1241. 大襲撃(1964)
オーディ・マーフィ演じる大尉と先住民との戦いから物語は始まるのですが、一応、先住民は「話せばわかる」という存在として描かれており、それに対し白人どもがあれこれ理不尽な事をするもんで、事態は紛糾し、ついに両者の激しい戦いに至る、という訳で、それなりに、先住民寄りの立場で描かれていると言えなくもないのですが、それもあくまで白人側の目を通したものであるところが、時代の限界と言えば限界なんでしょうかね。 族長の息子に英語をしゃべらせたり、先住民の血を引くヒロインを登場させたりして、主人公の目を先住民の方に向かわせていくのですが、どうもなんだか、作品全体を通じ、先住民に対する視線が、動物愛護におけるそれと同じもののように思えて。 たぶん、反捕鯨団体の人々からみたら、日本って、この映画の「悪い白人」と同類のように見なされてるんじゃなかろうか。 悪人どもは、自らの欲望のために先住民の居留地を荒らし、そのためには姑息な手段もいとわない。主人公は正義感に燃え、正義感さえあれば先住民とも心が通じあい、場合によっちゃあ彼らは簡単に折れてくれる。 このいかにも表面的な後味の良さが、かえって後味悪く思えるんですよね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-01-07 11:00:16) |
1242. パトリオット・デイ
無差別爆弾テロは、そこにたまたま居合わせた人々の運命を大きく狂わせる。という事を端的に表すかのごとく、映画は断片の寄せ集めとして描かれ、それらの断片が集積され互いに繋がっていくことで、大きな事件の全貌が浮かび上がってきます。その手腕、実にお見事。圧巻です。 断片であるがゆえに、この先どうなっていくのかわからない不安感、緊迫感があり、またその断片が意外な形で繋がった時、運命のようなものを感じさせたりもします。 一方、事件の背景とか捜査のやり方とか、おそらくは映画で触れにくい部分ってのが多々あって、(我々の意識がそちらに向かないように)ラストは無理やり方向付けされた印象もありますが、当事者のナマの声ってのはやっぱり感動するものがあって、いや、だから、それだったら別途もう一本、ドキュメンタリ作ってよ、と。。。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2018-01-03 10:07:40) |
1243. ラ・ブーム2
前作から成長したソフィー・マルソーを清純なうちに(脱ぎまくる前に)撮っておこう、という意図なのかどうなのか、でもきっとそうなんでしょう、親が子供の成長を記録しておこうとするみたいな続編。それだけのために映画を撮るか?それもまた良し。 でもまあ、実際、さらに中身が無くなった感じは否めませんわな。どこか虚無感のあった(ある意味コワい)前作のラスト、ああいうのも無いし、要するにこれで打ち止め、3作目は作りませんよ、ってことでしょうか。無難な内容。 勿論、本作までのソフィー・マルソーが清純である、ってのが、もうすでに「映画のウソ」なんですけどね、きっと。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-02 12:48:45) |
1244. フェイク
実話もの。という訳で、そりゃま、潜入捜査官って大変だなあ、とは観てて思うのですが、それだけだったら、ドキュメンタリの方がいい、ってことになっちゃう。 この作品、別に、ミスキャストという訳ではなくって、むしろ、役にあった俳優が起用されてるような気はするのですが、ハマリ過ぎてるというか、ドラマを作り出すような意外性が無い。時には苦悩を示したり、いらだちを示したりもするけれど、ジョニー・デップは最初から器用そうだし。例によってアル・パチーノは最初からダメ親父で、マフィアらしいコワさをまるで見せないし。意外な一面、というものを見せないから、変化も乏しいし、二人の関係というものも、ストーリーを追えばそりゃ深まって行ってることになるんだろうけど、もうひとつそれを感じさせるものがない。 マイケル・マドセンはさすがに不気味さをもっているけれど、それを出し切れず肩透かしなのは、「実話」優先の弊害なのか、何なのか。 変化が乏しく、その分、妙に俳優たちが余裕を感じさせる中で、余裕なくひとり頑張るアン・ヘッシュが、かえって浮いてしまうのが皮肉。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-01-02 12:33:21) |
1245. グランド・マスター
冒頭、雨の中、水浸しのアクションがあって、この時点で「えー、いまだにマトリックスみたいなコトやってるの~」と、少々ゲンナリしてしまいました。 一応、映画の題材として「カンフー」ってのがあって、「カンフー」なら、人間と人間との対決というものが描かれることを期待するのですが、本作、驚いたことに、対話シーンですら、人と人が向き合わない。普通の映画なら、対話シーンではしばしば、話し手がこちらを向いていると、聞き手は手前に後姿として配置されてたりすると思うのですが、本作では話し手だけのショットが繋がれていって、まるで人と人が向き合わない。 小津映画みたいな独特のリズムがある訳でもなく、その不思議な演出を受け入れてしまっている自分への驚きがある訳でもない。 単に向き合わない、というのが、こんなに退屈なのか、という驚きは、少し感じましたけどね。あまり好きになれません。 とか言いつつ、よりによってトニー・レオンが、まるで似つかわしくない「達人」を演じている、ってのが一番受け入れがたい点だったりして。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-02 11:51:39) |
1246. バーニング・オーシャン
実話ってのに、弱いのよね~~~。 とか言いたくなるのも大抵は、映画化に向けうまくアレンジしている場合であって、事実というものにあまり縛られると、映画は苦しくなってきます。本作も、こんな事故がありました、脱出しました、あ、言い忘れてたけど11人も亡くなったんです、という大枠に縛られてしまって。その制約内で、確かに凄まじい作品に仕上げてきているのですが、反面、観ている間スペクタクルシーンを待ち焦がれている不謹慎な自分に、居心地の悪さを感じたり。 人間があまり描けていない、という批判、まー実際そうなんだから仕方がない。いやこれだって、実話という制約内で、何とか登場人物を印象付け、何とかドラマを作ろうとしているのですが・・・こういう路線で行くんだったらいっそ、「メカ」をもっと描けばいいのにね。などと思うのは、これは個人的な好みかも知れませんが。ディープウォーター・ホライゾンという、メカに埋め尽くされた、独特の舞台。到着したマーク・ウォールバーグがあちこちに顔を出して、他の登場人物たちを我々に紹介していく形になるのだけど、それと同じくらい、この「メカ」たちを、我々に紹介してくれればいいのにな、ってなことを思いました。 圧倒的な機械群が、圧倒的に破壊され、作業員たちに圧倒的に襲い掛かってくる恐怖。それをもっと、描いて欲しかったなあ。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-01-02 11:27:18) |
1247. 普通の人々
テレビ放送で初めて観たのが、中学生の頃だったか高校生だったか。激安のドンパチ映画がすべてだと思っていた私にとって、このあまりに地味なタイトルは、これは一度は乗り越えなければならない修験道だとも思えたのですが。 観てみりゃ別に退屈な映画でも何でもなくって、何だかむしろ、身につまされる。私も不器用な方で、上のきょうだいと比べられるのがイヤで、それでも何とか親に気に入られようとして、うまくいかなくて、ちょうどこの頃、母親とギクシャクしたりしてて。 そんでもって、この結末、ですから。 今になってみるとそれなりに、すべてが懐かしくもあり(沖田艦長じゃないけど)、でも、他人から理解されないもどかしさ、ってのは、この歳になっても逃れられないんだよなーとも思ったり。 それはともかく、本作。タイトルとは裏腹に、「普通の映画」という訳ではなくって、少々いびつな印象があります。作中では人物同士の「対話」に主眼が置かれていて、「行動」の描写が奇妙なほどに抑えられています。例えば、ティモシー・ハットン演じる次男が、何度かセラピストの元を訪れますが、診療所に向かうシーンってのは殆ど無くって、多くの場合いきなり、二人が対話するシーンへと場面が飛びます。だからこそ、次男が家を飛び出して走り出すクライマックスが、とりわけ印象的にもなるのですが。 そうやって、さまざまな形での「対話」が描かれ続ける。ちょっとやり過ぎかも知れない。「対話」以外の描写が希薄なもんで、おそらくは主人公にとって重要な存在なのであろう、「カレン」という女性の存在が、観てる我々にとってもうひとつピンとこない、などという事態も招いていたり。 そういったことも含めて、決して「普通」ではない、風変わりな映画だと思ってます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-12-10 20:08:25) |
1248. 襲われた幌馬車
《ネタバレ》 冒頭、リチャード・ウィドマーク演じる主人公が誰やらと戦っているところから始まって、保安官にとっ捕まる。護送中、幌馬車と遭遇し、彼らと同行することになって・・・という訳ですが、果たして悪人なのかどうなのか、ふてぶてしい態度をとり続ける主人公の姿が、ウィドマークならでは、といった感じ。 というより、最初の方はかなり冷血漢っぽく描かれているんですが、にも関わらず。 登場人物たちの一部には当然のごとく白い眼で見られてるんですが、その一方で最初から彼に対し妙に同情的な人たちもいて。このシンパシーについての何らかの動機付けが作中で描かれているなら、納得もいくんですけど、あまりにアプリオリ。そんでもって。彼に反感を持つ人たちとの対立を描きつつ、例によって例のごとく、ちょっとした事件が挿入され、だんだんわだかまりが解けていく、という親切設計。「よくできた話」だとは思うけど、機械的な感じもいたします。 とどめはラストで、言い訳全開、蛇足中の蛇足。何の物的証拠もない主人公の証言だけで、ここまで全員が主人公になびくか、と。 という訳で、何だかチャッカリしたストーリーだなーと思うのですが、今だったらこんな脚本書く人はいないだろう、と思えば、これも時代なのかな、と。一種のおおらかさ。 とりあえず、ロングショットをまじえたダイナミックなアクションは、堪能できます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-10 07:37:39) |
1249. プリズナーズ
娘を誘拐された父親が、「コイツが絶対犯人だ」と思い込み(なのかどうかは観てのお楽しみ)、ある青年を追い詰め、監禁し・・・。というオハナシで、父親の行動はもちろん合理的なものではないけれど、やり場のない怒りがその矛先を求めて暴走する有様が、圧巻です。で、そこに何やら意味ありげな宗教めいたニオイも漂わせ、人間の「原罪」をあぶりだそうとでもするようなアプローチが、本作をやや胡散臭いものにしていて、その一方で、しっかりと「ミステリ作品」にしてしまおうという妙なオモシロサが、さらに胡散臭さを倍増させています。 何だかなあ。面白くて、胡散臭い。 しかも最後まで観ると、コレ、意外に「原罪」とも関係無かったのかしらん、と、ちょっと呆気にとられる部分もあって。何じゃコレ、と思いつつ、それでも作品としてまとめ切ったのは、父親役のヒュー・ジャックマンよりも、最後まで飄々といい味出し切ったジェイク・ギレンホールの貢献が大きいのではないでしょうか。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2017-12-09 08:01:07) |
1250. 魔法使いの弟子
たまたまタイトルが「魔法使いの弟子」というだけで、あの「魔法使いの弟子」とは関係ないんだろう、と思ってたら、中盤で例の魔法で掃除するエピソードを無理やり挿入してくる、厚かましくも楽しい構成。あー、だったらこの映画の原作は、かの「ゲーテ」ってことになるのかな。いやまさか。 いっそのこと、昨今流行りのお掃除ロボット、アイツらが人間に襲いかかるパニック映画ってのを、誰か作ってくれないかしらん。 それはともかく本作、肩の凝らない、自己主張のない、ウェルメイドな、印象にも残らない、ほどほどの作品になっております。が、魔法ってのはやっぱり楽しくって、それをポイとCGで投げ売りのように見せてくれると、随所でそれがちょっとしたアクセントになって、結構楽しめたりします。 100円ショップであれこれ買いあさるプチ贅沢みたいな楽しさですかね。たとえが安すぎますが。 薄汚いオッサン同士の争いを「魔法使いの戦い」だと言い張るこの厚かましさも、素敵じゃないですか。そして、そういう役にぴったりとハマってしまうニコラス・ケイジ。彼こそ100年に一人の逸材といっても過言ではないでしょう。いやまさか。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2017-12-02 16:55:38)(良:1票) |
1251. 座頭市果し状
《ネタバレ》 いつも通りの量産型大映時代劇(これは決して悪い意味ではないのです)の雰囲気ではありますが、志村喬がいて、待田京介とか、それこそ小松方正なんかもいたりするゴチャマゼ感、多彩な顔触れが楽しいところ。 座頭市が志村喬演じる医者と一緒に居てるんだなーと思ってたら、今回の敵の一味には手裏剣や銃といった飛び道具を使うヤツがいて、そんな奴らを相手にしてはさすがの座頭市も危ういのではないかと思っていたら案の定、銃で撃たれて深手を負ってしまう。ああ、だからそもそも志村喬が医者役だったんだな、と妙に納得。だけどここで、待ってましたとばかり志村喬が治療する場面になる訳ではなく、あえてその前に、座頭市が自分の刀で自ら弾丸を摘出するシーンを入れてくるのが、意表をついているというか、ちょっとした変化になっていて、上手いんですねえ。 中盤、勝新が、手元を見ずにお猪口に酒をピタリと注いでみせる、こういうでの場面のスゴミが、盲人である座頭市が飛び道具を操る一味と互角に渡り合うスゴミや得体の知れなさとも繋がり、そしてクライマックスにおいて血塗れのまま敵地に向かう座頭市の姿の凄まじさにも繋がっていく。そこで展開される殺陣もこれまた凄まじく、まさに大殺戮。東映の任侠映画みたいでもあり、こういう点でもゴチャマゼ感覚があり、いや、楽しいではないですか。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-12-02 16:16:53) |
1252. ラ・ブーム
こういう何の変哲もない映画が、なぜか国内外で大ヒットしてしまう。世の中何が起こるかわからないもの。主演にソフィー・マルソーが起用されてなかったら、知られざる無数の映画の一本となっていたのでしょうが。 私などはソフィー・マルソーと石野真子の区別もつかないので(ウソ)、あの当時のラ・ブーム・ブームというのは(そういう言い方あるのかどうか)ピンとこなかったんですが、そういえば、親父役のヒトと芦屋小雁の区別もつかないんです(ウソ?)。 物語も何だか有るような無いような、印象としてはソフィー・マルソーの恋愛モドキが映画の2~3割、両親の浮気騒動が4~5割といった感じ。足しても10割になってませんね、ははは。 ところどころ場面が省略される面白さがあって、例えば、ソフィー・マルソーが親父と車に乗った筈の場面、次のシーンで彼女の横で車を運転しているのがバアサンだったりする。 だけど全体的にはテンポがいい訳でもなく、むしろやや長いかなあ、と。このダラダラ感が、「青春」というものなのかも知れませんが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-11-26 09:23:52) |
1253. プリデスティネーション
時間旅行ネタの合わせ技一本。よくもまあ、こういうこと考えるねえ、と感心しつつも・・・。 一人の人物が、物語の進行に伴い男性に見えたり女性に見えたりする、まるでだまし絵のような面白さがあるのですが、それだったらいっそ、時系列が入り乱れる中で、各場面そのものが物語の進行によって様々な意味を孕むような、映画自体がだまし絵の構成になってたら、さぞかし面白くなってただろうに、などと思ってしまいます。だけどなかなかそうはいかない。物語を複雑にしてしまった分、構成までも複雑にするわけにいかず、なるべくわかりやすく物語を提示しようとしてしまう制約。だもんで、段取りよく背景が解き明かされてゆき、多分そうなるだろう、ああやっぱりそうなるね、といった感じの繰り返し。意外な物語であるハズなのに、意外なほど、意外性が無いのです。 一本の映画に仕上げるにあたって、物語を「膨らませた」というより「引き延ばした」印象を受けてしまう、というのも、いただけません。冒頭、バーで二人が会話を交わす場面なども、物語の単なる助走部分に過ぎないような空疎な感じがしてしまって。 劇中何度も、タバコとその煙が登場するのが、危ういバランスの上に成立しているこの物語の不安を象徴しているようでもありますが・・・。 [DVD(字幕)] 6点(2017-11-26 08:49:44) |
1254. 何がジェーンに起ったか?
「二大女優競演!」ともなると、此処までやらにゃいかんのだ、という悪しき前例を作ってしまった映画、とも思えるのですが、もうとにかくこれが、コワくてイヤらしくてエゲツないんです。 ベティ・デイヴィスの特殊メイク顔(??)も十分にコワいんですけど、物事の裏側を浮き彫りにして不穏な空気を演出するローアングルのカメラが、これまたコワくてイヤらしくてエゲツない。 ラスト、どこまで引っ張るのだろうと思っていると、「かつて何がジェーンに起きたのか」「そして今ジェーンに何が起きているのか」というところに繋がって行って、実は意味深なタイトルであったのだなあ、と。 それにしても、残酷描写に頼らなくったってこれだけ怖い映画を作ることはできるのであって、昨今の映画は残酷描写に頼り過ぎなのでは、とも思えてくるのですが、これもまあ、時代の流れというか、いったんソチラに踏み込んでしまうと簡単には戻れない訳で、致し方ない面もあるのかなあ、などと思いつつ。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-21 08:20:44)(良:1票) |
1255. シャロンの屠殺者
冒頭、「三人組」が登場して、さらにこの「三人組」と先住民と騎兵隊、という三つ巴の関係がある。さらには、「三人組」のひとりである主人公が大佐の妻に手を出して三角関係が展開されて。 それがどうした、と言われればそうなんだけど、これらの「三」の関係が物語を支えるモチーフになってて、こういう統一感があるかないかで、納得感も大きく変わってくるもんです。先住民との戦い、上官との対立、許されぬ恋、こういった要素が見事にまとめられ、どこか運命的なものも感じさせる。物語は最後、それなりに収まるところに収まるかも知れないけれど、その一方で冒頭の「三人組」はバラバラの運命を辿っていく、というところに、一筋縄でいかないものがあります。 そんでもって、クライマックスの戦闘シーンのスゴいこと。砦の門ごしに見える激しい戦い、立体感を伴った迫力が漲っています。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-19 08:04:43) |
1256. トランス・ミッション
デンマーク産の安そうな映画ですが、これがまた、何だかやけに面白い。世の中、どこにアタリが潜んでいるか、わからんもんです。 ストリップのバイトをしてる娘のもとに、親父から届いた郵便物。封を切ってみると中には、名画「黒い聖母」が。親父の一味が盗み出した上、仲間を裏切り親父はトンズラ、絵の隠し場所として娘のところに送ってきたらしい。一方、親父はマフィアにとっ捕まり、絵画を渡すことを要求される。かくして、マフィアのもとに絵を運ぶ娘、なぜかそれについてきてしまう休職刑事の珍道中が始まる。絵を取り戻そうと彼らを追いかける親父の元仲間に、さらにはマフィアが送り出す刺客も現れて。 何と言っても、主人公であるこの娘、無鉄砲で飄々としているのがいいんですね。突拍子もない行動を繰り返し、映画の辻褄なんて何のその。彼女が物語をハチャメチャにかき回せば、あり得ないような事も平気で起こり、同行する刑事も我々も、振り回され続ける、この楽しさ。 ちゃんとハラハラさせてくれて、でもあくまで陽気にブッ飛んでる。登場人物それぞれが個性的で魅力的。ラストのオチも気が利いてて、大いに楽しませていただきました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-18 08:47:12) |
1257. カンニング・モンキー/天中拳
とてつもなくバカバカしい内容、ってのは座頭市やポパイのパロディを見てもわかる通りですが、とにかくジャッキーが弱い。フザケてばかりで、ひたすら弱い。なのにラストでは、奥義書をナナメ読みしながら戦い、強くなっちゃう。何だか、空手を「通信教育」でやってた、という岡八郎の往年のギャグを思い出しますが。 そんでもって、オハナシはとにかくデタラメで、もう何がいいたいのやら何を描きたいのかサッパリ、なんですが、中盤、とっ散らかすように登場させまくったキャラたちが、クライマックスでは何故だかちゃんとそろい踏みしていて、何故だかちゃんとスピーディなアクションを繰り広げてみせてくれる。なんと強引な。でもこういう「一見存在しないかと思われた起承転結が、実はちゃんと存在している」ってのは、いいもんです。 それにしても、実にデタラメですが。 [地上波(吹替)] 7点(2017-11-07 22:45:03) |
1258. ヘラクレス(2014)
ヘラクラスが本当は人間なんだとか、プロレスラーだって生身の人間なんだとか、それ「だけ」が言いたいんだったら、もうどうでもいい訳で。 それを踏まえた上で、その先に何があるのか、あるいは何もない、ありきたりな陰謀劇しかないのか。 肉体美以外にたいして魅力の無いヘラクレスに、これまた魅力の無い仲間たち。 大勢の軍隊をそれなりにロングショットで捉えるのは、それなりにスペクタル感を出そうとしているのだろうけれど、いざ戦闘が始まれば、これまたありきたりなゴチャゴチャした乱闘シーンが、判で押したように繰り返される。 退屈でした。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2017-11-04 14:10:55) |
1259. 下宿人(1926)
《ネタバレ》 連続殺人鬼を扱った一種のサイコ・スリラー。ロンドンに現れた、「アヴェンジャー」を名乗る謎の殺人鬼。被害者は決まって、金髪の女性。と来りゃ、その後のヒッチコックを知る我々にしてみればコレ、犯人はきっと、監督さん自身じゃないの~と思っちゃうのですが。いや実際、きっとそうだと思う。 ともかく本作、サスペンス映画という、物語性の強い作品でありながら、多くの場面で字幕セリフの使用が抑制されていて、しっかりと「見せる」映画になってます。冒頭、女性が悲鳴を上げる顔に始まり、次にはもう死体となっている、という断片的な怪しさ(この描写は中盤でも繰り返される)。そこに現れる、謎の下宿人。その挙動を事細かに描く怪しさ。殺人鬼の正体は果たして彼なのか? 二階を歩き回る姿を、床を透かして階下から眺める、なんていう有名なシーンを始めとした、二重露出のもたらす怪しさ。 まあでも、一番アヤシイのは、クライマックスで主人公が群衆に追い詰められる場面ですかね。この場面、正直、なーんか変です(笑)。しかしここも、セリフを挟むことなく、主人公をいたぶるように、いくつものショットを執拗に連ねていく。 で、唐突に大団円。え~うそ~、まさか、そのまま終わっちゃうの~と思っちゃう我々は、昨今のヘンな映画に毒されてしまってるのかどうなのか。当然のように期待してしまうのは、「事件を通じて、殺人への衝動に目覚めてしまった主人公」というラストなんですが、ねえ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-11-03 03:13:26) |
1260. ジョン・ウィック
だいぶ「総合格闘技」からヘンな影響を受けてしまった感のあるアクションですが、それが何とも小気味よいというのも事実。昨今、格闘シーンが細切れで撮影されることへのアテツケなのか何なのか、異常なまでに長回しの格闘シーンが映画に取り入れられることがあり、観てるとこちらも緊張してしまうというか、やらされてる俳優さんが気の毒になってくるというか、あまりやり過ぎるとかえって、自己目的化した「長回し」そのものが気になってしまいかねません。その点、本作は、いいバランス保ってるんじゃないでしょうか。高度な身体アクションを見せるためにこそ存在する、見事な長回し。ホントにキアヌ・リーブスが強そうに見えるではないですか。 本作、復讐譚の体裁をとっているのですが、「飼い犬が殺されたこと」がキッカケになっている、というのが何とも思い切った設定。これも場合によっちゃ「そんな大袈裟な」と言われかねないところですが、まずそれ以前にこの映画を支配する雰囲気を見れば、実は「キッカケ」なんていうのはどうでもいいんだなあ、と(愛犬家にとっては、どうでもよくないかも知れませんが)。むしろ、これがあくまで「キッカケ」に過ぎないからこそ、主人公が闇と暴力の世界へと向かって行く流れも、より強く、より避けがたいものとなる・・・。 [CS・衛星(吹替)] 8点(2017-10-29 15:27:48) |