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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
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81.  花と龍(1973)
いきなり疾走する汽車がローアングルで撮られる加藤泰印の大迫力の画から始まる。前半が夫婦の、後半が親子のドラマ。ここで描かれる恋女房マンが素敵だ。任侠ものにありがちな女の描き方じゃない。優しいだけじゃない。強い。たくましい。それでいて可愛い。激しく嫉妬する姿すら眩しい。そのマンを演じる香山美子がいい。惚れた。原作は何度も何度も何度も映画化された大河小説。映画タイトルからして大河ドラマだ。168分。しかし映画で描かれているお話は到底168分で語れるものじゃない。でも語っちゃってるのだ。今どきのただテンポが速いだけの映画ではなく、ポンポンと手早く見せてもけしてガチャガチャせず、かと思ったらモノを間に挟んだいつもの加藤印の画がじっくりと時間を使って映し出される。そしてバッサリと切り捨てられる年月。いやはや素晴らしい。しかも168分という時間を感じさせない。物語を語る力に優れ、女優を輝かせ、魅力的な画を残す。こういう映画は尺に係わらず何度でも見たい。
[映画館(邦画)] 8点(2011-09-12 18:41:11)(良:1票)
82.  月世界の女
SFかと思ったら『スピオーネ』『ドクトル・マブゼ』のような天才的犯罪者による計画犯罪が描かれ、あいかわらずの冒険映画にドキドキさせられる。犯罪の一部始終を友人に語るシーンは字幕なしの過去シーンの短いカットを適格に見せることで手早く処理しているが、こういうことが難なく出来ちゃうところが素晴らしい。で、ここからSFへ。その伏線として序盤に貧乏生活のシーンがあるんだけど、ここがちとくどいかと。それにしても月に人類が立つ40年前の映画。そこに見てとれる当時の想像力につい頬が緩む。すごく楽しい。と同時にその創造性に驚かされる。まだ見ぬものは映せないという映画の限界を超えて、想像したものを創造することができる映画の可能性を存分に提示している。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-09-09 14:08:12)
83.  激怒(1936) 《ネタバレ》 
様々な映画技法を駆使して群集心理の恐ろしさと憎憎しさが描かれる。恐怖し激怒する主人公はまさにラングその人なのかもしれない。ラストで主人公は「本意ではない」と前置きしたうえで出頭する。つまり本心は復讐を完遂することにある。それこそが人間の摂理なのかもしれない。ラングが描き続けた負の連鎖はこの人間の摂理に反抗することで初めて止められるのだ。そして自己犠牲の精神でもってそれを成した者にはちゃんと幸が訪れる。多少強引のような気もするこのラストの幸はラングのメッセージをより顕著にもしている。先に書いた群集心理、復讐の連鎖以外に、社会の冷遇、不完全な情報伝達、情報操作、法廷劇、等々とラングのアメリカ第一作はラング印満載であった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-09-08 16:55:00)
84.  地獄への逆襲
前年のヘンリー・キング『地獄への道』の続編。主役は前作で暗殺されたジェシー・ジェイムズから兄のフランク・ジェイムズに代わり、ジェシーを殺したフォード兄弟への復讐劇というのが大筋。それよりもなによりもビックリなのが今作の監督がフリッツ・ラングってこと。ラングの西部劇ですぜ。もうそれだけでドキドキなんだけども、正直ラングの色はわからんかった。メディアを使った情報操作や後半の法廷劇に見られる陪審員操作あたりはたしかにラングが描き続けた群集心理が描かれているんだけど、そこに恐怖がない。むしろユーモアにあふれている。不安感がない。むしろ安心感にあふれている。与えられた脚本に手を加えなかったのか。退屈しない語り口においては『地獄への道』よりも断然良かったのだが、ラングという名前がハードルを上げたせいかちょいと拍子抜け感が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2011-09-07 15:13:35)
85.  恐怖省
マイクロフィルムをマクガフィンにしたスパイサスペンスにして典型的な巻き込まれ型。代名詞としてはヒッチコックなんだけど、ヒッチコックが先なのかラングが先なのか、どうなんだろう。登場人物が多すぎることと病院から出所するシーンから始まる何やら謎めいた過去を持つという設定の主人公のせいで純粋にサスペンスを堪能しにくい作りになっている。そういう意味ではヒッチコックに軍配が上がりそうなんだけど、物語を楽しむことに限定すればラングもけして負けてない。さらにサスペンスの弊害となっているだろう複雑な構成はもはやラングらしさとも言える「不安感」を出すことに貢献している。そしてモノクロを活かした光と影の演出は流石、絶品です。まあでも、もうちょっとすっきりとしてくれたほうが・・いいかも。
[DVD(字幕)] 6点(2011-09-06 14:24:09)
86.  復讐は俺に任せろ 《ネタバレ》 
ある男が拳銃自殺をする。その場所からある場所に電話する。そしてまたそこから次の所に電話する。重要な三つの舞台と主要人物があっという間に提示される。しかも三つ目の部屋の屋内構造をしっかりと見せることがクライマックスをスムーズに見せることになる。そして最初の自殺現場に戻りいよいよ主人公の登場。この完璧な流れに唸る。幸せを絵に描いたようなある意味型にはまった家族が強烈な一撃にて崩壊する様は衝撃的。リー・マーヴィンのサディスティックな一面を見せたエピソードがグロリア・グレアムへのコーヒーにつながり、欲望のままに生きる女でありながらどこか憎めないシンプルな思考の情婦グレアムが女ゆえの、またシンプルな思考ゆえの、目には目を、コーヒーにはコーヒーを!となる流れの説得力も素晴らしい。唐突に孤独のヒーローの元に集まった義兄とその友人たちがカードゲームをする様はジョン・フォードの西部劇のよう。その後に合流する同僚と上司。しかしフォードっぽいのはこの一瞬だけ。サービスみたいなもんか。とにかく西部劇ではなく犯罪映画なのだと言う様に仲間たちの存在は消え去る。そして犯罪映画に相応しい銃撃戦をクライマックスに。傑作です。
[DVD(字幕)] 7点(2011-09-05 18:17:02)
87.  悪の華 《ネタバレ》 
やはりこの作品もまた決定的な画を最初に見せて、そこに行き着くまでの経緯を本編とする。そしてその前もって知らされた決定的なシーンが最後にやってきたときはやっぱり驚かされるのだ。シャブロルの他の作品同様にその決定的なシーンとそれまでの物語は一見繋がらないように見えて実に巧妙に繋がってゆく。そして『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』でも思ったがシャブロルはブルジョアの中に悪意の無い悪を描くのが実にうまい。ブルジョア階級のあっけらかんとした愛のカタチを嫌味なくさらりと見せる。そこには大袈裟な退廃の美なんてない。しかし隠された過去が明かされれば自ずと現代と過去の近親相姦はブルジョアの退廃つながりという構図を露呈させる。またその過去シーンだが、音声のみのフラッシュバックによって実に想像力を刺激されると同時に大いにサスペンスに寄与している。
[映画館(字幕)] 7点(2011-09-02 14:22:42)
88.  引き裂かれた女
リュディヴィーヌ・サニエが好き。どの映画でもかわいい。そしてエロい。初老のオヤジがこの小悪魔ちゃんに翻弄されるのかと思ったら初老のオヤジの前で小娘と化すサニエ嬢。中年男の夢。なんて素晴らしい。といってもエロい画はスクリーンに映されない。私の脳が勝手に補完して私を悶絶させるのだ。なんていやらしい。シャブロルの映画であることも忘れ、夢の世界にどっぷりとはまる。でもこれもシャブロルの罠だった。いつものシャブロル映画のあっけない終幕が待ち構えているのだ。またしてもやられた。またやられたい。その後のエピローグにはそんじょそこらの監督には真似の出来ない軽やかさがある。常連ブノワ・マジメルがボンボンを好演。
[映画館(字幕)] 7点(2011-09-01 15:43:09)
89.  石の微笑
またしてもやられた。最初に誘拐報道があるのにすっかりとそのことを忘れさせてしまうその手口に。わけのわからない不穏を纏いながら母子家庭ゆえの些細な諸問題が描かれる。そこにはファムファタルとしか言いようのない女を招いてしまうことになる男の性が描かれている。例えば冒頭、息子と母親の執拗なまでの切り返しで見せる会話よ!ただ親子の会話があるだけなのに、あきらかにその映し方は「異常」を演出している。映画はいずれ終幕へと向かう。物語全てがその終幕を演出している。いつものシャブロルの映画のように。
[DVD(字幕)] 7点(2011-08-31 14:49:05)
90.  沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇 《ネタバレ》 
例えば『主婦マリーがしたこと』のギロチンは物語の結末にあるのに確かビデオパッケージには「フランスでギロチンにかけられた最後の女」みたいな文句が書かれておりあらかじめそのことを知らせてしまっている。にも係わらずその唐突感に驚いたものだ。例えば『引き裂かれた女』にしても同様、実話を元にしていることから衝撃的な事実を隠すことなく、それでいて堂々とクライマックスに持って来ておきながらやはり驚かされた。この作品の邦題を見ても「惨劇」とあるのだから惨劇があることが当然予測されるだろうにいざその惨劇が来るとやっぱり驚かされるのだ。まずシャブロルの映画の特徴でもあると思うのだが、事件が起こってからその犯人を捜すサスペンスというのではなく、事件をクライマックスにそこに行くまでの経緯を描いている。驚くべきはそのクライマックスとなる事実を隠そうとしないところ。それでいてやっぱり驚いてしまうってのはどういうことなのだ。シャブロルはけして驚かそうとはしていない。途中で発覚する難読症という決定的な動機の根源を驚きでもって見せようとしないのだから。物語は「経緯」で埋もれている。が、その「経緯」は物語であってけして「説明」ではない。そこにシャブロルのサスペンスの面白さがあるのかもしれない。二度目三度目がさらに面白くなる映画だ。
[DVD(字幕)] 7点(2011-08-30 14:38:44)(良:1票)
91.  主婦マリーがしたこと 《ネタバレ》 
シャブロルの映画で初めて見たのがこれ。かなり前だ。正直、イマイチだと思った。去年シャブロルが亡くなったことで追悼の意もあるのか最近になってシャブロルの映画がたくさん上映されるようになったがこれがどいつもこいつも面白い。なので見直そうと思ったんだけど近所のレンタル店に置いてませんでした。残念。ナチス占領下のフランスで戦地から帰ってきた夫の無職状態、それでも子供二人を育てなければならない状況、堕胎が違法という女性困難の時代等を鑑みても主人公の行動は肯定すべきものとしては描かれていない。どちらかというと悪女として描かれていたはず。女性のための堕胎ではなく金のための堕胎。生活のための金ではなく歓楽のための金。だから「彼女に罰を」と思って見てたら死刑という結末に唖然となったのを覚えている。結局のところ、女が欲望のままに罪を繰り返す犯罪映画で、その根源に戦争があったという描き方なら良かったのだが、犯罪映画である以上に国家の犠牲者としての側面がクローズアップされすぎていて私にとっては面白くなりそうで面白くならないってことになってる。一般的には傑作ということのようです。
[ビデオ(字幕)] 5点(2011-08-29 14:45:06)(良:1票)
92.  ボビー・フィッシャーを探して
子に才能があるのならその才能を伸ばしてやりたいと思うのが親の常。でもそのせいで才能を壊しちゃうことだってある。才能を開花させたとしてもそれがその子にとっての幸せに繋がるとは限らない。これ、ぜひうちのヨメさんに見せたい(子の習い事にのめりこむところがある)。でも映画見ない人なので見てくんない。これと『武士道シックスティーン』は見事に「好きこそものの上手なれ」を見せてくれてるんだけどなあ。まあとにかく、仮に少年に対してひどいことをやってたとしても、みんなこの少年に対しては真剣なのだ。またこの子がそのことを重々承知しているところが健気で泣けてくる。何気に映し出される情景の一つ一つがまた素晴らしい。公園のストリートチェスをする人たちの描写ひとつとってもそのシーンごとにかもし出されるのは幸福感であったり躍動感であったりあるいは疎外感や郷愁感であったりとさまざまな顔を見せる。季節の移ろいをことさらに目立たすこともなく、あくまで背景として、それでもはっきりと脳裏に印象付けているのもいい。何もかもがシーンに、少年の心情に、ぴったりとはまる背景のように感じられた。
[DVD(字幕)] 7点(2011-08-26 13:41:46)(良:2票)
93.  ビューティフル・マインド 《ネタバレ》 
幻覚というのはここまではっきりとしたものなのだろうか。だとしたらいくらまわりから言われてもこれを幻覚だと思うのは至難の業だ。例えば私には妻子供がいるが突然いやそれは幻覚なんだよと言われるようなもんでしょ。とまあ、そこが一番驚いた。実際のところどうなのか知らないけど、少なくともこの映画の幻覚には説得力があった。その説得力はストーリーテリングのうまさから来る。しかしそのかわりと言っちゃなんだが、中盤まで我々はまんまと騙されていたわけだ。たしかにこの騙しはちょっとしたどんでん返しとしての楽しみを提供してくれてはいるのだろう。しかし勝手に先の展開を思い描いていたものがそれこそジャンルごとごろりと変えられた者(私)からしてみれば、驚きというよりも置いてけぼり感のほうが強かったりする。それとも私が伏線を見逃したか。ロン・ハワードの作品中でも最も美しい画で覆われた作品のようにも感じたがこの急転直下のせいでその感動も半減してしまったのは私のせいか。
[DVD(字幕)] 6点(2011-08-25 14:54:21)
94.  グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
ものすごくストレートでわかりやすい。天才はとことん天才だし、そのギャップとなる劣悪な環境はどこまでも劣悪だし、それでいて性格はひんまがっておらず、男前。ワルだけどちゃんとしてる主人公ってところや若干出来すぎとも言えるストーリー展開はその後素晴らしい才能を開花させるベン・アフレックの色か。ガス・ヴァン・サントの色は見当たらない。翌年の『サイコ』でも自らの演出を封印してまんまヒッチコック演出で撮っちゃったわけだからこれもまたガスにとっては実験を兼ねた作品になるのかもしれない。ケイシー・アフレックのバカキャラとそのリアルな設定が気に入った。なんてことのない作品のようにも見えるがこの作品があるからこそ今度はマット・デイモンとケイシー・アフレックが脚本主演に参加した『ジェリー』があるのだろうし、『ジェリー』があるから『エレファント』『ラストデイズ』といった傑作が生まれたのだと思うと非常に重要な作品と言えるかもしれない。監督ベン・アフレックの誕生もこの映画の成功あってのことだと思うと尚更。
[DVD(字幕)] 6点(2011-08-24 14:45:28)
95.  π(パイ)
数学スリラーとしての掴みはまずまずなのだが大してややこしくもなさそうなストーリーをやたら難しく見せてむりやり箔を付けましたって感じがどうにも・・。ミュージッククリップのようなシャレた映像と哲学チックな内容とのマッチングにはセンスを感じるが印象に残るような画はほとんど無い。数学者のそのようにしか生きられない不器用さであるとか孤独感なんかを描くという一般受けするほうへ逃げなかったのを評価すべきか。
[DVD(字幕)] 4点(2011-08-23 15:02:23)(良:1票)
96.  ソーシャル・ネットワーク
冒頭の長い会話が全ての発端となる。喧嘩の腹いせのように始められたサイトは大学の女学生を二人並べて二者択一してゆくもの。「点数を付けるのは難しいが二者択一ならすぐできる」。主人公は複雑な問題を常に単純化し、人生を歩んでゆく。彼が選ぶ先にはいつも「フェイスブック」の成長がある。「フェイスブック」をさらに巨大化させたのはやはり冒頭の会話の相手であった。と、こんな具合に映画も単純に進んでゆくのがいい。ところが共同設立者でもある友人とナップスター創設者と三つ巴のイザコザが描かれだすと誰にも付かず離れずの演出が妙にヤキモキさせられて(いつも蚊帳の外状態のウィンクルボス兄弟の描き方は最高)徐々につまらなくなってゆく。ボート競走の異様な迫力にハッとさせられたりもするが、そこだけ浮いているとも言える。でもラストカットで挽回。実話とはいえ、三者のイザコザをもっと簡略化してほしかった。冒頭の会話と中盤の再会とラストカット、これだけでじゅうぶん映画だ。
[映画館(字幕)] 6点(2011-08-22 16:18:54)
97.  ロルナの祈り
下層で生きる登場人物たちを、まさに言葉通り追いかけてきたダルデンヌ兄弟のカメラが今回は追いかけずに止まってる。最近流行の手ブレ映像は苦手だが、ダルデンヌの映画で揺れないとなんだか物足りなかったりして・・。いつも社会の底辺を生きる人たちを描いている一番の理由は、何がしかのメッセージを映像に乗せること、ではなくそこに彼らにとっての映画的なるものがあるからに過ぎない。今回の揺れない映像にそう感じた。彼らの揺れるカメラはいつも痛々しく、生々しく、緊張感に溢れている。そこに悲痛な叫びを感じることもある。しかしその叫びの内容よりも叫びを感じたようにさせることが重要なのだ。メッセージ性よりも映画の醍醐味を優先していたのだと改めて思った。今回は動かないことでどこか第三者的な冷めた視点に感じる。叫びを聞き取ろうとせずにただ見つめるカメラは我々そのものなんだと思う。そしてそれは映画の限界を表している。観客はただ見るだけで、画面に入っていって助けてやることなんか出来ないのだから。ラストでダルデンヌの映画で初めて音楽が鳴る。だってこれは映画なんだから、とでも言うように。ある意味、こっちのほうがきついかも。
[映画館(字幕)] 7点(2011-08-11 15:00:52)
98.  悪い奴ほどよく眠る
冒頭の結婚式でのひそひそ話が明らかな説明となっており、もちろんそれはシェイクスピア劇のようなお話ゆえの演出なんだろうけども、そこを例えば歌にしちゃうとか、背景に幕が下りちゃうとかといった具合に、演出であることがもっと露骨ならいいんだけども、やっぱり台詞ってのは、どうにもひっかかる。そこだけならまだしもその後もやたらと説明台詞が多いからまいっちゃう。社会派エンターテイメントとしての「わかりやすさ」を獲得するための説明台詞なんだろう。シリアスな内容と説明台詞の相性が悪い。生々しいロケーションと型通りの登場人物の相性も悪い。お話自体はかなり面白い。幽霊を演出する光と闇のマジックは映画そのもののようだった。
[DVD(字幕)] 6点(2011-08-10 15:26:15)
99.  ウェディング・バンケット 《ネタバレ》 
『推手』『恋人たちの食卓』とあわせて「父親三部作」と言うそうだ。父親役は同じ俳優。父と子の世代ギャップが台湾とアメリカの異国間ギャップとごちゃ混ぜになってるようだけど、この異国間ギャップも含めて世代ギャップなのだろう。アメリカを拠点に活動するアン・リーにとってはアメリカ自体が若者の象徴であり、移りゆく時代の流れの先にあるのがアメリカだったのかもしれない。そしてアメリカの中にゲイがある。ギャップをコメディで見せるという古典的なシナリオの中で「ゲイ」は若者の側の一記号としてある。だから軽やかさを獲得することが出来たのだろう。切なくも感動的な父の偉大な決断は、息子の、あるいは偽の嫁の、はたまた息子のアメリカ人の恋人の優しさがあってはじめて成されるもの。要するにみんないい人。ものすごくいい人。いい人だらけ。ま、コメディですから。
[DVD(字幕)] 6点(2011-08-09 15:37:50)
100.  パイラン 《ネタバレ》 
チンピラ話が延々と続く前半にイライラするのは冒頭数秒だけ顔を出したセシリア・チャンがいつまでたっても出てこないからで、けしてチンピラ話が退屈であったわけではない。むしろ組のボスの身代わりに選ばれる経緯として例えば集金先のばあちゃんに昔世話になったからと詰め寄れない義理堅さを見せたり、ボスとの関係を見せたり、ボスが切れやすいところを見せたりといった丁寧なストーリーの紡ぎかたは悪くはないし、ガラス越しにすることで組事務所の密室感を出したりボスの激高を激しい雨とリンクさせたりといった細やかな工夫も好感が持てる。しかしやはりセシリア・チャンの物語が見たいのだ。主人公の視点で語るならもちろん見ようがないので、あえてそこから離れているのだろうけれども、せめてこの国に残ること、祖国に帰れないこと、といった諸事情をチンピラ話のような丁寧な語りで見せてくれればもっと盛り上がれたと思う。主人公ばかりが盛り上がっちゃかえってしらけちゃう。
[DVD(字幕)] 6点(2011-08-08 15:39:41)
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