101. 草原の輝き(1961)
カメラに映る情景がまぶしい程の青春映画。名匠エリア・カザンが従来のクラシックなドラマに新風を入れるという作風で、物語の序盤から終盤まで新鮮味溢れる演出を施している。中でもN・ウッドは体を張った熱演で、一際光っている。ここまで上手にまとめた脚本が巧いせいか、ホロ苦いラストが名シーンになっていると思う。ただW・ベイティが高校生には見えない。 10点(2002-03-08 18:01:40) |
102. ハドソン河のモスコー
名匠ポール・マザースキーによる共産主義国ソビエトからアメリカに亡命してきたサーカス団のサックス奏者の男が経験する寂しさや、新鮮な感覚といったものを温もり感溢れる映像で綴った素晴らしい映画。R・ウィリアムスが入魂の熱演で、こういった派手さのない喜劇でもいい味が出ている。田舎から出てきて都会で頑張る人はこれを観て、是非元気を出して欲しい。 9点(2002-03-08 10:49:03) |
103. サンセット大通り
ビリー・ワイルダーによるハリウッドの内幕ものですが、この映画は結構シリアスで、サスペンス色も加味されている。往年の栄光にすがる映画女優と、売れない脚本家と女優の家に仕える執事の奇妙な共同生活。印象深いオープニングから始まるフラッシュ・バックも見事な手法で、ワイルダーの映画にしては珍しく陰鬱な調子で映画が進められていく。お見事な残酷物語。 9点(2002-03-06 17:05:59) |
104. デリンジャー(1973)
本当に凄まじいまでのバイオレンス描写。ただこの映画、バイオレンスの潔さが無い。だからペキンパーのバイオレンスと凄く似てるんだけど、なんか大味に見えてくるんです。主役のジョン・デリンジャーを演じるのはW・オーツ。他の犯罪者の追従を許さない鬼のような銀行強盗を見事に演じ切っている。しかも感情移入をさせない、つまり悪役に徹した悪役。だが途中からFBI捜査官も悪役に見えてくるという演出の妙。現代じゃ作れない隠れた傑作だ。 8点(2002-03-05 17:56:48) |
105. ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ
「なるほど、こういう映画なのか」...これが鑑賞後の最初の感想。演技巧者エミリー・ワトソンの熱演はいつもながら凄いんだけど、姉のヒラリーを演じたレイチェル・グリフィスも圧倒的な存在感を示している。この手のノンフィクションものは、あと一歩のところで止めてしまうんだけれども、姉妹2人の内面の掘り下げ方が半端じゃない。一風変わった切り口をもってストーリーを進めていくのですが、ラストにこの物語の結論がしっかりと示されている。『音楽家ジャクリーヌ・デュ・プレはほんとうではないのです』と。とにかく一見の価値あり、お薦めです。 9点(2002-03-04 21:10:56) |
106. 背徳の囁き
まぁ随分と単純なキャラばかりによって成り立つ映画なんですが、それがR・ギアの存在感が大きいせいか、映画的にはそこそこ面白くなっている。A・ガルシアがR・ギアの思うツボのように操られていくわけなんですが、この構図が何とも上手に描かれていく。裏切りが裏切りを呼ぶダーティーなポリス・サスペンスの佳作だと思う。ですが少し脚本に修正点あり。 8点(2002-03-04 12:01:55) |
107. オーロラの彼方へ
タイムパラドックスを上手に利用した脚本がお見事としか言いようがなく、50年代の開放的なロックンロールに浸った親父を演じるD・クエイドの活躍も嬉しい。ファンタジーな作品ではあるが、それでいてサスペンスフルなテイストも上手に加味されている。この辺は作り手のセンスの良さかもしれない。爽やかな感動を生む、現代の寓話がここにある。 10点(2002-03-02 13:46:33) |
108. オーシャンズ11
ジュリア・ロバーツはミスキャストじゃない。マット・デイモンは役不足じゃない。私はそう思う。これだけのキャストを揃えて、この映画を作ったソダーバーグに一番責任がある。別にこの監督に肩入れしてるわけじゃないが、「エリン・ブロコビッチ」の時から、どうにも題材を壊してる気がしてた。「トラフィック」は彼にしかできないかもしれないが、この「オーシャンズ11」もソダーバーグが撮っても面白くならない。ここまで断言しておきましょう。これだけのキャストを揃えておいて、宝の持ち腐れ状態。笑いも中途半端で、お遊び映画にしても中途半端。金儲け映画にも見えない、中身が地味だから。いっそのこと11人からカジノの客すべてをセレブで埋め尽くして撮るか、地味なキャストを集めて、このストーリーを凝りに凝ったスタイルで映画化されば良かったのに。期待しちゃいけないよ、この映画は。 4点(2002-03-01 21:36:32) |
109. オスカー・ワイルド
残念ながら凡庸な作品のように思えた。確かに時代考証や役者陣は頑張ってるとは思うが、脚本が悪いせいか、あまりに表面的。奥行きや厚みといったものがない。各エピソードで随分と省略した面があって、説明が少ないのも気になった。ワイルドの初体験のエピソードからして強引だ。J・ロウが美しいだけに残念。 5点(2002-02-27 10:49:02) |
110. あの頃ペニー・レインと
適度な懐古主義で私はツボにハマった。フェイセズ、レッド・ツェッペリン、ザ・フー、ボブ・ディラン、ビーチボーイズ、ストーンズ、ビートルズ、エルトン・ジョン、クリーム、ジミ・ヘン、ブラック・サバス...あまりに有名なロック・アーティストたちがこのキラキラまぶしい70年代ロックンロールを支えていったと言っても過言ではない。もちろんプログレやパンクを否定するわけではない。だがそれ以前にロックの黄金期であると言われる60年代中期から72年にかけての素晴らしすぎるミュージック・シーンの余韻が残る1973年。主人公のウィリアム少年は記事を依頼された。だから彼に関わる人々は皆「ロックンロールは危機に瀕している」と言った。でもそんな危機に瀕していた時代が彼にとってはキラキラまぶしい時代であり、その輝きはいつまで経っても失われないという自己満足な面がある。私たちは当時のロック・カルチャーを自分に合ったカルチャーに置き換え、自分が一番印象強く残っている時代を思い出せばいいのです。そして忘れていた気持ちを取り戻そう。そうすれば「ロウソクの向こう側に“未来”が見える」のです。 10点(2002-02-25 18:41:36)(良:1票) |
111. ハート・オブ・ウーマン
この映画、ラブ・コメのプロセスはたどれていないと思う。2人の争いや葛藤が無さ過ぎて男女の駆け引きってものが無い。あまりに上手く行き過ぎて、広告マン同士の恋愛だけじゃなく、親子愛や同僚とのエピソードに比重をかけざるをえなくなった。脚本を直そうと思えば、こういった点が修正点に挙がる。でもこの物語の宿命だから仕方がない。ですがそんなことを吹っ飛ばすかのようなコミカルさで乗り切ってしまう。これこそハリウッドの懐の深さなのだと思う。ただ私はM・トメイの方が好きだ(←だからどうした)。 7点(2002-02-25 11:53:53) |
112. ベルベット・ゴールドマイン
期待してたんですけど、なんかイマイチでしたね。ボウイもイギーも、明らかにモデルにしてるのに実名を出さなかったという点で一番イタい。それからあまり主体性の無い演出、ストーリー展開だったために“再現映画”という印象を強く受けた。C・ベール演じる雑誌記者が1984年の設定なのだから、この辺を上手く使えば良かったのに。 6点(2002-02-25 11:48:40) |
113. Tommy/トミー
まぁ中身はあって無いような映画と言われれば、それは否定できないのですが、70年代という刺激的な時代だからこそ成し得た「体感映画」。ザ・フーのロック・オペラをイギリス映画界の鬼才ケン・ラッセルが映画化するということで、当時話題になった作品とのことだが、私は当時を生きていないのでよく分からない。でも、60年代後半から70年代にかけてのサイケデリックなムードや、ロックンロールに興味のある方は必見の作品と言えるだろう。今となっては偉大な存在になりすぎて、若年層に「彼はロック・ミュージシャンだった」と言っても信じてもらえないが、「キャプテン・ファンタスティック」でビルボード史上初めて初登場第1位を飾るなど正に神がかり的な活動を続けノリに乗っていたエルトン・ジョンが“ピンボールの魔術師”として出演しているほか、ハードロックの先駆者的存在であるクリームで活動し、今やブルース界の大物となったエリック・クラプトンが“モンロー教の教祖”として出演している。その他にも“麻薬の女王”としてティナ・ターナーが出演して、より退廃的なロックのムードを高揚する。全編ザ・フーの楽曲を主体にして物語を進めていくが、最終的にはメッセージ性の強い終わり方になっていて正しく芸術である。まだ感じていない人は、早めに感じておこう。もちろん万人受けする作品だとは思わないが。 10点(2002-02-23 21:05:36)(良:1票) |
114. ミッドナイト・エクスプレス(1978)
自業自得としか言いようがない男が主人公。映画としては一流の出来、だが残念ながら好きな映画とは言えないし、やや一方的な描き方も好きになれない。だが終始スリリングな展開で見せていく演出は秀逸そのもので、心臓の鼓動を応用させた手法も巧い。観終った後は、ドンヨリとした重さが残るが、爽快感に欠けるのが残念。それは演出がまずかったのではなくて、単に主人公が自業自得だと思えてしまう私に問題があるからなのだろう。アラン・パーカーのベストワークと言える出色の出来ではないだろうか? 8点(2002-02-23 12:00:37) |
115. WASABI
まぁ製作発表段階で「やめれば?」って言われる企画ですから、さして期待はしてませんでしたが、失笑の連続って感じでしたね。終始拭いきれない微妙なジャパニーズ・カルチャーのズレと、2人が親子である設定の違和感。リュック・ベッソンの趣味なんでしょうか、こういうことやるのは。映画の出来は三流ですが、この映画にお付き合いしたJ・レノは偉い。ヒロスエはキャリアアップになった......かな? 3点(2002-02-22 18:39:25) |
116. 偶然の恋人
あまりに評判は良くないようですが、良いですよ、これは。決して悪くない。派手さもなく、キャスティング的にも“華”が無いと言われそうですが、登場人物自体が“華”なんてありませんから、ある意味賢いキャスティングだと私は思いますけどね。実際にアル中だったって説があるくらいで、B・アフレックの依存症の姿には妙な説得力が(笑)。抑制が効いていて、それとは反面に恋愛映画としてのツボはしっかり押さえています。最近の恋愛映画の中では、スパイスが効いていてお薦めです。 8点(2002-02-21 12:45:21) |
117. ワイルド・アット・ハート
鬼才デビッド・リンチが描く少し病的な世界観。キレまくった映像センスにスタイルはこの映画で正しく爆発している。ニコラス・ケージも、ローラ・ダーンもキレっぷりのいい演技でたいへんよろしい。難を言えば、中盤が少しだけ退屈か。 8点(2002-02-19 16:24:57) |
118. 郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942)
世界の名匠ルキノ・ビスコンティの驚くべきデビュー作。もはや60年前の作品ということもあり、フィルムの状態がかなり悪いが、それを抜きにして考えると半端じゃない勢いをもった作品であり、信じられないほどよく出来た作品である。これがデビュー作とはまったくの驚きである。J・ニコルソンのリメーク作も決して悪くはないのだが、芝居に頼りすぎたリメークよりも、しっかりとした主体性を持つ演出がある本作の方が素晴らしい。 10点(2002-02-18 22:35:24) |
119. 事件を追え
全然期待してなかったせいか、妙に味のあるミステリー・サスペンスといった趣きで面白かった。脚本も良くて、さり気ない演出にも余裕が感じられる。K・マクギリスの美貌も健在(←失礼!)。登場人物が一人一人、しっかりとキャラクターが出来ていて、いい味を出していると思う。強いて言えば、悪役が弱いかな(?)。いかんせん地味過ぎるため、陽の目を浴びることのない作品だとは思う。 8点(2002-02-18 14:35:22) |
120. 17歳のカルテ
私は彼女たちのように深刻な悩みを抱えずに生きてきた。細かい心理状態のことは分からない。だがこの映画は少しラストが安直なように思えた。問題はもっと根深くて、深刻なような気がする。物語の終わらせ方はこれでいいと思うけど、今一つ説得力が無い。引き合いに出される名作「カッコーの巣の上で」は越えていないと思う。だが駄作では決してない。 6点(2002-02-16 11:49:40) |