1041. オリエント急行殺人事件(2017)
《ネタバレ》 ルメットの「オリエント急行」も豪華キャストだったが、 本作も豪華な顔ぶれ。 ミッシェル・ファイファーを配した理由がラスト分かる。 カツラを脱いだギャップに女優ってすごいと思った。 一時期、ピータユスチノフでクリスティ推理モノを次々映画化していた時期があった。 (ポアロの仮説を一つ一つ映像化し、反論していくという演出が面白かった) しかし、本作は演劇人のケネスブラナーが主演・監督でポアロを料理。 さすがにポアロのアクションシーンには驚いたが、圧巻の演技で ラストまでダレることなく魅せる。 有名な原作なので、犯人は皆知っていただろうに、新たに創りなおしたのは、 映像化だけが目当てだったのだろうか? スマホとか、殺しの手も現代風に工夫してもらえればなぁとは思ったが、 それでもラストはウルッと感動させられた。 きっとケネスブラナーが温めていた映画化ではなかったかと思う。 面白かった。 [DVD(字幕)] 7点(2018-08-11 17:58:29) |
1042. レディ・ガイ
《ネタバレ》 男を描き続けたウォルターヒル。 女性の時代にあっての監督の答えが本作なのだろうとうかがえる。 ウォルターヒルの監督作品を丹念に観ていけば、 彼が女性に対して敬意を表していることがわかる。 なのにその彼をして、このような映画ができてしまうという 時代は何を意味するのか? 女性の時代は暴力反対ということである。 ウォルターの映画では、喧嘩の暴力は一種の自己表現、愛情表現でもあった。 そういう男から、根こそぎ暴力を奪うことは何を意味するのか? これは主人公が、手術によって男性シンボルを取られることに象徴的に描かれている。 エンドロールでの最後の言葉。 「45口径は善行にも悪行にも使える。45口径は嘘をつかない。」 45口径とは、「男」ということである。 この言葉は彼の男の美学からの、今の時代に対する正直な気持ちだと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2018-08-11 14:38:49) |
1043. 鍵泥棒のメソッド
《ネタバレ》 良質のエンターティメント。 相変わらずの内田けんじワールド。 お金をあまりかけずに2転3転していく映画の面白さを アイデアで引っ張る。 面白い。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-27 08:35:41) |
1044. アントキノイノチ
《ネタバレ》 「元気ですか~」はてっきり漫画「p.s.元気です。俊平」から来てると思ってた。 主人公の名前が似てるから・・ だけど、レビュー見て納得。 そうだよね、あの方だよね。そうすると、この映画は命を扱ってるのに、なんか軽いね。 ちょうどこの年に東日本があったから、制作時点ではまだあんなことがあるなんて思ってなかったんだろうね。 「ヘヴンズストーリー」の瀬々監督なら、今なら別のストーリーにするんじゃないかなぁ。 ラストはなにかストーリー上付け加わった感じ・・ 榮倉ちゃん、そりゃないよ~。 また主人公の「うあぁあああ」と叫ぶ日々が続くのか!?それか老成しちゃうよ、彼。こんな展開。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-24 20:23:03) |
1045. 溝の中の月
《ネタバレ》 ベネックスは、果たしてどういう人なのだろう? オタクな「ディーバ」と過激な「ベティブルー」の間に製作された興味深い一本。 この映画では、危ういところで何とか正気を保っている。 二人の女性の間で揺れ、迷路にさまよいこむジェラールデパルテゥ。 怪しい魅力を放つのは、当時のアイドルスター、ナスターシャキンスキー。 エンディングの曲が何もかも表してる。 音楽とは言えない程、破たんした曲から、まっとうな曲へと変わっていく様が この主人公の、気持ちのありようを表してる。 ベネックスは、真っ当な人ではなかろうか? ますます興味深くなってきた。 今日は、このまま「ベティブルー」を再見することにしよう。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-07-21 02:39:16) |
1046. ディーバ
《ネタバレ》 若いころ、映画館で観て、いたく感激。 それから30年以上経って、観直す。 確かに「ベティブルー」を観て、ベネックスが表現者として、どこまで真っ当かと言われると、 う~むと思ってしまう感性にはなってしまった。 (自分がそれだけ乾いてしまったからかもしれない) だが!しかし!若いころの「ディーバ」を観た俺は間違っていたのか? いや、あの頃の俺も、俺は俺だ! この映画の世界観。 しびれる歌声。マンガチックな殺し屋。小型バイクで地下鉄を疾走。頼れる不良オジサンと万引き女子。 その雰囲気に酔いしれ、ひとり下宿に戻って、世界は危険な魅力で満ち満ちてると海外の文化に憧れた。 女神(ディーバ)に憧れ、その為にはスリルとサスペンスの世界にだって、少年は飛び込んでいけるのだ。 そういう映画に、やはり勇気づけられて、今日の俺はいる。 ベネックスについて、もう少し知るべきだと痛感した。 正直「ベティブルー」だけでは分からない。他のベネックス作品を観てみたい。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-07-16 02:44:44)(良:1票) |
1047. パーマネント野ばら
《ネタバレ》 死のにおいのする映画だ。 都会は、その圧倒的にぎやかな情報群で、人の死に鈍感である。 しかし、地方は誰それの死は情報的に大きな話題性を持つ。 それ故、地方の方が「死」のにおいが漂う。 ただでさえ、有望な若者は地方を離れ、都会に行っている。 その置いてきぼり感と、寂しさで、地方の人間は過激になる。 この映画は、そんな地方の漁村の話である。 菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、夏木マリ、4人の名女優が話を彩る。 後半の菅野美穂のエピソードが強烈だ。 一番しっかりしてそうな彼女が、一番弱かった。 観終わって、死と隣り合わせででも生きていこうとする人たちの健気さが胸をうった。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-14 20:54:16)(良:1票) |
1048. 私の男(2013)
《ネタバレ》 う~ん、ラストが消化不良の感もしないではない。 あの二人の孤独な魂の癒しのラストではない。 浅野さんのどうにもたまらない気持ちで映画は終わる。 あのような災害の結果、こんな二人ができたのだから、 ここでは思い切って、神への思いなども出すと、癒しのラストに行けたのではないか? 熊切監督は「海炭市叙景」でもそうだったが、こんな人たちいますよ、というとこで 映画を終えてしまう。 やはり観ている側としては、二人に罪がないのであれば、さらにその先の、救い(浄化)のラストが観たかった。 地方都市には、カッとなり見境もなくなる人間をほったらかしてますよ、というとこだろうか? [DVD(邦画)] 7点(2018-07-14 14:36:32) |
1049. アキレスと亀
《ネタバレ》 アートは、一体、人生かけてやるほどのものか? この映画ののなか、一番の悪は、画商である。 人生かけて作品つくっている作家に、商売上のアドバイスを 軽い気持ちで送ったりする。 あの少年が、いい師匠に出会わなかったのも、不運である。 これはコメディなんだから、と言えない、色々考えさせられる武の映画である。 たけしさんが、テレビのバラエティで体張って、笑いをとっていたのも、 どこかでアートとつながるものを、笑いに見出そうとしていたからだろう。 でも、最後の字幕の文字の、文字とは言えない文字には、笑った。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-11 15:38:59) |
1050. あの夏、いちばん静かな海。
《ネタバレ》 たけしさんの暴力映画とは違う、もう一つの側面。 「菊次郎の夏」や「キッズリターン」と同じ感じの映画。 サーフィンを扱っているが、ホイチョイプロが手がける映画などとは違った、 都会の地元民の静かなテンポの映画だ。 地方からやってくる賑やかな連中とは違う、地元映画の味わいがある。 そして、主人公が華やかな仕事についてないとこなど、明らかにたけしさんの 東京が発信する文化に対抗している、骨のある映画になっている。 さらに洗練された久石譲の音楽が、羨ましい仕上がりにしている。 素敵な映画。 (後記) この映画の前年、桑田佳祐の映画「稲村ジェーン」に対して、たけしが「稲村~」に対して評論している。 そしてたけしは、その桑田への具体的な指摘を、本作を創ることで反論してみせたのだ。 桑田もこれに対して、もう一本映画を創ると宣戦布告している。だが、これは実現しなかった。 惜しむらくは、このバトルを後世の人間が確かめたく、「稲村ジェーン」を観ようとしても、 高額なVHSを購入するしかないのである。是非、「稲村ジェーン」のDVD化を! [ビデオ(邦画)] 7点(2018-07-08 01:32:24) |
1051. 星のない男
《ネタバレ》 カークダグラスが、星のない、憎めないがイマイチ「男」として物足りない人物を 好演している。 まるで「OK牧場の決斗」のドクホリディの若いころを描いたような映画。 無名の作品だが、このサイトで高得点なので鑑賞。 前のレビュワーさんが的確なコメントを寄せてますね。 高得点を与えるだけの思い入れの強い作品だったんでしょうね。 僕も観て、色々考えさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-30 23:36:40) |
1052. 紙の月
《ネタバレ》 銀行員の横領ってよくニュースで見るけど、痴情のもつれとかそういうのではなく、 正面切って、これをテーマにした日本映画は初めてではないか? 確かに一万円稼ぐのがどれだけ大変かを知らずに、毎日何十万、何百万の金を扱ってたら、 そりゃどこかでマヒしそうな気もする。 しかも彼女には子どもの頃の親から金を盗んで、貧しい子に寄付をして、そこに充実感を覚えてた 過去がある。 一旦火がつくと、止まらない。 犯罪をしてる時に、ウキウキするBGMが流れるのは、彼女が生きている実感を感じていたからだろう。 ラスト、ガラスを割って逃げるところに、自分を解き放ったすがすがしさが画面にほとばしってた。 彼女がどうなるかは、神のみぞ知る、か・・ [DVD(邦画)] 7点(2018-06-30 14:15:54)(良:2票) |
1053. 花様年華
《ネタバレ》 ウォンカーウォイは目のつけどころが面白い。 この人のもつ「映画らしさ」がとてもユニーク。 共に伴侶に裏切られた男女の微妙な関係を、センスある音楽とともに描く。 「花様年華」という言葉は、満開の花のように、成熟した女性が、一番輝いてる時、のことらしい。 つまり、タイトルからして、マギーチャンを描いた映画なのだ。 難攻不落の女性が、ふと心がゆらぐ瞬間を描きたいがために、一本の映画を創っちゃうカーウォイの「映画らしさ」が興味深い。 不倫映画といえば、デニーロの「恋に落ちて」が僕なんかすぐ浮かぶ。 でもこっちの映画は、最後男性が彷徨い(さまよい)人になっちゃうとこが、そしてその役者が トニーレオンだというとこが、なんか説得力あって、面白い。 う~ん、カーウォイ面白いな。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-06-24 17:41:08) |
1054. パラダイス・アレイ
《ネタバレ》 レスラー映画って少ないんですよね。 ミッキーロークの「レスラー」とか「カリフォルニアドールズ」とか・・ それを「ロッキー」のスタローンが監督。 同じく下町風で、いい塩梅に仕上がってる。 しかもスタローンは、強い弟の美味しい役はやらず、 ちょっと調子のいい次男役を好演。 これが後で効いてくる。 下町の苦さを一番味わう役どころ。 今までの敵役レスラーと酔っぱらうシーンは名場面でしょう。 派手さはないけど、中々の佳作です。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-23 19:18:02) |
1055. のぼうの城
《ネタバレ》 面白かった。 「忍びの国」で気になった和田竜の原作である。 本作ともども負けはするが、ただでは負けぬ戦模様を題材にすると、とてもいい話を練り上げてくる人のようだ。 のぼうの城側の配役がいい。 のぼうには野村萬斎しか考えられない。 歴戦の勇者は佐藤浩市にふさわしい。平成の三船敏郎といった貫禄がある。 そして山口智充が実にいい。時代劇をやるために生まれてきたような風貌だ。今後の出演作が楽しみだ。 先に本城が落ちて、開城をさせられるラストが、いかにも史実らしくていい。 今後も和田竜時代劇はチェックだな。 [DVD(邦画)] 7点(2018-06-16 15:29:24) |
1056. ミステリー・トレイン
《ネタバレ》 いや、俺もそう思う。 異郷の地で聞く、真夜中の暴走族のバイクの音や夜行列車の音。 あれはどこに行くんだろう? ジャームッシュの「ミステリートレイン」のタイトル通り、まさにミステリーだ。 夜行列車から見る風景にも似て、寂しい心に突き刺さる。 ワインを一本空けて、観たからか、ジャームッシュの演出は笑いのツボにはまった。 ジャームッシュは酔わずに酔う、酒仙のような映画だ。 彼の映画のテンポが、酔った時の感覚に近いのに気づいたのは、発見だった。 永瀬くんのジャームッシュ映画の初登板。 「パターソン」を観て、時間の経過をしみじみ思う。 それにしてもジャームッシュはロードムービーの、まさに孤独の詩人だ。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-15 02:18:36) |
1057. 三度目の殺人
《ネタバレ》 面白かったし、興味深いテーマではある。 しかし、あんな風に事務的に死刑が決まるような描き方してていいの~!? 法廷劇の名手シドニールメットですら、ここまで法廷を侮辱した展開はしてないよ~!? ラストもやもやが残るようにしたのは演出なんだろうな。 タイトルの意味も成程とは思うものの、ドキュメンタリー出身だからだろうなぁ・・ 本作品の公権力に対する描き方にはちょっと退いてしまう・・ 是枝監督作品は家族ものが好きだなぁ・・ この分野(法のあり方とか)の問題意識には、下手にドラマに組み込むのではなく、 ちゃんとしたドキュメンタリーで観たい。 じゃないと鑑賞後の世界の見え方が一変したよ? それが狙い(苦笑)? [DVD(邦画)] 7点(2018-06-09 22:08:05) |
1058. 散歩する侵略者
《ネタバレ》 黒沢清の救いのない展開は、前回の「クリーピー」を観てたので、 多少免疫があった。 だから最後はバッドエンドなのかと思いながら観てた。 そうなんです。この監督「岸辺の旅」や「トウキョウソナタ」でいささか薄められた感じはしてたけど、 元々が「CUREキュア」の監督なので、油断してると、不安のどん底に突き落とされかねない監督なんです。 しかし今回は長澤まさみが世界を救っちゃうんですよね~。 また彼女、いい演技してるんです。 概念を引っこ抜くという発想の面白さ。引っこ抜かれた人の在り方。 宇宙人の特殊能力でしたが、この設定で、アイデア次第ではもっと話の膨らみ方が可能な感じですね。 概念とは、環境の創るもの。 だから環境を変えない限り、引っこ抜かれた概念は、もとに戻っていくのかもしれません。 長澤ちゃんが、「愛」を取り戻すとこまで観ていたかったなぁ。 [DVD(邦画)] 7点(2018-06-08 14:08:26) |
1059. フェリーニのアマルコルド
《ネタバレ》 特にストーリーらしきものはない。 群像劇かというとそうでもない。 フェリーニの子ども時代の思い出を映画にしたような感じだ。 これは「道」や「甘い生活」のフェリーニというより、 「81/2」に近い。 画面のどこかに映画的仕掛けがあり、それで最後まで観せるという映画だ。 何よりニーノロータの音楽がいい。 僕は青春時代、「81/2」と「アマルコルド」の彼の曲を先に聞いて、どんな映画なんだろうと 胸をワクワクさせていた。 ついに観る機会を得たときの気持ちは舞い上がるようなものだった。 映画の楽しみは、こういうところもある。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-02 15:02:11) |
1060. 彼女の人生は間違いじゃない
《ネタバレ》 彼女の生き方をどうこう言うことなどできない。 3.11を経験した地域でこのような悲鳴が聞こえているのだ。 彼女の傷ついた心と体は誰がケアするのか。 ただ悔しくてならない。 [DVD(邦画)] 7点(2018-05-26 16:49:36) |