81. ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
キャストアウェイやオープンウォーターなど、遭難ものの映画はそれほど珍しくないが、トラと漂流してしまうとは何とも奇抜で面白い発想だと思う。しかし、設定が前面に押し出される映画は、観る前は面白そうでも、実際に観るとがっかりするパターンが多い。正直あまり期待していなかったのだが、本作はありがたいことにその期待を見事に裏切ってくれた。 まずは設定を最大限に活かしたストーリー展開が素晴らしい。メインは主人公が遭難してからなのだが、序盤で主人公の生い立ちや価値観が綿密に描かれており、ストーリーに説得力をもたせるための下準備がしっかりできている。ただ動物と一緒に遭難するだけの陳腐な映画になっていない。 さらに映像にも様々な工夫がなされている。海ばかりで寂しくならないように、美しいCGが視覚的にも楽しませてくれる。幻想的な光のアートと海の生物達が、まるで童話のごとき世界観を創りだす。子供から大人まで飽きることなく観ていられるだろう。 [映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2013-01-21 06:35:20) |
82. アーティスト
このご時世にサイレント映画に挑戦した監督の心意気やよし!完成度は非常に高い。しかし高得点をつける気にはなれない。俺はもっと斬新さがほしいんだよ!サイレント映画にチャレンジするだけの度胸があるなら、もっと他にできることはなかったのかと!やるならとことん冒険してほしかったな~。優秀なサイレント映画で終わってる感じが残念!作品賞は返してもらおう(謎 [DVD(字幕)] 7点(2013-01-15 04:40:58) |
83. ONE PIECE FILM Z
ワンピース映画の中では最も満足できる作品でした。原作者ではない人間が脚本を書いているにも関わらず、ファンの心をくすぐる要素を多分に盛り込みながらも、ワンピースの世界観を壊していませんでした。守るべきところは守り、攻めるところは攻めるという攻守のバランスが非常によくとれていた思います。おまけに面白く、飽きずに観させる構成力も抜群です。脚本を手がけた鈴木おさむ氏には流石と言うしかないですね。私としてはストロングワールド超えです。 [映画館(邦画)] 8点(2013-01-14 03:45:27) |
84. カイジ2 人生奪回ゲーム
映画の登場人物同様、金儲けというものを最大の目的にしてしまうと、こういう映画になってしまうのか。 作る人間の想いが込められていない作品が良いものになることは絶対にない。 [地上波(邦画)] 4点(2012-11-26 01:39:04) |
85. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
後ろから思いっきりどつかれたような、予想を裏切る冷酷無比なカウンターパンチ。ファンの想い通りにはいかないことこそエヴァがエヴァたる所以だと思う。想像を遥かに超えて、強烈な衝撃を与えてくれた。 賛否両論上等。ハリウッドには創りだせない圧倒的な映像と世界観。日本が誇る最高のアニメーション。 [映画館(邦画)] 9点(2012-11-26 01:28:18) |
86. イントゥ・ザ・ワイルド
2時間という短い時間を楽しませてくれる映画は数あれど、人生に何かしらの影響を与える作品は数少ない。本作はその後者に値する作品の一つだ。 バックパッカーなど長期の旅を好む人はそれほど珍しくはない。それは不遇からの逃避であったり、金銭的な余裕による娯楽であったり形は様々だ。しかしこの主人公の旅はかなり異質である。映画では逃避という言葉が使われていたが、それは通常の逃避とは明らかに異なる。彼は裕福な家庭に生まれ、ハーバード大学を卒業し能力的にも金銭的にも恵まれていた。多くの人が求め、手に入れば満足するものを持っていながらそれを捨てて彼は旅に出た。学資預金を寄付し、身分証明書を切り捨て、持っていたわずかな金を燃やした。ここまでできる人間が世の中にどれほどいるだろうか?社会からの逸脱。保険のない、荒野へ(into the wild)向かう旅だ。人生は、世界はこんなにも素晴らしく、美しい。そう教えてくれる映画だ。 余談だが、ものごとを現実的に考え哲学的なものに意味を感じない人は観るのをやめた方がいいかもしれない。この映画は無数にある人生のあり方の可能性を一つ提示してくれるだけで、哲学同様答えを示してくれるものではないから。 [DVD(字幕)] 9点(2012-11-11 04:34:45) |
87. 戦火の馬
面白い。確かに面白い。しかしそれはエンターテイメントとしてである。もし、この作品に戦争についての何かしらのメッセージ性のようなものを期待するなら観ない方がいいかもしれないし(というかプライベートライアンとかシンドラーのリストの方が良い)、スピルバーグが万が一そういったものを込めたつもりで制作したなら本作は駄作と言えるかもしれない。何故スピルバーグのような名監督がこのタイミングでこの作品を撮ろうと思ったのか若干納得がいかない。そういう意味では非常に評価の難しい作品である。ということで及第点の7点です。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-08-21 01:42:27) |
88. おおかみこどもの雨と雪
《ネタバレ》 時をかける少女やサマーウォーズにあったような巧みなストーリー展開は今作にはあまり見られなかった。しかし、その分、登場人物の感情表現や演出には力が入っているように感じた。 そもそもおおかみ男というファンタジックな要素を現代社会に組み込むということ自体がかなりの荒業である。それを夫を亡くした母親の苦労や思春期の女の子の複雑な心理を通して違和感なくストーリーに溶け込ませただけでも大したものだと思う。 しかし、最終的に雨のとる行動が私には大人び過ぎているように感じられ、10歳という年齢を考えるといささか納得がいかず、リアリティを欠いてしまった(その雨を笑顔で送り出す母親もどうだろう・・)。また、過去の作品に比べ、全てがスッキリと終わるものでなく、消化不良になってしまっている部分もあるのが残念であった。 とは言っても、一つの作品としては十分に楽しめたし、次回作もまた映画館で観たいと思う。 [映画館(邦画)] 8点(2012-08-21 01:26:48)(良:1票) |
89. 鉄コン筋クリート
原作は未読です。世界観はとても引き込まれるものがありますが、やはり映画だけでは内容を理解するのが難しいように感じました。理解できれば面白いのかもしれません。 [DVD(字幕)] 6点(2012-05-04 03:57:54) |
90. 世界侵略:ロサンゼルス決戦
なにもかもがベタすぎてちょっと無理でした。 デジャヴすら感じるような展開。 [DVD(字幕)] 4点(2012-05-04 03:50:00) |
91. タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
映像は綺麗です。他のCGアニメと比べても作り込みはかなりのものだと思います。 ストーリー自体は王道です。王道が悪いわけではありませんが、どっかで観たことのあるようなものの寄せ集めに感じ、正直私には合いませんでした。アニメ映画の教科書的な作品です。私としては王道の中にも何かプラスアルファがほしいですね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-05-04 03:40:45) |
92. スリーデイズ
アクション映画なのかもしれないが、雰囲気はサスペンスのような緊張感があります。派手ではないけど、とてもテンポがよく最後まで飽きません。ストーリー自体はやりつくされているものですが、完成度は非常に高い映画だと思います。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-05-04 03:26:26) |
93. SPACE BATTLESHIP ヤマト
《ネタバレ》 ハリウッド映画に比べて、どうしても見劣りしてしまうCGものの邦画としてはよくできていると思います。結構違和感なく見られますね。 他のレビューにもあるように演技は確かに臭いです。ヤマトを見ていた世代は今大人なので、やはりそういった部分は鼻につくのでしょうね。柳葉さんとか木村さんの死ぬシーンとかね・・なんかわざとらしすぎて感動できないですね。クライマックスが演技が気になって感動できないとかちょっと・・ まあ、原作がアニメですからある程度は致し方ないのかもしれませんが。 [地上波(邦画)] 5点(2012-05-04 03:21:41) |
94. 塔の上のラプンツェル
これぞディズニー作品とも言える王道的作品。技術の進歩もあり、美女と野獣のパワーアップ版といった印象を受けました。ディズニーファンなら間違いなく楽しめると思います。私としては一歩踏み出した何かがほしいですが・・。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-05 04:17:03) |
95. チェンジリング(2008)
事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだ。そして、その事実を本作はただただ丁寧に再現している。もちろん脚色や誇張はある。しかし、クリントイーストウッドの演出は、観た人の心を揺さぶり、この事実を人々の記憶に残すための必要最低限なものでしかない。陳腐な言い回しかもしれないが"匠のなせる技"であると思う。 アンジェリーナ・ジョリーは言われなければ気づかないくらい、普段のアクティブな印象とは異なるが、特に違和感はなく、むしろハマっていたようにすら感じる。クリントイーストウッドにはそれが分かっていて選んだのかと思うと、さすがである。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-05 04:06:46) |
96. SUPER8/スーパーエイト(2011)
《ネタバレ》 ある超常的な設定、あるいはオチのようなものを最初に用意してしまえば、その過程で何をやっても、見た目上は矛盾を感じさせずに最後まで持っていける。 エイブラムスの常套手段だ。 映画に限らず、この手法を用いてエイブラムスは数々のヒット作品を生み出してきた。素直にプロデューサーとしては優秀だと思う。しかし、この方法でヒット作品は生み出せても名作は生み出せないと思う。 確かに、本作には観たいと思わせる魅力があるし、実際に鑑賞すれば序盤の列車事故や謎めいたキューブの存在、次々と起こるミステリアスな展開にとても引き込まれる。 しかし、本作はそういった数々の伏線をどう処理するのかと思ったら、それらを全て宇宙人に丸投げして終わるのだ。 確かにそこに矛盾はない。あの奇妙なキューブも宇宙人の持ち物であれば、存在してもおかしくないし、人間や犬が謎の行方不明になるのも、宇宙人の異常な運動能力とたまたま現場を写せないカメラワークがあれば成立するからだ。なんとも便利な設定と巧みな演出だと思う。 だが、矛盾がないと同時に必要性もない。本作はそういったもののオンパレードだ。それで全ての観客が騙され、賞賛を贈るほど甘くはない。その安易さは観客に無意識に伝わり、感動を薄れさせる。上手さやテクニックだけの作品に心を揺さぶるパワーは生まれない。 結局、本作は一体何を描きたかったのか?E.Tのような宇宙人との友情だったのか、それともスタンドバイミーのような子供たちの冒険ドラマだったのか・・?監督として参加したにも関わらず、最後までプロデューサー的発想しかできずに終わってしまった作品である。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2011-12-05 03:45:01)(良:1票) |
97. さや侍
《ネタバレ》 全作品に共通しているのは笑いというテーマ。それはやはり松本作品からは切り離せないものなのだろう。しかし今回はその笑いの部分が面白くない。世界を意識したからなのかどうかはわからないが、およそ笑いの王道ともいえる(悪くいえば使い古された)パターンの連発で、とても笑えなかった。松本人志のファンが果たしてこんな笑いを求めているだろうか?答えはNOだと思う。 今回はさらに感動という要素が入っているが、中盤でのストーリ的な展開はほとんどないし(ギャグの連発のため)登場する親子の関係についてもほとんど描かれていない。そのためラストシーンだけが一人歩きして、説得力に欠けている。愛する人が死んで悲しむ人を描けば感動するほど甘くはない。例え監督の頭の中に、そこへつながる何かしらの因果関係が成立していたとしても、観客にそれが伝わらなければ意味はない。 それでも松本作品の他者に迎合しない、我が道を行く姿勢は少なからず魅力的だ。こんな映画は松本作品でしか観られない。そこには松本監督にしか作り出せないストーリーがあり、演出があり、世界観が確かにある。 この映画は面白いか?と聞かれたら面白くはないしオススメもできない。駄作か?と言われたらそうかもしれない。しかし私は、『見る価値のある駄作』であるように思う。だから次回作が出れば間違いなく観るだろう。DVDで。まあ映画館にまで行くのはね・・ [DVD(字幕)] 5点(2011-11-20 06:23:15)(良:1票) |
98. 映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ 天使たち
《ネタバレ》 リメイク版シリーズの中では一番良い出来だと思います。もともとの作品が良作ということもあり、とても楽しく観ることができました。 しかし、私には毎回リメイク版に共通した不満があり、今回もやはり・・という感じで同じ不満を抱くことになりました。それはリメイク版では全体を通して表現が優しくなっているところです。私は旧ドラえもんの映画において重要な要素の一つは恐怖だと思います。それが今のドラえもんにはありません。 リルルがのび太の家に来て、のび太の発言に対して反応したときのリルルの表情や、しずかちゃんの家に突然現れた敵ロボット、敵のボスが鏡の世界だと気づいたときのシーンが子供のころの私にはとても怖かった。だからこそハラハラしたし、ドキドキしたし、地球が救われたときはとても嬉しかった。この感情の高低差が大人になっても忘れられないほどの感動を与えてくれたのだと思います。 リメイク版では敵のロボットはデザインからすでにギャグっぽいし(あのカマキリみたいなやつ何?)演出の仕方も恐怖を感じません。終始おだやかに、楽しく進行しているだけです。 賛否両論あるのはわかっていますが、何でもかんでも子供に優しく刺激の少ない表現にすればいいのか!と今のアニメ全体の方向性に疑問を感じました。特にドラえもんには思い入れがあるだけに残念に感じました。 [DVD(字幕)] 7点(2011-10-10 06:55:35)(良:3票) |
99. ヒア アフター
霊能者や宗教といった非科学的なものを語ったり信じている人を、私たちは無意識にどこか愚かな人間と決めつけて普段見向きもしないけれど、そういった世界が存在しないという証明はどこにもないわけで、私たちがやっていることはただの決めつけや偏見でしかないのかもしれない。 と・・そんな風に少し考えさせられました。 クリントイーストウッドのような、批判的に見られることの少ない監督が、批判的に見られることの多い題材を肯定的な表現で描いているところに何か妙な面白さを感じますね。正直こういったものを題材に選ぶイメージがなかったので、改めてイーストウッドの底の深さのようなものを感じ、最後まで楽しく観れました。この人はいくつになっても挑戦し続けることのできる人なんですね。 ラストシーンは解釈が難しく、釈然としないところがありますが、イーストウッドファンなら満足できる作品に仕上がっていると思います。 [DVD(字幕)] 8点(2011-10-10 06:28:37) |
100. ぼくのエリ 200歳の少女
ヴァンパイアとアート的表現、およそ結びつきそうにないこの二つの要素を一つの場に違和感なく溶け込ませた監督の演出が素晴らしかったです。多くを語らず、極力、映像や音楽、役者の表情で伝えようとする手法は、鑑賞後に映画というより何か一つの絵画を見たような感覚を与えてくれます。 [DVD(字幕)] 8点(2011-10-10 06:02:50) |