ出している。主人公の会社も保険会社も社会問題を露呈させている。この映画のいいところは、ここまで明確なキャラ分けをしているにもかかわらず、さまざまな問題はすべて社会にあるのであって人にはないとしているところ。だから主人公も誰も憎まない。ただ、いくらリアリティを求めないにしても病院長の心変わりは急変にすぎる。もうひと粘りしてほしかった。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-25 12:32:02)(良:1票) |
849. K-19
出向式でシャンペンが割れないのを見て誰かが「不吉だ」と言う。なんで言うかなぁ。さらに副艦長が艦長にシャンパンが割れなかったことに加えて医師が死んだことについてその不吉さと不吉さに動揺する乗員たちのことを言っている。どうして画面で不吉さを示そうとしないのだろう。実際不吉な事象が描かれるだけで画面には不吉さが全く漂っていない。潜水艦を舞台とした映画にもたらされる緊迫感と被爆というあまりにも恐ろしい事象と前もって実話であることを告げることで得られる迫真性でもってそれなりの骨太なドラマを堪能できはするものの、そういった利点に頼るだけ頼った手抜き演出が目に余る。ミサイル発射後の一時の野外休憩やアメリカ軍ヘリに向かってお尻ペンペンするシーンなどの開放的な画を挟むタイミングはなかなかに良く、また対戦の無い潜水艦ものにしてはまずまずのサスペンスを見せていたと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2008-01-24 11:25:13) |
850. Gガール/破壊的な彼女
唐突にできた空き時間にシネコンに飛び込んだはいいが限られた空き時間ではコレしかなかったので半ば仕方なしに観たというのが正直なところなのだが、大当たりとはいかないまでも拾い物をしたという満足感は大いに得ることができた。スーパーヒーローといっても当然長所ばかりであるはずもないのだが、これまでのあらゆるスーパーヒーローの短所は必ずと言っていいほど負の一面、あるいは暗黒面として描かれ、ヒーローたちは自問自答し悩むのだ。しかしGガールの短所ともいえるヒステリックな嫉妬心は、あくまで普通の女の子としての短所であり、けしてスーパーヒーローであることと結び付けようとはしない。そして普通の女の子としてスーパーパワーを使うのだ。だから突拍子もない無茶苦茶な行為もそこには不自然さはなく、むしろ人間的でイヤミも嫌悪もなく爽快感すら呼び起こす。ラストがまたいい。資質に合った仕事に出てゆく者と送り出す者。男と女の凝り固まった概念を取り除けば、こんなにも自然なカタチを形成できるのだ。 [映画館(字幕)] 6点(2008-01-23 16:07:09) |
851. Jの悲劇
冒頭の気球事故シーンがインパクトあり。気球の色が赤だということも印象強さを助長する。物語が全てこの冒頭のシーンに起因していることを強烈に見せている。ただ強烈すぎて、その後のこちらの想像とは異にする意外な展開に頭がついていかない。そのうえ主人公の葛藤が事故による罪悪感という単純なものではなく、罪悪感をさらに起因とする様々な葛藤が複雑に絡み合うので余計についていけない。それでもその複雑な心理という不可視なものをしっかりと映像で表現しているのは巧いと思う。変質的な妄想を膨らませる男を拒否しながら拒否しきれない視線。理論がために逃避する主人公のいらだち。肝心なところを語っていないところから始まる女との確執。全てを理論づけて思考する主人公が赤ん坊という理論を越えた温かみをその腕に抱きかかえた瞬間を切欠として自分自身を取り戻してゆく過程もまた実に映画的な見せ方。ちょいと謎めかした展開がかえって面白さを半減してしまっているのが残念。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-22 10:50:22) |
852. Wの悲劇
デビュー作『野菊の墓』でその才能をいかんなく発揮した澤井監督の第二作は大ヒットが約束された薬師丸ひろ子主演の映画。原作「Wの悲劇」を舞台劇「Wの悲劇」にし、それらを演じる役者たちにスキャンダラスな事件が降りかかるというまさに「W」なシナリオは一見複雑そうでありながら実にわかりやすく違和感の無いドラマに仕上がっている。ただ、舞台劇の芝居じみた展開が舞台劇以外でも引きずっている感があって、とくに高木美保の最後の登場シーンの大声でセリフを言ってからナイフを取り出し走ってくるってのは、いかにもすぎて、その唐突感も安っぽい。冒頭の夜明け前から世良公則との出会いを介して徐々に明るくなってゆく背景は撮影自体をその時間帯で行っているのだろうか。そうでなきゃあんなにもリアルな光の移ろいは出ないだろう。もちろんそれでも照明による調整もいるわけだから、その時間帯の一発勝負の撮影に拘った監督はやっぱり凄いなあと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-01-21 16:55:34) |
853. アイガー・サンクション
モニュメント・バレーの訓練シーンは『バーティカル・リミット』のソレを遥かに凌駕するのだが、それはCGじゃないからってことだけじゃなく、その岩山の見せ方や広大なグランドキャニオンの見せ方が素晴らしいからでもある。アイガー北壁にしたって迎えのホテルからの雄大なアイガー全景が見事に、そして残酷に映されるから一層の緊迫感をもって描かれる。もちろん体を張ったイーストウッドが相変わらず痛々しい表情でアクションをこなしているということが面白さの前提にあるが、実に丁寧に映画を作っていることがうかがえ、それゆえの面白さが充満している。屋内シーンが冒頭の仲間の暗殺シーンにしても、あるいは主人公の家の地下、組織のトップの一切光を遮断した部屋も、とにかく暗がりが多く登場するが、もうこのときから監督イーストウッドの暗がりを撮る術は長けており、暗がりが作品を重厚にし、またモニュメント・バレーやアイガーの眩いばかりの開放感を助長している。なんだかんだ言ってもイーストウッドは巧い。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-18 12:13:06) |
854. 銀嶺の果て
黒澤明が脚本に参加しているからなのか娯楽性に富んだ観やすい作品に仕上がっている。一人が滑り落ちた際のすばやくハーケンを打ち付けるシーンやザイルを体に巻きつけるシーンの繊細な描写が山男の人となりや、山がいかに危険であるかといった一切合切を一瞬で見せきる。これが監督デビュー作というから驚き。三船敏郎も俳優デビュー作らしいが、三船の三船らしさというものをうまく引き出している。過酷であっただろう雪山でのロケも間違いなく作品を高みに押し上げているだろうが、いまひとつダイナミックさに欠けるような気がする。面白いんだけど決定的な画に欠けるというか・・。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-01-17 12:53:49)(良:1票) |
855. 運命を分けたザイル
九死に一生スペシャルじゃないけど、実際に起こった山岳事故を俳優を使って再現するというテレビでよくある再現ドラマの体を成しているのだけど、本物の山に登ってるってところが本格的。実際、CGでは太刀打ちできない絶景を拝める。ただしイチイチ今の本人たちが映し出され解説をしてくれるんだけど、おそらく実際に起こったことに対しより生々しく伝えたかったのだろうが、はっきり言ってくどい。本人たちがそのときどう思っていたのかを必死に説明をすればするほど、リアルな映像が無意味なものになってゆく。本人たちは特典映像で登場してくれればじゅうぶん。 [DVD(字幕)] 4点(2008-01-16 14:43:11) |
856. バーティカル・リミット
《ネタバレ》 いきなりネタバレしてしまうが、生き残ったのが主人公と主人公の妹と主人公と今後結ばれそうな女の3人という恐ろしいまでの予定調和にはあきれるしかないのだが、そこを無視してもかなり無理やりな作品である。時代を戦時としたのはニトロを使いたかっただけなような気がするが、そのニトロの必然性がイマイチ伝わらない(はるか遠方の爆発でかなり崩れてるし、中から目印を氷を突き破って出してるし、これならニトロじゃなくても手榴弾でじゅうぶんなのではと思ってしまう)うえに、ニトロが登場して得られる緊迫感も無い。最悪はCGバレバレのクライミングシーン。アップ多用でごまかしてくれたほうがずっとマシ。アクションシーンはそれなりに楽しめた。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2008-01-15 16:52:17) |
857. スピオーネ(1928)
『ドクトル・マブゼ』からオカルト要素を取り払い、さらに洗練されたものに仕上げた作品。スパイものの古典というにはあまりに洗練されている。まさかサイレントでジェットコースタームービーを楽しめるとは!そのスピーディな展開には舌を巻く。326号はまさに007の原型。美人スパイとのロマンスあり、カーチェイスあり、敵キャラのカリスマ性あり、オチも唸らせてくれて文句などあろうはずもない傑作。本物の活劇!面白すぎ!! [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-01-11 11:58:14)(良:1票) |
858. ドクトル・マブゼ
先に作られた『カリガリ博士』(これもドイツ映画!)の主人公にカリスマ性を与えたようなマブゼ博士。そして『カリガリ博士』が表現主義の中で描かれたのに対し、『ドクトル・マブゼ』は実にリアルな現実世界の中に表現主義的描写を散りばめる。催眠術のシーンやラストの幻影がそれにあたる。なのでよけいに怖い。天才的な犯罪の手口がまたリアル。群集心理を利用して捕まった仲間を射殺するなんてファシズムが押し寄せようとする当時の時代背景を鑑みると空恐ろしい気すらする。そして株価操作も偽札造りもマブゼ博士にとってはトランプ賭博となんら代わらない「お遊び」でしかないというのも妙に信憑性があって怖い。犯罪映画の原点であるだけでなく、メロドラマも取り入れられ見応え十分。長尺も、連続ドラマをまとめて観ているような面白さ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-01-10 14:23:16) |
859. ニーベルンゲン 第II部 クリームヒルトの復讐
ジークフリートからクリームヒルトへと主役が代わった第2部はファンタジーから大スペクタル史劇の様相でもってたたみかけてくる。大群衆を画面狭しと登場させる妥協なき画の連続は圧巻。第1部よりも時間を感じさせないスピーディな展開と、美しさと残酷さに溢れた復讐のストーリーに釘付け。ラングとその妻テア・フォン・ハルボウのコンビが作り上げるラング初期作品は凄まじいまでの傑作ぞろいだが、その後ナチス党員となる妻とナチスから逃れる夫とのコラボレージョンは当時の暗雲とした時代を作品の中に拭いがたい影として残しており、表現主義と相まって独特の雰囲気をもたらしている。その空気は当然「ファンタジー」の第1部よりも「復讐」の第2部のほうが色濃く漂っている。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-01-09 11:49:50) |
860. ニーベルンゲン 第I部 ジークフリート
これを二つにわけて採点評価することにムリがあるような気がするのだけど、ま、ムリヤリ点数つけますが、どうしてもこれ単体だと尻切れ感が・・。1924年以前の他の映画を観ればよくわかるのだけど、いわゆる特撮がずば抜けている。たしかに龍の造形は今観てどうなのかといえばちゃちいのだけど、人が石に変わるシーンなんかは今観ても凄い。そして壮大なお話をここまでわかりやすく見せてしまう手腕はお見事の一言。ラングのサイレント映画は物語に引き込まれてしまう。あぁ美しいクリームヒルトよ、どうしてそんなバカなことを・・。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-01-08 16:58:58) |