1081. 月形半平太(1956)
出た!モテモテ男の本領発揮の長谷川一夫!本当にモテモテです。観ていて羨ましい限りです。山本富士子にあれだけ思われりゃあ、幸せだろうなあ!また、この作品、もう一人、木暮実千代の色っぽいことといったらない。日本で一番、和服の似合う女優、木暮実千代の色気に吸い込まれそうになります。一方で長谷川一夫の他に出てくる男優陣に眼を向けると市川雷蔵の使い方が勿体無い気がする。長谷川一夫ファン向けの作品だなあ!とこれは観ていてそう思った。長谷川一夫に気を使いすぎてるような気がして、もっと他の俳優陣も上手く使いこなして欲しいと言う不満が残る。それでもけして、つまらなくはない。女優陣の美しさを観るにはもってこいの作品なのかもしれない。それにしても長谷川一夫、モテすぎだ! [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-05-03 14:34:18) |
1082. 殺陣師段平(1950)
殺陣師としての人生に生涯を賭けた男の人生ドラマをマキノ正博監督がどう描いているのか?という興味を感じて観たこのオリジナル作品だが、マキノ正博監督としてはシリアスだなあ!この監督の持っているユーモアというものがあまり観られないのが残念だが、主人公、段平を演じている月形龍之介に陰で支える妻、山田五十鈴、更に脇で味わい深い人柄を演じている市川右太衛門の好演が輝る。話的にはそれほど感情移入出来ないが、それぞれの俳優陣の演技のお蔭で観ることが出来る。個人的にはマキノ正博作品にしてはシリアス路線よりももっとはじけている作品の方が好みではあるが、まあ、普通に楽しむことは出来たので観て損はなかったと思う。リメイク版の方の評価が結構、高いみたいなのでそちらの方も観たいと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-05-03 14:19:33) |
1083. にごりえ
《ネタバレ》 樋口一葉原作による三つのお話からなるオムニバス作品で、一つ一つの話には関係がなければ繋がりもない。しかし、どの三つにもこの時代の厳しさ、男性社会の中で生きていく女性の厳しい現実、貧しい時代の中で生きることの難しさ、大切さが上手く描かれている。特に最後の話は三つの中でも際立っている。何よりもまずは俳優陣が皆、素晴らしい。淡島千景に宮口精二、そして、名脇役杉村春子のここでも凄さを感じずにはいられない。主人公のお力を演じている淡島千景の女としての色気もさることながら女が生きていく為には人からどんな眼で見られようが、何と言われようが例え「鬼」扱いされようが、そんなことは関係ない。生きる為の手段として男を客として迎え入れる。ただそれだけのこと!そんな女の為に家族を捨て身を滅ぼす駄目男ぶりを見事に演じて見せた宮口精二も男の哀れさ、駄目な部分をあの表情と家族との別れの場面での背中から感じることが出来る。奥さん(杉村春子)と息子を捨ててまで一人の女のためにとボロボロになっていく姿は本当に男のだらしない部分がしっかりと描かれていて考えさせらる。そして、この作品に出てくる男のだらしなさ、駄目ぷりと女の強さは成瀬巳喜男監督若しくは川島雄三監督の映画の中によく出てくる人物像に近いものを感じるのは、何故かと思っていたら何と脚本を書いている二人、水木洋子は成瀬巳喜男監督作品を幾つも書いてるし、また井手敏郎という名前はあの川島雄三監督の個人的ベストワン「洲崎パラダイス赤信号」の脚本家でもある。お力の性格、駄目な男をどうしても愛せずにはいられない。別れたくても別れられない哀しさなどは正しく「洲崎パラダイス赤信号」の蔦枝とダブって見える。女は生活の為に身を張ってまで強く生きて行こうとするのに男はだらしない。この作品は男のだらしなさと、女の強さ、そして、哀しさとを同時に描いた人間ドラマとして見応えたっぷり!あの生活感溢れる長屋のセット、重苦しい雰囲気など正に昭和の雰囲気を十二分に感じることが出来る。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-04-29 11:52:14)(良:2票) |
1084. 暗黒街の対決
岡本喜八監督らしいと言えば確かにその通りなんだろうけど、アクションシーンの切れ味の良さなど見所もあるし、つまらなくもない。ただ、何か物足りなさが残る。三船敏郎に絡む鶴田浩二が刑事もののアクションものなのに、まるで任侠映画の時とほとんど変わらないのが気になって仕方ない。岡本喜八監督の作品の常連さんがここでも見られるのは嬉しいが、岡本喜八作品としてはごく普通の感じにしか思えない。司葉子のあのママ役もちょっと違和感が残る。所々、笑えるものの、あと、一押し足りない。けして、つまらなくはないのでこの点数ですが、岡本喜八作品としてはやはり普通の感じがする。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-04-28 15:57:14) |
1085. 宗方姉妹
小津作品に高峰秀子というのはそれほどないと思われる中でのこの作品での高峰秀子の演技を見て思うのは、確かにあの口調、男しゃべりは愛嬌たっぷりで楽しめる。その一方で、全く正反対の性格である田中絹代の姉への引き立て役のようにも思えてしまって、いまひとつ感情移入出来ずに終わってしまったのが残念でならない。二人に惹かれる男を演じている上原謙ともう一人、何とも嫌な奴ぶりの山村聡、小津映画でまさかのピンタの応酬が観てても辛い部分がある。あそこは出来ることならもっと違う方法で二人、山村聡と田中絹代の互いの気持ちというものを表して欲しかった。厳しさの中にもほっと出来る。そんな笑いというものが私の考える小津作品と思う。そういう意味で考えると高峰秀子の口調ぶりは確かに面白いかもしれない。けど、私の小津作品に求めている笑いというものとは何かが違う。高峰秀子の持ち味はもっと別のところにあるはずだと、それは放浪紳士チャーリーさんが書かれているように成瀬、木下作品での彼女を見ていると思えてならない。小津監督らしい人生を見つめる。人生に対する厳しさ、確かに上手く描かれているけど、私の好きな小津作品とはどこか違う。上手く言えないのだが、高峰秀子の存在があまりにも輝きすきでいて、他の俳優陣の輝きというものが少し薄い気がしてならない。 [DVD(邦画)] 6点(2008-04-27 14:48:23)(良:1票) |
1086. 越後つついし親不知
《ネタバレ》 水上勉という作家は人間の業、悲しさ、刹那さを描かせたらこの人の右に出る者はいないのではないかと思うぐらい本当上手い。人間として生まれてきた以上、男と女である者のそれぞれの悲しさ、刹那さを上手く描くものだとこの原作者の小説を読む度にいつも思う。そんな原作の持つやりきれない部分、気持ちというものをこの映画はストレートに描いている。何と言っても佐久間良子の美しさと小沢昭一の演技、更に三國連太郎、この三人がいずれも素晴らしい。人間の心にある欲望、悲しさが画面をそして、演技を通してどんどんと迫ってきます。好きでもない男(三國連太郎演じる権助)に無理やり倒された挙句に子供まで身ごもったおしん(佐久間良子)の女としての悲しさにまた、友達とばかり思っていた権助に騙され続けた留吉(小沢昭一)の何とも哀しいことと言ったらない。心の底から愛し、結婚したおしんの産まれてくる子が自分の子だと信じきっていたのに、自分の子ではなく、親友、権助の子であると知った留吉がおしんを泥だらけの田んぼの中に顔を押し込み、殺してしまうという悲劇、泥だらけのおしんを抱いて一人、去っていく場面で通りかかる子供達の楽しそうな歌声とは反対にあまりにも悲しくて涙が出る。自らの手でおしんを殺してしまった留吉がおしんの身体を拭く場面、服を脱がし、裸にしたおしんの胸に顔を埋めて泣く留吉の姿、小沢昭一の演技に、佐久間良子のおしんの美しい。いや、美しいなんてもんではない。美しすぎる死に顔にも涙が止まらない。何て惨酷なこの物語に観ていてやるせない気持ちにさせられる。この何ともやるせない気持ちになるものこそこの話の原作者である水上勉という作家の持ち味があるような気がしてならない。ラスト、自分を騙し続けた権助に対し、復讐しようと崖の上から落とそうとして二人揃って落ちていく場面を見て同じ水上勉原作で内田吐夢監督、そして、この作品にも出ている三國連太郎主演の「飢餓海峡」を思い浮かべずにはいられない。あちら(飢餓海峡は犯罪映画であり、社会派映画でもあり)、こっちは勿論、社会派の映画でもあるが、恋愛映画の色合いが強くて色合いは違うものの、作風は似ている。いずれにしても何ともやりきれないそんな切ない感じが映像からも伝わる力作という意味においては変わらないと思いました。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-04-26 15:07:23)(良:1票) |
1087. 小早川家の秋
《ネタバレ》 うわぁ~これは何たる豪華な顔ぶれだ!小津映画に森繁久彌ってのがまずは何より考えてもみなかった。加東大介と二人でバーにいる場面を見て、何だか小津映画であることをすっかり忘れてしまいそうになる。「社長」シリーズでも観ているようです。小林桂樹も出ているし、また司葉子もこれまた「社長」シリーズを思わずにはいられない。その他小津作品の常連さん達が大勢出てくる。しかしながら小津映画でもあるようで、何だか成瀬作品を観ているようでもあり、山茶花究に団令子が出てきて、川島作品を観ているようにも思える。それでもやはり作品の内容はどこをどう観ても小津作品である。中村雁治郎の頑固な父親と娘、新珠三千代のやりとり、原節子に対して賭けに勝って「はい」と手を出して100円請求する司葉子、この二人のやりとりが面白い。そうそう、かくれんぼの場面での中村雁治郎も笑える。浪花千栄子の京都弁の美しい言葉使いもこれまた一度、聞いただけでいつまでも耳に残りそうなぐらい上手い。そんな色んな意味で笑えたり、味わい深かったりと小津作品らしいなあと感じることが出来て良い。ただ、ラストの恐いあのカラスと不気味な音楽はどうにかならなかったのかなあ?まあ、何だかんだ言いながらもよくぞこれだけのキャストを集めていながらも誰一人として疎かに描いてない小津監督はやはり凄い監督さんだと改めて思いました。 [DVD(邦画)] 7点(2008-04-24 20:45:27)(良:1票) |
1088. 処女の泉
《ネタバレ》 私には神の信仰など深いテーマについてはよく解りません。しかし、この映画はそういう難しいことを抜きにしても人間の持っているわがままな部分、惨酷さ、何の罪もない人がただただ己の欲望、身勝手さによって強姦された挙句に殺されるという惨酷さ、そんな惨酷な部分を描くこの何とも許せない話の中にあって、娘に代わって、また神様に代わって自分の娘を殺した男達を刑に処すというその気持ちは父親としての、また人間の持っている悲しさ、それは殺されたカーリンのことを嫌っていたもう一人の女、インゲリの同姓に対しての嫉妬、眼の前で三人の男に殺される場面をただ目撃することしか出来なかった彼女も一人の人間として苦しんでいる様子が観ていてもよく解る。人間とは如何に惨酷で弱い生きものか?という問いに応えているような本当に見ていても寒気のするような内容ではあるものの、画面全体の美しさ、白と黒とのコントラストの色使いの凄さ、カーリンが教会へと向う場面で馬に乗って行く場面のあの美しい映像美、途中で出会う男達に強姦される場面もその後の殺人シーンにしても殺された後に舞う雪も何かもが本当に美しい映像美として心に残るぐらい本当にどのシーンも美しい。男達への復讐を自らの手でやりとげた父親の見せる涙にこそ人間の持っている悲しい部分が現れてもいるそんな気がしてならない。ラスト、殺されたカーリンの死体を目にして神様は何て罪なんだというようなことを祈る人達、流れ出る水の美しさにはため息が零れる。どうしようもないぐらい観ていてもやりきれない気持ちにはなるので何度も繰り返し観たいとは思いませんが、これだけ人間の矛盾した気持ち、惨酷さ、欲望などを美しく描いた映画は他には観た記憶がない。とにかく一度、観たら忘れられないぐらいの美しさが惨酷な世界と相成って描かれていていつまでも心に残りそうです。 [ビデオ(字幕)] 8点(2008-04-20 12:07:55)(良:1票) |
1089. また逢う日まで
以前、CS放送でやった時のを録画してあるという知り合いに借りてきて見ましたが、これもまた同じ今井正監督の「青い山脈」に通じるものを感じる作りになっている。終戦の真っ最中の若い二人の青春、恋愛映画で、主演の二人が何とも爽やか、清々しい。その一方でちょっと反戦がテーマというのが色濃く出ていて、青春映画にしてはちょっと痛い。痛々しい感じがするのが欠点と言えば欠点のようであり、「青い山脈」ほどの爽快感はここにはない。この当時の時代背景の映し方、画き方は今井正監督、上手く描かれているのは感心させられた。それにしても久我美子のこの作品の中での可愛いことといったらない。本当に久我美子が可愛い。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-04-18 21:54:15) |
1090. 崖
《ネタバレ》 フェリーニという人の描く世界、見つめる視線の先には人間とは如何に惨酷な生き物、運命には逆らえない。この映画の主人公三人の悪人達、社会から完全にはみ出してしまったどうしようもない人たち、人を騙し金を奪うことを商売にしている奴ら、そんな奴らの苦悩、悲しみ、そんな中で三人のうち、一人の男、アウグストが別れた妻と娘との再会、その瞬間に見せる彼の一人の父親としての娘との幸福感、更に小児麻痺の一人の少女との出会いによって、今までの自分のしてきたことへの償いの意味を込めての仲間との別れ、純粋な少女の優しさ、会話の中で生まれる本当の人間愛、この映画が描いているその人間愛こそフェリーニ監督の持ち味、人間の心の中にある悲哀、人間の弱さというものを感じられずにはいられない張り詰めた空気、最後の最後に良心を見せて死んでいったアウグストを演じて見せたブロデリック・クロフォードの名演技に誠意と意地を感じることが出来る。 [DVD(字幕)] 8点(2008-04-13 21:21:18)(良:2票) |
1091. 座頭市喧嘩太鼓
《ネタバレ》 大映としてはこれが最後の「座頭市」作品となるシリーズ第19作!相変わらず勝新の座頭市にはオーラが漂う。殺陣のスピード、切れ味とも申し分なし、映像的にも美しくて良い。しかし、残念にことに市の命を狙うべくアウトロー、一匹狼的な男、佐藤允といい、西村晃といい、この画き方は何なんだ?特に西村晃の画き方、使い方など勿体無い。佐藤允のラストの決闘、一騎打ちにしてもあのうるさい音楽が邪魔で緊張感がいまひとつ伝わってこない。最後に今まで観てきたこのシリーズの中にあって、今作のヒロイン、三田佳子はシリーズ史上最大の大物女優だと言えよう!そんなヒロインを最後置き去りにして去っていく市には、えっ?何か違うやろ!と感じがしてならない。市と共に行動する藤岡拓也の役が一番儲け役の気がする。けして、つまらなくはないし、見所十分なのに全体的に納得出来ない部分が多すぎて引っ掛る。 [DVD(邦画)] 6点(2008-04-13 13:06:02) |
1092. 四つの恋の物語(1947)
「四つの恋の物語」とタイトル通り四つの恋の物語をオムニバス形式で描いた作品!四つの物語のうち、断然、最初の話が良い。池部良と久我美子のやりとりが何とも微笑ましくて良い気分にさせられる。久我美子の初々しさ、可愛さといい絶品の作品!それに比べると残りの三つはやや落ちる。いまひとつの感じがする。そんな中で第二話の成瀬監督の撮った話の中の木暮実千代の色っぽさ、あの口元、上目使いの目付きが色っぽくてたまりません。続く第三話のミュージカル風喜劇と四話のサーカスの話はあんまり面白くない。しかしながら第三話における若山セツ子の可愛さは絶品です。全体的に印象としてはバランスが悪い感じがしてならないが、女優陣の可愛さ、美しさを十分堪能出来たので良かったとは思う。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-04-13 10:14:37) |
1093. 細雪(1983)
《ネタバレ》 美しい。この映画を一言で表すなら「美しい」これに尽きる。市川崑監督の描き出す世界は本当に美しい。四人の姉妹、岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川佑子のそれぞれの画き方から何から何まで本当に美しく撮られている。そんな四人の姉妹のそれぞれの物語り、心の中の苦しみや悩みを美しい映像美に合わせるようして撮られている。本当に見ていてどの場面も日本ならではの美しさを感じる。四人の姉妹の話をすると、やはり岸恵子が抜群に上手い。「うち、京都より東へ出たことあらへん」てあの言葉の響きが忘れられなくなりそうです。一番上の姉としての苦しみ、母親変わりに妹達の面倒を見なくてはならない苦しみを素晴らしい演技力で見せてくれている。また一つ下の妹、佐久間良子もこれまた上手い。その一方で三女を演じている吉永小百合が私はどうにも苦手だ!この役、吉永小百合よりももっと違う人がいないのかな?若尾文子がもっと若ければ、山本富士子でも良い。いや、むしろ若尾文子よりも山本富士子が一番合ってる気がする。二人共もう少し若ければなあ!一番下の妹、古手川佑子に関しては役柄が役柄だけにまあ、こんなものでしょう!阿部豊監督の撮った「細雪」の中の高峰秀子と比較してしまえば、分が悪いとは思うものの、思ったほど悪くはないし、まずまずの演技をしていると思う。作品としての完成度、美しさでは明らかにこの市川崑監督の「細雪」の方が上だと思うものの、同じ点数にしてしまうのは、やはり三女、吉永小百合の存在とどう見ても他の三人は関西人に見えるのに吉永小百合だけは関西人には見えないのが痛い。痛すぎる。私の大の苦手、吉永小百合の存在、演技力にしても上手いとは思えず、よって完成度は高い作品とは思うもののこれ以上の点数は付けられない。 [DVD(邦画)] 7点(2008-04-12 09:15:10) |
1094. 美女と液体人間
《ネタバレ》 液体人間がどの様な過程で誕生したか?その理由が水爆実験によるものというのは同じ監督のゴジラと一緒であり、この映画のテーマは核実験による恐怖、例え火により一度は消滅させることが出来たとしても、それは一時的なものである。また何かのきっかけで再び誕生するかもしれないという恐さと同じことを繰り返してはならないという警告である。あのドロドロした緑色の液体の不気味さ、始まってなかなか姿を見せない事により、更に恐怖を備え付けることに成功している。液体人間が何故、殺人が実行するか?その過程が今ひとつ分かりづらいのが減点ではあるけど、一本の映画としてはよく出来ている。それにしてもあの蛙の実験シーンでの蛙の姿の変化の不気味さといい、一度観たらずっと頭に残りそうな程、恐かった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-04-06 18:02:02) |
1095. 赤ちゃん泥棒
《ネタバレ》 コーエン兄弟は断然、昔の作品の方が良い。個人的には「ミラーズクロッシング」とこの作品が私の中では同じぐらい大好きです。まず何よりもコーエン兄弟の温かさを感じることが出来るのが良い。囚人と府警という夫婦の組み合わせも面白い。そんな二人には子供が作れないという理由から赤ちゃんを盗む。しかし、単なるドタバタした話でない、何か人間的な温かさ、優しさが伝わってきて泣ける。笑えて泣けるのだ。赤ちゃんを盗んでからの二人の行動のチグハグさの中にも赤ちゃんに対する優しい感じが物凄く滲み出ていて観ていて幸せな気持ちにもなれる。だからこの映画が私は大好きです。車の中で盗んだ赤ちゃんを抱きしめている時のホリー・ハンターの嬉しそうな姿は、一人の人間としてのまた女性ならではの幸せを感じる何とも微笑ましい場面だし、ラストのあの夢のシーン、未来に向けての希望のようなあの場面、例えそれが正夢にはならなくてもきっとあの二人はこれからもずっと二人で仲良く生きていくことだろう!全てにおいて優しくて温かいこの映画、誰が何と言おうと、どんなに周りの評価は低かろうが、私は大好きだ。 [DVD(字幕)] 9点(2008-04-05 16:04:21)(良:1票) |
1096. 活きる
《ネタバレ》 「活きる」というまずはこの邦題を付けた人に私は素晴らしい。感謝の気持ちでいっぱいになる。どんな厳しくて、貧しい中にも人間として生まれてきた以上、精一杯生きる。生きること、それがすなわち「活きる」ことにも繋がる。この映画で描かれている人間の生活、苦難にも立ち向かわんとばかりに一生懸命な人々、博打でボロボロになりつつある駄目な夫を支える妻、コン・リーの厳しさと優しさとの両方がきちんと描かれている。それも偏に主演の二人の演技力があればこそ観ていて伝わるものがある。娘の結婚を祝う場面での二人のあの優しそうな笑顔、表情、そして、そんな二人の表情につられるように周りの人間も同じく表情が和らいでいて何だかとても優しいこれこそ人間の温かさ、チャン・イーモウ監督の心の温かさを見せてもらっているようです。それにしても駄目な夫を演じているグォ・ヨウがどんどんと素晴らしい父親へと変わって行く様子を見事に演じ、更にはそんな夫を支えるコン・リーの演技は凄い。やはりこの人、今、アジアでナンバーワンの女優さんだ!コン・リーの凄さ、素晴らしさについて少し語らせて貰いたい。どんな役でも見事に演じきる。そして、何よりもオーバーな演技、自分を良く見せようとか、私は女優なんだよ!どうよ?美しいでしょ?みたいな所を全く見せつけない。抑えた演技、それは日本で言うならば高峰秀子という女優に当てはまる。表情にしても滅多には変えずに、ここぞという時のみ、表情を変えて演技する。中国版、高峰秀子です。なんだかんだと色々書いてみたが、これは正しくタイトル通り「活きる」映画!コン・リーの逞しさ、強き母こそ人間のそして、世界共通の母のあるべき姿ではないでしょうか! [DVD(字幕)] 8点(2008-04-05 11:51:05)(良:1票) |
1097. 男と女(1966)
確かにこれは「男」と「女」の映画だ!男と女さえいれば一本の映画が出来てしまうというようなそんな感じの作品です。あのモノクロの映像美の美しさと有名な音楽は耳に残る。そして、男と女、二人の会話、けだるい雰囲気、どこをどうとってもフランス映画!個人的好みで言えば、特に面白いとは感じないものの、だからと言ってつまらなくもない。5点にしようか6点にしようかで迷うものの、アヌーク・エーメの美しさには本当にまいってしまう。よって1点プラスして、6点! [DVD(字幕)] 6点(2008-04-03 22:13:33) |
1098. 吸血鬼ノスフェラトゥ(1922)
《ネタバレ》 これは恐い。まずは何と言ってもマックス・シュレックというこの俳優が恐い。あの坊主頭にギョロッとした眼にあの長い爪、本当に恐いです。よくこんな俳優、見つけてきたものだと感心させられる。ノストフェラトゥが棺桶の中から出てきて、起き上がって徘徊する場面のあの恐ろしさ、全編モノクロのコントラストを生かした映像美に合わせるように動くノスフェラトゥ、顔付きがとにかく不気味です。そして、この映画、あのセットも凄い。窓と風にそして、立つ波とあらゆるものを駆使し、また、遠近感を利用してノスフェラトゥを巨大な怪物に見せようと、色々工夫されているのが観ていても解る。斜めからの構図、コマ落としなど今みたいにCGなど無いこの八十年以上も遥か昔に考えられる技術というものを全て駆使し、観ている者に恐怖を与えることに成功している。ヒロインの寝ている所を窓に張り付くようにして見ているノスフェラトゥの恐ろしさ、更にノスフェラトゥのシルエットが落ちて、寝ている男の前へと覆い被さっていく時の恐いこと。恐いこと。棺桶から沢山のネズミが出てくる場面も何とも不気味です。映像の美しさ、モノクロならではの、モノクロだからこそ表現出来ることの恐さ、これから映画を撮ろう。ホラー映画を撮ろうと考えている監督さんたちは見習うべきものがこの映画には沢山あるのではないだろうか! [DVD(字幕)] 8点(2008-04-01 20:22:42)(良:2票) |
1099. 娘・妻・母
《ネタバレ》 いや~何と言うべきか?成瀬映画の常連さん勢揃いの上に観ていて何だか成瀬作品を観ているようで、小津映画、黒澤映画、またまた川島雄三に岡本喜八といった作品でも観ているような何か不思議な錯覚に陥りそうなほどのメンバー達、相変わらずお金の問題やら家族の問題など鋭く描く成瀬作品ではあるものの、成瀬作品にしては物足りない。平凡な感じがする。成瀬作品の最大の持ち味であるドロドロした中にある希望のようなもの、または人生に対する惨酷さ、皮肉のようなものがあるにはあるが、少し欠けている気がして、他にも原節子と高峰秀子の競演は十八年ぶりとなるらしいが、原節子に比べて高峰秀子が影が薄い。どうも扱いが中途半端な感じがするのが不満です。それと原節子と仲代達矢の二人だけのシーンもちょっとダラダラとしている感じがしてならない。そんな中にあって相変わらず愚痴、不満たらたらな杉村春子は上手い。そんな杉村春子のことを「お母さんたら、私が夜中に水飲みに起きて戸を開けるとギョロットした顔で私を睨むのよ。お母さんたら、夜中も寝ないで起きているのよ、きっと」なんて言い放つ草笛光子には大爆笑!いやあ、本当にずっと寝ないで起きてそうです。 [DVD(邦画)] 6点(2008-03-30 11:12:53)(笑:1票) |
1100. 煙突の見える場所
成瀬作品でもなく、木下作品でもない高峰秀子、更には田中絹代に上原謙、この三人を見ているとあのお化け煙突同様に懐かしい昔の人達、現代の仕事、仕事と忙しくて自分のことしか考えられないようなそういう人間にはない、なんて言うか、もう、これぞ人間的な魅力に満ち溢れていて癒される。この映画に出てくるお化け煙突を見ていると、まだ自分がガキだった頃の懐かしい風景、どろだらけになって遊びまくっていた子供の頃を思い出す。田舎で生まれ、田舎でずっと生活してきた私には、出てくる街並み、風景と田舎らしいこれぞ本物の田舎らしい描写にただただ、気持ち良く癒されてストーリーよりもそういう部分でこの映画、気に入りました。それにしても高峰秀子も田中絹代も、更に上原謙も上手いなあ!昔の田舎の人の優しい感じが顔つきから何から滲み出ていて、良いです。同じ田舎町、東京の下町を描いた映画でやたら好評のあの映画よりも何十倍も良いです。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-03-29 09:03:33)(良:1票) |