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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2593
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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921.  007/スカイフォール 《ネタバレ》 
良い意味で非常に「懐古的」な作品に仕上がっていることは間違いない。 今作では、時代の流れと共に「スパイ」という役割の時代錯誤感が問われ、存在そのものが追いやられる立場となるというストーリーが描かれる。 そして、今一度「スパイ」という存在の意義と必要性、そして“格好良さ”を「007」シリーズが培ってきたパターンを存分に生かして見せてくれている。  シリーズファンに対してのサービス精神が旺盛な分、往年の過去シリーズ作品の幾つかを観ていないと、面白味が半減してしまう部分が多々あることは否めない。(特に「ゴールドフィンガー」の鑑賞は必須!) アストンマーチンの“赤いボタン”などは、往年のシリーズファンにとっては最高のプレゼントだったに違いない。  そういった全体的にとても懐古的な「007」らしい映画世界は、ジェームズ・ボンドというキャラクターが、「成熟」しつつあるという表現と直結しているように思えた。 このダニエル・クレイグ版「007」シリーズの最大の醍醐味は、ジェームズ・ボンドという絶対的主人公の“未成熟さ”にあると思っている。 一流のスパイと称されるにはあまりに未成熟な故、この新シリーズにおけるジェームズ・ボンドは、あらゆるものを「喪失」してきた。この最新作においても、結果として彼はあまりに“大きなもの”を失ってしまう。 その「不完全さ」が、良い意味でも悪い意味でも「007らしくない」という評価を生んだことは明らかだろう。  ただ、今作ではそんな主人公ジェームズ・ボンドが、徐々に「007」らしさを見せ始める。それは即ち世界最高の諜報部員に相応しい「余裕」が垣間見えてくるということだ。 主人公に徐々に備わってきた「007」らしさ、それはまさに数々の過酷な「喪失」からの「誕生」であり、そこから「成熟」に至るプロセスこそが人気シリーズを「リブート」することの最大の価値だということを高らかに物語っているように思えた。  史上最高齢の“ボンドガール”との別れに惜別の念を感じつつも、新M、新Q、そして新マニー・ペニーの相次ぐ新登場には、もう問答無用にニヤニヤしながらエンドロールを迎えるしかなかった。  さあて、喪失からの誕生、そして成熟までの準備は整った。次作では、ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの“集大成”を見せつけてほしい。
[映画館(字幕)] 9点(2012-12-17 17:08:50)(良:1票)
922.  河童(1994)
映画とテレビドラマの最も大きな違いは、世界観の創造であると思う。言い換えれば、映画はそれぞれ独自の世界観がなければ価値がないということだ。そういう意味で、この映画には確固たる世界観がある。秀逸な世界観は時にリアルを排除してもいいと思う。石井竜也が創りだしたファンタジックな叙情感が味わえるこの映画はそれだけで、傑作になり得るものなのだ。
[ビデオ(邦画)] 8点(2012-12-13 00:02:00)
923.  ヘッドハンター(2011)
限られた時間の中で限られた数の映画を見続けて何度も感じてきたことだが、こういう決して有名ではないけれど間違いなく面白い映画の“情報”を得ずに、見過ごしたまま人生を終えてしまうことを考えると、ゾッとせずにはいられない。 そして、某ラジオ番組における某映画評論家の紹介で、このノルウェー映画の情報を知り得たことを幸運に思わずにはいられない。  企業間の“ヘッドハンティング”の仲介を生業にする主人公。潤沢な資産と名声、そして美しい妻を持つ彼は人生の成功者に見える。 しかし、そんな男が抱える“コンプレックス”と“裏の顔”を発端とし、突如として“ヘッドハンターたち”による壮絶なサバイバルゲームが繰り広げられる。  まず述べたいのは「娯楽映画」としての完成度の高さ。 決して難解でもなければ、大風呂敷を広げるわけでもないシンプルなストーリーの紡ぎ方が巧い。 笑えるシーンも、バイオレンスシーンも極めてバランスよく配置され、それぞれ馬鹿らしくなりすぎず、凄惨になりすぎない絶妙な平衡感覚でエンターテイメントのラインを渡り切ってみせる。 ストーリーがシンプルな分、ほんの少しバランス感覚を違えると、まったく違った印象の映画になってしまっていたかと思う。娯楽映画としての最良のラインを導き出した“つくり”は、見事としか言いようがない。  そうして描き出される映画の顛末の巧さがまた素晴らしい。 単純な“巻き込まれ型”のアクションサスペンスで終わるのかと思いきや、クライマックスでは主人公の男の虚栄心を抱いた悲哀をきちんと描く。妻を愛するが故に己を偽り続けた主人公が心情を吐露する様は、“普通の男”の一人として思わずグッとくる。  公私においてどん底まで落とし込まれ、心身ともにあまりに大きなダメージを受けた主人公が、「証拠を消さなきゃ」と力なく言い妻の元から逃げ出したように見える「巧さ」。 そこから見せる小気味良い展開と、「それで満足だ」というラストの主人公の表情が爽快すぎる。  低予算で作られた地味なノルウェー映画であることは確かだ。 ただし、きっと50年後も「面白い!」と言われるだろう傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-12 23:10:35)
924.  007/慰めの報酬
ダニエル・クレイグが“ジェームズ・ボンド”に扮する新007シリーズの第二作目。 前作「カジノ・ロワイヤル」の完成度がとても高かったので、必然的に続編への期待は高まっていた。 そしてもって、今作「慰めの報酬」も極めて完成度の高いエンターテイメントだった。「賞賛」に値する。  やはり、ダニエル・クレイグが良い。 ショーン・コネリーやロジャー・ムーアが演じた往年の「007シリーズ」に愛着がある世代にとっては、無骨でスマートさがないクレイブのボンド像は、お気に召さないという評価も聞く。 が、敢えて「未完成」のジェームズ・ボンドを描き直し、そこにダニエル・クレイグというワイルドさと危うさを秘めた俳優を配したことは、一つの趣向として圧倒的に正しい。  そして、そこにはこれまでのシリーズにはなかったシリアスさとリアリティがある。  「殺しのライセンス」というものが実際にあったとして、それを与えられる者に絶対的に必要なことは、「自らの感情をひたすらに抑えつける」ということだろう。 ただし、そんなことが端から出来る人間などいるわけがない。たとえいたとしても、そんな人間は“ヒーロー”として決して魅力的でないと思う。  “ライセンス”を与えられ、そこに求められる“絶対性”を極限の状態で徐々に越えていくプロセスこそ、クレイブが演じるこの“007”シリーズの醍醐味であり、これまでのシリーズにはない魅力だと思う。
[映画館(字幕)] 9点(2012-12-07 16:13:53)
925.  メランコリア
はっきり言って、非常に感想の表現が難しい。 とてつもなく深遠な映画のようにも思うし、至極退屈で浅はかな映画のようにも思える。 監督自身が“鬱病”を患い、その自身の内情をそのまま映し出したかのような“悪い夢”のような映画だった。  自分自身の中に「鬱」がまったく存在しないのなら、何の迷いも無くこき下ろすことができたのかもしれない。 しかし、世の中の大部分の人がそうであるように、現代人のはしくれとして、自分の中の「鬱」と寄り添い折り合いをつけながら何とか生きてきた者としては、この映画が描き出す“果てしない憂鬱”を無視することなど出来るはずもなく、ただただどう向き合っていいものかと呆然としてしまった。  荘厳な終末感を描いた後半に対して、ただただグダグダな結婚式の模様を描いた前半が退屈過ぎるという評が多いようだが、僕はむしろ、幸せな風に見えた結婚式が徐々に確実に破綻してく様を描いた前半の方に、よりこの監督独特のおぞましさが溢れていたと思った。  冒頭の地球滅亡シーンは、恐ろしいまでに美しく、圧倒的な光景を見せてくれる。 ただそれよりも印象強く残ったことは、何と言っても主演女優の表現力だ。キルスティン•ダンストのパフォーマンスが物凄い。 映画は、彼女の恐ろし過ぎる表情を画面いっぱいに映し出して始まる。その表情には、実は怒りを伴っていないということに、殊更の恐怖を覚えた。 監督のラース•フォン•トリアーは、主演した女優の潜在能力を限界以上に引き出すことを強いる過酷な映画作りで有名だが、今作においてもその特徴は遺憾なく発揮されたようだ。 その“強要”に応えた若き実力派女優はやはり本物で、見事だった。  と、あらゆる側面で印象深い映画であったことは間違いない。ただ、だからと言ってイコール「面白い映画」だと断言できないのが映画の難しいところだろう。 結局、詰まるところ最初に記した感想に尽き、語弊を覚悟で表現するならば「鬱病患者の夢」のような映画だ。 非常に魅力的で興味を引かれるテーマではあるが、「他人の夢の話ほど、実際聞いてみてつまらないものはない」ということなのかもしれない。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2012-12-06 12:12:59)(良:2票)
926.  黄金を抱いて翔べ 《ネタバレ》 
終盤、無造作に置かれた古い聖書が映し出される。その描写が象徴するように、この映画には、目に見えるストーリーのすぐ裏側の部分で登場人物たちのあらゆる「懺悔」が溢れている。 幼年期の罪に対する懺悔、息子の不遇に対する懺悔、祖国に残した家族に対する懺悔、そして、夫を裏切ったことのへの懺悔と、おそらくはそれと同時に兄を裏切ったことへの懺悔……。  日本映画としては珍しい程に卓越した娯楽性の中で、人間たちのバックグランドを含めたドラマ性が深く映し込まれる。 実は、井筒監督作品を観たのは初めてだったが、様々な映画に“毒づく”だけあって、流石に骨太で濃ゆい映画世界を見せてくれたと思う。  原作は未読だが、映像的に表現されていない部分も含めて、物語の世界観と人間模様を忠実に描き出せているのではないかと思えた。 それぞれの登場人物たちの映されていない部分の言動やドラマが、ありありと想像出来ることが、映画として原作の持つテーマの核心を引き出せている証明だろうと思う。 冗長な回想シーンを羅列したり、説明描写を延々と繰り広げたりするダサい日本映画が多い中、 主要人物たちの犯罪への動機や人間関係の説明的な描写は極力排して、犯罪計画そのものにスポットをあてた構成は、非常にシンプルかつ映画としてのリアリティに溢れていた。  その卓越した映画世界の中に息づく俳優陣も主要キャストから脇役・端役に至るまで、とても“気合い”が入っていて素晴らしかったと思う。 何かが起こる派手なシーンだけでなく、酒を酌み交わしたり、ハンバーガーショップで計画を練るシーンに至るまでもれなく蔓延る緊張感は、俳優たちの優れた演技の賜物だ。  ハードボイルドやバイオレンスにただただ突っ走った映画は多い。しかし、それに相応しい娯楽性を伴った日本映画は数少ない。この映画が素晴らしいのはまさにそういう部分だと思う。 ハードボイルド、バイオレンス、サスペンス、幅広い娯楽を抱き、見事にエンターテイメント映画として飛翔してみせている。
[映画館(邦画)] 7点(2012-12-04 12:41:42)
927.  ザ・レッジ -12時の死刑台-
何よりもまず言いたいのは、「リヴ・タイラーがいい」ということ。彼女のファンならば、そりゃあ必ず観るべきだろうし、必ずしも彼女のファンでなくても気になる存在感を見せてくれるだろうし、三十代半ばにさしかかったこの女優の雰囲気に対して、思わず「エロい!」と言わずにはいられなくなることは間違いない。 はっきり言って、そういう要素だけでこの映画に“価値”はある。 そのリヴ・タイラー演じる人妻の滲み出る“エロさ”こそが、ある意味この映画の裏テーマでもあるのだ  決して完成度の高い映画ではないということは否めないが、どういうスタンスでこの映画を見始めるかによって、観賞後の満足度は大いに変動するだろうと思う。 不幸にも日本版のトレーラーやイントロダクションを鵜呑みにしてしまって、今風のソリッドシチュエーション的なサスペンスだと思っていると、大いに肩透かしを食うだろう。 僕は幸運にも観賞後にトレーラーを観たので良かったが、明らかに映画の内容を無視し、部分的には改ざんすら見られるトレーラーの内容は噴飯ものだった。 日本版のイントロダクションには、「この4人のうち死ぬのは1人」などと阿呆かと思わせるキャッチコピーを掲げたりしてしまっているが、そもそもこの映画はそういうタイプのものではない。  この映画がテーマとするものは個々人における「信条」との関係性であり、登場自分のそれぞれが「信じるもの」に対して、ある者は積極的に、ある者は強制的に対峙させられる様を描いた物語であると思う。 それを少々サスペンスじみたストーリー展開で彩っているに過ぎない。 登場人物たちが、それぞれ経てきた人生を礎にして、進むべき道を決断させられる様は興味深く、部分的には胸に迫るものもあった。  ただし、先述の通りだからと言ってこの映画の完成度が高いというわけではない。 最終的に振り返ってみれば、結局何だったんだという程度のお話で、設定や展開があまりに腑に落ちない部分も多い。 4人の主要人物が登場するが、それぞれが結構苦いトラウマを抱えているわりには、どうも人間が薄っぺらく見える。ドラマ性を深める要素は多分にあるのに、今ひとつ感情移入が伴わないのは勿体ない。  ともあれ、リヴ・タイラーの貞淑さの奥から徐々に滲み出てくる“淫靡さ”を受け、主人公たち同様に恋狂うことを楽しむべき映画だと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2012-12-01 22:05:25)(良:1票)
928.  キリング・ショット
ブルース・ウィリスの意味深な台詞回によるファーストカット、郊外のドライブインでの軽妙っぽいガールズトークから突如始まる銃撃戦、静止画によるキャラクター名表示に、時間軸を行ったり来たりする場面転換……etc。 冒頭から立て続けて映し出されるそれらの要素に対して、「あーハイハイ、“彼”のような映画にしたいのね」と苦笑いが出るのに時間はかからなかった。 “彼”とはもちろん、“クエンティン・タランティーノ”である。  不思議なもので、明らかに“タランティーノっぽい”映画づくりになっているのに、そう思わせるシーンが登場する度に何だか「ダサい」と感じずにはいられなかった。 真似はどこまでいっても真似だし、クエンティン・タランティーノ以上の映画オタクでない限り、いくら真似たところであの世界観は導き出せないということだろう。 元も子もないことを言ってしまえば、タランティーノ映画はタランティーノにしか作れないという至極当たり前な結論を痛感してしまった。 クエンティン・タランティーノの映画を全く見たことがない人ならば、それなりに楽しめるのかもしれないが、“オリジナル”を経てきている以上、この映画は決して褒められたものではない。  何やらミステリアスな真相を秘めたようにストーリーは展開していくが、蓋を開けてみれば中身は空っぽに近く、雰囲気だけで切羽詰まった感を強引に出しているに過ぎなかった。 キャラクター描写も今ひとつ中途半端で、マリン・アッカーマン演じる主人公は映画内の設定程美人に見えないし、アカデミー賞俳優フォレスト・ウィッテカーが演じる殺し屋は「狂気」が空回りしていてただの馬鹿みたいに見えた。  パッケージに大写しになっているブルース・ウィリスに関しては、ある程度予想はしていたが、“キーパーソン”という肩書きの完全な脇役。 この人は相変わらず小金稼ぎが上手い大物俳優だと思う。こういうしょうもない映画にも出るし、脇役も端役も厭わない一方で、話題の大作映画にも主演し続ける。さらには日本のCMにも顔を出すのだから、本当に俳優としての商魂が逞しい。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2012-11-29 23:06:58)(良:1票)
929.  ルパン三世VS名探偵コナン<TVM>
そもそも褒められる作品ではないだろうことは分かりきっていたので、ハードルを充分に下げて観ることが出来たことは、そこそこ“見れた”要因に繋がり結果オーライだったと思う。 馬鹿馬鹿しい粗に対してわざわざ怒ることの方が、よっぽど馬鹿らしいので、良かった点を挙げたい。  “VS”となっているが、やはりどちらかというとコナン寄りのストーリー展開は、作品としてバランスが良かったと言える。 越えてきた修羅場の質と量を考えれば、圧倒的にルパンが勝るわけで、ルパンメインの土俵が展開されては、一介の名探偵であるコナンが活躍する余地などなかっただろう。 あくまでコナンの活躍がメインの土俵で、ビッグゲスト的にルパン一味が絡んでくるキャラ立て方は、そもそも無理矢理な舞台設定の中で互いの特性を上手く引き出せていたとは思う。  あと、いつもは気恥ずかしいくらいに童貞感丸出しの「名探偵コナン」の世界観の中に、「ルパン三世」のアダルティなニュアンスが僅かながら加味されていて良かった。 それに伴う、コナン側のキャラクターの精一杯のエロさ加減が、このコラボレーションによる最大の成果だったのではないかと思う。  とは言っても、やはり「楽しめる」という表現を使うにははばかれる出来であることも事実。 それぞれの作品に対して、ギリギリ「冒涜ではない」と言えるレベルであることは否めない
[地上波(邦画)] 3点(2012-11-29 23:04:40)
930.  ルパン三世 東方見聞録 ~アナザーページ~<TVM>
ルパンと次元以外の主要キャラクター声優陣の入れ替えからまだ日は浅いが、既に“馴染んでいる”と感じられたことは、極めて高いハードルに挑んだ新しい声優陣を賞賛すべき要素だと思う。 先だって放送されたテレビアニメシリーズ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」の成功を経て、新キャストチームの結束が順調に固まっていることは、ファンとして喜ぶべきことだろう。  今回のテレビスペシャル版には、「LUPIN the Third -峰不二子という女-」で見せた淫靡で挑戦的な趣向は一切無く、毎度おなじみのテレビスペシャル版という趣だった。 プロット的には、「いったい何番煎じ?」と思わずにはいられないお決まりのパターン。 不二子にそそのかされたルパン一味があるお宝にまつわる謎を追求する中で、謎を解明する核心となるヒロインが絡み、ヒロインを守りつつ謎を解き明かしお宝の正体に辿り着く。 最終的には、“カリオストロ”以来定番の「俺のポケットには大き過ぎらぁ~」的展開で、ルパンは何も手に入れぬまま、銭形警部に追われつつ去って行く。。。  目新しさなんて何もなく、もはやそういうことをこのテレビスペシャル版で求めることはお門違いにも思えてくる。 ここまでくれば「水戸黄門」と同じ領域であり、決まりきったプロットを受け入れ、楽しむ努力をしなければならないのかもしれない。  と、なんとか許容したい気持ちの一方で、「名探偵コナン」のアニメスタッフが担ったらしいアニメーションの造形は極めて安っぽく、画的な格好良さがまるでないことは、大きなマイナス要素と言わざるを得ない。  「LUPIN the Third -峰不二子という女-」のテイストでの続編か映画版は、引き続き激しく希望。
[地上波(邦画)] 3点(2012-11-29 23:02:04)(良:1票)
931.  ペントハウス
高揚感を煽る音楽の中、ベン・スティラー演じる主人公が、絶妙な笑みを浮かべながら“あるところ”を歩いていく。そのラストカットを見ながら、思わずにんまりと親指を立てたくなった。 イントロダクション通りのストーリーで、辿り着く顛末も大体想像通り。それでも、これだけの満足感を観客に与えるのは、アメリカのコメディ映画界が大衆を喜ばせるための「基本」を常に全うしているからだと思う。  もはやアメリカコメディ映画の世界では二大俳優といっていいベン・スティラーとエディ・マーフィの競演については、当然のことながら安心して見られる。  特にベン・スティラーというコメディ映画俳優の存在感は凄い。 主演作の殆どにおいて、彼の演じるキャラクターはあまり笑わない。主人公が真剣になればなるほど、彼を取り巻く環境は大揺れを起こし、可笑しさが生まれる。 それは、すべての人間が真剣に生きているこの現実の世界こそに、本当の可笑しさが潜んでいるということの証明であり。だからこそ、ベン・スティラーの主演映画は面白いのだろう。  が、その一方でこの二大俳優が組んで、しかも一応“幼なじみ”という設定の割には、ふたりの掛け合いが少なく、連携もイマイチだったようにも思えた。 ストーリー構成的には、ベン・スティラーの単独主演で、エディ・マーフィは脇役という印象が強く、勿体ないと感じた。  また、よくよく突き詰めれば、整合性がない部分もチラホラ目につくし、説明不足な展開もある。 そういう部分が、最終的な満足感のわりに作品としてのグレードを幾分か下げてしまっていることは否めない。  しかしながら、この手の映画に“こなれている”俳優たちのアンサンブルは極めて安定していて、気を削がれるようなことは決してない。  “人種のるつぼ”であるアメリカ社会が抱える格差や経済の問題意識もベースに敷きつつ、バランスの良いエンターテイメントに仕上げる“地力”が流石だと思う。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-11-28 23:54:57)(良:1票)
932.  私が、生きる肌
ペドロ・アルモドバル、このスペイン人監督の映画を観るのには、いつも「覚悟」が要る。 多くの場合、彼の映画を観ていると途中激しい嫌悪感を覚える。「まさか……」と思わせるおぞましい程にショッキングな展開が、現実となり画面に繰り広げられる。 目を背けたい衝動にかられるけれど、実際はその衝動に反するかのようにより食い入るように画面を凝視していることに気付く。  それは、この映画監督が追求し描き出しているものが、“人間”が“人間”として深層心理の奥底で「見てみたい」と思っている“人間”の姿だからだと思う。 だからこそ、自分自身の生半可な倫理観を蹴散らして、画面から目を離すことが出来なくなるのだろう。  この映画で描き出される人間の物語は、もはや「悲劇」などという一言ではおさまらない。 そんなものは早々に超越し、人間の「存在」と「是非」そのものに対して疑問を投げかけてくるような感覚を覚えた。  アントニオ・バンデラス演じる哀しきマッドサイエンティストの倒錯した生き様と死に様には、“鑑賞者”としてあらゆる感情が渦巻く。一体、彼の行動をどう捉えるべきなのか、最終的な部分で自分の答えを導き出すことが出来なかった。  吐き気を覚える程のおぞましさを感じたかと思えば、次の瞬間には息をのむ程の美しさを目の当たりにする。 そんな異様な映画世界に対峙してまともな判断ができるはずはないのかもしれない。  ああ、何とか言葉を尽くそうとする程に、自分の表現力の無さを痛感し、すべての言葉が陳腐に思えてくる……。 手塚治虫の短編集「空気の底」の一編に紛れ込んでいてもおかしくないような世界観に対して、好きか嫌いかの判別もつかぬまま、主人公たちと同様にただただ倒錯する。
[DVD(字幕)] 8点(2012-11-27 15:33:24)
933.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
ゲイリー・オールドマンの秘めた感情が読めない瞳が、眼鏡の奥で硝子玉のように鈍く光る。 彼が演じるスマイリーという男が、この物語の中で貫き通したものは一体なんだったのだろう。 それは正義だったのか、野心だったのか、それとも暗恨か、嫉妬か。 ラストカットで主人公が携えた微笑には、彼が抑え込んできた様々な感情が一瞬垣間見えたように思えた。  インフォメーションから伝わっていたようなストーリー的な難解さは実はない。 人と思惑が入り交じり、いかにも入り組んでいるように見えるが、最終的に解きほぐされた顛末は、呆気ない程に単純で驚きはなかった。このキャスティングで、“彼”が裏切り者では工夫がなさ過ぎると思った。 正直なところ、その呆気なさに対して満足度が高まり切らなかったことも事実。人物関係の説明描写が明らかに不足したまま固有名詞を並び立てる語り口は、ストーリーをただ無意味に難解じみさせているようで、サスペンスとしてアンフェアに感じた。 そのことが映画として必要な娯楽性の不足に直結していることは否めない。  ただし、“研ぎすまされた”という表現がまさに相応しい俳優の演技と、映像構築も含めた演出は、文句なしに際立っている。 さめざめしくも美しい陰影の濃い映像世界はこの物語に相応しく、そこに息づく俳優たちはそれぞれ最高のパフォーマンスを見せていたと思う。 特筆すべきは、やはり主演したゲイリー・オールドマンの素晴らしい存在感だろう。 一貫して感情を高ぶらせることのないこの映画の主人公は、彼のフィルモグラフィーの中でも最も「静的」なキャラクターだったのではないかと思う。 終始、淡々とした佇まいの中でも、決して平坦ではない、深い人物像を構築してみせたと思う。  ゲイリー・オールドマンは、今作でアカデミー主演男優賞も有力候補だったので是非穫ってほしかった。 そして、ナタリー・ポートマンもとい“マチルダ”から“スタンフィールド”へのオスカー授与シーンが見たかった!
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-11-24 10:48:04)(良:1票)
934.  007/ゴールデンアイ
5代目ジェームズ・ボンドとなったピアース・ブロスナン版「007」シリーズの第一作目。自分自身の世代的には(1981年生)、最も馴染み深い「007」映画であってもいいはずだろうが、ようやく初鑑賞に至った。 今作の後の「トゥモロー・ネバー・ダイ」と「ワールド・イズ・ノット・イナフ」は公開時に観ていて、正直なところそれぞれ満足度が低かったことが、ブロスナン版の「007」に対する評価を確定付け、ひいては同シリーズ全体に対しての魅力減に繋がっていたように思う。  今作は、当時低迷していた同シリーズの人気を回復させ、批評的にも興行的にも成功したという評価だったので、今さらながら期待して観た。 結論としては、決して悪くはないけれど、特筆して「面白い!」ということも決してないというところか。  映画を構成する様々な要素があまりに“見慣れている”ということに尽きる。 事件の発端も、悪者の企みも、主人公のピンチとそれの回避方法も、あらゆる場面で「まあそうなるんだろうな」と容易に予測がついてしまう。 当然ながら目新しいワクワクハラハラなんてあるわけがなかった。  またこのシリーズの特徴からすれば、“ボンド・ガール”に色気がないことも致命的だったかもしれない。イザベラ・スコルプコ演じるキャラクターは、コンピュータ技師という設定もあってか、終始露出が少なく、「007」ならではの娯楽的要素を欠いてしまっていたと思う。 敵方の“裏・ボンドガール”を演じたファムケ・ヤンセンは、分かりやすいほどにエロい言動を繰り広げ色気はあるのだが、“超ハードS”なキャラクターなのでちょっと引いてしまった。  ショーン・コネリー版やロジャー・ムーア版の過去のシリーズ作品のように、もう少し時が経てば、オールディーな風合いが加味されるのかもしれない。 しかし、今の時点では中途半端な古臭さばかりが目につき、マイナス要素の方が大きいことは否めない。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-24 10:34:06)
935.  007/私を愛したスパイ 《ネタバレ》 
ロジャー・ムーア版の「007」を初めて観た。 自分の両親の世代では、「誰のジェームズ・ボンドが一番か?」という質問に対して、ショーン・コネリーとロジャー・ムーアで二分するようだ。 もはや死語として風化しつつあるこの時代ならではの“ダンディズム”こそが、“ジェームズ・ボンド”というキャラクターに与えられた性質であり、確かに両者ともタイプは違うが演技から溢れ出んばかりのダンディズムが印象的な俳優だと思う。個人的には、ショーン・コネリー版に一票入れたい。  アクションシーンについては、現代の最新作と比べるとやはり愚鈍に見えてしまうことは否めない。しかし、「面白いアクションを見せよう!」という気概は充分に伝わってきて、その気概こそがこの映画シリーズの娯楽性そのものだと思えた。  ジェームズ・ボンドが雪山からダイビングしユニオンジャックのパラシュートが爽快に開くアバンタイトルにアガり、 “ボンド・カー”のロータス・エスプリが水中を突き進んでいく様にアガり、 “ボンド・ガール”として終始主人公と同伴するソ連の女スパイの格好がいちいちエロいことにアガる。  また悪役キャラクターの存在感も際立っており、アクションシリーズならではのエンターテイメント性を高めていると思う。 今回のボンド・ガールにとってジェームズ・ボンドは恋人の仇のはずなのに、結局最後はなし崩し的に“よろしく”やっちゃう顛末も、「なんでやねん!」と突っ込みを入れつつも、問答無用に親指を立てたくなった。  過去作の良いとこ取りな感じで、様々な要素や描写が盛り込まれているタイプの映画なので、その分尺がいささか長めだけれど、もし自分がこの映画を1977年当時に映画館に観に行ったとしたならば、やっぱりこれくらいのボリュームは欲しいと思うところだろう。
[DVD(吹替)] 7点(2012-11-23 02:18:05)
936.  エクスペンダブルズ2
クライマックス、シルベスター・スタローンの太い腕がナイフを地面に突き立てる。 その“腕の太さ”は、単純な筋肉の誇示ではなく、この映画俳優が長年に渡り培ってきた成功と苦労の象徴のように見えた。  満を持してこの映画を観た翌日の日曜日、実家にて庭作業をする父親を手伝った。自分自身が育った分、当然ながら父親は確実に歳をとっている。その父親の腕と、前日に見た老アクションスターの腕が、見た目的にも、意味合い的にも、何だか重なって見えた。 もちろん良いところばかりではないが、自分がこの“腕”によって育てられてきたことは紛れもない事実であり、感謝をしなければならない。 そして、「映画鑑賞」という人生経験においても、この映画に勢揃ったアクションスターたちの“太い腕”によって育てられたということは、たぶん間違いないことだと思う。  つまるところ、この映画が世界中のアクション映画ファンにとっての「夢」そのものであることは明らかだ。 そんな「夢」の実現、そして彼らがそれぞれに苦心して経てきた映画人生そのものに、まず感謝せずにはいられない。  もちろん「完璧」などという形容が相応しい映画ではない。ただ、敢えて言うならば、「完璧」ではないことが「完璧!」と断言できる。 スタローンとシュワルツェネッガーとウィリスが、見紛うことなくそろい踏み、惜しげもなく銃器をぶっ放す。 ヴァン・ダムが、代名詞のハイキックを見事に繰り出し、極悪非道を演じる。 ステイサムは、洗練された格闘とナイフアクションで、“現トップスター”の意地を見せる。 そして御歳“72歳!”のチャック・ノリスが、“伝説的”な立ち位置でオイシいところをかっさらう。 ストーリーにおける粗なんて本当にどうでもいい。これだけの要素が盛り込まれていて、他に何が要るのかという話だ。 「良い!」と思う全てのシーンにもれなく付随する“ほつれ”も含めて、この映画の不完全な完全さだと思う。  「大人の事情」を感じてしまうジェット・リーの序盤での“里帰り”や、“マギー・チャン”役には何とかマギー・チャンを出してほしかったなどなど細かな物足りなさはあるにはある。 そして、セガールにスナイプスにヴィン・ディーゼル、見たいヤツらはまだまだいる。 「5」あたりで超グダグダになることまで、アクション映画シリーズの“お約束”と想定に入れて、まだまだ“祭り”が観たい!
[映画館(字幕)] 8点(2012-11-19 23:54:57)(良:3票)
937.  007/ゴールドフィンガー
今のダニエル・クレイグ版の「007」シリーズは大好きで、公開を控える最新作も今年最注目のアクション映画の一つだ。 一方で、往年のシリーズ作品も何作かは観たけれど、それほど面白さを感じてこれなかった。古いアクション映画ならではの愚鈍さが目についてしまい、“世界トップクラスのスパイ”という主人公のキャラクター設定において説得力を感じなかったことが大きな要因だと思う。  しかし、シリーズ第3作目となる今作においては、任務そっちのけで状況やところ構わず方々の美女に“色目”を使うショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドの“らしい”キャラクター性が際立っていて良かった。 “うつつ”を抜かす対象となるボンドガールたちも、それぞれ美しく魅力的だった。囚われの身の中で、飛行機内の東洋系のメイドにまで好色の目を見せるショーン・コネリーのニヤケ面が可笑しかった。  ただし、今作の場合、悪のボスのキャラクターについては、ただの“成金デブオヤジ”でしかなく、悪役として特筆すべき卑劣さや恐怖感を微塵も感じなかったことは残念だ。 また、その後に予定されている展開ありきのボンドカーの秘密機能など、諸々のご都合主義な部分は多く、突っ込みどころは枚挙に暇が無い。  まあしかし、ただの古めかしいアクション映画の範疇には留まらないこのシリーズの魅力と、それに伴う娯楽性は充分に堪能出来ると思う。 シリーズ第3作目にして、あらゆる「定番」が確立した作品でもあるらしいので、様々な"お決まりごと”を楽しむことを前提として観ることができれば、何の問題もない。  惜しむらくは、ラストはこの作品のタイトルに相応しく、黄金漬けになり死に絶えた悪役の指のアップかなんかで終わってほしかった。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-11-15 23:24:53)
938.  フレンチ・コネクション
こういう映画を観ると、自分は映画という娯楽に根本的な部分では「精巧な虚構」を求めているのだなと思う。 ザラつく画面に映し出されるリアルな息づかい、決してトントン拍子には運ばない物事の顛末、そして正義を司る者が常に「完勝」するなんてことはあり得ないという現実感。 その唐突な映画の終焉に対して「え、終わり?」と不満を禁じ得なかった自分は、この作品の持つ価値を感じつつも、どうしても最終的に「面白かった」とは思えなかった。  非常にどっちつかずな言い方になるが、それはイコールこの映画が「面白くなかった」ということではない。 ブルックリンの刑事たちの生々しい姿が延々と描き出される映画世界に対して、終始惹き付けられたことは間違いない。 怒濤のカーチェイスシーンから、映画史に残る有名な“背後からの射殺”シーンと、見所と見応えは枚挙に暇がない映画であった。  では何が自分自身の好みに沿わなかったのか。それは即ち、この映画の最大の売りである“リアリズム”に他ならないように思える。 この映画のモデルは実在の刑事であり、その元刑事の生き様を描き出したノンフィクションが原作である。 そして監督は、リアリティを徹底しドキュメンタリー的手法でこの映画を構築していったという。 その徹底したリアリズムが、個人的にキツかったのかもしれない。  それは、あまりに生々しい描写の連続で観るに耐えないというような分かりやすいキツさではない。 ありとあらゆる情報網が張り巡らされ、別に知りたくもない現実が次々に明るみになる現代社会に生きる者として、映画の世界にまで"現実感”を求めることに疲れたという表現が正しいように思う。 このハードボイルドな刑事映画に描かれていることとその方法は、圧倒的に正しいのだろう。 ただ、楽しくはない。とどのつまりそういうことだ。  奇しくもこの映画の公開と同じ年、もう一つのハードボイルド映画の中でもう一人の刑事が登場した。 今作のポパイ刑事と同様に、正義の名の下に問答無用に悪を葬るその刑事の通称は“ダーティ・ハリー”。 この二人のアウトロー刑事のスタンスは極めて似通ってはいる。 しかし、同じ丸腰の悪党に対してでも、背後から撃ち殺すポパイよりも、正面から堂々と撃ち殺すハリーの方が、やっぱり格好良い。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-11-11 22:24:23)(良:1票)
939.  ダーティハリー
サンフランシスコの深い青空を背景にして、ライフルの漆黒の銃身が伸びる。遠く照準の先には、真っ青なプールに映える黄色い水着を着た美女。冷淡な凶弾は音もなく美女を襲いあっさりとその命を奪う。 オープニングクレジットと共にサングラスをかけた“スター俳優”が颯爽と事件現場に現れ、映画が始まる。  冒頭数分間のこのシークエンスで、一気に映画の世界に引き込まれた。 「凄い映画だ」ということは、その時点で確信できた。そして、今この瞬間までこの映画を"未経験”だったことを後悔した。  あまりに有名なハードボイルド映画の「傑作」であることはもちろん知っていたけれど、今この時代に初めて観て、これほどまでに心底「格好良い」とあらゆる意味で思える映画だとは思わなかった。 全編に渡るカメラワークの格好良さ、音楽の格好良さ、台詞回しの格好良さ、そして何と言っても“クリント・イーストウッドの格好良さ”もうそれに尽きる。 世代的にクリント・イーストウッドという映画人に対して、“ベテラン名俳優”そして“名匠映画監督”としての認識が大部分を占めるので、“スター俳優”としての馴染みが実際無かった。 時を越えてようやく、クリント・イーストウッドという稀代のスター俳優に邂逅できた気分だ。  映画史に残る「傑作」故に、この映画の価値と見所は多岐に渡ると思う。 時代に楔を打つバイオレンス性、正義と法の矛盾に対しての憤り、娯楽映画における警察像の変遷、この映画を観たのは初めてだが、おそらく観る程に新しい発見があり面白味が深まるだろうと思える。  でも、個人的に何よりも重要視したいことは、やはり主人公の魅力に尽きると思う。 演じた主演俳優の時代を越える格好良さ、そして彼が演じたキャラクターの映画史上に残るアイコン性。 登場した瞬間に、当然の如く「ああ、ダーティハリーだ!」と初めて見る者にすら思わせるその強烈な個性。  この映画の主人公に、クリント・イーストウッドという俳優が起用されたのは、決して既定路線ではなく、様々な巡り合わせが重なった上でのことらしい。 だからこそ、その「誕生」は映画史にとって奇跡的なことだったと思う。
[CS・衛星(吹替)] 10点(2012-11-11 01:21:56)(良:1票)
940.  恐怖の報酬(1953)
大量のニトログリセリンを荷台に積んで悪路を延々運転する主人公に、同乗する相棒が言う「2000ドルは運転の報酬だけではない、恐怖に対する報酬でもあるのだ」と。 それはまさにその通りで、後半の主人公は年老いて恐怖におののく相棒を罵倒し続け、「お荷物だ」と悪態をつくが、もし一人であれば到底この任務を全う出来る筈はなく、早々に逃げ出していたことだろう。 そういう極限状態の中で左右される人間の心理が、巧みな演出の中に盛り込まれた映画だったと思う。  有名な映画なので、タイトルはもちろん「ニトログリセリンを運ぶ」という大体のプロットも認知していた。 そのことも影響したのか、主人公たちが置かれている環境と人間関係をつぶさに描いた導入部分は、少々冗長に感じてしまい、「いつニトロが出てくるんだ?」と間延びしてしまった印象は否めない。 序盤の人間模様が不要だとは思わないが、このストーリーで約150分の尺はやはり長過ぎると思えた。 “オチ”をああするのであれば、もっとシンプルな構成にした方が、「恐怖」とそれに伴う人間の心理が際立ち、映画としての娯楽性が高まったのではないかと思う。  ただ、繰り返しに成るが、中盤以降の演出は極めて巧みだ。 度重なるハプニングがバランスよく配置され、ニトログリセリンを運搬するトラックを二台描き出すことにより、どちらがいつ危機を迎えるのかという緊張感が効果的に持続された。 決して主人公のみをヒーロー的に描き出すのではなく、運搬にあたる4人それぞれの人間性をしっかりと描き、彼らが陥っている生活環境と、非人道的ですらある危険任務に自ら身を捧げざるを得なかった状況が、ドラマの中にきちんと盛り込まれていた。  最大の危険を乗り越え、一服しようとした瞬間、フッと巻き煙草が飛び散る。的を得た非常に良い演出だったと思う。 大ラスの言葉の通りの“オチ”については賛否が分かれるところだろう。実際、思わず呆気にとられてしまった。 しかし、この作品がフランス映画あることを思い出すと、ある意味「真っ当」な顛末のようにも思えた。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-11-09 16:01:10)
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