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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
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1101.  イディオッツ 《ネタバレ》 
トリアーは、人は皆平等に愚かなのだと考えているのかもしれない。その愚かさをひたすら隠し続けなければいけないのがこの世の常。隠す術を知らない者たち(障害者)のように全てをさらけ出して生きてゆけたら、ある意味幸せなのかもしれない。ストレスは消え、虚勢をはる必要もなく、もしかしたら戦争だって起こらないかもしれない。だからといって愚かさをさらけ出しなさいと言っているわけではない。それは現実的ではないから。ここに登場する人たちがそれを証明する。愚かさを隠す人がいる以上、その中でさらけ出すには相当な勇気がいることを。障害者に見る純粋性に近づこうとする者たち。一人の女が純粋なハートを手に入れたかもしれないラスト、この世はそれを許さない。
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-12-21 16:10:24)
1102.  奇跡の海
章ごとに美しいこの世の風景が映される。そして流れるツボな選曲(ディープパープルまで!)。しかしそれらは手振れ映像で描かれる生々しい現実世界をより生々しく見せるためにあるかのように、作品の空気と合ってない。筋はかなりドラマチックといえるのに、この章ごとの画と音楽がドラマの部分への感情移入を一旦リセットするので生々しさだけが強調される。この手法の発展形が『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のミュージカルシーンへと受け継がれる。その『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を最終作とするハート・オブ・ゴールド三部作の先陣でもあるこの作品は他の2作品同様、純粋な心の女が純粋であるがゆえにこの世界で辛い仕打ちに遭う様が描かれる。いかにこの世界が歪んでいるかを、舞台を封建的で閉鎖された土地にすることで実にわかりやすく見せている。わかりやすければわかりやすいほどに増す嫌悪感、そして女が純粋であればあるほどに増す嫌悪感。つまり純粋なものが異端となる現実に嫌悪するようになっている。だからこの3部作自体を嫌悪するのは自然な現象。この挑発、私は認めます。
[DVD(字幕)] 7点(2006-12-20 18:08:48)
1103.  マンダレイ 《ネタバレ》 
今度のアメリカの闇は長年の奴隷制度がもたらす弊害。そして今回も神のごとき横暴なグレースが大いなる理想をもって、今回は巨大な力という保険も手にしながら、間違ったマンダレイを正しく導く。結果はもちろん、人は神にあらず。神の役割は相変わらず一部始終を除き見る観客に委ねられる。ただ、前作に引き続き同じスタイルをとってはいるが、秘密の行為とそれを知らない人たちの日常がいっしょに映されることでより人間の醜さを際立たせた前作に比べると「見えない壁」が前作ほど有効に使われていない気がする。あのスタイルはただ奇抜なだけではなく、映画の可能性の提示であり、同時に演出上においても意味のあるものだったと思うので、今作のあえて有効に使わないやり方は気になる。間延びしそうな展開の少ない話を最後までひきつける力はさすがですが、もしかしたら間延びさせないための方法として「見えない壁」の有効利用をしなかったのかも。わかりやすくするためのナレーションもありがた迷惑に感じた。
[DVD(字幕)] 5点(2006-12-19 13:46:30)
1104.  ドッグヴィル
ただ白線を引いただけのセット。あたかもそこに家があるかのように、壁があるかのように、ドアがあるかのように役者が演じる。その不自然な様を我々は知らぬ間に受け入れる。家を想像し、壁を想像し、ドアを想像し、無いはずの背景が我々の頭の中で作られる。観客は映画を自分流に解釈する。それを逆手に取った手法といえる。そして観客はすべてを見ることが出来る唯一の存在としてトリアーの投げかける「人の行い」を直視する。目の当たりにするのは資本主義のいびつな形。何かを与え何かを得る、のではなく、何かを得るために何かを与える。見返りというものを常に念頭に置いた行いが露呈される。この異様なセットのように自分本位な醜態がさらけ出される。主人公の善意はこの自分本位の資本主義の世界に翻弄される。しかし主人公の善意もまた見返りが前提としてある。その見返りが無かったとき巨大な力が発揮され解決という名の終焉がもたらされる。アメリカ三部作の1本目は強大な力を持つアメリカ、自由の国アメリカが、出来得る限りの皮肉を込めて描かれる。
[DVD(字幕)] 7点(2006-12-18 14:33:03)(良:1票)
1105.  ガントレット
そこまで撃つ必要があるのか?この映画にとって物語とは、ただ車が蜂の巣にされるために、家が家でなくなるくらいに銃弾を浴びるために、傷つきながらもゆっくりと前進するバスを見せるために存在する。だから撃つ必要があるのだ。必要があるというよりそれが前提なのだ。だからなぜ狙われるのかとかどうしてそこまでとか、そんなことはどうでもよくて、ただ銃撃の凄まじさを見て、個を軽んじられた男が奮起する姿を見て女といっしょにしびれればそれでいいのだ。おっぱいはオマケなのだ。でもオマケも捨て難いのだ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-12-15 15:23:38)(笑:1票) (良:1票)
1106.  荒野のストレンジャー 《ネタバレ》 
湖畔に建つ小さな町の、今の新興住宅を思わせる西部劇には不似合いな装いがまず異様さを漂わせる。近くの墓を通ってこの町にやってくる謎のガンマン。異様さを際立たせるオープニングからすでに地獄への伏線が張り巡らされる。富と秩序を守る体制に正義はなかった。イーストウッドは自らを人智を超えた存在に変え、正義の鉄槌を怒りを伴い振り下ろす。無法者と戦う西部劇ではない。人間を超越した者、つまりは神の制裁を描いた、ただ舞台が西部であるだけの物語。正義は個人の中にある。イーストウッドの西部劇の根底に流れるものの源流が垣間見れる。
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-12-14 13:02:51)
1107.  ブロンコ・ビリー
今年、現代用語として「ツンデレ」なる言葉が新しく加わったとネットのニュースにあった。初めて聞くこの言葉の意味を読んでみると、すぐにこの作品のソンドラ・ロックが浮かんだ。もう最悪にツンツンしている女が終盤になってイーストウッドと一夜を過ごした翌朝のあの別人のようなキュートぶり!!なるほど、萌え~となるのも頷ける。クソババアが女の子に変わっちゃうぐらいの変貌。ホントに可愛い。で、イーストウッドはというと、萌え~な表情は見せずに相変わらずの難しい顔。これがまたかっこいい。けして西部劇のガンマンのようにかっこよくはないけど、クールな顔の下の優しくて強いハートが地味ながら本物のかっこよさを見せてくれる。家族のようなブロンコ・ビリー一座はイーストウッド監督が率いる「信頼」で結ばれた映画スタッフとかぶります。硫黄島二部作を見た今、一番見直したい作品でもあります。
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-12-13 11:51:03)
1108.  硫黄島からの手紙
案の定と言うべきか『父親たちの星条旗』に続き私に大きな感動と混乱をもたらした。過去のイーストウッドならば渡辺謙を自らの分身とし、主人公として描いたであろう。しかし今のイーストウッドはそれを絶対にしない。でもこの作品に登場する日本人たちは軍国主義の思想が蔓延する中でもそれぞれが自分自身の思想を持ち続ける孤高の戦士たちだ。すべての人がイーストウッドの愛すべきアウトローなのだ。だから表面的には過去のイーストウッド作品とは異にしながらも『父親たちの星条旗』と反するように実にイーストウッドらしい映画のような気もする。それぞれが兵士であるまえに一人の人間であることが強調される。かといって人間ドラマで逃げない。「天皇陛下万歳」、一人を除いて誰もが心からそう叫ぶ。戦死した祖父が戦地から私の父に宛てた手紙がうちにあるのですが、「お国のために」という当時の空気がその一通の手紙からも読み取れます。そんな風潮が前提としてあることをけして濁さない。「一人を除いて」の一人とはもちろん主人公であり語り部である二宮和也である。彼は今の時代の人間がタイムマシーンに乗ってやってきたかのような人。そうすることで今の時代の我々観客とその戸惑いを共有する。過去の悲劇を今に伝える伝道師の役目を担っている。それからもう一つ。『父親たちの星条旗』で友人を死なせたことを永遠に悔いる衛生兵の苦悩、その友人の死のこの『硫黄島からの手紙』での扱いのなんてあっけないこと。二つの作品がセットになることで戦争が個にもたらすものの大きさが実に顕著に表されていると思う。 
[映画館(字幕)] 8点(2006-12-12 12:45:31)(良:1票)
1109.  父親たちの星条旗
イーストウッドの映画には常にイーストウッドがいた。本人が出ていなくても彼の分身がいた。前作『ミリオンダラー・ベイビー』のレビューで私は「イーストウッドはどこに行くのだろう」と書いた。現実に打ちのめされたアウトローはどこに行くのだろうと。彼は帰ってこなかった。この映画にイーストウッドはいない。それは私がずっと望んでいたことでもあった。だから作品の内容とは別のところでこのイーストウッドの到達点に感無量になった。しかし同時に寂しくもあった。この作品は英雄を否定する。英雄は作られる。映画のヒーローもまた作り物なのである。映画が現実味を帯びるにしたがいヒーローはヒーローとして存在しにくくなり、もはやイーストウッドもイーストウッドの分身も入る余地がなくなってしまった。何度も言うがそれは私が望んだものであったはずなのにとてつもなく悲しいことのように思えてならない。英雄の否定は戦争を題材としているからであって、イーストウッドの不在は偶然なのかもしれないけど、これまでの彼の映画の軌跡からするとやはり、ひとつの到達点と考えるのが自然だと思う。私の心境は複雑です。 イーストウッドの新しい映画を拍手をもって歓迎すると同時にイーストウッドの帰還を待ち望む自分がいる。
[映画館(字幕)] 8点(2006-12-11 13:01:32)(良:1票)
1110.  赤い靴(1948)
舞台の上で踊るバレエが次第に映像の中で踊るバレエへと変貌する。美しいその踊りをまずしっかりと映し出す。不必要にカットを割らずにバレエ本来の美を丁寧に映し出す。カットが割られるときは、まさに映画だけにしか表現できない世界観を最大限に見せるとき。バレエ本来の美はしょせん映画は生で見る以上の感動を再現できない。しかしその美を映画的に見せることはできる。どう見せるかは柔軟な発想とセンス、そして実際に画にする技術と努力。この映画はそのお手本として素晴らしすぎる画を堪能させてくれる。芸術的であり且つエンターテイメント性を併せ持ったバレエシーンに魅了されること間違いなし。
[ビデオ(字幕)] 8点(2006-12-08 16:30:23)
1111.  ユー・ガット・サーブド
お話がありがちでシンプルなのは見所を徹底してダンスに絞っているのでかえって好感が持てる。ただ、問題の解決がかなり強引で、せめて簡単な伏線が欲しかった気がします。女友達の存在もまったく活かされていない。シンプルというよりチープ感が強い。で、ダンスですが、ストリート方式のダンスバトル、これ自体がかっこいい。ミュージッククリップのようにカットを割ってさらにかっこよく見せています。でもこのダンスバトル、ダンスの技とか切れとかが勝負を決めるというよりも、ストーリーにリンクした心の葛藤が勝負を決めていて、あきらかに勝者と敗者の明暗がダンス中からはっきりしている。勝つほうのダンスばかりが映される。だからメインのバトルはいつもバトルになってない。どうせダンスに絞って見せるなら二つのチームが100%の力を発揮したバトルを見たかった。
[ビデオ(字幕)] 3点(2006-12-07 11:50:37)(良:1票)
1112.  Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?(2004)
見たのはずいぶん前ですが、まず「やるじゃん」と思ったのが第一印象です。オリジナルの日本ゆえの湿っぽさがなくハリウッドらしい軽さと風格がある。日本のこの手のコメディは、まじめにストーリーを進めつつその中にほろっと笑いを取り入れる、だけに終わらずにかなり強引な笑いをとるためのキャラで無理やり笑いをとるという、演出外の笑いがどうも好きになれないんだけど、このハリウッド版は同じことをしていても実に作品に馴染んでいる。たぶん日本版は妙にリアルなもんだからリアルじゃない笑いとのバランスが悪いんだ。一方ハリウッド版は主演二人を見ても、もう夢物語。赤いバラの束があれだけ似合う親父はいません。日常と非日常の違い。だから突拍子もない笑いがすんなりと受け入れられる。なんでもかんでもまねっこしちゃうずうずうしさも含めてハリウッドらしいリメイクだと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2006-12-06 13:54:13)
1113.  世界
貧しい農村から夢を持って北京にやってきたはずの登場人物たちは、世界に開放をアピールする中国とは裏腹に、誰もが閉じられた世界で生活に追われるだけの毎日を過ごす。そしてその生活に慣れてゆくことの怖さ。「世界」とはほど遠い「世界公園」という極めて閉じられた環境で各国の華やかな衣装を身に纏うダンサーと「世界公園」の警備主任のカップル。彼らはここに長くいすぎたために外国へ飛び立つ知り合いを見送ることしか出来ない。カメラがとらえる二人の長い沈黙が「どこにも行けない」「なにもできない」「なにも見えない」、そんな二人を浮かび上がらせる。北京オリンピックを控える中国において、しかしそのほとんどの人が生まれた地から出てゆくことなく一生を終えてしまう現実を若い男女の物語の中に露呈させる。携帯電話をかけたときに女の心情を表現するアニメーションは正直どうなんだろう?と思うものの、どおってことのないシーンの連なりがとても印象に残るいい映画でした。
[映画館(字幕)] 7点(2006-12-05 14:22:26)
1114.  フラガール
絶賛の中、非常に書きにくいのですが、初めて途中退席を考えたほど私にはダメでした。なぜ退席しなかったかというと真ん中に座ってて出にくかったことと、この手のお約束として必ずあるだろうラストのダンスは見ておこうと思ったから。でもどんなに素晴らしいダンスが拝めようとそれはダンスが素晴らしいのであって映画が素晴らしいわけじゃない。過酷であっただろうダンスレッスンの成果のお披露目会じゃないんだから。監督たちはこの完璧なまでに習得したダンスを見せたかったのだろう。でもそこを我慢して松雪泰子のダンスよりも窓の外の生徒たちをひたすら撮る、その窓にダンスが映る、そのほうが良かったし、蒼井優もまた勿体無いけど映されるべきはダンスよりもダンスを見る母であり観客であるべきだと思う。しずちゃんの扱いも笑いを取る為であり涙を取る為であるというあまりにも想像通りで面白くない。別れの悲しみ、炭鉱の町ゆえの怒りと苛立ちは事象のみが描かれ、根っこの部分もその先のこともすべて端折られる。端折ることで想像させるという類のものではなく、たんに事象のみを見せ手っ取り早く感動させようとしているのがどうにも鼻につく。酷評がこれまで全く無い中での私のこのレビューはただ私が天邪鬼であることの証明にしかならないだろうけど、正直な感想としてコレはダメでした。
[映画館(邦画)] 2点(2006-12-04 12:19:17)(良:8票)
1115.  風が吹くまま 《ネタバレ》 
白い壁の村、山なのか道なのか、屋根なのか道なのか、地形を利用した集落は自然との共存の象徴のような気がする。そこへ訪れる文明人。自動車はオーバーヒート。携帯電話は繋がらない。訪れた理由は風変わりな伝統を持つという葬式の撮影。しかし死ぬはずのおばあさんがいつまで待っても死なない。そもそも「死ぬはず」と考えること自体が摂理に反する。「死」はいつ来るというものではなく、いつのまにかやってくるもの。「生」もまたいつのまにかやってくる。隣家の奥さんがいつのまにやら赤ちゃんを産んで次の日から働いている。「生」も「死」も風の吹くまま訪れる。撮影打ち切りの報を聞き、拘束から開放された主人公がようやく「生」を愛しみ「死」を慈しむ。その穏やかな感情こそが風の吹くままに訪れる「生」と「死」を受け入れるということ。医者のバイクに乗せてもらい美しい地球を疾走する姿、このシーンに生きる喜びが凝縮されている。
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-12-01 16:33:08)
1116.  風の輝く朝に
貧しさも戦時下の厳しさも日本兵の残忍さも、すべて三人の男女を輝かせるために存在するかのように三人ともが実にいい顔をしている。ただ三人の中でチョウ・ユンファだけ、やたらとかっこ良すぎ。全然うろたえないし、焦らないし、強いし、頭良いし、二枚目だし。スクリーンではなくテレビ画面だったせいか、画面が暗くて見づらかったのも残念。
[ビデオ(字幕)] 5点(2006-11-30 11:26:48)
1117.  麦の穂をゆらす風
カンヌ・パルムドール獲得の際のインタビューでケン・ローチは「英国が帝国主義的な過去から歩みだす小さな一歩になれば、、」と言っている。あきらかに現英国のイラク派兵に対し、いまだ同じ過ちを繰り返す母国への批判を含んでいると思われる。作品自体も英国に対する擁護など一切無い。今尚続く北アイルランド問題という英国にとって最も重い題材を実に辛辣に描き出す。しかしこの作品の凄さは、ケン・ローチの作品がいつもそうであるように、重々しい題材が描かれる、その背景の美しさにこそある。けして戦争を、また戦闘を美化しているのではなく、『シン・レッド・ライン』のように対比の対象としての美でもなく、ただただそこに美しさがある。もう一つ、複雑な問題をすべて見せようとはせずにピンポイントで描いているので、劇中混乱することもなく鑑賞できるのも好印象。映画で語られる物語は全くといって救いがありません。あるとすればこの映画で語られない部分を想像するしかない。そしてその想像の余地だけを残している。
[映画館(字幕)] 8点(2006-11-29 11:53:51)(良:1票)
1118.  風と共に散る
メロドラマの巨匠、ダグラス・サークの映画はどんな有名俳優が登場しようと俳優の映画ではなくダグラス・サークの映画になる。物語はありがちなメロドラマだけど、風に揺れるカーテンや螺旋階段や車が効果的に感情表現に一役買った演出は巧いし、石油会社の息子の奔放な行動のひとつひとつに破滅を予感させるなにげない伏線も巧いけど、それ以上に画面全体に独特の色を持っているのが実に惹かれる映画なのです。洗練された、という表現はちょっと違う、かといって古臭いというのでもない、どちらにも当てはまりそうでいて少しずれてる感じ。うまく表現できないけど、あぁ、サークの映画を観ているんだぁという感慨にふける、その体験に感動。
[映画館(字幕)] 8点(2006-11-28 13:21:47)
1119.  風と共に去りぬ
土地さえ持っていれば大丈夫というアメリカ開拓時代から脈々と受け継がれてきた神話を刷り込まれ女の悲劇、同時にその根拠のあいまいな神話をかたくなに信じる強さ(信じるものは救われるじゃないけど)ゆえにどんな波乱をも乗り越えてゆけた女の人生賛歌。という見方をしました。波乱に富んだ物語を完結させることなく、この「強さ」を再アピールして終わらせるというとんでもないエンディングに呆気にとられました。あまりにも明確にキャラ分けされた登場人物たちというのがいかにもハリウッドなのですが、「これがハリウッドの映画だ!」という堂々ぶり、とくに医者を単身探し歩くスカーレットをカメラが徐々に引いていったときに映し出される惨状の画の圧倒感、火薬庫に火がまわるときの迫力、ともに「真似できるものならやってみろ!」というハリウッドの威厳みたいなものを感じ、ただただ感心。映画は監督のものではなく製作者のものという映画が芸術であることを拒絶したような図式を確固たるものにしてしまった感もあるが、それでも制作意欲が尋常でないことはじゅうぶん想像でき、大衆娯楽の王様的な輝きを持ったこの作品には敬意を表する。 (追記)スカーレットの人格に対してもそれほど嫌悪感は無かった。強がってわざと他の男と遊ぶ様とか酔っ払って香水で口をゆすぐ様とか可愛かった。こうゆうシーンをちょっと大げさにユーモアを込めて描写するあたりが良い意味で抜けめ無いハリウッド映画だと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2006-11-27 12:45:14)(良:1票)
1120.  桑港(サンフランシスコ) 《ネタバレ》 
信じるものは自分だけと裸一貫、黒いこともやりながら町の名士にまでなった男は、惚れた女を自分の店の看板歌手として保持しようとする。女はオペラ歌手としての成功と惚れた男の間で揺れ動く。二転三転するドラマが終盤のサンフランシスコ大地震で一気にひっくり返る。今までのドラマはいったいなんだったんだと思うくらいにすべて無かったことに。大地震というのはそういうものなのですが、一つだけ繋がるエピソードが「神を信じるか」というテーマ。けっきょくコレを描きたかっただけなのかも。幼馴染の神父の助言も無視する無神論者が地震をきっかけに神を信じる。しかしたくさんの人が死に、恋敵まで死に、惚れた女が助かっていたことを知り、神の存在を意識するってのはちょっと自分本位にすぎないのではと思ってしまう。製作年からすれば地震のシーンはかなりの迫力があって、さすがはハリウッドと思いはしますし、神よりもなによりも音楽が幸せへの道筋を照らしていると個人的に思った各シーンは印象深いのですが、メッセージが説教くさく、なおかつその説教が強引すぎる。
[DVD(字幕)] 5点(2006-11-24 14:10:05)(良:1票)
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