861. 翔んだカップル オリジナル版
薬師丸ひろ子と石原真理子がモグラたたきを延々とやる長回しの場面、長回しし過ぎて(?)だんだん奇妙な空気が流れ始めるシーンなのですが、一方で、彼らの背景には大勢の高校生たちが群れ集っていて、こんな長回しの背景で一体彼らは何をやり続けているんだろう、撮影にあたってどういう指示を受けているんだろう、なんてことが気になってきちゃったりして。 俳優の演技なのかそれとも素なのか、演出なのかそれともたまたま撮れてしまったのか、つかみどころがないのが作品の特徴でもあるのでしょうが・・・ちょっと長い、ですかね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-07-23 18:26:22) |
862. アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
こういう作品はどうしても、「どこまで真相に迫っているのか」という観点で見られてしまう面があるのですが、その点、この作品は最初から「皆さんそれぞれ言い分があるでしょうけど」という立場を貫いていて、無責任と言えば無責任だけど、そこに適度にユーモアを交えることで、何となくはぐらかされちゃう。そもそも「本人へのインタビューを交えた再現ドラマ」であるかのような体裁をとっているにも関わらず、インタビュー部分も俳優が演じてるので、何でもアリ、なんですけれどね。ただ、「証言」がアチコチで食い違いつつ、時に彼らの「証言」をシンクロさせてみせる演出は、ちょっと面白い。何となくウサン臭いけど。 それにしても、アイススケートシーンが、実にお見事。ここがショボかったら、相当ウサン臭い映画になるところですが、CGも使っているのか、本当に高度な技を連発しているように見えて、迫真のシーンになってます。オリンピック本番の雰囲気と、その中で精神的に追い詰められていく彼女。靴紐云々の場面は、当時のオリンピック中継でも見た場面ではありますが、こうやって、彼女に寄り添った視点で舞台裏から連続して描かれると、やはり実際の中継映像とはずいぶん違った印象を受けることになります(で、ここで当時のことをふと思い出すのだけど、外野の騒ぎに流されてジャッジの点数までおかしくなってしまった、実に後味の悪い大会でした)。 全体的に、ややトーニャ・ハーディング寄りの描き方ながらも、何となく曖昧に終わらせようとしている部分があって、その点ではどうしても映画が弱くなってしまうのですが、それでも、肯定も否定も超えたところに、彼女の今を提示して見せるラストには、唸らされるものがあります。不運ではあったかもしれないけれど、不幸ではないんだよ、ってな感じで。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-23 17:46:45)(良:2票) |
863. 潮騒(1975)
『伊豆の踊子』に続く、三浦友和&山口百恵の文芸路線。両者に共通しているのは、原作に「脱ぐ」シーンがある、ってことで、ファンをヤキモキさせるためにわざとそういう小説を選んだんだろう、と勘繰ってしまうのですが。で結局、両者とも、まあよくわからんけどこんなもんでしょ、という仕上がりになってるのですが、それはともかく。 それを「ともかく」で片づけてしまうと、あまり言うことが無くなってしまうのですが、ああ、そういや初井言榮さんって、堀ちえみ版にも出演してましたっけ。いや、それもともかく。 オドオドするばかりで動きに乏しかった『伊豆の踊子』に比べると、今回は三島由紀夫作品、すなわち行動してナンボ。主演ふたりがそれぞれ存在を主張しつつ、動きのある物語展開になってます。ただ、百恵さんは相変わらずイモっぽいですが、その素朴さが、なかなか悪くないですねえ(原作のイメージに近いかどうかはともかく)。しかしここは友和さんの、一本気な若々しさこそが最大の魅力。フンドシ姿も目にまぶしい。 いや、やっぱりMVPは、初井言榮さん、かな。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-07-21 21:44:52)(良:1票) |
864. 伊豆の踊子(1974)
顔は若き日の三浦友和なのに、声は宇野重吉、というのがモーレツに違和感があって、これだけの違和感を味わえると、ちょっと得した気分(笑)。老いた主人公が若き日を回想するような設定なもんで、仕方ないと言えば仕方ないんですけども、ただ、当時の宇野重吉より今の三浦友和の方が年配のハズなんですけど、今の三浦友和にもこのジジイ声は絶対、似合わないですよね。 それはともかく。嬉し恥ずかし、三浦友和の初主演、そして山口百恵の初主演、の作品。もうとにかく、初々しすぎて。百恵さんについては、個人的には宇崎竜童路線「以前」の印象があまり残ってないもんで、あーそうか、こんなにイモ娘だったんだっけか、とかしみじみ思っちゃうのですが(阿木燿子&宇崎竜童は、ホントにいい仕事したと思います)、全編通じて、三浦友和がオドオド、山口百恵がオドオド、見てて、とても演技とは思えません(百恵さんについては、演技にしてはあまりにヘタ過ぎて、かえって演技に見えなかったりする…?)。 でもこれがやっぱり、演技、なのよね。まさかまさか、最終的にはこの二人が結婚するなんて、じゃあこのオドオドした態度、そしてあのラストは、何だったんだよ。と言いたい気持ちにさせられたら、映画の勝ち。 ・・・ところで、笑点メンバーだった(メンバーのまま死んじゃった)小圓遊さんも、澄ました顔で出演してますねえ。これがいちばん、懐かしかったりします。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-07-21 20:52:49) |
865. ファンシイダンス
「モックンがこの頃からどれほど変わってないか」「彦摩呂がこの頃からどれほど変わったか」を確認できる一本。その後、彦摩呂の肉体が“シコふんじゃった”的なものに改造されてしまうとは、この頃、誰が想像できたでしょうか。 学生相撲とか社交ダンスとか、一般人にはあまり接点のない(少なくとも当時はなかった)ネタを映画に取り上げる流れの、原点とも言うべき作品ですが、僧侶見習いの修行がテーマなもんで、相撲やダンスと違って動きが乏しく、どうしても地味な印象は受けてしまいます。 ただ、その地味さを逆手にとって、わざと棒読みみたいなセリフのやりとりで独特のリズムを出しており、ちょっと不思議な味わいがあります。 それを差し引いても、登場人物の誰もが、大した進歩なり変化なりを示す訳でもなく、やっぱりちょっと動きが乏しいのですけれども。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-07-19 21:33:00) |
866. フリーソロ
クライマックスにおけるフリークライミングのシーンは、眩暈がするほどの迫力。もっとも、変に演出じみたカット割り(?)みたいな視点の切り替えが多用されるもんで、もしかして同じシーンを異なるアングルで何度か撮り直しとかしてるんじゃないの、という疑念も湧いてきてしまい、ちょっとモヤモヤしてきちゃうんですけれども。無論、こういう映像に仕上げるために、おそらくは撮影にも様々な配慮や工夫が凝らされたんだろうし、おそらくは大量の映像を撮影した上でその殆どを捨て、厳選しまくってこのクライマックスにまとめ上げたんだろう、と想像はするのですけどね。でもその結果、ちょっと人工的な印象を受けてしまうのは、勿体ないですね。 しかしその辺りは、彼を支え、彼を心配する立場として、撮影スタッフの姿と心境を映画の中に取り入れる、いわばメタな構成にしていることで、我々のそういう「疑い」を帳消しにしようとしている・・・としたらちょっとズルいのだけど、我々を当事者として巻き込み、一緒に心配する身に置かせる効果は、確かにあります。もちろんこれは、あり得ないような地形をあり得ないような技で登っていく、このクライマックスの圧倒的な映像があってこそ、の効果でもありますが。 それにしてもあのキグルミの人物は何者だったのか。一番気になるのはソコだったりする。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-19 21:09:42) |
867. 陽暉楼
BSで放送してたので久しぶりに見てたら、昨今、映画のTV放送も色々と気を使ってるんですね、浅野温子と佳那晃子のバストトップには微妙なボカシが入っているし、女衒の緒形拳が少女の胸をはだけさせるシーンはカットされてるし。昔はゴールデン洋画劇場の枠とかで、五社作品のもっとヘンタイ的なシーンでも平気で放送してたのにね。 こういうのは「違和感」というレベルで済むけれど、そのうち池上季実子と浅野温子との壮絶ハイパーバトルまで自主規制でまるまるカットするようになっちゃったら、もはやストーリー自体の印象が完全に変わってしまいます。そうならないように祈りましょう。 というくらい、あのバトルは凄まじく、そしてそのシーンの後であるが故に、二人の関係は心打つものがあります。 それにしても、池上季実子が主演、浅野温子が助演、という位置づけで、本当にいいんですかね。浅野温子の存在感の方が圧倒的。もう、これは彼女の映画、と言っちゃっていいんじゃないでしょうか。 緒形拳の曲者ぶりもお見事。『鬼龍院花子の生涯』の仲代達矢はちょっと浮き上がり気味だったけど、本作の緒形拳は、ぴったり役にハマってます。 花街の女性たちを、ただ単に「金儲けの道具にされた気の毒な女性」として描くのではなく、勿論、背景に哀しみを湛えてはいるけれども、この世界にはこの世界独自の価値観があり、誇りがあり、挫折がある、ということ、不自由と自由とを隣り合わせに描いていることが、ドラマに深みを与えているように思います。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2020-07-19 20:34:03) |
868. K-19
エンドロールのクレジットを眺めてると、音楽を演奏してるのが、キーロフ管弦楽団及び合唱団、指揮ヴァレリー・ゲルギエフ、なんて書いてあってビックリ。音楽にも「ロシアの響きが欲しい」ってコトなんですかね。なんという贅沢。ま、正直、聞いててもまーったく気づきませんけれども。このオケは今では“マリインスキー劇場管弦楽団”という名前のハズなんですが、わざとソ連時代の名前でクレジットした、ということなのかどうなのか。 キャスリン・ビグローはこの後、めっきり「リアリティ最優先主義」みたいになっちゃって、面白味に欠けてくるのですけれども、本作はまだ、実際の事件に取材しつつもしっかりとエンターテインメント作品になってます。すでに少し「実話」に引きずられてる中途半端な印象も無くは無いですが、そもそもおよそ軍人らしからぬハリソン・フォードを艦長役に据えている時点で、リアルさとは相容れないものがあり、ハリソン・フォード自身は抑えた演技でリアリティに貢献しているつもりかもしれないけれど、やっぱり節々にチャラい身振りが出てしまう、そういったあたりの微妙なバランスは、作品の魅力にもなってます。 米大統領役も演じたことのあるスターの彼が、ソ連原潜の艦長役。まあ、「ソ連のことを悪く描くつもりはないんです」という作品の姿勢の表れ、なんでしょうか。 潜水艦内という閉鎖空間での原子炉事故、というサスペンスに加え、人間同士の対立などもあって、作品には緊迫感が溢れていますが、一方で中盤の、乗組員たちが氷上でサッカーに興じる光景などには、心和むものがあり、印象に残ります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-15 21:15:47) |
869. ニノチカ
日本ではラグビーW杯以来、「笑わない男」ってのが流行って(?)ましたが、こちらは、笑わない女。 ソ連ジョーク満載で、共産主義をからかったネタが次々に出てきますが(駅に迎えに行くシーンで、ソ連の役人かと思ったらナチス党員だった、というのは、今にして思うと、ちょっと毒が効き過ぎなくらいの鋭いネタですが)、筋金入りの共産主義者と思われた無表情のニノチカが、つい笑ってしまうくだりで物語は大きく転調します。このシーンも、「いくらレオンがジョークを言っても笑わなかった彼女が、レオンの失敗を見て笑う」という展開になっていて、やはり物語の転機としてはアクシデントほど効果的なものは無い訳で。 だもんで彼女の「笑い」は映画の中でなかなか印象深い事件となっているのですが、正直、タイミングとしては少し早すぎですかね? もうちょっと険悪な雰囲気で粘ってくれてもよかったかも知れず、二人がネンゴロになってからがちょっと長いような気もいたします。 基本的に共産主義をからかって、ソ連人が自由社会の楽しさにかまけていく姿、しかしそれこそが人間らしい姿、を描いているようにも思える反面、レオンと使用人との関係などには彼の「いい加減さ」も容赦なく描かれていて。 冒頭から映画にコミカルな味付けをしている3人組が、ラストでは共産主義と自由主義をうまくブレンドしてみせて、気の利いたオチを提供しています。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-13 21:44:11) |
870. バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー
レディ・プレイヤー1で何が驚いたって、まさか「バカルー・バンザイ」ネタまでもが登場するってことで。日本では当然のようにビデオスルーされ(それも確かロボコップ公開よりも後だったと思うので製作の数年後)、当然のようにTV放送は木曜洋画劇場となった、この映画が。 同姓同名の赤の他人と思った、いや、思いたいところだけど、アメリカ広しと言えどもさすがにバカルー・バンザイさんがそんな何人もいるとは思えず。 日本人の父親を持つという大天才バカルー・バンザイ。大天才過ぎて、何を言っているのかよくわからない。いや別に彼自身は大したことを言ってる訳じゃなく、この映画自体が大天才過ぎて、何を言いたいのかサッパリわからない。一応はSF作品、ということで、チープな顔立ちのエイリアンたちが登場するけれど、彼らもなぜ自分たちがこの作品に登場させられているのか理解していなさそうだし、ジョン・リスゴーに至っては理解することをあきらめて、完全にブッ壊れてしまっております。 という訳で、物語は一人合点で勝手に進んでいき、でも言うほど進んでいる訳でもないので、観ている我々もついていけないながらも置いて行かれる訳でもなく、気が付けば映画は唐突にエンディングに入って(これがちょっとシャレているので、作中唯一の見どころかもしれない)、「次回をお楽しみに」的なラストへ。 まさかそれが、スピルバーグ監督作品になろうとは・・・ [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-07-13 20:54:20) |
871. 無頼漢(1970)
多分に挫折感のあるオハナシな上に、途中には親殺しや子殺しなどという暗いテーマが絡んできたりもするのですが、その割には妙にアッケラカンとしてます。子殺しはともかく、親殺しの方はどこか、「どうせ殺したって死にゃあしない」みたいなところがあって。 「時には母のない子のように」なりたくっても、そう簡単には、なれやせぬ。 しかしそうは言っても基本的に、人というものは皆、死んでいく。謀反の企てが失敗して次々に命を落とす者があり、でも一歩離れて観りゃ、派手に夜空を染める打ち上げ花火と大差ない訳で。ただ、いつの世も人は死に続け、棺桶屋は棺桶を作り続ける・・・ というラストが、何だかキザで、ヤだな、と思わなくもないけれど、時代劇にジャズが流れたりするように、もともとこれは、ちょっとキザな映画。それもまた良し。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-07-06 22:36:35) |
872. 新・夕陽のガンマン/復讐の旅
もちろんセルジオ・レオーネ作品とは何の関係もない、「なんちゃって邦題」なんですけれども、とは言え本作もしっかり、ユナイテッド・アーティスツ提供。それより何より、リー・ヴァン・クリーフが出演。これ、重要。この人相の悪さは、ホント貴重です。 かつて、目の前で家族を虐殺された少年が、大人になって銃の達人となり、復讐を果たそうとするのだけど、彼の前に、彼と同じターゲットを狙う謎の男が登場する。という、一種のダブル主演状態の映画なのですが、マカロニといえばやっぱり主人公が敵にとっ捕まってリンチされてナンボ。という訳で、この二人それぞれに「とっ捕まってリンチ」シーンがある、というのが何とも律儀。のみならず、そのとっ捕まり方というのが、不意に床が割れて落とし穴に落とされる、という、スペクターの基地みたいなシステムだったりするから、うれしくなっちゃいます。あるいはとっ捕まった後、首だけ出して地中に埋められる、という実に情けない姿。これもうれしくなる。 で、この主役二人が微妙な距離感を保ちながら共闘し、クライマックスでは敵の一味と、プチ戦争映画みたいなちょいとダイナミックな銃撃戦を展開。さらには「さすがにちょっとやりすぎ?」な、猛烈な砂嵐の中の死闘から、やがて砂嵐が収まった時、ついに運命の対決へと。 バカバカしさも含めて、見どころ満点。こんないい加減な邦題の作品にも時々「当たり」がある、という良い例。いや悪い例。 [CS・衛星(吹替)] 8点(2020-07-06 21:28:19) |
873. クォ・ヴァディス(1951)
歴史スペクタクル超大作。のハズなんですけれども。 どうも、シケた印象が拭えないのです。確かに、いかにもスペクタクルです、というシーンが一部あるにはあるのですが、大半のシーンはいまいちパッとしない中に、唐突にそういう規模感を誇示するようなシーンが挿入されるもんで、「その中間のちょうど良いシーンは無いのか」、と言いたくなります。そのスペクタクルシーンも、CGなんか無い時代に「うわー、いかにもCGっぽいなあ」と感じさせるもので、ある意味、時代を50年ほど先取りしていますが。 皇帝ネロのキリスト教弾圧が描かれる以上、ネロが単なる「おバカさん」として描かれるのは致し方ないとも思われますが、肝心の主人公まで薄っぺらい人物なのは、不満を感じざるを得ません。最初はローマ人以外を見下していた主人公が、キリスト教との出会いとともに人類愛に目覚める――という風に本当は描きたかったんじゃないかと想像するも、実際は「キレイなお姉さんについていって新興宗教の集会に出席したら、すっかりハマってしまいました」という現代でもアリガチな話以上のものは、何も描かれておらず、我々の心に残るような、転機と呼べそうなものが何もないから、困ったもの。 終盤、競技場でライオンに襲わせるなどの、ネロによるキリスト教徒虐殺シーンが続くのですが、これも、その残酷さを正面から描くでもなく、逆に間接的な描写で我々の感情に訴えかけるでもなく、殺戮の割にはやけに淡々とした描写が続くばかりでコワくない。撮影のためによくこれだけの数のライオンを集めたなあ、とは思うけれど、そんなことにだけ感心してても仕方ない訳で。 という訳で、表面的な語り口が続く3時間弱。ちょいとつらいです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-07-04 17:20:06) |
874. マチネー/土曜の午後はキッスで始まる
ジョン・グッドマンの役どころが、最初の一瞬、ヒッチコックみたいな人かと思わせて、実はウィリアム・キャッスルみたいな人だった、というこの途轍もない落差。と言ったらウィリアム・キャッスルに失礼ですか? そんなこと無いですよね。 現実世界ではキューバ危機という、核の恐怖、放射能の恐怖に直面していて、一方、映画館では「放射能の影響で生まれた蟻人間」などという何ともアホらしい放射能の恐怖があって、互いに奇妙な平行関係を成しているのですが、その交わるはずの無い、現実とアホ空想世界とが、クライマックスにおいて交わり「なんちゃってカタストロフ」を巻き起こす。という、何だかワケがわからないのに、妙に説得力があり納得感があって、なぜ自分がこんなに納得しているのかが、一番ワケがわからないんですけれども。 まさかこんなクダラナイ大事件に発展するとは、と呆れつつ、とにかく、お見事としか言いようがないクライマックス。ま、キューバ危機が回避されたからこそ、こんなオチで喜んでられるのですが。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-06-22 21:08:55) |
875. キングダム(2019)
基本的に、妙に落ち着き払った登場人物が多い中で、山﨑賢人だけが大袈裟な演技をやって、これも一種の対比、ということなんでしょうけれど、物語の進行自体が、彼のオーバーアクションに頼り過ぎな気がして。なので、派手な立ち回りで賑やかしはすれども、どうも単調。 ただそれでも、よくこれだけのスケール感を出したな、という点、そこはしっかり楽しませてくれました。大沢たかおのケレン味もあって、悪くない。何なら、もっとハメを外してもよかったかも。 [地上波(邦画)] 6点(2020-06-21 20:06:08) |
876. マディソン郡の橋
《ネタバレ》 このメリル・ストリープを見ていると、「肉食」という言葉がどうしても浮かんでしまうのですが。 今回食われるのは、イーストウッド監督ご本人。ダンディな役を監督本人がやるというのも、何とも厚かましい話ですが、でも実際、色気があるんだから仕方がない。体のデカさ、この役に充分に活かされています。雨の中に佇む巨大ジジイ。 見る側のストリープと、見られる側のイーストウッド。その二人が徐々に近づいていく様が、妙にエロいんです。例えば、彼女が立つ台所にイーストウッドが近づくのを、カメラも一緒に近づいていくシーンの、あの「接近してます」感。 イーストウッドがダンディなら、メリル・ストリープも肉食感満載で感情の起伏を炸裂させて。本作、企画的にはいかにも、流行りの小説をいち早く映画化してみました、ってな感じがしちゃうのですが、主演二人と作品とがバッチリ共鳴しあって、そういう企画モノには到底収まらない見事な作品となっています。 雨の中に姿を見せたイーストウッドは、車に乗ったまま表情を見せることなく立ち去っていく。その代わり、彼から送られてきた本が柔らかい光に包まれているのが何とも印象的で。 よくぞ、イーストウッドが映画化してくれたと思います。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-06-21 18:59:10) |
877. 心の旅路
《ネタバレ》 戦争で記憶を無くし、自分が誰なのかもわからない男が、女性とめぐり合い、幸せな生活を送りはじめようとした矢先、外出先で事故に合い、かつての自分の記憶を取り戻すと同時に、女性との日々の記憶を失ってしまう。記憶喪失者が記憶喪失するというなかなかスゴイお話で、中盤まではグイグイ引っ張っていきますが、二人が再開してからがどうも長過ぎ、クド過ぎ。これは感動が醒めるに充分な長さであり、いざハッピーエンドを迎えても、「今さら・・・」感が、無くも無く。 チャップリンが『街の灯』でスマートかつ印象的に描いてみせた、二人の出会いと再会に比べると、どうしてこうもまどろっこしいのやら。 男が女性のことを忘れて元の生活を始めると、映画も女性のことを描かなくなり、その分、見てる我々は、あの女性は今どうしてるのだろうと心配になる訳で、これは演出としては正解だと思うのですが、いざ、件の女性が登場すると、その間に経験したであろう様々な苦労もセリフでさらりと流されるだけ、妙にサバサバしているのがどうも引っかかります。 最後、すべての記憶を取り戻すオハナシにする必要があったのか、とすら思えてきて。ハッピーエンドが妙に虚しく、妙に安っぽい。 本作でちょっと面白いと思ったのが、音楽の使い方で、最初の方、劇伴音楽と効果音や劇中に流れる音楽が混然一体となって、なんかチャールズ・アイヴズみたいなコトやってるなあ、と。主人公の混乱した記憶を象徴しているらしく、終盤にも同様の手法が登場しますけれど、そうか、映画音楽という口実を使えば、実験音楽みたいな事をやっても言い訳が立つんだなあ、と。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-06-21 17:54:17) |
878. 極道VS不良番長
《ネタバレ》 極道シリーズ対不良番長シリーズ、ついに対決。 と言うのは大いに「看板に偽りあり」でして、肝心の不良番長こと梅宮辰夫が、映画始まって早々にバカやって大怪我で入院してしまうという設定。だもんで、実際に若山富三郎親分の好敵手となるのは、不良番長の弟・渡瀬恒彦。ま、どう考えても、この方が「正解」だとは思いますけれども。 若山親分、今ではカタギになってホルモン焼きの屋台なんぞやっているのですが、子分どもの屋台が鈴なりに連なって、一大コンボイをなしているその光景は、カタギか否か以前の、相当アブナイものを感じさせます。しかもロケ撮影は阪急沿線? こんなコトが許されるのは阪神沿線だけだと思うのだが。いや、近鉄もOKかな? とにかく何ともアホらしいオハナシの上、演出も少々雑で、粗製乱造っぽいニオイがプンプンしますけれども、さんざん迷走したようでいて、ちゃんと屋台野郎とバイク野郎のライバル関係に物語の焦点を合わせてくるのは、さすが。 バイクによるアクションが見せ場を作れば、ホルモン屋台も装甲車と化し、クライマックスの壮絶な戦いへ。 コメディタッチかと思いきや、中盤からは結構、バンバン人が死にまくって、それも中には「えっまさかそんなコトで死んじゃうの?」という、なかなか笑劇的な殺戮シーンなんかもあったりして。 いやあ。いい時代、ですなあ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-06-15 20:51:43) |
879. インシテミル 7日間のデス・ゲーム
《ネタバレ》 閉鎖空間の不気味さ、みたいな雰囲気はよく出ていて、結構、楽しめました。正直、あのロボットアームみたいなヤツがどうにも、脆弱なプラスチック製か何かに見えてしまい、あまりコワくないのですが、動きはなかなか器用。 「リアリティ番組」の問題にも微妙に踏み込んでいて、踏み込みは浅いとは言え、少し予言的な部分も。 ただ、このオハナシ、確かに「デス・ゲーム」と相成りましたが、これってかなり運がよい? 実際にはかなりの確率で「何も事件が起こらずに7日間経ちました」という展開になってしまうのではないか、という要らぬ心配をしてしまうのですが・・・ [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-06-06 13:51:29) |
880. クロコダイル・ダンディー
私も最近、「えー今日ってもう木曜日なの? いつの間に・・・」とか言ってるくせに、子供に「今何時?」と聞かれて時計を見ずに勘で答えたら、結構当たってたりすることがあり、これじゃあ、ミック・ダンディと大差ないなあ、と。 というか、これってもしかして、単なる老化現象の一種なんだろうか? という訳で、お上りさんの主人公が醸し出すカルチャーギャップネタ、というよりはもはや、ヘンなオジサンの天然ボケぶりが、愉快な気分にさせてくれる作品で、アクションだのホラーだのが幅を利かせていた80年代半ばに、なんでこんな得体の知れない映画が話題になってるんだろう、と思ってたけど、後にTV放送で見てみたら、確かにこれがなかなか面白い。憎めない。 ただしTV放送の頃にはすでに2作目が公開された後で、「2作目ではヒーロー気取りらしい」とか(まあ、実際その通りですが)、「ポール・ホーガンは奥さんを捨てて競演女優のもとに走ったらしい」とかいうヤな噂も耳にしてはいたんですけれど、それを差し引いても(?)なかなか面白い。ちょっと憎らしいけど。 アメリカ社会には格差を始めとするさまざまな断絶みたいなものがあって、オーストラリアにはそれが無いのかどうかは知らんけれど、とにかくそういうアメリカ社会に野生児ミックが闖入し、騒動と化学反応を巻き起こす。そして、いやいやアメリカ市民だってやっぱり捨てたもんじゃないよね、というラスト。 まあ、全体的には、どのキャラも表面的な描かれ方で、もう少しくらいは物語に、幅なり、掘り下げなりがあってもいいんじゃないの、というような、一種の物足りなさもあるのですが、とりあえず軽いノリで楽しめる作品、ということで。 そういやシドニーオリンピックの開会式だか閉会式だかに、オーストラリアの誇る著名人がワンサカ登場してきて、ああ、こういう場にはポール・ホーガンが呼ばれるんだなあ、と。すみません、他にはカイリー・ミノーグが出てきたことくらしか覚えてませんけど。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2020-06-06 12:30:52) |