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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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941.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
黒澤明監督が自らのプロダクションを(東宝の意向もあって)立ち上げて手がけた第一作。汚職事件に絡む復讐劇を描いたサスペンス映画で、黒澤監督らしい見ごたえのある娯楽作に仕上がっていて最後まで面白く見ることができた。三船演じる主人公・西が復讐のためならどんなことでも厭わない男で、やや共感しづらい面もある(実際、主人公よりも藤原釜足演じる和田にずっと感情移入していた。)ものの、ちゃんと人間的な部分も描いているので、主人公にまったく感情移入ができないというようなことはない。この後の「用心棒」や「椿三十郎」と違ってやるせないバッドエンドですっきりしない結末であるが、ここにこの映画で黒澤監督の言いたいことが集約されているのだろう。ただ、人間ドラマとして少し物足りないところもあり、もう少し登場人物たちを掘り下げて描いても良かったのではという気はするし、やはり女性の描き方に不満が残る。でも、西と板倉(加藤武)が隠れている軍需工場跡にやってきた西の妻(香川京子)と西のラブシーンはいつもの黒澤映画では見られないようなシーンでとても印象に残った。出演者の中ではやはり岩淵副総裁役の森雅之。家庭で見せるよき父としての顔と汚職に手を染めている悪の顔をきっちりと演じ分けていてさすがに上手いし、ぱっと誰だか分からないような老けメイクのせいもあってか強烈に印象に残る。この岩淵の息子役が三橋達也で、香川京子演じるその妹である西の妻が障害者という設定なので見ていてつい川島雄三監督の「風船」を思い浮かべてしまったが、もし、川島監督なら香川京子の役柄の存在をもっと大きくしていただろう。そうそう、この映画は小津安二郎監督の映画の顔である笠智衆が初めて黒澤監督の映画に出演した作品でもあるんだなあ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-18 23:47:58)
942.  若者たち 《ネタバレ》 
「若者たち」という歌は好きな曲の一つだが、元々は同名のテレビドラマの主題歌だったようで、本作はその劇場版にあたるわけだが、全篇を通してとにかく熱く、とてもエネルギッシュな映画で、登場人物たちの言動も必死さと切実さがよく伝わってくる。昨今ではテレビドラマの劇場版というと、話題になった、ヒットしたというだけで安易に作られすぎているようにも思うが、この映画は事情で打ち切りになったドラマを映画化したものであり、独立プロダクションの製作。それだけに作り手のやり残したことをやりたいという思いが感じられる映画になっているのも良かった。(ドラマは知らないのだが。)両親のいないきょうだいが助け合って生きていく中で、それぞれのドラマが展開するという内容は「ひとつ屋根の下」を彷彿とさせているが、長男(田中邦衛)の単純バカな性格は柏木達也(江口洋介)に似ているところがあり、野島伸司はそうとうこれを参考にしてあのドラマを書いたのではないかと思われる部分が多かった。(それを考えると「ひとつ屋根の下」に本作の三男役の山本圭が出ているのは偶然ではない気がする。)クライマックスは激しい取っ組み合いのきょうだいげんかのシーンだが、ほとんど嫌悪感や抵抗感もなく安心して見ていられたのは「ひとつ屋根の下」でもこういうケンカのシーンが多かったためかもしれない。(関係ないが、また「ひとつ屋根の下」が見たいなあ。)長女(佐藤オリエ)が原爆症の恋人(石立鉄男)と付き合うのを反対する長男を三男が見事に論破するシーンが印象的だった。若い頃の山本圭は根暗な学生運動家のようなイメージがあり、あまり好きではないのだが、こういう役をやると若い頃の山本圭はものすごくはまる。古い映画だが、登場人物たちに共感してしまう部分も多く、とても見ごたえのある良い映画だったと思う。続編もあるようなのでもし機会があったら見てみようかな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-18 23:11:53)
943.  刑事コロンボ/愛情の計算<TVM> 《ネタバレ》 
今回の犯人は息子を思うあまりに殺人を犯してしまうロボット工学の権威。でもそれにしては犯行がかなりお粗末で、ロボットを自らの共犯者のようにアリバイ作りに使うとか本当に頭のキレる犯人だったらまずやらないだろう。ひょっとしたらこの犯人は研究に関しての知識は豊富だが、それ以外はからっきしだめなのかと思えるほどだった。ラストはコロンボが犯人の息子への愛情を利用して芝居を打つというこのシリーズでよくあるパターンの解決方法だが、これがいつにもまして強引で、真犯人をあげるために無実の人間をしかもそれと分かって逮捕してしまうのはいくらなんでもやりすぎで不当逮捕もいいところ。もう呆れるしかない。今回は科学研究所が舞台でどこか近未来的なSF風味があるのが斬新だが、それもこのシリーズには少し不釣り合いな感じがする。とはいえ、犯人がアリバイに使ったロボットやそれを開発した天才少年とコロンボのやりとりは見ていて微笑ましかった。その天才少年の名前がスティーブン・スペルバーグ。もちろん「構想の死角」を手がけたスピルバーグをもじった名前であるが、当時の彼はまだ無名。偶然だろうけど、今回の内容が内容だけに、彼が将来、SF映画で成功することを予見しているかのようだった。
[CS・衛星(吹替)] 4点(2014-02-16 14:10:31)
944.  ジャズ大名 《ネタバレ》 
江戸時代の日本に外国人が漂流というと「おろしや国酔夢譚」の逆パターンのような話になってしまいそうなところを、それがきっかけである潘の殿様(古谷一行)と家来たちがジャズにはまっていく姿を勢いよく描いていて、岡本喜八監督らしい実に軽快な映画に仕上がっていて面白かった。とにかくひたすら陽気でテンションが高くエネルギーに満ち溢れていて、1986年制作と喜八監督の映画としてはけっこう後年の作品にもかかわらず、衰えというものをまったく感じさせないようなパワーがあるのはすごい。そして何よりもこの映画を喜八監督本人が楽しんで演出しているのがよく分かるし、見ている人に対しても肩の凝らない映画をという思いもよく伝わってきて本当に何も考えずに気楽に見ていられる映画だ。ラスト20分の狂乱のジャズセッションのシーンはなんとも強烈で印象に残る。その狂乱の中でいつの間にか明治になっても「俺たちにはそんなこと関係ないぜ」とばかりに狂乱のセッションを続けるエンディングに喜八監督らしい反骨精神のようなものを感じることができた。「ああ爆弾」ほどではないがシュールなシーンも多く、中でもそろばんをスケボー代わりにして城の中を移動する姫には笑わされたし、ほかにも殿様をはじめとしておかしくて個性的な登場人物たちも面白い。喜八監督の映画を見るのはかなり久しぶりで、それもあってか見る前はちょっと不安な面もあったが、そんな不安は見ているうちに吹き飛び最後まで楽しく見ることができて良かったと思う。最後にもう一言、矢口史靖監督の「スウィング・ガールズ」はあんがいこの映画の影響を受けてる部分もあるのかもしれないと少し思った。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-14 23:20:42)
945.  日本一の男の中の男
古澤憲吾監督による植木等映画、かなり久しぶりに見たが、やっぱりものすごい勢いがあって面白い。昇進できると張り切っていた植木等演じる主人公 小野子等がストッキング会社の会長(東野英治郎)の一声で転勤することになり、最初は落ち込むが、すぐにポジティブな考えに転換するところはこのシリーズらしい展開でこれだけで見ていて前向きになれるし、このシリーズの植木等を見ていていつも思うが、人生何があっても明るく生きていこうというのが感じられ、見た後にとても元気になれるのがこのシリーズの魅力だとあらためて思う。既に青観さんが書かれているとおり、本作でも植木等演じる主人公は頭の回転が異様に早く、行動力があり、言いたいことは相手が目上の存在だろうがズバズバ言う。これが見ていて非常に気持ちよく、この主人公にある種、憧れのようなものも感じることができるし、本当に嫌なことなどきれいさっぱり忘れさせてくれる不思議な魅力がある。そして勢いのある古澤監督の独特の演出も面白さに拍車をかけていて飽きさせない。とくに軍艦マーチをバックに女子社員たちが屋上で行進するシーンはいかにもこの監督らしいシーンで印象に残る。これまでのシリーズで浜美枝が演じていたヒロインを本作では浅丘ルリ子が演じている(日活を辞める前後の頃だそう。)が、とくに違和感はなく、むしろどこかクールな感じで新鮮に感じられた。浅丘ルリ子といえばなんといってもリリーであるが、このシリーズには寅さんシリーズと違い、ペーソスとかそういうものは基本的になくひたすらお笑いに徹しているところが潔く、そこも魅力的で好きだ。(もちろん、寅さんシリーズも好きなんだけどね。) 本作を見終わってクレージー映画や、植木等主演の喜劇映画をまたもっと見たいと思ったし、また、今の日本映画にはもっとこういうあっけらかんとした前向きな映画が必要なのではないかとも感じた。 やっぱり植木等、好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-06 23:22:31)(良:1票)
946.  キッチン(1989) 《ネタバレ》 
バブル景気の頃に話題になった小説が原作の森田芳光監督の映画。森田監督のベストセラー小説の映画化といえば「模倣犯」が思い浮かんでしまい、見る前は不安のほうが強かったのだが、見てみるとかなり淡々としていて、ストーリー自体にはそれほど面白味を感じないものの、独特の味わいや雰囲気が森田監督らしく、この監督の作風も映画によく合っていて、見終わって妙に印象に残る映画だった。これがデビュー作の川原亜矢子(後年の面影が驚くほど全くない。)も不思議な雰囲気を持っている主人公 みかげを初々しく演じていて、演技はたどたどしいのだが、それがみかげというキャラクターを逆に魅力的にしていて、まだ新人であった彼女の起用は正解だったように思う。(大林宣彦監督の映画に登場するヒロインに印象としては近い。)ほかの出演者たちも見たことがないような俳優が多く、そのおかげで映画を見ていて新鮮に感じられるのが良かった。そんな中でみかげを自宅に住まわせる青年の「母親」を演じる橋爪功は普段の渋いイメージからは想像できないようなオカマを見事にリアルに演じきっており、強烈なインパクトを残している。そうそう森田監督といえば作中に登場する料理が印象に残ることが多いのだが、この映画ではタイトルのごとく料理が登場するシーンが多く、中でも明かりの消えた部屋でミックスジュースを作るシーンがとても幻想的に描かれていてとくに印象的だった。
[DVD(邦画)] 6点(2014-02-02 21:20:04)
947.  カルメン純情す 《ネタバレ》 
「カルメン故郷に帰る」の続編。田舎が舞台であった前作とは違い、カルメンと朱美の都会での生活を描いているが、カラーだった前作と違って白黒(ここがいちばん驚いた。)で、前作同様にコメディーではあるものの、前作と比べるとやや内容は暗めでしんみりとしており、続編でありながら印象はだいぶ違うものになっている。個人的にはやはり前作のほうが好きだが、前作で日本初のカラー映画を手がけた木下恵介監督だけあって本作でもカメラを傾けた斜めの画面の多用などはかなり実験的で面白いし、選挙に立候補する軍国主義の女性政治家(三好栄子)と「原爆」が口癖の家政婦(東山千栄子)のキャラクターも滑稽で強烈。また木下監督らしい政治風刺が利いているのも面白く、当時の時代性がよく出ている。しかし、木下監督はそういった当時の風潮を笑い飛ばしているように見え、時代に敏感で、その時代を冷静にみつめることのできる監督なのだとあらためて気づかされた。ひょっとしたら本作は「カルメン故郷に帰る」の続編としてよりも、それとは別の社会風刺喜劇として見たほうが面白いかもしれない。ラストがやや中途半端な印象があり、エンドマークも「第二部 完」となっていて、三作目の構想があるような終わり方をしているが、実際のところはどうだったのだろうとつい考えてしまう。
[DVD(邦画)] 6点(2014-01-30 19:47:31)
948.  あの夏、いちばん静かな海。
北野武監督の第3作は暴力的な世界を描いた前2作とは趣を変え、サーフィンに次第にのめりこんでいく若者とその恋人を描いたラブストーリーとなっているが、自身は出演しておらず、企画としてもクレジットされているあたりにたけしの本作に対する本気度がうかがえるし、実際に映画としての完成度も非常に高い。「その男、凶暴につき」や「3-4X10月」で既にセリフに頼らず映像で見せていくというたけしの作風は確立されていたが、本作では主役のカップルを2人とも聾唖者に設定することで、セリフを排除し、2人の関係は映像のみで語られていくというのがいかにもたけしらしく、「その男、凶暴につき」から本作までの3本でたけしの映画監督としてのスタイルは完成されたものになったのだろうと思わずにはいられない。本作は主役2人のセリフがない分、ものすごく淡々とした映画にはなっているが、言葉で語る以上にこの二人がお互いを思う気持ちや切なさがじゅうぶんに伝わってきて、まさにサイレント映画の手法だが、あらためて映画というのはこういうものなんだと気づかされるし、その映画を演出しているのが普段はテレビでバカをやっているタレントであることにもやっぱり驚かされ、本作を見るとたけしという人は本当は才能のある人なんだと感じさせられる。主役のふたりを演じた真木蔵人と大島弘子もよく、いかついイメージのある真木蔵人はさわやかに好演していても違和感がないし、なによりもサーフィンに熱中する彼を見つめる大島弘子がすごく印象に残り、これ一本で引退したみたいだが、だからこそよけいに鮮烈なものがあるのかもしれない。夏の海が舞台だが、たけしらしい空と海の美しさも印象に残る。これがたけし映画初参加となる久石譲の音楽も映画の雰囲気にとても合っていて、美しくいつまでも耳に残り、これも映像とともに二人のドラマを描くのに効果をあげている。賛否両論ある映画のようだが、見終わってなんとも言えない気持ちになり、素直に良い映画だ、見て良かったと思えた。最近の「アウトレイジ」のようなたけし映画も悪くはないが、やはり本来のたけし映画の良さは本作のような独特の静けさを持った映画にこそあるような気がする。
[DVD(邦画)] 8点(2014-01-25 01:18:55)(良:1票)
949.  刑事コロンボ/パイルD-3の壁<TVM> 《ネタバレ》 
主演のピーター・フォーク自身が監督を手掛けた作品で、コロンボが死体なき殺人事件に挑むエピソード。いつものように倒叙形式で最初から犯人は分かっているが、殺しのシーンが直接描かれないのは新鮮だったし、演じる本人自ら演出していることもあってか、コロンボのキャラクターがいつもよりも魅力的に描かれている。また、それだけではなくちゃんと作品としても面白いものに仕上がっているのに驚かされ、ピーター・フォークの監督としての本作への意気込みのようなものも感じられた。事件の焦点は死体はどこにあるのかという一点のみで、ものすごくシンプルなのだが、コロンボと犯人の攻防の見せ方がうまく、パイルをコロンボに掘り起こさせる犯人のしたたかさと実は出し抜かれたように見せかけて犯人を出し抜いているコロンボの犯人の上をいくしたたかさがよく描かれていて、いつも以上に犯人との対決は見ごたえがあるものになっていたし、ミスリードも利いていて、ラストの一発逆転劇が見ていて気持ち良かった。いちばん最後のシーンで口にくわえた葉巻を捨てて去っていくコロンボが妙にカッコよく、印象に残る。でもよく考えたらこのシリーズでこういう終わり方は珍しい。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2014-01-19 23:54:59)
950.  刑事コロンボ/断たれた音<TVM> 《ネタバレ》 
今回の犯人は難聴のチェスプレイヤー。冒頭からタイトルマッチでの対局を控えた犯人と今回の被害者である老人との関係や、チェスで勝ち抜くことが人生のすべてといったふうな犯人の深層心理が丁寧に描かれているが、今回の犯人の動機はこの老人との対局で勝ち目がないから殺してしまうというえらく子どもじみたもので、殺人事件を起こす動機としては正直言って見ているこちらが呆れてしまうほど弱く、プライドの高そうな勝負師のやることとは思えないし、この犯人自体も魅力には乏しい。難聴という犯人の特徴を活かした結末で、これもやや強引に感じるが、この強引さはこのシリーズらしいところで決して嫌いではない。それよりも今回は犯人が一度手にかけた被害者が一命を取り留めるというこの手の倒叙ミステリーとしては珍しい展開が面白く、結局終盤近くになって被害者は死んでしまうものの、それまではひょっとしたら今回は未遂のまま犯人がコロンボに逮捕されて被害者は最後まで死なずに済むのではと思いながら見ていた。 少し甘いかもしれないがこの展開にプラス1点。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2014-01-11 16:13:35)
951.  東京家族 《ネタバレ》 
山田洋次監督が前作「おとうと」に続いて往年の名作をモチーフにして作った映画で、本作のベースは小津安二郎監督の「東京物語」。「おとうと」ではあくまで市川崑監督の「おとうと」を元にしたオリジナル脚本であり、見た時はそれほど市川監督の「おとうと」を意識せずに見れたのだが、本作は「東京物語」をほとんどそのままリメイクしたような映画になっている。もちろん山田監督らしさは健在で丁寧な演出できっちり描くところや、優しさを感じさせる部分など見ていて温かい気持ちにさせられる映画ではあるし、なによりも山田監督の小津作品への思い入れの深さも伝わってきて決して出来の悪い映画ではないのだが、やはり個人的には山田監督にはほかの監督の作品のリメイクなどしてもらいたくなかったというのが本音で、そういう意味ではぼくが思う山田監督の映画とは違うし、山田監督らしいユーモアも少なく泣かせのシーンもストレートすぎる印象がある。東日本大震災の影響で延期になった映画でもあるが、その震災のエピソードの盛り込み方も無理やりねじ込んだような感じがしてあまり良いとは思えないし、少しあざとさを感じて好きになれない。山田監督のほかの映画としては「男はつらいよ 寅次郎紅の花」の中で阪神大震災が登場するが、その時のほうがもっと自然にうまく現実にあった災害を映画の中に取り込めていた気がする。ほかの本作オリジナル要素としては「東京物語」では戦死していて登場しない次男が生きているという設定になっていて、物語の中心人物として描かれている。これによって山田監督は本作で自らの過去の作品で作風に「東京物語」の影響が見られる「息子」も意識していることが分かる。中でも次男が恋人を母親に紹介するシーンは「息子」で永瀬正敏演じる息子が恋人を父親に紹介するシーンと重なって見えるのはそういう山田監督の意図が感じられる。俳優陣については山田監督の指示か小津作品に登場する俳優たちのような演技をしている出演者が多いが、特に文句はない。主人公である老夫婦役は延期になる前は菅原文太と市原悦子の予定だったものが橋爪功と吉行和子に変わっているが、むしろこの二人で正解だっただろう。長女を演じている中嶋朋子が杉村春子を意識しまくったメイクで演じているのがなんともおかしい。しかし、過去の山田監督の映画には「北の国から」の出演者も多く出演しているのに今まで彼女は一度も出演していなかっただけに何かこの出演には感慨深いものを感じる。それにしても本作に続く山田監督の新作はラブストーリーとのことだが、「男はつらいよ」シリーズも「釣りバカ日誌」シリーズも終わってしまった今、山田監督にはもう一度、純粋な喜劇映画を一本作ってもらいたい気持ちはある。
[DVD(邦画)] 6点(2014-01-04 00:36:34)(良:1票)
952.  刑事コロンボ/偶像のレクイエム<TVM> 《ネタバレ》 
撮影所が舞台の今回の犯人は往年の大女優で、それを演じるのが本当に往年の大女優のアン・バクスターというのが現実とオーバーラップしていてこのキャステイングは見事。しかもハリウッド映画の衣装デザインの代名詞的存在であるイーディス・ヘッドが本人役で登場するあたりは豪華だ。しかし、ストーリーはちょっとひねりすぎで逆に面白くなくなっているように感じる。犯人の犯行動機が明かされず、最後の最後になってようやく明かされる展開も悪くはないのだが、それが成功しているかと言えば疑問で、全体的に見てもイマイチであまり盛り上がらないまま終わってしまいちょっと残念。女優である犯人を前にしていつもと違ってすっかりミーハーなコロンボがユーモラスで可愛らしい。アン・バクスターと言えば「イヴの総て」が有名だが、まだ未見なのでいつか見てみよう。ところでこの作品の撮影は実際にいつも「刑事コロンボ」を撮影しているスタジオをそのまま使って撮影してるんだろうなあと思ってしまった。
[CS・衛星(吹替)] 5点(2013-12-31 14:08:34)
953.  刑事コロンボ/アリバイのダイヤル<TVM> 《ネタバレ》 
邦題のとおりひたすらアリバイ崩しのみに終始していて分かりやすいといえばそうなのだが、犯人(ロバート・カルプ)が殺人を犯す背景や動機がほとんど描かれておらず、そこが物足りない。凶器が氷の塊(今回の脚本家はこれをいちばん最初に思いついたのかも。)だったり、プールの水と水道(ホース)の水の違いについてコロンボが指摘するあたりはけっこうワクワクしながら見れただけにそれ以外の部分に見どころらしい見どころがなく、ツッコミどころも多いのは残念。それでもラストは鮮やかなのがこのシリーズらしいし、発想の転換というのも面白いのだが、やっぱり決め手が電話に入っていなかった時計のチャイムの音というのはいささか強引な気がした。印象に残るシーンも少ないのだが、いちばん最後のテープのカットは印象に残る。ラジオから聞こえてくる中継の解説者の吹き替えを担当する肝付兼太の声も妙に印象的だった。
[CS・衛星(吹替)] 5点(2013-12-28 10:51:50)
954.  ミヨちゃんのためなら全員集合!! 《ネタバレ》 
今回も前半はいかりやと加藤茶の絡みが描かれているが、ある程度慣れてきたのか最初にこのシリーズを見た時に感じた加藤茶をいびりまくるいかりやに対する嫌悪感がだいぶなくなっていることに驚いた。今回はストーリーに公害問題を軽く絡めたりしていて時代性が感じられるが、同時代の公害問題が出てくる映画を見るのが既に3本目で、よっぽどこのころは深刻だったんだなあと思う反面、なにもこんな映画にまでという気がしないでもない。加藤茶といえばオネエキャラのギャグが定番だが、今回はそれを存分に楽しめるのが見どころの一つだろう。また、ゲスト出演はドリフターズのメンバーの芸名の名付け親であるハナ肇で、彼がヒロイン役である倍賞美津子と一緒に「ズンドコ節」をうたうシーンはけっこう貴重かも。ただ、今回はこのハナ肇と倍賞美津子を中心にストーリーが進んで行った感がややあり、とくにいかりやは遠慮したのかハナ肇に少し食われ気味に感じてしまった。その中でもドリフの映画なのにクライマックスの宴会のシーンにいかりやがいないのはちょっとさびしい。「なにはなくとも全員集合」で主人公の駅長を演じていた三木のり平が留置所に入っている泥棒役で出演していて、少ない出番ながら存在感を発揮していて笑わせてくれていたのが嬉しかった。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-12-28 10:49:50)
955.  疑惑(1982) 《ネタバレ》 
高校の頃にテレビで見て以来、また見たいと思っていた映画だったのだが、今回ようやく念願叶って再見することができた。ストーリー自体はよくある法廷ものであるが、とにかく被告・球磨子がすごくいやな女に描かれていて、またそれを演じる桃井かおりもこの役を演じるために女優になったのではと思うほどのハマリ様で、見る者の被告に対する感情移入を許さない描き方が完璧だし、そんな彼女の弁護を引き受けたもう一人の女・佐原律子を演じる岩下志麻も一癖ある弁護士を熱演していて、ほぼ全編に渡ってこの二人の「悪女」の対決が見ごたえじゅうぶん、迫力じゅうぶんに描かれていて、以前にも見ていて裁判の結末を覚えているにもかかわらず、以前見た時よりも面白かった。とくに桃井かおり、個人的には苦手な女優で、好感も持ったことがないのだが、さっき球磨子を演じるために女優になったのかと書いたように彼女独特のキャラクターが球磨子という女にバッチリ合っていて、まさにこの球磨子はそんな桃井かおりが演じるからこそその悪女ぶりが際立っていて、本当に憎たらしく、演技もそうだが、この配役も素晴らしいとしか言いようがない。こんな誰もが有罪になることを望むような女が最後に無罪になってしまう結末なのだが、ここで終わっていたら後味が悪かったところをそうはせず、ラストで球磨子にもきちんと制裁を加えて終わっているのが良い。このラストの二人がワインをぶっかけ合うシーンは昔見た時よりも強烈で、インパクトが強く、このシーンが本作をより象徴的なものにしている。この時期の野村芳太郎監督の映画にはイマイチなものが多いが、本作は紛れもない日本映画史上に残る傑作だと思う。それは原作者の松本清張自身が脚色に参加した脚本の質の高さもそうだが、やはり主演の二人、桃井かおりと岩下志麻の起用の成功が大きかったのだろう。(2013年12月25日更新)
[DVD(邦画)] 9点(2013-12-25 01:55:49)(良:1票)
956.  現代任侠史 《ネタバレ》 
石井輝男監督による高倉健主演のヤクザ映画。「仁義なき戦い」がヒットして東映がそれまでのヤクザ映画を任侠路線から実録路線に切り替えた頃に作られているが、実録路線ではなく、正統派任侠映画のフォーマットで作られている。新味のあるヤクザ映画にしようとしたのか脚本にこの手のジャンルには珍しい橋本忍を起用していて、健さん扮する元ヤクザの寿司屋が持っている刀の背景が劇中でちゃんと語られたりするところなどは新鮮に感じるものの、それをうまくドラマに取り込めていない気がするし、主人公とヒロインの恋愛が描かれるところは、ヒロイン役が梶芽衣子なせいか「仁義なき戦い 広島死闘篇」の焼き直しに見えてしまい、なにも別に橋本忍じゃなくてもと思えてしまう。健さんの弟分で成田三樹夫が出ていて絶対にどこかで裏切るだろうと思っていたのが、最後まで健さんの側についているというのが意外だったが、この役は兄貴分という設定で鶴田浩二が演じたほうがしっくりしたかもしれない。敵方ヤクザを演じるのが内田朝雄と小池朝雄という「朝雄コンビ」なのが妙に印象に残る。でも、話としてはせっかく健さんの持っている刀に背景の設定を持たせたなら、やはりそれをもっと生かしたドラマ作り(橋本忍ならできるはずだと思う。)をしてほしかったところで、クライマックスもいつもの東映任侠映画のパターンで終わってしまっているのが残念。石井監督の演出にとくに不満はなく、映画自体も面白くなくはないが、橋本忍の良さが出た映画とは言えず、好きな脚本家の一人なのだが、なにか東映ヤクザ映画とは場違いで相性が悪く、不釣り合いだったようにも思う。
[DVD(邦画)] 6点(2013-11-21 15:03:21)
957.  ターザン(1999)
ジャングルで猛獣に育てられた主人公がほかの人間と出会うという展開はディズニーでもほかに「ジャングル・ブック」(アニメ版は未見。)があるようにややありがちだとは思うのだが、ちゃんとジャングルの動物たちとジェーンたちの間で板挟みになり、苦悩するターザンを描けているし、見ごたえじゅうぶんとまではいかないが、つまんなそうと思いながら見始めたせいか最後まで飽きることなく楽しめた。ヒロインのジェーンがこれまで見たディズニーアニメのヒロインの中でも特に魅力的なキャラに描かれていて印象に残る。それに全編通して流れる歌も非常にマッチしていて良かった。ターザンの吹き替えは金城武で、最初はどうなんと思っていたが、それほど違和感もなかった。それにしても「アラジン」のジャファーもそうだが、本作のクレイトンも実に気持ちのいい悪役だったなあ。
[地上波(吹替)] 6点(2013-11-11 01:38:37)
958.  一人息子 《ネタバレ》 
小津安二郎監督のトーキー映画第1作。戦前の小津監督の映画には喜劇色の強いものや、外国映画を意識した作風の映画が多いように思うのだが、初のトーキー作品となった本作では、「東京物語」に代表されるような親子の物語で、笑いのシーンはほぼ皆無で、シリアスな作風となっている。しかし、本作も間違いなく小津監督らしい映画となっていて、息子の東京での生活の厳しさや、その現実を見た母親の切なさを丁寧に、それもこの親子の絆を優しくあたたかく描いており、戦前のこの頃から小津監督はこういう親子のシリアスなドラマも描ける監督だったんだなあと感じた。焼却炉の煙突を見ながらの親子の会話、そしてその夜の口論はなんだか息子の立場になって考えた場合にすごく身につまされるものがあってつい息子に感情移入してしまう部分もあった。馬に蹴られた近所の子供のために息子がとった行動を見た母親が息子にかける言葉がああ、この母親は息子がどんな暮らしをしていても、自慢の息子には変わりないのだなと感じさせていて感動的だった。しかし、やはりこの映画が描いているのは理想と現実は違うということで、帰京した母親が「息子も偉くなって」と周囲に語るものの、一人になるとしょんぼりとしているラストシーンはこの母親の心情というものがすごく理解でき、侘しい気持ちになるのだけども、その前のシーンで東京で息子が今度母親が来るときにはこんな侘しい姿は見せないぞと奮起する姿を描いていて、そこに希望を感じさせているのがいい。「東京物語」だともっと親子関係はシビアに描かれるのだが、まさしくこれはその原型といったところ。主演の飯田蝶子は晩年に演じた若大将シリーズでの主人公の祖母役が大好きなのだが、この映画では息子を時に厳しく、そして優しく見守る母親を演じていて若大将シリーズとは全く違う一面も見せているのだが、その演技が非常に素晴らしく、間違いなくこの映画は彼女の代表作と言っていいだろう。もちろん息子を演じた日守新一も素晴らしい。ところで、親子が映画館で外国のトーキー映画を見るシーンで「これがトーキーってやつですよ。」というセリフを息子に言わせているのは、初めてトーキー映画を撮ったことが嬉しくてたまらないという小津監督の素直な喜びが感じられるシーンではないだろうか。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-11-07 18:00:42)
959.  麦秋(1951) 《ネタバレ》 
小津安二郎監督と原節子のコンビによる「晩春」、「東京物語」と合わせて「紀子三部作」と呼ばれる作品群の2作目。「晩春」と同じく原節子演じる娘・紀子が結婚するまでを描いていて、最初は「晩春」と同じような感じ(冒頭に登場する海は「晩春」のいちばん最後のシーンと重なる。)なのだが、あくまで父と娘の話に絞ったストーリーだった「晩春」と違ってこの映画では大所帯の家族が描かれていて、この家族のドラマとしても一級品。「晩春」同様にとても味わい深さのある映画になっていて素直に名作だと思った。原節子演じるヒロインの人物像は「晩春」と比べるととっつきやすいし、小津監督らしいユーモラスな会話も「晩春」より多く、楽しめる。とくに原節子が友達(井川邦子)の結婚をほかの友達(淡島千景)とからかうシーンは下手に描けば嫌味になって笑えないところを実にうまくユーモラスに描いていてあざとさを感じさせず、これだけで小津監督の喜劇のセンスの良さが分かるし、会話の歯切れの良さも現代の映画では感じることができないものだろう。子供の描き方が実にイキイキとしているのも小津監督らしい。それに黒澤明監督の映画でお馴染みの俳優である高堂国典もコミカルで面白かった。見る前は「晩春」や「東京物語」のイメージからかこの映画でもヒロインの父親役は笠智衆が演じていると思っていたが、実はヒロインの兄役だったのはちょっと意外に感じた。(でもこれで年相応の役というからさらに驚き。)終盤近く、みんな離れ離れに暮らすことになった後のヒロインの父親(菅井一郎)のセリフが耳に残る。家族で写真を撮るシーンも印象的だ。「晩春」では結婚による親子の別離が描かれていたが、この映画で描かれているのは結婚による家族の別離で、核家族が当たり前となった現代を予見したかのような結末になっているのは小津監督の先見の明を感じるし、実際それは原節子が次に出演する小津作品である「東京物語」で切実さをもって描かれることになるのだなあと思わずにはいられない。今見ると多少時代を感じる部分もなくはないが、本作も「晩春」に劣らない名作だと思う。それにしても劇中に出てきた900円(←当時としてはえらく高価。)のケーキがとってもおいしそうだった。
[DVD(邦画)] 8点(2013-11-07 17:52:28)
960.  晩春 《ネタバレ》 
「東京物語」と並んで名作と言われている小津安二郎監督の映画だが、今回、ようやく見た。前半はやや冗長に感じる部分があるものの、思っていたよりも見やすく、ほとんどだれることなく見ることができたし、見ていてだんだん引き込まれてしまった。父親を心配するあまり結婚を拒む娘と、娘の結婚を願う父親。この二人の描写が秀逸でとても見ごたえのあるものになっている。笠智衆演じる父の再婚話を知った原節子演じる娘が二人で能を見に行った帰りに父に見せる態度など、娘の描き方はややストレートなのに対して、父親のほうは何を考えているのか分からない描き方で、ちょっと鈍感な感じがするのだが、ラストに至ってこの父親の複雑な心境が痛いほどに伝わってくるような構成が見事で、娘を送り出した後に姪との会話で「きっと遊びに来てくれるね。」などと言っている時点で既にこの父親の寂しさはじゅうぶんに伝わってくるが、なんといってもラストシーン、小津監督は最初この映画のラストシーンで父親が泣くというふうに設定していたのを、演じる笠智衆の注文で項垂れるというふうに変えたというが、このラストシーンが素晴らしく、娘を嫁がせ、一人になった父親の悲しみがよくこちらに伝わってくるまさに名シーンだ。(このシーンで父親が泣いてしまうと、映画の印象が少し変わってしまうかもしれない。)ほかにも父と娘が結婚や幸せについて語り合う夜のシーンも見ていてつい感動してしまう名シーンだろう。劇中で交わされる言葉の面白さや、コメディリリーフ的存在の杉村春子(姪の結婚相手の呼び方について話すシーンや財布を拾うシーンは面白すぎ。)など笑えるシーンが多いのも小津監督らしく、安心して見ていられる。実は今まで敷居が高くて敬遠していた映画だったのだが、まさにこれぞ名作と呼ぶにふさわしい映画で、素直に見て良かったと思える映画だった。本作を敬遠していたおかげで同じように嫁いでいく娘を描いた小津監督の映画はほとんど見ていないのだが、また小津監督のこういう映画を見てみてみたいと思った。そうそう娘の結婚相手が一度も直接画面に登場せず、登場人物たちの会話から想像してみるのだが、ゲーリー・クーパーに似ていて名前が熊五郎・・・。いったいどんな男なのだろう。ちょっと気になる。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-11-06 17:46:18)
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