981. 四十九日のレシピ
《ネタバレ》 主演女優はいつまでたってもきれいで可愛らしい。子役には申し訳ないが大人状態の方がずっと愛らしく見えており、劇中の人物像としても聡明で健気なのが愛おしく感じられる。また出番は多くないが、独身時代の義母(演・荻野友里)も何気にいい感じで泣かせる顔をしてみせている。それから何といっても泣かせるのがレシピのビジュアルで、素朴でユーモラスな図柄や文字は見ているだけで泣けて来る。 ところで、これを見てから原作を読んで確認したが、劇中で心を動かす要素の多くは当然ながら原作由来であり、一方で映画化の際の問題点が目につく。 まず映画では主人公の伯母が、これはもう早々に世を去ってもらうよう願うしかない、という類の人物に見えていたが、それが終盤で突然“ほんとはいい人”に大変身する展開には呆れ果ててしまった。原作ではそれほど変に思われないので、これは映画の方の演出や、細かな人物描写の省略が原因と想像する(入水を止めただけでは説得力なし)。加えてハワイアンも意味不明のため、この場面が続けば続くほど違和感が拡大して、映画全体の価値が低落していく結果になっていた。 また「テイクオフボード」の考え方自体は結構だが、こういうのはある程度の年月をかけて、現状の追認を含めて得心していく性質のものである。そのため映画のラストで、主人公がいきなり具体的な解決方法を導き出したように見えるのはかなり不自然だった。ストーリー中でもこれに向けた伏線を準備していたようだが、こういう安易な結末を導くためだったかと思うと落胆する。当事者の心情などお構いなく、手っ取り早く形だけ整えて決着を付けたようなのは反感さえ覚える。 そのほか現在の父親の人物造形に問題があり(結婚当時の方がまだ自然)、またローマ字の裏返しをこんな風に半端に扱うくらいなら全削除の方がまだましだ、といった不満が多数ある。いい原作を採用し、いい役者を揃えたようではあるが、いい映画とはいえない出来だったのは残念なことだった。 ちなみに原作は、感涙どころでない爆涙小説である。読む人の年代にもよるだろうが、自分としてはかなり手ひどくやられてしまった。 [DVD(邦画)] 4点(2015-04-10 21:53:14) |
982. ショコラの見た世界
《ネタバレ》 携帯電話の存在をここまでポジティブに扱ったものは初めて見た気がしたが、外部情報によればそもそも当時の携帯の販促プロモーション用映像を使ったものらしい(CMに出ていたそうだがTVを見ないので知らない)。監督と主演女優の名前を見るとここに登録されていなかったのが不思議にも思われるが、当時としてはあまりまともな映画扱いされていなかったということか。 内容としては極めて非現実的であり、冒頭の砂丘の場面からしてこんな場所が一体どこにあるかと思う(アラビア半島の丘陵地帯を巨人が歩いているようだ)。主人公の自宅もかなり突飛な構造になっていて呆れるが、しかしここまでファンタジーに徹していると文句をつける気にもならず、逆に実在の犬吠埼の風景が本物であるのにファンタジックなのが不思議にも思われる。 また登場人物に関しては、全編を通じて幼い妹と姉のやり取りが微笑ましい。この妹とネコの組み合わせがまた極めて愛らしく、鏡の場面でのネコのリアクションはたまらない。7年後の妹も、少々くたびれたようでいながら以前の愛らしさを保っているようで好印象だった。こういう映画を愛でる感性は自分にはないが、妹役2人とネコに和まされる映画だったので悪い点にはしない。時間も短いので見やすい。 [DVD(邦画)] 5点(2015-04-10 21:53:09) |
983. みづうみ
《ネタバレ》 オープニング部分から物語が動いているのはわかるが、キャスト、スタッフから何からクレジットを全部入れているので導入部だけで6分以上かかり、いつになったら本体が始まるのかと思っている間に見る気が半減する。映像的にも、宣伝用の透明感のある写真と劇中風景のイメージが全く違うのでいきなり落胆する。 本体部分も突然奇声を発するタイプの演出が多いのでやかましく、また登場人物の誰にも共感できないので見るのがつらい。特に強盗殺人犯に関しては、金を取れば済むはずがわざわざ人に向けて発砲したというのは同情の余地がないわけだが、それでも相手が死んだと知るや人並みに悔いてみせるのが白々しい。さんざん不快感を盛り上げておいてから哀れっぽい老人など出しても全く心が動かず、かえって面倒くさいからみな勝手に死んでしまえという気分だけが盛り上がる。ラストはおおむね予想通りの展開で、ここに至る登場人物の心理は理屈で理解できないことはないが、心情的に納得できるかというとそうでもない。 そういうことで、中身があるのはわかるが共感がついて来ないところが難点の映画だった。 なおかろうじて褒めたいのは子役が非常に達者な感じだったことである。また強盗殺人犯役は死んでもらいたい女が似合う女優かも知れないと思ったが、これは別に褒めていない。 [DVD(邦画)] 4点(2015-04-10 21:53:06) |
984. ヴィタール
《ネタバレ》 知り合いにDVDを貸されたので一応真面目に見た。お勧めというだけあって好きな人は好きかも知れないが、自分としてはまあ普通というところである。 その知り合いは、一生の最高の瞬間が「匂い」とともに思い出される、というところに感動したのだろうと勝手に想像していたらそれは当方の思い込みで、実際は映像の色彩感が好きだとのことだった(彩度の高い部分ではなく、灰色だか何だかわからない微妙な色がいい、というような話だったが理解不能)。自分としては相手役の女優2人が、演技のキャリアにかかわらず映像的に好印象なのが評価ポイントである。 ところで自分としては当初、解剖を通じて呼び覚まされた記憶や感情はどうせ主人公本人のものだろうと思っていたのだが、最後は死者との交感のようになっていた(生きろ、と言われていた)のは、いわば物的な人体に“魂”までが内在しているという感覚だろうか。だとすれば本当の別れが斎場になるのも自然なことと思われる。 主人公が最後に「医者の勉強は続けたい」と言っていたらしいのは一体何を研究したいのか怪しいもので、そのうちその辺の人間を無差別に解剖し始めるなどということになると別ジャンルの映画になってしまうわけだが、あるいはこれが医学上の大発見(心理学との統一理論など)につながる研究ということなのかも知れない。 なお劇中では解剖中の学生がオイデオイデをやっていたが、こういう場合の定番である「壁に耳あり」をやらなかったのは意外だった。 [DVD(邦画)] 5点(2015-04-05 00:22:19) |
985. 心霊写真部 弐限目<OV>
《ネタバレ》 とにかく主人公がかわいすぎる。しーちゃんかわいいかわいいかわいいかわいいで頭が一杯になって冷静に見ていられない。基本的には女優がかわいいわけだが、劇中人物としても、休日に同級生男子と池袋に出かけたのをデートだろうと先輩にからかわれて「違うのに!」と反論するのがかわいい。 またストーリーとしては前作と同様、心霊関係の世界でありがちな話を解説付きで取り上げているので堅実ともいえる。この弐限目では5話と6話が少しシビアな感じで、うち5話の竹中美歩役は熱演ごくろうさまだった。また6話の桂川ナオ役も、完璧美少女でもないが実年齢より大人びた感じで、役どころとの関係でもかなりいい雰囲気を出している。 このあとに予定されていた参限目と四限目は制作されず、結局この弐限目で中断した形になっているが、ここまでの範囲でいえば、かわいい主人公が出る一話完結の楽しいシリーズであり、毎度の心霊ネタやゲスト女優も見どころになっている。それだけならわざわざ映画にする意味がないということになるだろうが、個人的にはこれで満足である。 なお現在、幻の参限目と四限目で想定していた内容を含む新作がすでに完成しており、まもなく公開されるとのことで期待したいところだが、主演女優が別人なのはやはり残念なことである。結構な年数が経っているため高校生役はさすがに無理なのはわかるが、しーちゃんが出なければ個人的には価値が半減するわけで、この面でも旧作に負けないものになっていればいいがと思っている。 [DVD(邦画)] 6点(2015-03-31 00:23:57) |
986. 心霊写真部 壱限目<OV>
《ネタバレ》 別のDVDでたまたまこれの予告編を見たところ、主人公があまりに可愛いので本編も見ないわけにはいかなくなった。こんなに可愛いのは反則というしかなく、ニコ生ホラー投票1位とかいうのもほとんどこの人のおかげだろうという気がする。高校入学直後という劇中の設定年齢と、女優の実年齢には実はかなりの差があるが、とにかく可愛いので無問題である。ちなみにこの女優が本当に高校生の年齢だった頃の姿は「幸福のスイッチ」(2006)で見られる。 それで内容としては、ホラーとして見ればそれほどユニークでもなく、アイデア自体はどこかで見たような話も多いが、しかし現実に心霊関係で語られがちな事象を取り上げているのでわざとらしいところはあまりない。特に第1話など、一つのエピソードに複数の原因が関連づけられているのはストーリーとして整理されていない印象もあるが、実際にこういう場所では類が友を呼んで様々なモノが共鳴するといったような、いわば常識を踏まえたものとして見ればかえって真実味が感じられる。ホラーというより心霊現象好きとか、実話系怪談のファンが好む内容かも知れない。 また主人公の圧倒的な可愛さもあってエンターテインメントとしても悪くない。主人公がおののく顔がたまらなく可愛らしいが、ほかにもこの壱限目ではカラオケとかプリクラといったものが出るので女子中高生が多く賑やかで、うち特に第3話の瑞希役は熱演ごくろうさまだった。またどうでもいいことだが、第1話の題名で肝試しをひらがなで「きもだめし」と書いていたのが低年齢向けのようで微笑ましく、全般的に結構いい印象を残すお話だった。 なお、こんなC級ホラーでも書こうとしたらあらかじめちゃんと作品登録されていたのはありがたいことだった。常に周囲の皆様への感謝を忘れずに生きていかなければならないという教訓である。 [DVD(邦画)] 6点(2015-03-31 00:23:46) |
987. 幸福のスイッチ
《ネタバレ》 自己実現のために仕事をして、それで金をもらって当然と思うのは人間社会の道理に反している。芸術家なら結果責任を甘受する前提で勝手に何をやっても構わないが、イラストレーターというならその言葉自体にクライアントの意向重視ということが含まれているはずである。業務上の自由な発想が奨励されるとしても、それはあくまで本来の業務目的や組織目的に沿った効果を挙げるためであって、自由な発想の権利自体が保証されているわけでは全くない。劇中で、これに関する勘違いを若いうちに正したのは大変結構なことだった。 これからの時代、劇中の電器店の商法で個人営業が続けられる保証もないわけだが、しかし顧客第一ということ自体は永遠の真理だろうし、そのエッセンスの部分が次代に伝えられたのはよかったかと思われる。 また登場人物に関しては、主人公が当初ガチガチに固めていた攻撃的姿勢が後半に至ると崩壊してしまい、それまでは完璧に可愛くなかったのが可笑しく見えるようにもなる。一方でその妹もただ可愛いばかりではなく、ドライだったり強硬派になったりするのが見えて来て相対関係も崩れていく。その中で母親似の姉だけは、安定的に母性を発揮しながら妹2人を見守る立場ということか。 劇中の浮気事件の結末を見ていると、疑惑の相手とこの姉が暗黙の連携でうまく言いくるめたようでもあるが、しかしこれはこれでオトナの納得のしどころというのも間違いないことである。実際に姉は笑って完全に疑念を解いていたし、また主人公と妹も、最終的にはこれに同調したことで人格レベルを一段上げたと思われる。さらに、主人公の父親に対するわだかまりの根本原因がこれで解消されたのだろうと想像され、最後は穏やかに家族関係が再編されたらしいのは幸いなことだった。 そのほか全般的に、劇中の事物の取扱いが細やかでユーモラスな映画になっている。手紙の文面や電気を止められた時の顔など見ていると、妹の個性がより深く感じられて面白い。また友人の息子の動きとか、ラストで来店した子どもの表情とかも可笑しく、農家の親爺がくしゃみのあとに悪態をついただけのことでも笑ってしまう。モチがかわいいというのは男の感性ではない気がするが、何が言いたいかは映像的にちゃんと表現されている。 これに加えて、何気ない小さな音が人の心を豊かにするというのも少し心に染みる話だった。 [DVD(邦画)] 8点(2015-03-31 00:23:36) |
988. 地球防衛ガールズ P9
《ネタバレ》 旧作の「地球防衛少女イコちゃん」より隊員数が増えていて豪華だが、人数が多いため全員の顔を憶えられないのは現代アイドルの実態そのままである。昭和的な清楚さといったことは全く重視されておらず、年齢差も大きいため「少女」というより「ガールズ」というしかない雰囲気になっていた。 そのせいもあって、旧作における美少女の“お願いパワー”などという発想も通用しそうにない。そのため劇中では昔の隊員を引っ張り出してきて“みんなで祈れば願いはかなう”というような昭和的な知恵を授けていたようだが、最後には敵が滅びるわけでもなく潜伏しただけであり、その効果のほどは不明だったというしかない。 今作で最大の危機をもたらしたのは内部崩壊を狙った工作であり、これは昭和特撮の古典的な戦争観からの脱却のように見える。また侵略者だか何だかよくわからない連中が市中に出没するようになっており、もはや単純な敵味方の観念が通用しない時代の反映のようでもある。しかし抑止力としての武装が重要性を失っていないのも国際社会の実態であり、劇中でも実力を保持したまま戦わないで済む防衛軍が復活していたのは幸いだった。 ところで今作で北朝子を名乗っていた人物は、最後に月に帰るのかと思ったら災害に苦しむ人々のもとへ赴くとのことだった。この映画の撮影は2011年の夏だろうと思うが、劇中発言にあった内部崩壊も“宇宙人”も当時の時事ネタと考えれば、この人物が人間(日本)など見放したように言っていたその感覚を同時期の自分もまた共有していたことを思い出す。そうしてみるとこの人物の最後の言葉には、意外に真面目に震災後の日本を元気にしようという意図が込められていたのかも知れない。 以上のように、さまざまな面で21世紀進化型ver.にふさわしい映画になっているといえなくもない。実際どこまで真面目に考えて作ったのかは不明だが、一定の解釈のようなものが可能であるからには、必ずしも純粋なバカ映画として制作されたわけでもないようである。 なお劇中で特に印象的だったのは「ハセトンって何?」であり、ここで壁のサインに通電しているからには広告の意志があるはずなのに意味不明、という不条理さがこの場の異界感を際立たせていた。また「バナナはお菓子じゃないのよ」という台詞には、大昔に忘れ去ったはずのものを突然指摘されて虚を衝かれたような心理的衝撃があった。 [DVD(邦画)] 5点(2015-03-28 20:51:13) |
989. 地球防衛少女イコちゃん 大江戸大作戦<OV>
《ネタバレ》 前回から1年以上経っており、主人公は少し頼もしくなったように見えなくもない。前回の三人娘体制はあっけなく解消されたようだが、今回ゲスト出演で妹分の「おいこちゃん」(演・吉野里亜)が江戸っ娘らしく可愛いので問題はない。 特撮物としても少しずつ進歩しているらしく、主力戦闘機の発進シークエンスも整えられたように見える。補助ロケットを装備して宇宙に出るのは「ウルトラマン」のジェットビートルのようだが、ただし放射線マークを付けた原子力ロケット?を大気中で飛ばすのはまずいだろうと思われる。 ところで前回では美少女特撮の体制が出来上がったように見えていたが、今回は3作目にしていきなり番外編的になっている。かつての矢追純一氏のTV番組で平賀源内とUFOの関係が扱われていたかどうかよく覚えていないが、とにかく特撮モノの中に時代劇とUFOネタが融合していて統一性が感じられず、また昭和特撮から当時に至るまでの小ネタが詰まっているのも無秩序感を増大させており、特撮物の亜種というよりバカ映画としての印象が強くなっている。 今回は中山昭二氏の怪演が見られるが、ほかにわざわざ出てもらった土屋嘉男氏の存在感が半端だったのは残念なことで、せっかくなので役名のミズノにちなんだネタも出せなかったかという気がする(旗のマジックに続いて、本人も煙になって消えるなど)。その代わり伴直弥(伴大介)氏が、初対面の主人公の美少女ぶりに全く動じることなく平然とチーズおかきを差し出すのは非常によかった。今回は微妙に東映特撮風になっているところがあるのはこの人のせいか。 以上、こういうわけのわからない状態で「イコちゃん」シリーズの本編は終了してしまったことになるが、今回ラストの新曲「イコちゃんマーチ」がなかなかよかったので後味は悪くない。この曲は出だしが「ウルトラ六兄弟」を思わせるメロディながら、「キャプテンウルトラ」(1967年放映)の「宇宙マーチ」を思わせる歌詞(「ネコよりカワイイ タコよりオチャメ」)と威勢の良さを兼ね備えた曲だったのが少し嬉しい。 [DVD(邦画)] 3点(2015-03-28 20:51:09) |
990. 地球防衛少女イコちゃん2 -ルンナの秘密-<OV>
《ネタバレ》 前作よりも若干映画らしくなった気がする。特撮は一応頑張っており、一応の怪獣モノらしく地上・地底・海中の怪獣が出て、それぞれに対応した防衛隊の超兵器が活躍するので少し見ごたえがある(地底戦車がユニーク)。 主人公はいきなり二代目になっており、初代に比べると少し素朴であどけない感じを出している。蝉の声がする中を(夏休み中?)涼しげな服装で現われて、基地内を軽やかに走り回っていたのが可愛らしい。敵の攻撃で素っ裸にされてしまう場面もあったが、一瞬映った全身像を見るとパンツだけは着けている。この場面と、それに続いてヒーローが見せたフォロー行動には正直笑った。 また今回は主人公以外にライバル美少女(演・田山真美子)が登場し、さらに終盤ではウルトラ兄弟よろしく助けに来た初代も入って三人娘状態になっている。前作がとりあえず作ってみた的な雰囲気だったのと比べると、より本格的に美少女特撮の形式を整えたように見えるが、そのせいで本来は職場の花だったはずの女性隊員(演・松崎ユカ)が割を食わされているのは気の毒だ(前作も同じだが)。 それにしても、終わってみれば二代目は失敗ばかりで全く活躍しておらず、いいところは全部ライバルに取られてしまって、これで「二代目襲名よろしくね」もないものだと思う。しかしラストで三人娘が揃って踊る「イコちゃん音頭」(3番のみルンナ音頭)の場面を見ていると、全員の歌唱力のなさが微笑ましいので最終的には全部まとめて許してしまう感じである。初代イコちゃんは少しふっくらしたようだが、それはそれで可愛らしい。 なお見ていて気づいたのは、主人公が夜空の下でギターを抱えて歌うのが岸本加世子の「北風よ」(1977)のようだったことで(その頃は岸本加世子も可愛かった)、この場面はほかに加山雄三的な感じと「時をかける少女」(1983)的な感じと伊藤つかさ的な感じ(主に声質)も含まれていて複合的な印象がある。ここで歌われる「イコのバラード」は少し心に染みるものがあった。 [DVD(邦画)] 4点(2015-03-28 20:51:04) |
991. 地球防衛少女イコちゃん<OV>
《ネタバレ》 もしかすると当時は怪獣特撮の亜種として扱われていたかも知れないが、いま見ると美少女愛を表現することの方が主目的に見える。恥ずかしげもなく少女嗜好を丸出しにするのは80年代初期からあった気がするが、特撮でそれをやったのは初めてだったということか。いわゆるスクール水着で登場するとか、緊縛されて悶える表情とかもあるが良識人が眉をひそめるというほどでもなく、まあ笑って済まされる程度に収まっている。 そういう観点からすれば特撮などどうでもいいとはいえるが、それにしてはちゃんとミニチュアセットを作って火をつけてみたり、成田亨氏監修の着ぐるみ怪獣を出したりするのは意外にまともな感じがする。また人形劇の部分は一定の出来になっており、これは特撮というより「プリンプリン物語」(NHK、1979~1982放映)などからの連続性を感じる。 そのほか、唐突に演歌のカラオケ場面が挿入されたりするのはバカ映画としての先駆けであり、また敵の最終兵器が有線で電力供給されていたのも後のアイデアを先取りしていた感がある(これは違うか)。 ところで主人公が可愛らしいのは認めるが、極めて昭和的な純真?美少女のため一定の抵抗感があり、主題歌の「わたしのハートはルンルンよ」とかいう歌詞にも失笑させられる。それでも役者はこれ以前から子役として実績のあった人らしく、ちゃんと期待されたとおりのカワイイコを演じており、特にエンディングテーマの部分などはあまりにかわいいので笑ってしまう。それをいえば友人のアサミ役(演・山崎あかね)も別種のかわいさがあるが、後半は出ないので存在感が低下してしまうのが残念である。そのほか防衛隊に初めからいた女性隊員(演・菅原弓子)は地味に扱われて気の毒だか、個人的にはこの人が最も昭和らしい感じを出していて好印象だった。 それにしても中山昭二氏ほどの人をよくこんなものに出したと呆れるが、個人的にはこれで往年のキリヤマ隊長への尊敬の念が失われるわけではないので別に構わない。 なお点数は低目にしておくが、あまり高い点を付けると他の映画に失礼だからということであって、個人的にこういうものが嫌いというわけではない。 [DVD(邦画)] 3点(2015-03-28 20:50:51) |
992. 人狼ゲーム
《ネタバレ》 [2017-10-29再視聴による改訂] 現時点で6作まで続いているシリーズの第1作である。改めて見ると特徴が見える気もする。 そもそもこういうゲームを小説化なり映画化して本物の人間が死ぬ物語を作ったからには、良識人が眉を顰めるタイプの創作物になっているのは間違いない。台詞にあった「アリとクモを戦わせて遊んでる」ガキ向けのような企画だが、しかしそういう枠組みを逆用して、見事にヒューマニスティックなドラマを作ったのは大人の仕事である。 主人公は最初の事件のせいもあって現実に適応できないままで経過するが、後半に入って親友の幻影を見たことでやっと覚悟が決まったらしい。このこと自体は前進ではあるが、ただ本人の話を聞くと理屈先行で少し行き過ぎたところがあったようで、そこを補正して妥当な見解に落ち着かせたのが新しい友人(恋人)の男だったように見える。これまでずっと主人公を助けてくれていたという親友の役割を、この男が引き継いだというのは台詞にもあったとおりである。 誰も殺さない+自分も死にたくない、というのが許されない状況で、自己保全のための利己主義が正当化されるのは当然だろうが、しかし自分のことしか考えないのが当然ということにもならない。この物語では、利己主義を超えたところにある人間の情(姉妹愛と恋愛感情?)が計2人を生き延びさせたのであり、逆にこの2人が死者の思いを背負う形で、これから生き抜いていく務めを課せられたのだと思われる。男が最後に人としての矜持を見せたのもよかった。 ちなみに映画を見ていて主人公を腹立たしく思った観客も、本当にこの状況になれば主人公と同じになる可能性があり、それは劇中出ていた戦争の話のとおりと思われる。そういうレベルから初めることで、普通人がこの手の話に感じる心理的抵抗に一定の整理をつけたことにより、以降の続編を見るための基盤が整備されたという意義づけもできなくはない。まあ純粋にこのゲームの愛好者とか、単純に人殺しの映画を好む向きには満足できないだろうが。 なおこのシリーズは現在も若手役者の熱演で知られているが、この第1作では後に残る役ほど感情の爆発を強いられる構造だったようである。井上姉妹のこのみちゃんが主人公を殴り返す場面は毎度少し驚く。 また藤木毅役の入江甚儀という役者は、自分としては最初にこの映画で見たのが原因で今も悪人イメージが残っているが(この男が「ヤクザ」扱いされていたのは笑った)、しかし改めて見たところ、粗暴なように見えてちゃんと思慮もあり人情もあることがわかってこの人物を見直した。後のシリーズに出る一部の連中よりよほどまともである。 ほか細かいことだが誕生日という趣向は悪くない(少し切ない)。月を映して人物を見せないのは奥ゆかしい。 [DVD(邦画)] 8点(2015-02-16 23:23:24) |
993. とある飛空士への追憶
《ネタバレ》 全体として何が表現したいかは理解可能であり、雰囲気も大体伝わるので悪い話ではないとは思うが、残念ながら見る方の気持ちがついて行かない。特に初見時に問題と思ったのは、当初は控え目に見えたヒロインが途中で豹変してツンデレ化することであり、これはいかにも美少女アニメ的な悪ふざけとしか思われない。またクライマックスもほとんど気分が高揚せず不完全燃焼に終わった感があり、ここに至るまでの盛り上げに何らかの問題があったのだろうという気がした。 その後に一応原作を読むと、基本的な構造を損なわずに短縮しているのはわかったが、やはり細かい人物描写や台詞に出ない言葉を省略したことに無理があったと思われる。特にヒロインの人物像に関しては、原作の少し複雑な設定は完全放棄して単純化し、例えば当初のおとなしい人物のまま次第に思いを募らせていき、ラストに至って初めて感情を爆発させるとかの方が、短い映画の枠内に素直に収まった気がする。 また終盤で、主人公が愛機の心を思いやる(または、自分の思いを愛機に仮託する)箇所が省略されていたのは残念だった。アニメで表現するのは難しいだろうが、これがあってこそ主人公が最後にわざわざ飛んで来て「踊ってる」理由も明らかになるというものである。ついでに軍艦の機銃員が思わず撃墜したくなりそうな危ない動きも避けてもらいたかった。 ところで声の出演に関しては、特に最初の方で主人公の声が生硬に思われるところがあったが、後半はまあ慣れた。ヒロイン役に関しても、そもそも人格設定に一貫性のないキャラクターの役をそれなりにこなしていた印象がある。 そのほか、ヒロインの姿は原作の挿絵よりは抵抗感がないので結構である。また海空の映像もそれなりに印象的だが、まあこれがなければこの原作を映画化する意味そのものがなかっただろうとは思う。全体として佳作ともいえないが駄作という感じのものでもなく、暖かい目で見ればそれなりの感慨を残す映画ではあったので、原作に免じてここは少し甘い点を付けておく。 [DVD(邦画)] 6点(2015-02-16 23:23:15) |
994. 携帯彼女<OV>
《ネタバレ》 [2016-10-09更新] 携帯サイト「魔法のiらんど」で公開されたケータイ小説を原作とした映画で、同じく映画化された「携帯彼氏」(2009)の続編に相当する。少し間が空いているが前作で予告された正規の続編であり、劇中で再現映像も使われている。 内容的には前作よりも陰気な印象になっており、また後半に入ってからの物語がちょっと詰め込み過ぎのように感じられる。悪の根源が誰かに関して二転三転していたようだが、通り一遍の説明があっただけで心に刺さるものがなく、また見ている側の感情面がついて行かないまま転々とするのでかえって意外感がない。衝撃のはずのラストも何となく聞き流してしまう程度のものにしかなっていないが、これはナレーションのせいもあるだろう。 また前半は主人公が当然メインだが、後半に入ると主人公がラストのオチ以外はストーリーと密接な関係がなく、この人以外の人間関係が濃密すぎることもあって、そもそも不要な人物だったのではないかという印象が拭えない。アイドルの出演が前提の企画だったのだろうが、残念ながら半端な感じに終わっていた。 ちなみに興味本位で原作も読んだところ(上記サイトで無料で読める)、映画と同様に真相が転々としていたが詰め込み過ぎの印象はなく、また何より主人公男女の存在感がしっかりしているので(当然だが)安心して読んでいられる内容だった。原作のラストがけっこう感動的なのに対して映画の方は、原作のあとがきの言葉を借りれば「救いのないつまらない作品」になったように感じる。 なお映画の主演のアイドルは、世間的には有名かも知れないが自分としては知らない人であり、かえって邪悪なエリカ役で出ていた女優の方が別の映画で見て印象に残っていた。ほか若手の役者が相対的にしっかりした感じに見える映画であって、邪悪なエリカの兄役(馬場徹)が一途な若者という感じで格好よかった。 [DVD(邦画)] 2点(2015-02-16 23:23:10) |
995. ゆめのかよいじ
《ネタバレ》 盛り込み過ぎてそれぞれが半端になった感じの映画である。“忘れてほしくない”“残されるのはもういや”という思いはわかる(台詞に出ているため)が、心情的に迫って来るものがあまりない。またその“忘れてほしくない”と連動する形で、街の古いものが失われていくのを悲しむ思いが込められていたようにも見えたが、それと地震の関係もよくわからない。街全体が壊滅したならともかく、単に校舎が失われるだけなら火災で十分だったと思われる。 またご当地映画であること自体は構わないが、実在の街に人魂だの座敷童子だのが普通に存在しているのは遠野物語になったようでやり過ぎである。それより自分としては、地震当時(2004?)にはまだ「栃尾市」であったはずのものがその後の合併で自治体としては消滅してしまい、劇中でも「栃尾」だけで「市」の言葉が出て来ないということの方に微妙に悲哀を感じる。 ところでこの映画の撮影は2010年とのことで、東日本大震災(2011)の影響もあって公開は2013年まで延びたということらしい。主演の石橋杏奈は撮影時点で18歳くらいだったようだが、高校生にしては大人っぽく色気あり過ぎなのが目についてしまって仕方ない。特に個人的には、それまで微笑んでいたのが突然不安な表情に変わる不安定さが愛しく感じられる。またラストの「お構いなく」の場面では、大好きなのに近づかせてくれなかった相手との距離感が確実に縮まっていて、次のステージが見えて来たのが観客としても嬉しいわけだが、そういう印象を持たせる上でもこの人の持つ雰囲気が非常に効果的だった。 一方で相手役の竹富聖花という人は申し分ない美少女ではあるが、この時まだ15歳で事務所のオーディションに受かったのと同年ということらしく、演技の面で心許ないのは突っ込まないようにしなければならない(少し呆れたが)。ほか主人公の友人役の日置かや(当時・浅野かや)もいい感じだった。 ちなみに同級生のカメラ小僧役で出ていた男は、「制服サバイガールⅡ」(2008)への出演によって強い(最悪の)印象を残しているが、この映画はその2年後の状態であり、まあそれほどの違和感もなく役をこなしていた。この映画では微妙にトボけた感じのある役だが、さらにこの2年後の「仮面ライダーウィザード」(2012)では、文句のつけようのない格好いい主人公を演じていたに違いないと想像する(見てないので不明)。 [DVD(邦画)] 5点(2015-02-16 23:23:06) |
996. コネコノキモチ
《ネタバレ》 ネコの出番は意外に少ないが、映像面での美しさは全編にわたり徹底されていたようで、また音楽の使い方もオーソドックスで心地いい。監督はPV制作で有名な人とのことで、その面の特徴も出ていたものと思われる。 主演はアイドルグループ「アイドリング!!!」3号の人(ただし2014.2月卒業)であり、この人のPV的な意味があったような感じもある。別映画で主演していたのを見たときは、役どころのせいもあって茫洋とした感じでどこをほめればいいのかわからなかったが、この映画では喜怒哀楽も出ており、ちゃんと普通の人間だったことがわかって好印象だった。この人の歌う「空の木」が映画のテーマ曲であり、劇中でも墨田区が舞台だったことから、東京スカイツリーのプロモーションを兼ねたような印象もある。 それでストーリーとしては、父親/夫の死による心の欠落を埋められずに2年が経過した家で、ネコの登場により娘と母の心境変化が促され、やがて家族の再生に至るという話である。そのようにまとめてしまうと非常にありきたりな感じだが、実際見れば相応の感動がある。娘と母それぞれの年代に応じた気づきや悟りが描かれているが、特に母親が“生きている今が大事”と思い至る場面は印象的だった。言葉のほかに状況や映像で語られている内容も多いので、一つひとつの場面を大事に見なければという気にはさせられる。 ただし中盤以降では、なぜか意味不明な登場人物が乱立している印象もあった。しかしこれは一見意味がないようでも、世間ではどこで何がどう関係して来るかわからないので、一瞬のつながりでもとりあえず大事にしておこうという意味に取ればいいのかも知れない。 そのほか友情出演のアイドリング!!! 6号(外岡えりか)が、終盤でネコ役になって登場していたのは斬新な試みかも知れない。演じるヒトとネコの年齢がイメージ的に一致せず、とても同一人とは思われないのだが、まあ微笑ましい趣向とはいえる。この擬人化ネコがラストで再登場するのも失笑というかユーモラスだが、ただしいくらアイドルでも本物の子ネコには絶対かなわないだろうと一応書いておく。 [DVD(邦画)] 7点(2015-02-04 22:50:39) |
997. 子猫の涙
《ネタバレ》 大阪の映画というととにかく怒鳴り散らす人物が出るとか暴力沙汰が頻発するのは呆れる(本当にそういう土地柄なら仕方ないが)。ギャグも多いのだろうが自分としては笑えるところがない。 また主人公の人生については特に積極的に肯定する気にもならず、単にこれはこういう人だと思うだけである。個人的な感覚としては、オリンピックで銀メダルを取り、その後の途中経過はいろいろあったにせよ、子息に継承したボクシングジムが現在も続いているというだけで普通人としては十分な業績と思われる。そのため本人のボクシングに対する思いがどうだったかというようなことはそれほど重大事にも思われず、葬儀の場面に至って蒸し返されても何の感慨もない。 一方で、主人公の娘は毒舌だが邪気がなくて愛嬌があり、この人が映画全体を支えているのは間違いないようだが、成人後のイメージがあまりに違っているため統一感が全くない。その他の人物も半端な感じで、実母は娘を棄てるためだけに出て来て、また継母は娘に説教するためだけに出て、それぞれの役目を果たすと用済みになって存在感を失ってしまう。猫を拾って来たのも、途中で死なせて一家を泣かすためだけのようだった。 以上、個人的には見どころがない上に、全体構成としても個別エピソード優先ということなのか、ストーリーとしてのまとまりが不足しているように感じられ、残念ながら面白いとはいえない映画だった。 なお余談として、娘の友人2人のうち1人は、後のAKB48→NMB48所属の市川美織(みおりん、レモンちゃん)という人のようで、この時点で結構な美少女に見える。もう1人が誰かも大体想像はつくが、根拠が見つからないので書かない。 [DVD(邦画)] 5点(2015-02-04 22:50:34) |
998. ねこのひげ
《ネタバレ》 中身のある映画なのはわかるが、個人的には全く共感できない。 周囲とどれほどの軋轢を生じようと「好きなんだ」「好きなんです」といえば通ると思う感覚がそもそも容認できないが、そういう後先考えない軽薄な連中の割に、子どもを想うと皿が割れるほど悔やむとか、相手の母親に会うのが怖いなどと人並みに思っているというのが同じ人物とは思われない。それでも表面上は男女とも変に愛想がよく、また周囲にも変に物分かりのいい人間が多いため、主要人物のほとんどが自分と反対向きのように感じられ、穏やかな会話や表情を通じて全く異質なものに圧迫される感覚がある。 一般論として、過去にしでかしたことを悔やんでも仕方ないので、結局はその時点で前向きに最善の選択をするしかない、と思える時もあるのはわかるが、しかしこういう連中にそれをやられてもわが身のこととは思えないということである。これは人物造形の問題ということかも知れない。 そのほか全編を通じて始終ものを食って酒を飲んでいる享楽的な雰囲気にも馴染めないものがある。音楽も俗な感じで、劇中でアレンジを変えて何度も繰り返すので耳についてしまって苛立たしい。 以上は個人的な感想だが、要はある程度観客を選ぶということであって、人によっては問題なく見られるだろうとは書いておく。役者に不足は感じられず(ねこ含む)、映像面や人間描写にもこだわりが見えるので、褒める要素は多いと思われる。 [DVD(邦画)] 5点(2015-02-04 22:50:30) |
999. 飛べ!ダコタ
《ネタバレ》 まず終盤の村長の言葉は、印象的ではあるが微妙である。軍部の起こした戦争だった(国民は無責任)というのは現在も国民的常識であるから、ここであえて国民側の責任を指摘してみせた度胸は買う。しかし続いての“次の戦争を止める”との発言を聞けば、結局“誰か(要は国)が戦争を起こそうとしているので国民は止めなければ”といった昔ながらの脅威論のようで鼻白む。 当時はともかく、現実に有権者の投票行動が国の方向性を左右している(実際にした)現代においてこそ、民主主義の制度を通じた国民の主体性と責任感の発揮が求められており、その中で、今後の戦争の抑止に向けた現実的な努力も期待されることになる。そういった意図なら賞賛するが、そうでなければせっかくの感動作に古風な政治的メッセージなど込めるのは歓迎できない。むしろ劇中の経過を素直に受けた形で、広い民間交流が世界平和の礎を築くのだ、という素朴な文脈で語ってもらいたかったというのが率直な感想である。 ところで、劇中で変な親爺が日露戦争時の歌(「広瀬中佐」)を歌った後で「昔の同盟国」と言っていたのは、近視眼的な敵味方の区別をあざやかに無化してみせていて説得力があった。これはどちらかというと建前論の部類だろうが、その後の母子の情愛や歌の場面を見ていると、いわゆる諸国民の融和というような内容が、庶民(イギリス側を含む)の自然な感情に根差した形で表現されていて心に染みるものがある。 また登場人物では、その辺のオカアサンのように出ていた2人がユーモラスで、結構ブラックな軽口をたたいておいて結局笑いに巻き込んでしまうのが可笑しく、これはある種庶民のたくましさの表現だろうかという気がした。方言のため何を言っているかわからない場面とか、背中の叩き方など見てもこれは本当に地元の人かと思ってしまうが、こうした住民の姿が役者の力で映像化されているのは嬉しくなる。 そのほか、冬の日本海の風景は寒々としているが美しい。全国的観点からは“裏日本”などただ陰鬱なばかりと思われているかも知れないが、そこにはちゃんと四季もあり、ちゃんと人間が住んでいて喜怒哀楽も人の情もある。自分は佐渡と直接の関係はないが、同じく日本海沿岸の四季と人を知る者として、佐渡の皆さんの幅広い協賛と参加で作り上げたこの映画を(前記の苦情を除き)ほぼ全面的に支持したい。これは見てよかった。 [DVD(邦画)] 8点(2015-01-24 17:47:36)(良:1票) |
1000. ニライカナイからの手紙
《ネタバレ》 先日、沖縄からの来客とお会いしたので記念に書いておく(映画と無関係だが)。 最初から大体の結末は予告されているが、終盤で事情が明らかになってみればやはりその通りである。その後にまだ少し時間があったのでもうひと捻りあるかと思っていたらそうでもなく、そのまま力押しして終わったような形だった。単純な保護しか考えていなかった祖父に比べ、母の愛情はより深く周到だった、といった作り込みはなされており、決して悪い話ではないのだが特に感動を催すほどのこともない。従って、どちらかといえば風景や設えなどの映像美と、ただ愛らしいだけではない個性的な女優としての蒼井優をしっかり見ることが重要なのだと思われる。 また登場人物のうち友人役で出演していた比嘉愛未は、最近の主演映画(「飛べ!ダコタ」2013)を見るとかなりいい感じに年齢とキャリアを重ねていたようだが、この映画ではまだ18歳くらいで超絶美形かつモデル体型なのが印象付けられてしまった。この人の演じる登場人物は、どうも最初から主人公にライバル意識を持っていたようであり、そのことからしても最後は主人公が島へ帰らないことで全体が調和するよう予定されていたようである。 ほか劇中では地元民のような人々が台詞付きで登場していたようだが、中でも「おばあ」と呼ばれていた人の容貌と発言には何ともいえない風格があって忘れがたい。 全体として絶賛する気にはならないが、けっこう好意的に見られる映画ではあったので、ここは少しだけいい点を付けておく。 [DVD(邦画)] 6点(2015-01-24 17:47:32) |