81. 追撃者(2000)
系統としては熱血漢でワルのタフガイを主人公としたアメリカ版任侠モノということだろうか。クライムノベルややくざ映画が好きなヒトなら、作品自体の良し悪しはともかくとして恐らく「わかる」のだろうが、スタローン主演作にしてはいささかマニアックである。新境地にチャレンジというところだろう。ひげをたくわえイメチェンしたスタローンは、クールでハードボイルドなヤクザを意外と好演している。しかし「意外と」では物足りない。そして致命的でもある。確かに磨きあげられたボディはいまだ健在であるが、基本的にチビなので、スーツで決めてもずんぐりむっくりしてて、時として可愛くないクマちゃんみたいに見える。その点で主人公に手放しで心酔できないし、しかも今までのスタローンの単純な「正義の味方」のイメージから付いていけない人続出なのも仕方ない。ストーリーよりキャラクター重視のこのテのジャンルの作品では問題である。しかし欧州風のクライムノワールものとしてのスタイリッシュで渋い映像感覚は悪くない。釈然としないものが残るが、ダメと決め付けるのも勿体無い気がする。あくまでポジティブな上向きのイマイチと評価。 7点(2004-11-05 19:16:57) |
82. ラブストーリー
《ネタバレ》 最初はトレンディドラマもどきのラブストーリーかと思いきや、話が進むにつれてスケールがじわじわと拡大し、気が付けば韓国現代史を俯瞰した激動の大河純愛ドラマと化していた。こうしてみると韓国現代史も不安定な時代であった。本作はたいへん見ごたえのある作品で、ベタはベタなりの、力技がぶりより涙腺鷲摑みという感じで、それなりに感動もするのだが、難点もいくつかある。運命の人というのはともかく、それが大学で憧れのちょっとかっこいい先輩(ハート)というのは、設定としては少し弱いような気がする。もう少し何か伏線とか因縁がほしいところだ。最後でいきなりネックレス(というかロケット?)を出されても「エェッー、そうなの?」という感じでついていけなかった。もう一つ。主演女優はとても可愛いのだが、セーラー服姿は微妙に辛い。何だか企画物のAVを観ているようで複雑な気分だった。ドラマもそうらしいが、韓流はアクションでも恋愛ものでもとにかく熱いですね。国民性か時代かは定かではありませんが。韓国軍のヴェトナム派兵(猛虎隊というのか?)を描いたのは、もしかして画期的だったのではないだろうか。 8点(2004-10-09 16:46:45) |
83. 華氏911
《ネタバレ》 正直「ボーリング・フォー・コロンバイン」ほどの衝撃と感動はなかった。恐らく事前情報が多すぎたせいだろう。ブッシュ家とラディン一族の関係やハリバートンなどは、TVなどですでに間接的に知っていたので驚かなかった。このテのドキュメンタリー作品は映像とかストーリーではなく、あくまで情報が肝なので、その点では個人的に致命的であった。とはいえ本作は「ボーリング」にみられた感傷やユーモアは影を潜め、視点と演出は限りなくシビアである。そういう意味で本作の方が評価は上だろう。そもそもハリウッド映画はほとんどプロパガンダに利用されているという事実と、アメリカのメディアではすでに報道の自由が著しく制限されているという状況を考えれば、決して偏向とはいえない。印象的な点をいくつか。まず大統領選のフロリダ。当時日本でニュースを見ている限りでは、結局何がなんだか不明だった。本作ではブッシュ側の不正によるものだとほぼ断定している。アフガンでの軍事作戦については、当時山岳地帯に大規模な正規軍を投入できないため特殊部隊を投入したという報道がされていて、信じてもいたが、本作の解釈ではブッシュがやる気がなかったということですね。なるほど。政治と企業の癒着という問題は決して他人事ではない。アメリカでは軍需産業だが日本では道路族と年金か。違いは直接的に人命が奪われるか、間接的に命をすり減らすかだけだ。一番印象的だったのはやはりフリントの惨状である。失業率50%!ありえない。貧困層の若者たちは生きるために入隊し、イラクで死んでいく。同じイラクでの兵士と企業派遣社員の給料格差。両方とも血税である。それにしても陰謀とか癒着は普遍的だが、ブッシュの何が問題かというと、そのあからさまなやり方とデリカシーのなさだと思う。彼に対する反感の理由は、彼らが大衆を舐めているとしか思えないことだろう。ここまでわかりやすいとどう考えても映画より有利だ。最早現実の方がフィクションより刺激的。そういう意味でも本作は映画史においてターニング・ポイントとなり得る。本作は情報量が多く、セリフ?が多いので他の映画のようには観れない。これから観る方は集中してのぞむべきでしょう。集中して観る甲斐はあります。上記のようにテーマのデカさの割に「ボーリング」よりは地味だ。しかし本作の方がデキは上です。必ずや心に残るものがあるでしょう。 10点(2004-10-05 01:14:33) |
84. 明日に向って撃て!
一攫千金を夢見る犯罪者や銀行強盗を「倒錯したアメリカンドリームの一形態」と表現したのは、一体誰であったか?しかしたとえ倒錯したものであったとしても、それがアメリカンドリームであることに変わりはない。当時でさえ、というのはつまり、劇中の西部開拓時代と映画が製作された七十年代にしてすでに、ブッチとサンダンスの二人はボリビアに逃亡しなければならなかった。そして壮絶な最期?どちらかというとバート・バカラックは苦手なのだが、彼の音楽が作品の雰囲気を、殺伐とした西部劇から、おしゃれな犯罪映画に塗り替たことは認めざるを得ない。21世紀となり、ヴェトナム戦争も反戦運動も完全に過去のものとなった現在のこの時代に、この作品を観る者が一体どれだけこの主役の二人に、手離しで共感できるのか定かではない。しかし彼ら二人の生き方は、現在でも十分魅力的には違いない。時代に取り残されても迎合することを拒み、自ら滅びいく自由な魂の何と美しいことか。そして時代に対する鋭敏なセンスは、普遍性をも獲得する。むしろ今の時代だからこそ、ぜひ若い人たちに観てほしい作品である。 10点(2004-08-19 23:02:13) |
85. 殺人の追憶
アーミーブーツに袋を被せる。土手の上から同僚にとび蹴り。風呂屋で捜査。自白強要。スナックで喧嘩。笑うに笑えないエピソードに笑っているうちに話は進む。そして再び事件が起き、だんだんと笑えない状況へ。草原を渡る風。薄暗い空。劇中の刑事たちと一緒に、我々のテンションも徐々に、真綿で首を絞められるようにヒートアップしていく。容疑者。雨が降りラジオで曲が流れる。しかし頼みの機動隊は学生デモ鎮圧のため来ない。次の日再び遺体が発見される。ボルテージは最高潮。そしてクライマックスで限界寸前に。かろうじて正気を保つ状態で映画は終わる。観賞後の何ともいえない複雑な感慨。刑事たちの怒り、悲しみ、無念、事件の不気味さ、恐ろしさ、混乱した時代背景に思いを馳せる。と同時にいい映画を観たなという一抹の爽快感。恐らく技術的に難しいことは何ひとつしていない。しかし完璧に決まったカメラワークと俳優たちの力強い演技が、どちらかといえば淡々としたストーリーに緊迫感を加える。あれだけのアップの連続に耐えられる俳優はそうはいまい。異様な迫力で我々の胸に迫る。残るものは実に重たい。名作を通り越した怪作。 10点(2004-08-19 22:51:03)(良:3票) |
86. ブレインデッド
ゾンビムービーの傑作。というかジャンルを超えた名作。友人と一緒に最初はいやいや観たのだが、あまりの壮絶さと面白さに驚愕した。その後ビデオで3回観た。ピーター・ジャクソンという名前どこかで聞いたことあるなと思っていたら、この作品の監督だったのか。本作はまだ、当時のゾンビムービーの例に漏れず低予算?で、CGもあまり使っていない。冒頭のラットモンキーはぎごちないし、ベイビーは「ポンキッキ」顔負けのもろ着ぐるみ。この後の「乙女の祈り」では発達したCG技術を縦横に駆使、少女たちの暴走する妄想をめくるめく映像美で再現。そして「ロード・オブ・ザ・リング」での成功へと続く。やっと映像の技術が、類まれな監督の想像力、そして構想力に追いついたというところだろうか。しかし、もし本作を「ロード・オブ・ザ・リング」ばりのCG使って撮ったとしたら、やはり魅力は半減するだろう。嵐のごとく降り注ぐ血糊の前には、生半可なCGなど単なる子供だましに過ぎない。タランティーノをも凌ぐクロスオーバー。ベイビーのシーンのはスピルバーグをも越えた。当時だからこそ撮れた、まさに奇跡のような名作。 10点(2004-08-08 04:02:24) |
87. バイオハザード(2001)
もちろん現代的な要素満載であるが、基本的には「ゾンビ」以来の、正統派王道ゾンビムービーの流れを汲む作品。ゲーム原作という事実を前に、この基本を忘れていたので、改めて納得した次第。ゲームの方は知らないので、比較できないのが残念。元々ゾンビ映画があまり怖くない性質なので、(「ブレインデッド」で大爆笑した)そういう意味では、あまり怖くなかった。おまけにサイバーパンクなセットと、明るく美しい色彩で清潔感さえ漂う映像は、かつてのどろどろで、ぐちゃぐちゃで、アラを隠すのにも大いに役立ったと思われるダークネスとは程遠い。しかし連続する危機、少しずつ解明される謎によって、ストーリーはスピード感と緊迫感を最後まで維持し、キメ細かな演出と力強い演技がさらにそれを増幅することに成功している。画面の人工的な明るさが、逆に密室感を強調しているのかもしれない。地中の密室という設定は、宇宙船に近いですね。ミラ・ジョボヴィッチの体当たり演技は賞賛に値する。アニメCG顔負けの端正な美しさと脚線美。そして何よりもあの強さ。戦闘美少女という奴ですね。このあたりもひじょうに現代的といえるかもしれない。こういう嗜好は日本製アニメゲームカルチャーの鬼っ子といえるでしょう。 8点(2004-07-22 23:36:53)(良:1票) |
88. RONIN
《ネタバレ》 路地裏でカーチェイス、ハイウェイを逆走、屋台をブチ撒け、オープンカフェに客ごと突っ込み、トラック転がすわ、車何台も吹き飛ばすわ、銃撃戦で民間人を巻き添えにするわ、もうやりたい放題。さすがフランケンハイマー。最近の若い監督には、恐らくできません。CG全盛のこの時代に、ここまでガチンコでやるのは、今時石原プロと彼くらいのものでしょう。いしかわじゅんの言葉を借りれば「レッツゴーバカおやじ」といったところでしょうか?スケールはだいぶ違いますが。しかし伝説のカーチェイス「フレンチ・コネクション」はウィリアム・フリードキン監督で、フランケンハイマー監督は2作目の方ですね。ライバル意識でもあるのでしょうか?スパイものによくありがちな過剰なハイテクもほとんど登場せず。ラストシーンで、ジャン・レノにズームするあのブレブレ感がもうたまりません。全く実に惜しい人を亡くしました。結局デ・ニーロは、CIAの人間だったということでいいのかな?しかしCIAがIRAのことに、そこまで首を突っ込むのかな?英国情報部ならまだ話はわかるが。あるいはIRAに雇われたということだろうか?いまいちよくわかりません。タイトルはクロサワに対するリスペクトらしいです。アクションというより、活劇という言葉が似合いますね。 [映画館(字幕)] 8点(2004-07-12 01:17:43) |
89. 蜘蛛女(1993)
レナ・オリン大暴れ。手錠を後ろ手にかけられたまま、運転中のゲーリーの頸を脚で絞め(なんていう技だったっけ)、フロントガラスをハイヒールで突き破り、手錠でベッドにつないだゲーリーの上で、乳丸出しでボンデージの衣装のボタンをパチパチさせ、「踊ってよ、ジャック」といいつつ、スカートを脱ぎ捨て、T-バックの尻をプリプリさせ、別に踊るだけならスカート脱がなくてもいいじゃん、というツッコミも忘れさせてしまう。もうやりたい放題。ゲーリーと遊んでいる時は最高に楽しそうなのに、ロイ・シャイダーに命乞いをされて、「知ったこっちゃないわよ」と冷たくはき捨てる豹変ぶりが、最高に笑える。ある意味女らしい一面。最近ニュースとか見ていると、こういう女がその辺に本当にいそうなのが恐ろしい。でもモナみたいないい女だったらOKか?怖いといえばアナベラ・シオンの方も相当なものだ。女たちの渦巻く情念が、もやもやと纏わりついて離れない。ゲーリーのうろたえ、あたふたした表情は最高にキュートだ。B級パルプギャングノワールに、SM趣味と、ホラーの技法をミックス、最高にいかした作品に仕上がった。今までにない、全く新しい経験。 9点(2004-07-10 03:59:58) |
90. トータル・フィアーズ
「アメリカ国内で、テロリストの手により原爆が使用されるというショッキングなストーリーにもかかわらず、いまいち迫力に欠けるのは、恐らく、核の恐怖をきちんと描いていないせいだろうと思われる。この作品には、皮膚がケロイド状に垂れ下がり、断末魔の呻きを上げる被爆者の姿も、黒焦げになった死体の山も出てこない。焦土と化したボルティモアの町並みも、ほんの一瞬、しかも夜のシーンで登場するのみである。同様に核兵器が使用される、ミミ・ロジャース監督作品「ピースメーカー」において、映画の冒頭、列車事故の救出に向かおうとする年老いた農夫たちが、核の閃光に呑み込まれる、ほんの一瞬で、その恐怖や哀れみを、十二分に表現していたのと比べると、たいした違いである。倫理的にみて、あるいは唯一の被爆国民としての感情という問題を差し引いても、この欠陥は、純粋に映画としての面白さを半減するという意味で、致命傷だ。まるで気の抜けたサイダーのような作品になってしまった。しかし、もし9・11がなかったら、この作品も、非現実的として映画化されることはなかったかもしれないと思うと、やはり世界は変わったのだなと、実感を新たにする。」という投稿をしようと思ったら、下ですでに似たようなことを書かれておりました。でもせっかく苦労して書いたので投稿させて頂きます。エージント・スミスさん、気を悪くしないでくださいね。 6点(2004-07-10 03:41:47) |
91. ピースメーカー
《ネタバレ》 公開前は、ドリームワークス第一弾にしてはいささか地味ではないか?といわれていたものだが、封切り後は、そんな杞憂も見事に吹き飛んだ。冒頭、列車事故の救出に向かう農夫たちが、核の閃光に飲み込まれる。その一瞬のシーンで、監督のミミ・ロジャースは、核の恐怖と被爆者への哀れみを、観る者の心にしっかりと刻み込んでみせる。「トータル・フィアーズ」とはたいした違いである。その後は、切れ味鋭い演出、圧倒的なスリルとスピード感とによって、全世界を股にかけた、ポリティカル・アクションとしてのスケール感をも全く感じさせないほど、凄まじい勢いでストーリーが展開していく。これはもちろん嬉しい悲鳴である。「007」シリーズさえ霞んで見えるほどだ。そして何よりも、連続する派手なアクションシーンの合間に描かれる、哀しい人間ドラマ、苦悩するテロリストの悲壮な姿が、観る者の心をうつ。繊細さとスマートさが際立つ演出は、監督が女性だからというのは、単純にすぎるだろうか?主演の二人も最高にいかしている。ステンドグラスをぶち抜くラストシーンがまた最高。その辺の、凡庸なハリウッド産アクションとは一線を画する名作。 9点(2004-07-10 03:34:15) |
92. 櫻の園(1990)
初めてこの作品を観たのは、某タブロイド紙?の映画賞の授賞式においてでした。友人が何故か招待券を持っていたので、何の予備知識もなく一緒に観に行きました。授賞式が始まる前から、一番前の席に、制服をきた女子高生がずらっと並んでいて、一体何だろうと思っていたらなんと、この作品で演劇部員を演じた皆さんだったんですね。授賞式では皆さんがステージ上に一列に並んで、それはそれは壮観な光景でした。今は亡き田山力哉氏が、「天と○」や「稲○ジェーン」をコキ下ろしたり、今となってはいい思い出です。ついでに個人的なエピソードをもう一つ。屋上でボイトレをするシーンで、どこか見覚えのある景色だと思って見ていたのですが、エンドロールで気がつきました。撮影に使われたのはなんと、私の地元にある私立S学園だったのです。赤いタワーと山並みが特徴です。当時高校生ながら、いや、だからこそかもしれませんが、音、特に学校独特の静けさとか騒々しさがリアルで感心した記憶があります。脚本家の方は、電車で女子高生の会話を盗聴して、研究したそうです。作家は女性を描ければ一流といいますが、映画にも当てはまるかもしれませんね。 9点(2004-06-26 01:21:25) |
93. ゴッド・アーミー/悪の天使
初めて観たのは、池袋のシネマ・ロサにてだったと思います。あるいは文芸座だったかもしれません。その時の原題は確かに「GOD’S ARMY」でした。その数ヵ月後、あるいは数年後かに、深夜の「ショウビズ・トゥデイ」か、あるいは他の番組の、全米映画興行成績トップ10のコーナーにて、本作を発見しました。確か3位くらいでした。その時にはタイトルが「THE PROPHECY」に変わっていました。恐らくアメリカでは、「神の軍隊」というタイトルでは公開できなかったのでしょう。神と天使たちの戦争という割にはスケール感に欠け、その欠点が集約されているしょぼいクライマックスは致命的です。このテのサイキック・ホラーは、よほど脚本が魅力的で、映像が派手でないと、成功は難しいでしょう。しかし「X-ファイル」をも凌ぐ、大胆かつマニアックなテーマは魅力的だし、映像や演出の細部では、監督の鋭敏なセンスを感じます。タランティーノとの仕事で第二の黄金期を迎え、最もノッていた時期のクリストファー・ウォーケンだけに、白塗り黒尽くめのガブリエル役の怪演は最高にいかしています。ガブリエルの名前くらい知っている人であれば、結構楽しめる作品でしょう。 7点(2004-05-20 17:27:23) |
94. オーシャンズ11
《ネタバレ》 映像と音楽のセンスのよさはピカ一。セリフも決まっている。スマート過ぎて少々物足りないくらいだ。淡々とした演出で、仕掛けも控え目、これだけのスターを揃えた割に、全体の印象はあまりにも地味だ。クライムアクションであれば、もう少しスリルが欲しかった。計画がすんなりと成功しすぎでは?それともこの鮮やかさ、完璧さに唸るべきなのか?それにしても女のために命を賭けるクルーニー様はカッコ良い。しびれる。要はバランスの問題か?この映画と彼らの計画のクライマックスは明らかに、金庫を破るシーンでもなければ、逃走するシーンでもない。アンディがジュリアを捨てるシーンだ。つまり本作は、添え物的にラブストーリーを絡ませたクライムアクションではなく、あくまでクルーニー様のラブストーリーなのである。そして公私混同と理解しつつ、そのクルーニー様のわがままに付き合う仲間たちの姿には、心温まるものがある。「Heat」のデ・ニーロのような、冷徹なプロとは対極の存在だが、どちらも男の生き様を見せつけてくれる。ルパンだって、いつも最後は不二子ちゃんに騙される。しかしそれをとやかく言う者はいない。 8点(2004-05-18 03:14:14)(良:1票) |
95. ウォーターボーイ
「フォレスト・ガンプ」の一エピソードを、そのまま一本の映画にしたような感じ。抜けた男のサクセスストーリーとアメフトスポコンドラマ。「ルーカスの初恋メモリー」という隠れた名作も思い出す。青春映画の傑作なので暇なかたはどうぞ。チームのコーチの言葉がわからなかったり、ワニの丸焼きが出てきたり、恐らくルイジアナの田舎っぷりをチャカしているのだろうけど、日本人にはよくわからない。チームの監督が「私も昔、タトゥーを反対された」と言って尻を出すと、そこにはロイ・オービソンのタトゥーが、というシーンも笑うべきなのかよくわからない。ロイ・オービソンがルイジアナ出身なのか、それともロイ・オービソンとタトゥーの取り合わせが面白いのか?ロイ・オービソンは結構好きなのだが。この間「ハイスクールウルフ」というドラマを見ていたら、主人公がアダム・サンドラーのレポートを書きたいので、この「ウォーターボーイ」をビデオで見たい、というようなシーンがあったが、もしかしてそれほどこの作品はメジャーなのか?あるいは単なるギャグなのか?予備知識ゼロなので全く不明。コメディはやっぱり難しいね。 5点(2004-01-17 21:33:41) |
96. ブレイン・スナッチャー/恐怖の洗脳生物
開始10分にしていきなりぬるぬるの頴娃みたいなエイリアンが登場し大爆笑。主人公たちが調査のため訪れた街で、すでにエイリアンに寄生されている街中の人間に襲われ、しかも主人公までが寄生されて大暴れという怒涛の展開。にしては演出がぬるい。いろんな意味で一体どうなるんだ?と思いきや、意外というかやはりというか、その後は地味な展開。中途半端に父と子の確執を交えたり、イマイチな主演女優がラブシーンでも脱がなかったり、でも別に脱がなくてもいいか、という感じで話は進む。大統領まで登場して、エイリアンの侵略による人類の危機、という割りにはスケール感がなく、緊張感も薄い。アクションもつたない。誰が寄生されているかわからない恐怖という設定も生かされていない。寄生された人々がゾンビのごとく襲ってくるというお約束もあるんだかないんだかよくわからない程度の腰の引け方。もし子供たちが集団で襲ってきたら一体どうするか?今度はポール・バーホーベンあたりに監督してほしい。まあ主題自体がB級だから、どうあがいてもB級にしかならないですね。それにしてもドナルド・サザーランドはどうしてこういう映画が好きなのだろうか? 4点(2003-11-10 03:32:47) |
97. プレシディオの男たち
脚本、アクション、主演のマーク・ハーモンと、どこを取ってもいまいち地味な印象の作品で、評価も知名度もやはり地味だが、これが隠れた名作である、といってしまおう。ストーリーは刑事アクションの体裁を採っているが、人間ドラマに主眼を置いた作品なので、地味なのも仕方がないか。とはいうものの、そのアクションシーンのタイトさがドラマを盛り上げているのも事実。サンフランシスコのプレシディオ米軍基地で発生した殺人事件をきっかけに、男女の出会い、父と娘の確執、ぶつかり合う男たち、そして友情と、様々な人間ドラマが交錯し、スタイリッシュで美しい映像と、味わい深いセリフが彩りを添える。M・ライアンの美しさに驚愕し、S・コネリーの渋さにグッとくる。そして彼らを引き立てる、控えめで好青年のM・ハーモン。キャスティングのバランスが絶妙。「デッドって一体なんだ?」頑固一徹の憲兵隊長役は、まさにS・コネリーのはまり役。数々の名画の舞台となったサンフランシスコ。邦題もかっこいい。大人のための一本。 8点(2003-10-24 20:32:08) |
98. 名探偵コナン 世紀末の魔術師
《ネタバレ》 なんといってもクライマックス。エッグの仕掛けで、ニコライ皇帝の家族の写真が、スライド状に映し出されるシーン、そして×××の登場に大驚愕。ストーリーの展開が緩慢で、後半はほとんど洞窟内を歩き回っているだけ、知らない間に佳境に突入していたが、上記2点において全て許す。この映像マジックはアニメならでは。もちろん設定自体は非現実的であるが、ニコライ二世やラスプーチンなどの、世界史上のミステリーを絡めたプロットはなかなか秀逸だ。この辺は「ルパンⅢ世」シリーズを手がける東京ムービーらしい?と思う。多分。そういうアニメらしさとリアリティのバランスが、大人をも巻き込む魅力なのだろう。というか、子供は完璧に理解できるだろうか?犯人を推理する暇がなかったような気もするが、ファンはこの辺どうなのだろうか。ちなみに私は全く考えもしなかったので、×××の登場にもただただ驚きっぱなしで、何が何だかわからず。おかげで充分楽しめた。そして最後はちょっと感動。そりゃあみんな実写の邦画よりアニメ観るよな。 7点(2003-08-05 05:49:52) |
99. ミュージック・オブ・ハート
最初は「スクリーム」の続編かと思ったが、よーく見るとスタブ・マスクではなく、素顔のメリル・ストリープだった(藁)。最後の演奏シーンは圧巻。音楽映画はやはりこうでなくては。クラシックの有名バイオリニストに混じって、フィドラー(カントリーの世界では、バイオリンをフィドルと呼ぶ)のなんとかという人が出ていたのが、いかにもアメリカらしく、アメリカン・ロック・ファンの私としてはちょっとうれしい。ついでに、グロリア・エステファン(見ている時は気付かなかったが)とアンジェラ・バセット(もちろんティナ・ターナーのナンバー)あたりにも歌ってもらえば、もっと盛り上がったのに。ついでにウーピー・ゴールドバーグが修道女ルックで登場すれば完璧(藁)。冗談はさておき、いち音楽ファンとしては、音楽が人間の心を癒し、成長させ、社会さえも変革できる可能性を持っていることを示唆している点は、ひじょうに好感が持てる。子供たちだけでなく、主人公にとっても、音楽と子供たちが心の支えだったのだ。主人公が長男に「あたしは行かないでくれって頼んだのに、あの人は行ってしまったのよ。ヨヨヨ」と言うシーンは斬新、かつ印象的だった。 8点(2003-05-12 22:40:46) |
100. トゥルーナイト
ギア様の最高傑作!今度の役柄は何と、心に傷を抱えた放浪の騎士!お相手はうら若き王女様・ジュリア・オーモンド。そしてライバル(恋敵)はアーサー王・ショーン・コネリー。「プリティ・ウーマン」「愛と青春の旅立ち」をも超える超ハードなミッション。剣を振るい、愛を囁き、虜にしておいて、逃げ出そうと見せかけつつ、やっぱり舞い戻り・・・。こんな芸当はもはやギア様にしかできません。センスの良い衣装と、おとぎの国のような風景、そして目も覚めるような美しい映像美の中で繰り広げられる中世騎士物語は、もう最高にロマンティック。敵地に単身乗り込んで救出にこられた日には、ジュリアならずとも惚れてしまうのは当然。素朴かつお色気ムンムンなジュリア。貫禄のショーン・コネリー。この人がいると画面が締まる。そして騎士姿のギア様のアクションも冴え渡る。アーサー王伝説を斬新な発想で大胆にアレンジ、恋愛ものとしても、時代ものとしても実に個性的でユニークな秀作。もともと時代物はすきなので、華やかな甲冑やお城の背景だけ観ていても、個人的には楽しめた。あぁ、ギア様ぁ。 8点(2003-03-21 04:34:35) |