81. 崖の上のポニョ
《ネタバレ》 前作『ハウル』に若干の違和感を感じ、『ポニョ』に到っては「何じゃこりゃ?」という感想しか浮かばなかった。『ナウシカ』や『ラピュタ』のファンである我々は、かつてのような作品を求め、それに応じない監督を「終わった…」と思った。しかし、還暦を過ぎた監督が、20年以上も前の作品と同じようなものを果たして撮るだろうか?長い歳月を経て、監督も変わっただろうし、世の中も変わったし、ジブリという会社の体制も変わっただろう。そして何より、我々自身が変わったのではないか?変わらないのは、その時代時代に残された作品であり、我々はただノスタルジーに浸るばかりで、怯むことなく新たなことに挑戦する監督の速度について行けないだけなのだ。人間の姿になったポニョが、荒波に乗って疾走するあのスペクタクル場面は、宮崎監督にしか描けないものであり、この作品が唯一無二の傑作であるという証なのではないか?3度目の鑑賞でやっとレビューを書くことができた。 [映画館(邦画)] 8点(2010-07-18 21:51:35)(良:2票) |
82. (500)日のサマー
《ネタバレ》 あ~ムカつくな~、サマーのやつ。でも男はこういう女に弱いもの。男は繊細でロマンチスト、女はしたたかで現実的。こういった男女の真理をさらっと描いており、失恋の後にはかなり共感できそう。時間軸をシャッフルしたり、恋愛絶頂期にはミュージカルになったり、「理想」と「現実」の画面分割があったりと、演出が凝っていて飽きさせない。アメリカ映画にしてはオクテな男性像が逆に新鮮。 [DVD(吹替)] 7点(2010-07-13 07:22:54) |
83. パンチドランク・ラブ
暗いとか暴力的とかいう批判が多いが、あまりそういう部分は気にならなかった(と言うより、むしろ主人公に結構共感できた)。アダム・サンドラーの映画にしては下品ではなく、淡々としてシュールな感じが好き。 [DVD(吹替)] 7点(2010-07-13 07:12:20) |
84. ハイ・フィデリティ
洋楽には疎いので分からない部分も多かったが、現代版『アニー・ホール』といった展開は好感がもてた。観客に向かって語りかけ、何にでもTOP5をつけたがるJ・キューザックがGOOD。こういう男目線の恋愛映画は大好きだ。ジャック・ブラックの存在感が凄い! [映画館(字幕)] 7点(2010-07-13 06:55:27) |
85. 戦場でワルツを
《ネタバレ》 アニメーションというフィルターを通して語られてきた物語が、ラスト、唐突に実写映像を挟むことによって、全ては現実なんだと認識させられる。泣き叫ぶパレスチナの女性たち、そして無残に横たわる死体の数々。虐殺の痕跡。失われた記憶が鮮明になる瞬間。忘れてはならない現実がここにはある。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-12 07:57:56) |
86. ラブリーボーン
スピルバーグが関わったことからしょーもない家族愛のファンタジーになってしまったようだが、スピは『ポルターガイスト』の失敗から何も学んでいないのか?ピーター・ジャクソン監督とはあまり相性が良いとは思えないのだが…。そもそもこのような内容に、2時間を越える上映時間は長すぎる。100分前後の小品にした方が、心に残る映画になったのではないか?「憎しみより愛を」というメッセージは素晴らしいが、そこに到るまでが長く、美しいCG映像もただ退屈なだけ(手垢のついた天国のイメージ)。ドラマとサスペンス、ファンタジーのバランスが悪く、テーマを曇らせているのも問題だ。ヒロインの頑張りに免じて6点献上。 [DVD(吹替)] 6点(2010-07-07 20:13:02) |
87. 処刑山 -デッド・スノウ-
いかにも『ブレインデッド』以降の作品らしいバカスプラッターの快作。ラスト30分の容赦ない血みどろ描写とユルいギャグの波状攻撃(「海に行けば良かった!」)に笑いが止まらない。しかし、この手の作品にはよくあることだが、前半部分が全く盛り上がりに欠け(バカ医学生が雪山で遊んでいるだけ)、退屈極まりないのは問題だと思う。サム・ライミやピーター・ジャクソンは、映画が始まる瞬間からアクセル全開で飛ばしまくっていたが、この監督には、「後半にいろいろ詰め込んでいるから、前半はつまらなくてもいい」という甘い考えがあるようだ。たとえB級映画でも手を抜いてはいけない。とは言え、往年のバカスプラッターが好きな方なら観て損はない。 [DVD(吹替)] 6点(2010-07-07 19:45:10)(良:1票) |
88. サバイバル・オブ・ザ・デッド(2009)
《ネタバレ》 正直、旧3部作に比べると期待外れな出来だった『ランド・オブ・ザ・デッド』が大傑作に思えてしまうほどのヌルイ作り。18禁になるほど残酷描写が凄いとも思えないし、そもそもCG臭さが鼻について素直に楽しめない。魅力に乏しいキャラクターといい、どうしちゃったの、ロメロ先生?…と、ここまでは文句ばかりだが、「ゾンビを飼い慣らそうとしている連中が支配する島」という設定は、実は『死霊のえじき』のオリジナル脚本(映画化されたものとはかなり異なる)で既に出来上がっており、ロメロはずっと以前からこのストーリーを温めていたのだろう。前述の『ランド~』も、『えじき』のアナザーバージョンといった設定だったし、ロメロ先生の中では常に一貫したストーリーの構想があるのではないか?そう考えれば、これは作られるべくして作られた、正真正銘、ジョージ・A・ロメロ監督の新しいゾンビ映画だと思われる。次作があるのか分からないが、どうせなら友人であるスティーヴン・キング氏の傑作ゾンビ小説「ホーム・デリバリー」をロメロ先生の手で是非映画化してほしいものだ。ゾンビ好き、ロメロファンということでかなり甘めの点数になってます。 [映画館(字幕)] 6点(2010-06-17 22:43:47) |
89. マイレージ、マイライフ
《ネタバレ》 『アバウト・ア・ボーイ』の主人公同様、「孤独の哲学」をしっかりと持った「リストラ請負人」のジョージ・クルーニーの人生に、ある日「異物」が舞い込んでくる。それは、会社に改革をもたらそうとする新人の若い女性や、自分と同じ哲学を持ったキャリアウーマンや、結婚式を間近に控えた妹。彼らと交わるうちに、孤独な自分の人生を振り返り、起死回生を図るが、世の中そんなに甘くない。気づけば自分だけが取り残されて空の上、マイルが貯まって憧れの機長と挨拶を交わすも、心(バックパック)はカラッポ…。ビターなエンディングだが、「それでも人生はやり直せる」というのがテーマなのではないか?だって、クルーニーはラスト、荷物を置いて飛び立とうとしているじゃないか。 [映画館(字幕)] 7点(2010-06-10 22:52:19)(良:1票) |
90. 犬神家の一族(2006)
旧作と全く同じ内容で、監督も主演俳優も変わらないのに、何故か30年も前の作品より見劣りする。松嶋菜々子ら若手の女優さんたちが現代的過ぎて、「犬神家」に纏わりつく陰惨なイメージにそぐわないのだ。ただ、これを機に横溝文学や市川監督の過去作に触れる人たちが増えればそれでいいのだろう(自分もその一人)。旧作と細かいところまで見比べてみるのも面白い。 [映画館(邦画)] 6点(2010-06-03 07:26:52)(良:1票) |
91. スペル
《ネタバレ》 サム・ライミらしいホラー・コメディの快作だが、怖がらせたいのか笑わせたいのか(いきなり大音量で婆さんの顔がどアップになるから確かにビックリはするが)いまいち分からない。序盤で彼氏がプレゼントのコインを大事そうに封筒に入れていたから、「ああ、これは最後の伏線になるのか…」と簡単に読めてしまったが、どうせなら、この彼氏が呪いのボタンの封を開けることで奈落に引きずりこまれた方が、ホラー映画のオチとしては良かったような気がする。その方がヒロインは現世で生きている限り罪悪感から逃れられずに苦しみ続けることになるだろう。もっとも、彼女はそれほど悪いことをしているわけでもなく、婆さんの逆恨みで呪いをかけられただけなのだから、どちらにしろ気の毒に思える。彼女がもう少し性格の悪い人間に描かれていれば、婆さん側にも感情移入できたのだが。流血のない『死霊のはらわた』といった印象で、ホラー初心者にも楽しんで頂けます。 [DVD(吹替)] 5点(2010-04-29 14:06:13)(良:1票) |
92. 母なる証明
《ネタバレ》 冒頭の奇妙な踊りから一気に引き込まれる。トジュンの母は、劇中、他の登場人物からも「お母さん」とか「おばさん」とか呼ばれている(韓国語で「オモニ」)。役名が「母」なのだ。これはちょっと深い。そして怖い。息子のためなら何だってする母。もちろん殺人だって厭わない。この展開は途中で読めてしまうが、それよりも怖ろしいのは、田舎警察のていたらくで、トジュンは釈放され、別のスケープゴートが逮捕されるところ(そして、逮捕された「彼」の顔を見た母は号泣する。「彼」もまたトジュンと同じような障害をもっていたから)。全てを見透かすかのようなトジュンの瞳。母はただただ狂ったように踊り続けることしかできないのだ…。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-27 23:34:35) |
93. カールじいさんの空飛ぶ家
《ネタバレ》 最初の15分だけなら10点評価も惜しくはないのだが、後半の迷走ぶりはどうしたことか?夫婦の愛の物語だと思っていたら、いつの間にか老人同士の殺し合いになっており、そのあまりにもブラックな冗談は笑うに笑えない(実際にはちょっと笑っちゃったけど)。最後に冒険家を殺し(?)ちゃったのもやりすぎだろう。あのまま風船の浮力で無人島に漂着するくらいの展開にしておいてもストーリーに支障はなかったはず。何となく後味の悪いものがあり、「あ~面白かった」で終わるいたって普通のアニメになってしまっている。 [DVD(吹替)] 6点(2010-04-27 23:11:32)(良:2票) |
94. REC/レック2
《ネタバレ》 アンヘラちゃんが前作よりもセクシー度アップでポイント高し。でもトーゼン悪魔の手先になっていて、バッドエンド確定のシナリオの薄さに高評価はつけられない。そもそも暗視カメラで観たら別次元にワープ(?)って、ルチオ・フルチの『ビヨンド』もビックリな展開で唖然とするばかり。ゾンビがワーッと襲ってくる臨場感はイイんだけどね。 [DVD(吹替)] 5点(2010-04-27 23:01:36)(良:1票) |
95. 空気人形
《ネタバレ》 「空気が抜けるのってどんな感じ?」という質問は、「死んでいくのってどんな感じ?」と同義であり、空気を入れる行為は生命を吹き込むということ。映画内では明示されていないので、これは単なる想像に過ぎないが、ARATAの元恋人はバイク事故か何かで彼の目の前で亡くなったのではないか?死んでいく彼女を救うことができなかった彼の後悔と祈りが、「空気を抜き、吹き込む」という行為に及んだ。しかしそんな心の内を理解できるわけもない空気人形は、ただその行為の官能性だけを感じ取り、彼にも同じ思いを味わってもらおうと、彼の空気を「抜く」(「触ってくれんか?」と頼んだ老人の下半身に反射的に手を伸ばしたように)。しかし、空気人形は彼に生命を吹き込むことはできなかった。それは悲劇である。彼を燃えるゴミに出し、自らも燃えないゴミの中に埋もれた空気人形を見下ろし、「きれい…」と呟く星野真理は、冒頭の生命を宿した空気人形の姿と重なる。心なんてない方がいい。しかしそれは静かに育まれていくのだ。何と切ない愛の寓話。 [DVD(邦画)] 9点(2010-03-28 01:14:17)(良:2票) |
96. U-571
以前ビデオで観た時はあまり印象に残らなかったが、DVDのdts機能で鑑賞すると面白さ3割増し。とにかく音響が凄い(アカデミー音響効果賞を受賞)。こりゃ映画館で観ても良かったな、と反省。マコノヒーもパクストンもカイテルもいい面構えしてます。女性が出てこない映画は潔くて良い。史実とはかなり違うみたいですが…。 [DVD(字幕)] 6点(2010-03-24 22:53:20) |
97. シャーロック・ホームズ(2009)
《ネタバレ》 大好きなシャーロック・ホームズをガイ・リッチーがどう料理してくれるのかと観る前から楽しみにしていた。ロバート・ダウニー・ジュニアのやさぐれホームズに、ジュード・ロウのイケメンワトソン。レストレード警部にアイリーン・アドラー、ハドソン夫人、そして「教授」と、おなじみのキャラが勢揃い。19世紀末のロンドンを再現したセット&CGも雰囲気抜群でまずは楽しめた。グラナダTVのワトソンはホームズの引き立て役といった感じで少々お間抜けなキャラだったが、本作ではホームズの相棒として対等に渡り合い、むしろホームズの方がワトソンに依存している節がある。この二人のキャラが最高に立っていて、作品に求心力がある。推理が貧弱だとかアクションが多過ぎだとか演出がせわしないだとか、まあ色々文句はあるのだが、エンターテインメント大作として上出来の部類でしょう。このキャスティングで是非続編を期待したい。 [映画館(字幕)] 7点(2010-03-22 01:01:05) |
98. ディセント2
《ネタバレ》 前作のサプライズは「地底人登場!」だったが、今回は「××は生きていた!」といったところか?全体的な仕上がりを見ると、別に無理して続編を作る必要はなかったのではないか、と思われる。どうせ作るなら『エイリアン2』くらい派手にやってもらわないと。結局こじんまりとしたサバイバル・ホラーに終始してしまっているし、ラストの老人の登場は蛇足以外の何ものでもない。C級に成り下がってますな。 [DVD(吹替)] 4点(2010-03-21 18:53:20) |
99. 狼の死刑宣告
《ネタバレ》 殺られたら殺り返す、という考えは映画的には実に正しく、誠実でさえある。現実にそんなことをすれば街は無法地帯と化してしまうため、ほとんどの犯罪被害者は泣き寝入りするしかないのだ。映画の中くらい、弱者が牙を剥いて野獣退治をしたっていいじゃないか。このようなヴィジランテ(自警)映画は昔からあるが、本作はその決定版とも言える『狼よさらば』のブライアン・ガーフィールドが原作を書いている。後半、リミッター解除したケビン・ベーコンの剃髪姿には感動すら覚える。彼の鬼気迫る演技がこの作品の全て。着弾効果のエフェクトは、手足がド派手に吹き飛ぶスプラッター指数の高い仕上がり。このざらつき感は『タクシードライバー』をも思わせ、ワン監督の70年代リスペクトをひしひしと感じる。今どきこんな映画を作っちゃう製作陣の姿勢がイイ。 [DVD(吹替)] 8点(2010-03-21 18:46:33)(良:1票) |
100. サブウェイ123 激突
《ネタバレ》 妙にのほほんとした登場人物や現金輸送車のクラッシュなど、オリジナル版をうまく踏襲しながらも絶妙に換骨奪胎してみせるあたり、面白い仕上がりのリメイクとなった。デンゼルとトラボルタのやり取りは頭脳戦というほど緊迫感のあるものではないが、いつものキリッとした役柄とは違う平凡な出で立ちのデンゼルと、汚らしく罵るトラボルタのキャラクター性で押し切った感がある。浮気疑惑の渦中にある市長という役柄のジェームズ・ガンドルフィーニがまたいい味を出している。サスペンスアクションを期待する向きには不評な本作だが、『ドミノ』でも見せたキャラクター映画としては実に面白く、上映時間もちょうど良い。スコット監督特有の映像加工も本作にはむしろ合っていたように思う。 [DVD(吹替)] 6点(2010-03-21 18:28:47) |