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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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121.  トラック野郎 望郷一番星 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。かなり久しぶりに(約3年ぶり)このシリーズ見たけど、やっぱり面白かったし、相変わらず惚れっぽくてバカで単純な、そして熱い桃さん(菅原文太)がとにかく魅力的で、やっぱり毎回思うけど見ていて惚れる。今回は3作目ということもあってか、桃さんの故郷の話が語られたりしてこのあたりから本格的に長期シリーズ化を意識しているみたい。その桃さんが過去のトラウマから馬が嫌いになった話も語られているが、それは北海道へ向かうカーフェリーの中で出会った今回のマドンナ(島田陽子)が牧場の経営者と知るやあっさり克服し、逆に馬について調べはじめるのはいかにも桃さんらしくて笑える。薬殺されそうな生まれたばかりの病気の仔馬に一晩中寄り添って治してしまうのはよく考えたら無茶苦茶なんだけど、桃さんの優しさを感じずにはいられないし、惚れたマドンナが自分ではなく獣医の男と結婚することが分かっても「おめでとうございます。」と潔く引き下がるのも、まさしく男らしくカッコいい。このシリーズは「男はつらいよ」シリーズを意識している部分も多くあるのだが、見ていて寅さんにゲスト出演する菅原文太というのを見たかったとつい思えてしまう。それだけでなく、トラック野郎たちの友情というか、きずなというか、そういったものもちゃんと描かれているのもこのシリーズのいいところで、今回、ライバルとして登場する北海道のトラック野郎であるカムチャッカ(梅宮辰夫)が、桃さんと市場まで桃さんとトラックで競走したり、誤解から二人が殴り合いの対決をするなどを経て、最後には仲間になるのも前回のボルサリーノ2(田中邦衛)のときもそうだったが、単なる勧善懲悪ではなく、お互いを認め合うことの大切さをきっちりと描いていて良い。(冒頭の広島で警官(室田日出男、川谷拓三)に問い詰められるトラック仲間(分かるかな?分かんねえだろうなあ。)を無線を使って助けるのもなんかいい。)だまされて金を持ち逃げされたジョナサン(愛川欽也)がトラックを売ると言い出すのもジョナサンの男気を感じる。今回、桃さんがクライマックスのトラック激走で同乗するのは40トンの魚。途中の山道で細いつり橋を大型トラックで渡るシーンは本当にアクション映画の一場面のようでハラハラすることができ、これまで見た激走シーンの中でももっとも見ものだ。都はるみが本人役で出演しているが、その前に都はるみファンのトラック野郎・宮城県(吉川団十郎)が事故死するシーンが描かれていたためか、登場シーンにとくに違和感は感じなかった。その宮城県の事故のシーンはイブ・モンタン主演の「恐怖の報酬」のラストを思い起こさせるもので、きっと鈴木則文監督は映画が大好きなのだろうと思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2018-05-26 18:25:32)(良:1票)
122.  しゃべれども しゃべれども 《ネタバレ》 
一人の若手落語家(国分太一)を主人公にした平山秀幸監督の映画。以前から気にはなっていたがなかなか食指が動かず、今になってようやく見たのだが、いかにも日本映画らしい雰囲気のよく出た映画になっていて、それに落語という題材がうまく合っていて生かされていてまさにこれぞ日本映画にしか出来ない映画といえる映画になっていて素直に面白かった。主人公である三つ葉(本名:外山達也)はなかなか真打に上がれないでいるが、それでも落語が好きで決してあきらめようとはしない姿勢が、見ていてつい応援したくなるし、彼の開いた落語教室に集まってくる三人がそれぞれ他人との会話が苦手な女性や、しゃべりが下手な野球解説者などコンプレックスを抱え、この三人と三つ葉の関りもちゃんとドラマとして面白くできていて、見始めてすぐは三つ葉が真打になるまでの話かと思っていたのだが、そうではなく三つ葉を含めた四人が自分のコンプレックスとそれぞれに向き合い、互いに一歩踏み出すまでが描かれていて、本作のテーマは落語そのものよりも他人との関り、自分の思いを伝えることの大切さ、これにあるのだと感じることができ、そうしたらとてもこの四人がとても身近な存在に思えてきた。三つ葉の元にやってくる三人の中でも、関西から引っ越してきた阪神ファンの少年がとくに良い味を出していて、この少年は本作の中でも特に印象に残った。その他の出演者でいうとやっぱり三つ葉の祖母を演じる八千草薫がなんともチャーミングで、落語の演目をつぶやきながら玄関先を掃いたりしている姿がなんとも言えないし、思わずこういうおばあちゃん、良いなあと感じさせてくれるのが嬉しい。落語が題材の映画とあって劇中に落語が披露されるシーンが多いのだが、三つ葉の師匠を演じる伊東四朗も、独演会における国分太一演じる三つ葉の落語も本当に自然な感じで、今まで一回もライブで落語を聞いたことがないのだが、思わずライブで落語を聞いてみたい、そんな気持ちになれたのも嬉しかった。物語としては、さっきも書いたように四人それぞれが一歩踏み出たところで終わっていて、明快にそれぞれの問題が解決したというところまでは描いていないが、それが逆に良かったし、この後のそれぞれの人生を想像してみるのも楽しい。なんだか見終わって久々に気持ちの良い映画を見た気がしたし、見て本当に良かった。平山監督は大作映画も手掛けているが、それよりもこういう地に足のついた映画のほうが持ち味が出ているように感じる。
[DVD(邦画)] 8点(2018-05-05 21:58:15)(良:1票)
123.  江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 《ネタバレ》 
石井輝男監督の映画は「網走番外地」シリーズを中心に10本以上見ているが、今まで石井監督の手掛けたカルト映画を見る機会がなかった。(初めて石井監督の名前を聞いたのがカルト映画の有名な監督としてだったにも関わらず。)この映画で初めて石井監督のカルト映画を見たことになるのだが、冒頭の精神病院のシーンからもう怪しさ満点ですぐに引き込まれた。主人公(吉田輝雄)が精神病院を抜け出してからの前半のストーリーだけを見ればミステリーによくある展開で、この部分はそこまで過激かなあと思いながら見ていたら、後半の島が舞台になるあたりから雰囲気がやばめになり、その後はこれぞカルト映画という展開で目が離せなくなった。とにかく孤島で奇形人間を作り出した主人公の父親(土方巽)の完全にイってしまっているキャラが強烈でインパクトがあり、彼が作り出した奇形人間という発想自体が衝撃的で、冒頭の精神病院のシーンを含めていろいろ狂っているとしか言えない映画だ。(もちろん誉め言葉。)江戸川乱歩の複数の小説をミックスさせて書いた脚本らしいが、今まで見た乱歩原作の映画がどれもカルト映画的だったのである程度予想していたのだが、これは想像以上で、石井監督のカルト監督としてのすごさはコレ一本見ただけでじゅうぶんすぎるほど理解できるし、実際、すごく面白かった。(しかし、他人に薦めようとはぜんぜん思わないし、今までソフト化してなかったのも納得できる。)それに石井監督の「網走番外地」シリーズをすべて見終わってすぐに見たせいか、監督の両方の側面を期間を置かずに見られたのは良かったと思う。回想シーンでカニを踊り食いするシーンもなかなか衝撃的だった。ラストの花火のシーンは悲しいシーンなのに笑えるとのうわさを聞いていたのだが、見た直後は笑わなかったものの後からなぜか笑いがこみ上げてきた。明智小五郎も登場しているが、演じているのが井上梅次監督の「黒蜥蜴」と同じ大木実なのはちょっと嬉しい。7点にしようか迷ったが、やっぱり初めて見た石井監督のカルト映画ということで敬意を表して8点を。DVD化ありがとう。
[DVD(邦画)] 8点(2018-02-25 01:45:53)(良:2票)
124.  short cut<TVM> 《ネタバレ》 
溝口健二監督や相米慎二監督など長回しを多用することで有名な監督はたくさんいるが、なんと三谷幸喜監督によるこの作品は始めから終わりまでの112分間一切カメラが止まることなくすべてをワンカットで撮影するという実験的なもので、その発想に舞台演出家である三谷監督らしさを感じずにはいられないし、またそれを映画ではなく、テレビドラマでやっていることにもすごさを感じる。内容はというと山道で迷った夫婦(中井貴一、鈴木京香)の会話劇であるが、それを飽きさせずに最後まで見せきる脚本と、主演ふたりの演技が巧妙で、すごく面白かった。とくに山に入って野生化したようになってしまう妻とそれに対する夫のリアクションが最高で、それ以降この二人のやりとりを見ているだけでもうずっと笑いっぱなしだった。(三谷監督の作品の中でも本作はとくにかなり笑える部類だ。)でも、この夫婦の仲は円満ではなく、冷めている設定。それを思うと、ひょっとしたらこの夫婦の設定は自分と小林聡美を参考に書いたのではと思えてくる。(下の方も仰られているように本作は三谷監督が離婚をした年に出した作品。)エンドロールをバックにしたラストの河原のシーンからの幸せそうな二人を見て、三谷監督なりの夫婦に対する理想のようなものを感じることができた。
[DVD(邦画)] 8点(2017-11-23 17:15:55)
125.  骨までしゃぶる 《ネタバレ》 
借金のカタに廓に売られたヒロイン お絹(桜町弘子)の目を通してその地獄のような廓の実態を描いた加藤泰監督の映画。最初は天国のように見えた廓の仕組みをお絹が理解するに連れ、見ていてこちらまで居心地の悪さを感じるし、様々な事情で廓にやってきた女郎たちの生きざまも胸に迫るものばかりで、逃げようとして連れ戻されて拷問を受けたり、客に理不尽な理由で殺されたりといった女郎たちの末路を見るとやり切れない思いに駆られる。加藤監督はそんな廓の実態をリアリティを重視して描いており、ドラマとしてかなり見ごたえのある映画になっているし、加藤監督の映画の中でも傑作と呼ぶ声があるのもうなずける映画だ。廓の主人夫婦をを演じるのが三島雅夫と菅井きんというのは裏があるのが分かりやすすぎるキャスティングだが、この二人の悪役ぶりが実に良いからこそ、廓の恐ろしさもじゅうぶんすぎるほど伝わってくる。そして何と言っても主演の桜町弘子。東映時代劇でよく見かける脇役女優で、本作が唯一の主演作(本人は自分の名前が最初に単独でクレジットされるのを見て感動したという。)とのことだが、見事に熱演していてそれを感じさせず、本作は加藤監督の代表作であるとともに、桜町弘子にとっても間違いなく代表作だと感じる。ラストの恋人(夏八木勲)と一緒に橋を渡って廓を出ていくお絹のなんとも言えない明るい表情はこれまでの彼女の苦労を思うと、お絹がやっと幸せをつかめたことがわがことのように嬉しく、思わず良かったねえという気持ちになり、このラストには泣かされた。舞台が洲崎にある廓であり、思わず「洲崎パラダイス 赤信号」を思い出したが、あの映画でも舞台の少し先にある遊郭はひょっとしたらこんな状態だったのかもしれないと想像してみるのも楽しい。
[DVD(邦画)] 8点(2017-08-26 19:32:46)(良:1票)
126.  ズートピア 《ネタバレ》 
久しぶりに見るディズニーアニメ。偏見や差別に対してかなりストレートに、またそれを決して重苦しくなることなく、ディズニーらしく子供にも分かりやすく描いている。しかし、込められているメッセージは子供よりも大人の方が考えさせられるものになっていて、ただの子供向けアニメとは侮れない完成度の高さがあり、そんなところが素晴らしい。主人公のウサギの新人警官と詐欺師のキツネがコンビを組んで行方不明事件を追うという刑事ものには定番のバディものとしての面白さもあり、刑事と罪人のコンビというのは「48時間」を彷彿させるものがあるが、最初に主人公のジュディが署長から言い渡された捜査の期限が48時間であるあたりはやはり意識している部分もあるのだろう。もちろんこの二人(二匹)のやりとりだけでも見ていてじゅうぶんに楽しい。夢を持つことや諦めない心を持つことの大切さについても深く考えさせられる映画になっていて、見終わった後には元気と前向きな気持ちをもらえた気がしたし、まさしくいろんなメッセージのつまった傑作で、本当に見て良かったと思う。
[DVD(吹替)] 8点(2017-06-17 17:05:38)(良:1票)
127.  長屋紳士録 《ネタバレ》 
小津安二郎監督の戦後第一作で、長屋を舞台に親とはぐれて拾われてきた少年の面倒をいやいやながらに見ることになった女性・おたね(飯田蝶子)を主人公に、人情味あふれる長屋の人々がイキイキと描かれた小津監督らしい人情喜劇で、戦後第一作にしてかなりの傑作だと思う。子供を無理やり押し付けられ、最初は邪険に扱うもだんだん情が移っていくおたねの心情の変化が丁寧に描かれていて実に良い。おたねの心情の変化が最初に感じられるのはやはり干し柿のシーン、盗み食いしたと疑われて怒られ、疑いが晴れても泣き止まない幸平に対して干し柿を差し出すおたねの優しさがなんともあたたかくてたまらないし、次の日おねしょをした幸平が家出したのを本気で心配しているのも良い。(また最初のように幸平が笠智衆演じる田代に拾われて戻って来るのが笑える。)そのあとの写真館のシーンもこの子とずっと一緒にいたいというおたねの心情が良く出ていて、しかし、誰もいない写真館の部屋を映すことによってこの後の展開を暗示しているのが切なく、忘れられない名シーンだ。その夜に幸平の父親が迎えに来て別れた後のおたねの涙は幸平が実の父と会えて良かったというのと、別れることになったつらさ、両方ある涙だと思うのだけれど、とてもあたたかい涙で、とても感動できた。主演の飯田蝶子の演技も素晴らしく、小津作品で飯田蝶子と子供というとやはり「一人息子」が思い浮かぶが、本作もそれに並ぶ飯田蝶子の代表作といえるだろう。小津監督の喜劇センスや子役に対する演出も相変わらずうまく、幸平を茅ケ崎に連れて行くのをくじで決めるシーンのイカサマや、置き去りにしようとした幸平がおたねにずっとついてきて結局一緒に戻ってきてしまうシーンも笑える。もちろん、笠智衆や河村黎吉といった脇役陣も良い味を出していて、中でも笠智衆の口上シーンは印象的だった。それにおたねとおきく(吉川満子)の何気ない会話シーンも良かった。チョイ役ながら殿山泰司や小沢栄太郎が小津作品に出演しているのは珍しい。冒頭から戦後間もない時期であることを感じさせる映画なんだけど、いちばん最後のシーンであふれかえった戦災孤児たちが登場したのを見てこの時代こういう光景が当たり前のようにあって、まだまだ戦争の傷跡が身近にあったことを考えさせられた。
[DVD(邦画)] 8点(2017-06-04 18:41:28)
128.  ポテチ 《ネタバレ》 
「ポテチ」というタイトルから見る前はどんな映画なのか想像できなかったのだが、見始めてすぐに引き込まれた。主人公である泥棒・今村忠司(濱田岳)のある秘密をめぐる物語で、今村が健康診断に行った話や尾崎という野球選手に異常に固執しているなどさりげなく伏線を張り巡らし、結末に向かっていくのだが、その伏線の張り方がやはりうまいし、また68分という短い映画だが一切無駄がなく、巧みな構成で濃密な映画になっていて見ごたえはじゅうぶんにあり、面白かった。前半は喜劇色が強く、今村も少し変わった言動をする男という印象なのだが、同時に魅力的でもあり、彼の秘密が明かされたとき、彼の母親(石田えり)に対する思いや、どんな気持ちで尾崎に固執していたかが痛いほど分かって、もう共感せずにはいられなかった。タイトルにもなっているポテチを恋人(木村文乃)と食べるシーンで、今村が間違えて恋人の分に買っていたコンソメ味を食べてしまったにもかかわらず、恋人に交換しなくていいと言われ、思わず泣き出してしまうシーンは見たときに思わず大笑いをしてしまったのだが、最後まで見ると、ここも切なく、見終わってから再見すると印象が最初とは全然違うものになるだろう。(二度見れば良かった。)ほか、前半で今村が言っていたリンゴが木から落ちた話や三角形の内角の和の話も無意味な話に終わらず、ちゃんと映画の中で効いているのがいい。ラストの代打の尾崎が(互いに親子と名乗ることはない実の母親が見ている前で)放つ場外ホームランは、それによって人生の何かが変わるわけではないけれど、でも、主人公たちの人生に希望の光を灯すようなそんな一発であったと思いたい。ぼく自身もこのシーンには元気をもらえたような気がした。
[DVD(邦画)] 8点(2017-05-15 01:41:02)(良:2票)
129.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 
2014「ゴジラ」とも関連のある(モンスター・バース)新作キングコング映画。これまで見たキングコングの映画はリメイクが主だったせいもあって東宝版も含めてオリジナルを踏襲した展開が多かったのだが、本作では舞台となる髑髏島だけで話が展開するのがコング映画では新鮮に感じる。コングの登場も早く、コング以外の怪獣も多数登場するなど、怪獣映画としての醍醐味がこれでもかと詰め込まれていて、まさに王道の怪獣映画という感じの作風(久しぶりにこういう怪獣映画を見た気がした。)で、すごく楽しいし、さきほど書いたように舞台は髑髏島から移動しないので、往年の東宝特撮怪獣映画を見ているような懐かしさや楽しさ(巨大タコとの戦いは「キングコング対ゴジラ」を思い出さずにはいられない。)が感じられるのが嬉しい。2014「ゴジラ」では怪獣どうしの戦いの描写に不満しかなかったのだが、本作ではもちろんその点もしっかりと描写されていて、もう大満足。とにかく最初から最後まで小難しいことを一切考えずに見られる娯楽映画に徹しているのが素晴らしく、あまり期待しないまま映画館に入ったのがウソのようにすごく面白かった。エンドロール後のエピローグに次回作であるレジェンダリーゴジラへの布石が描かれているのだがこの感じだと思わず期待してしまうじゃないか。コングを殺すことに執念を燃やす男をサミュエル・L・ジャクソンが演じているが、見ていて昔「ジュラシック・パーク」に脇役で出ていたことをつい思い出した。
[映画館(字幕)] 8点(2017-04-14 00:55:52)(良:1票)
130.  めし 《ネタバレ》 
倦怠期の夫婦を描いた成瀬巳喜男監督のいわゆる「夫婦三部作」の最初の作品で、戦後それまで低迷していた成瀬監督がふたたび評価されるきっかけとなった代表作の一本でもある。成瀬作品をかなり久しぶりに見たのだが、成瀬監督らしい味わい深い映画になっていて面白かったし、それだけではなく、ちゃんと人間が生活しているという空気感も大切に、そして丁寧に演出されているところが良く、そういうところに成瀬監督のうまさを感じずにはいられない。結婚五年目の倦怠期を迎えた夫婦を原節子演じる妻の視点から描いているが、その心理描写もうまく、改めて成瀬監督は女性を描くのが本当に上手い監督だと感じさせられる。その原節子も平凡な夫との暮らしに何かしらの不満を抱いている所帯じみた主婦を演じていて、カリカリ、ピリピリした表情も見せるなど、小津安二郎監督の映画での彼女とは違った印象が残り、それが本作の中で効果的に使われているところなど、作風が似ていると言われる成瀬監督と小津監督の作風の違いもこの原節子の違いを見れば分かる。個人的には本作で原節子が演じた三千代という人物は今まで見た原節子が演じた役の中でも見ていていちばん親近感がわいたし、一般的に小津作品でその魅力が語られることの多い女優なのだが、成瀬監督もやはりそれとは別の魅力を引き出している。夫を演じる上原謙のダメ男ぶりもハマリ役で、こういう役が十八番のようなイメージの森雅之とはまた違ったタイプのダメ男を見事に演じていて、間違いなく本作は上原謙にとっても代表作と言っていいだろう。東京から家出してくる主人公夫婦の姪を島崎雪子が演じているが、彼女の芸名は「青い山脈」の原節子の役名をそのまま使ったもので、この二人の共演も見どころのひとつ。それにしても本作の主人公夫婦のような状況は現代でもじゅうぶんにあり得ることだと考えると夫婦というものはいつの時代もあまり変わらないものだと思わされるところもあった。「めし」というタイトルのつけ方も絶妙。
[DVD(邦画)] 8点(2017-02-11 18:33:39)
131.  次郎長三国志 第三部 《ネタバレ》 
東映版「次郎長三国志」シリーズ第3作。旅に出ていた次郎長一家が清水に帰ってきて、石松(長門裕之)や三五郎(品川隆二)、お仲さん(丘さとみ)も清水にやってくる。東宝版で言えば第4作と同じだが、忘れている部分もけっこう多く、楽しめた。大政や三五郎など2作目までと演じる役者が一部交代しているのは少々残念に思うものの、それを感じさせない勢いがあり、途中からほとんど気にならなくなったし、むしろ次郎長一家の絆というものが深く感じられる作品になっている。中でも東宝版でもそうだったのだが、圧倒的不利と分かっていても人質となったお仲さんを助けるために甲州へ向かうラストシーンにはやっぱり次郎長一家のカッコよさや絆の深さをより一層感じられるのがいい。マキノ雅弘監督らしい盛り上がりももちろんあり、テンポもよく、東宝版とはまた違う魅力があり、安心して見ることができるし、マキノ監督の次郎長シリーズへの思い入れの深さも感じることができる。見終わってすぐに次回作が見たくなるような終わり方だが、東映版シリーズも次回で最後。なんだかんだ言ってやっぱり少しさびしさがある。
[DVD(邦画)] 8点(2016-11-05 11:16:56)
132.  続・次郎長三国志 《ネタバレ》 
東映「次郎長三国志」シリーズ第2作。今回は前作ラストで登場した森の石松(長門裕之)と追分三五郎(大村文武)の珍道中が中心の、東宝版で言えば第3作にあたる内容がほとんどそのまま再現されている。森の石松といえば東宝版で演じた森繁久彌がなんといってもハマリ役で、中でも東宝版第3作の小泉博演じる三五郎とのコンビぶりが絶妙で、かなり印象に残っている。その分、本作は分が悪いかと見る前は思っていたのだが、確かに長門裕之の石松は森繁久彌の石松に比べると物足りなさがあるものの、思ったよりは悪くなく、三五郎とのコンビぶりや、この二人とお仲さん(丘さとみ)とのやりとりも東宝版同様に楽しく、このあたりにマキノ雅弘監督のうまさも感じることができるし、シリーズとしてもこのあたりから本格的に面白くなっていく予感。東宝版でも印象に残った石松にお仲さんが酔った勢いで一緒に旅に出る約束をする一連のくだりはこの東映版でもやはり笑えて印象に残る。お仲さんを演じる丘さとみはかなり久しぶりに見るのだが、久慈あさみが東宝版で演じたお仲さんが大人の女という雰囲気だったのに対して、丘さとみのお仲さんはその可愛さが印象的で、久慈あさみとはまた違う魅力が感じられるのが良い。前作からの続きから始まる映画だが、前作よりも今回のほうが楽しめた。そうそう、松方弘樹と近衛十四郎が親子共演しているが、それもみどころの一つだろう。
[DVD(邦画)] 8点(2016-10-28 21:45:55)
133.  フラガール 《ネタバレ》 
最初は「シコふんじゃった。」や「ウォーターボーイズ」、「スウィングガールズ」のようなよくあるタイプの映画かなと思って見始めたのだが、とにかく中盤あたりの紀美子(蒼井優)とその親友・早苗(徳永えり)の別れのシーンあたりからのめり込んでしまい、それまではどこか傍観者的立場で見ていたのにそこから一気に引き込まれてしまった。炭鉱の事故で家族に犠牲者が出て、急遽帰ることを決めたまどか(松雪泰子)たちだったが、小百合(山崎静代)の一言でみんなの前で笑顔で踊ることを決めるシーンももちろん泣けるし、その結果、小百合の父の臨終に間に合わずに責められてまどかがすべて自分の責任ですと東京へ帰ろうとするシーンは、まどかのフラガールたちを思う気持ちが伝わってきてやはりここでも泣ける。このシーンと(前後するんだけど)早苗が父親(高橋克実)からフラのことをめぐって暴行を受け、許せないとまどかが風呂屋で入浴中の父親に殴り込みをかけるシーンは、まどかの非常に情に厚い性格をうまく表現していて、見ているこちらもついまどかを慕いたくなる。だからこそ今まさに列車に乗って東京へ向かおうとするまどかに向かって「私はあなたを心から愛しています。」という手話の意味を持つ踊りで自分たちの思いを伝えるシーンはこちらもフラガールたちと一緒にまどかに思いを伝えている気持ちになって見ることができ、大感動してしまった。(思い出しながらこれを書いていても泣けてくる。)娘のやりたいことについて頭ごなしに否定し、理解しようとしない紀美子の母親(富司純子 初めて登場したときにどことなく東映任侠映画の姉御のように見えてしまった。)がフラを練習する紀美子のところへ早苗からの郵便を届けに来て、フラを練習しているところを見て娘の思いを理解するシーンもベタといえばベタなのだが、二人ともこのシーンでは一言のセリフもなく、二人の表情だけで思いを語らせる演出が利いていて、そのおかげか、この二人にじゅうぶんに感情移入することができ、思わず感動してしまった。本作の中ではこのシーンはいちばん心に残るシーンだったし、このシーンを見るだけでまさにこういうのを映画というんだと実感できる名シーンだと思う。クライマックスのフラのショーは圧巻で躍動感があり、見ごたえじゅうぶんでこのクライマックスも感動的だった。しかし、本作はフラを練習して上達していく過程以上に、フラガールたちと周囲の人々との人間ドラマが深く丁寧に描かれていて、その点で最初に挙げた三作品とは一線を画すような印象があるが、その完成度は高く、人と人との絆の美しさや大切さ、そういったものを見事に描き切っている。正直見る前はあまり期待していなかったが、素直に傑作だと思えるような映画で、本当に見て良かったと感じられる良い映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2016-10-01 16:06:44)(良:3票)
134.  はじまりのみち 《ネタバレ》 
前々から「陸軍」を見てから見ようと思っていた映画をようやく見る。木下恵介監督生誕100年を記念した伝記映画だが、生涯を描いたものではなく、「陸軍」で軍部ににらまれ、松竹に辞表を出し、田舎に帰った木下(加瀬亮)が再び映画監督として復帰を決意するまでの出来事を描いている。アニメ畑の原恵一監督による実写映画だが、原監督はもともとアニメでも実写的な表現を用いることが多い(「カラフル」など。)せいか、実写としての違和感は全くない。内容としては、脳溢血に倒れた母(田中裕子)を疎開させるため、木下と兄(ユースケ・サンタマリア)、そして荷物運びのために雇われた便利屋(濱田岳)の三人が母の乗ったリヤカーを引きながら山越えをするというシンプルなものだが、そこにカレーや学校の先生(宮崎あおい)などのちの木下監督の作品につながるようなエピソードを盛り込みつつ描いているので、木下監督の映画を好きな身としてはかなり興味深く見ることができたし、自身も木下監督のファンという原監督のもっとたくさんの人に木下監督の映画を見てほしいという思いも伝わってくる。「陸軍」を否定され、これ以上映画を作ることをあきらめた木下が、目の前にいるのがそれを作った監督とは知らない便利屋から「陸軍」のラストシーンに感動したと聞かされるシーンや、母からたどたどしい声で映画に戻るように諭されるシーンははたとえ自分のやったことが否定されても、少しでも自分を認めてくれる、応援してくれる人がいればまたがんばれるということを感じることができ、だから木下恵介は再び映画監督に復帰する決意をすることができたのだと思う。この二つのシーンは見ているこちらも木下に感情移入して感動したし、母の「また木下恵介の映画が見たい。」という言葉には病気の自分の世話よりもたくさんの良い映画を作ってほしいという母の気持ちがよく表れていてこれもまた泣ける。賛否両論あるというラストの数々の木下監督の映画のダイジェスト映像も物語とリンクするようによく考えられたダイジェストになっていて、ここにも原監督の木下監督への思いが感じられ、これでいいと思う。十数年前から木下監督の映画を見ているのにその良さに気づいたのはここ数年のことで、本作を見てあらためてもっと木下監督の映画を見てみたいと思った。
[DVD(邦画)] 8点(2016-09-07 20:09:50)(良:2票)
135.  陸軍 《ネタバレ》 
田中絹代演じる母親が出征していく兵隊の列にいる息子をいつまでも見送るラストシーンが有名な木下恵介監督による戦意高揚映画。このラストシーンだけは何回も見ていた(ここだけ見ても泣ける。)のだが、最初から最後までちゃんと見たのは今回が初めて。戦意高揚映画ということもあり、ラストシーンだけが浮いていないかと心配だったのだが、そんなことはなく、戦意高揚映画でありながら、それを保ちつつも木下監督らしさはちゃんと出ていて、親子の情や、人間としての在り方がちゃんと描かれた映画になっている。高木(笠智衆)と桜木(東野英治郎)は事あるごとに喧嘩をしているが、互いの息子は戦友同士、だから父親同士ももっと仲良くしてほしいと高木の息子が訴え、その思いに応えようとする高木。このシーンは考えさせられるものがあるし、互いを思いやる心の大切さも感じることができる。高木と桜木の二度目の喧嘩のシーンで「日本は負けるかもしれない。」みたいなセリフがあり、(これが喧嘩の原因となる。)驚かされるのだが、おそらく、木下監督の本音であり、当時、日本の国民の中にもそういう人が少なからずいたのではないかと思えてくる。息子が戦地へ旅立った桜木がその安否を何度も何度も仁科大尉(上原謙)に尋ねるシーンも、建前上は天皇陛下に差し出した子だが、本音は息子のことが心配でたまらないという桜木の父親としての気持ちがストレートに出ていて、桜木に感情移入しないわけにはいかない。声高らかに反戦をうたってはもちろんいないが、ここにも木下監督の戦争に対する憎しみ、怒りといったものが、静かに、しかし、確実に感じられる名シーンとなっていて、ラストシーンとともに忘れることができない。そしてそれは、息子を戦地へ送り出す高木の妻 わか(田中絹代)とて同じことで、戦地へ行くことになった息子を喜んではいても、いざその日が来るとつらいから見送りには行かないという母。このあたりはこの母の葛藤がよく分かって非常に切ない。しかし、ラッパの音が聞こえると居ても立ってもいられず飛び出していくのはやはり人間としての母親の息子に対する愛や情の深さ、これをじゅうぶんに感じるし、群衆の中をかき分けて息子を追う母親の姿は、子を思う母親の気持ちがその表情を見ただけで痛いほど伝わってきて、やっぱりすごく感動させられるし、最後に手を合わせて息子の無事を祈る母親の姿を見て、こちらまでもが息子に無事に帰ってきてほしいと思えてくるのである。先ほども書いたが時局柄反戦をうたうことはできない。しかし声に出さなくても、戦争の愚かさ、悲しさを見事に訴えている。まぎれもない木下監督の代表作で、日本映画の名作の一本と言える映画だろう。
[DVD(邦画)] 8点(2016-09-04 00:45:27)(良:1票)
136.  人斬り 《ネタバレ》 
かなり以前から見たいと思っていたが、DVD等が出ておらず、なかなか見る機会に恵まれなかった映画の一つなのでようやく見れたことがまず嬉しい。幕末の「人斬り以蔵」として有名な岡田以蔵を主人公に、彼と武市半平太や、坂本竜馬、田中新兵衛らの関係を描いているが、橋本忍の脚本はやはりしっかりとしていて、武市の命令で次々に暗殺を遂行した以蔵が、結局は使い捨てにされてしまうという悲劇性がよく描かれていて見ごたえがある映画で、素直に面白かった。(見たいと思いながらも五社英雄監督ということで不安にも思っていたが、今まで見た五社監督の映画の中ではいちばん面白い映画だと思う。)勝新主演映画を見るのが久しぶりなのだが、演じる以蔵は豪快な存在感があり、座頭市とはまた違う勝新の魅力を感じることができる。仕事に参加させてもらえなかった以蔵が一日かけて長距離を走るシーンは映像的にとても美しく、異様な迫力があり、印象に残るし、勝新は「薄桜記」の冒頭とかでも走っているが、どこか「決闘高田馬場」のバンツマをほうふつとさせるものがある。武市役の仲代達矢はギラギラした存在感で、武市のこれでもかというような非情さをうまく演じていて、メインキャストの役では久しぶりに見る気がするのだが、あらためて名優だと感じた。この二人に対して竜馬を演じる裕次郎は勝新との共演がみどころとなるが、やはりというかなんというか違和感があり、裕次郎には時代劇は似合わないなあと思う。そして忘れてはいけない三島由紀夫演じる田中新兵衛。三島由紀夫を俳優として見るのは「からっ風野郎」以来、二度目なのだが、本作でも演技はかたい。しかし、独特の存在感とオーラを放っていて、その演技のかたさも新兵衛に不思議とマッチしているし、なかなか味があり、良かった。本業が俳優ではないながら、この役は三島由紀夫の俳優としての代表作になるのではないだろうか。本作は三島事件の一年数か月前に公開されているが、濡れ衣を着せられた新兵衛が切腹するシーンはその後の三島由紀夫の運命を予言しているかのようで驚かされた。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-08-15 18:38:52)
137.  五人の突撃隊 《ネタバレ》 
1944年のビルマ戦線を舞台にした井上梅次監督による大映の戦争映画。大映の特撮は東宝のそれに比べて一歩劣るという印象があるのだが、本作は本物の戦車が出てきたりしてかなりリアリティと迫力のある映画になっていて、音楽のまったくない終盤の戦闘シーンもリアル。主要人物の五人も故障した敵の戦車を修理・操作するために集められるのだが、この五人それぞれの背景のドラマが回想形式で語られていて、これが本作に深みを与えている。ピンチに陥った部隊に旅団長の少将(山村聰)とともに派遣された野上上等兵(本郷功次郎)。その部隊の隊長が野上との関係がうまくいっていない父親(大坂志郎)である。この親子のドラマをはじめ、出産を控えた妻がいる青年や、結婚式の真っ最中に招集令状を受け取った青年、なかなか上達しない落語家といった様々な人生模様が描かれているが、やはり夢も希望もある登場人物たちが後半、戦場で命を散らしていくのは見ていてつらいし、とくに妻とのこれからの平和な生活を戦争によって破壊された二人はいたたまれない。五人の中で唯一生き残るのが不良あがりの橋本(川口浩)というのも、戦争の矛盾と皮肉を感じさせていて印象的だ。ラスト、その橋本の悲痛な叫びが心にいつまでも残る。また、ドラマ部分だけでなく、娯楽活劇としても見ごたえのある作品になっていて主要人物五人の背景のドラマをきっちり描きつつ、そのドラマと並行して活劇としてもしっかりと見せ、その両者をバランスよく両立させることに成功している井上監督の手腕は確かなもので、素直に面白いといえる戦争映画で、あまり知られていないのは残念だが、じゅうぶんに傑作だと思う。ついでにもう一言つけ加えさせてもらえれば、チョイ役だが野上上等兵の兄役でブレイク直前と思われる田宮二郎が出演しているのはけっこう貴重かもしれない。
[DVD(邦画)] 8点(2016-07-21 22:13:34)
138.  映画 ビリギャル 《ネタバレ》 
「ビリギャル 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」というタイトルからすでにネタバレ全開で、しかも予告や宣伝を見ても全く見たいと思わなかった映画だったが、周りでの評判がよかったので騙されたと思って見てみた。いやもうかなり良かった。受験というのは「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」で描かれるような集団競技とは違い、基本的にたった一人での孤独な戦いとなる場。その戦いに圧倒的不利な状態から挑む有村架純演じるさやかの一生懸命頑張る姿はいじらしく愛おしく見ていて応援したくなる。塾の先生である坪田(伊藤淳史)やさやかの母親であるあーちゃん(吉田羊)が決してさやかを見放さないところがよく、本作はさやかが慶應目指して頑張る姿だけでなく、師弟愛や親子愛がきちんと描かれていて、それが本作にドラマとしての深みになっていて、ただ偏差値の低い主人公が猛勉強の末に慶應に合格したというだけの話に終わっていない。坪田がさやかにかける言葉はどれも前向きで、とくにクララの卵のシーンは、人間、自分の可能性を信じることが大切なんだとあらためて教えられた気がした。それに、息子に自分の夢を押し付けている夫(田中哲司)に向かってあーちゃんが言う「私はさやかのことで何度も学校に呼ばれたけど、恥ずかしいと思ったことは一度もありません。むしろさやかといろんな話ができて楽しかった。」という言葉、この言葉は本当に娘のことを信じていないと言えない言葉だと思うし、そのあとの「私は三人の母親です!」という言葉にもあーちゃんの子供たちに対する深い愛情を感じてものすごく感動させられた。このシーンは本当に名シーンだ。ほかにもさやかの友人たちのさやかを思う気持ちもほろりとさせられる。見終わった後に明日も頑張ろうという前向きになれる映画で、すごく元気が出たし、見て本当に良かったと思える映画に久しぶりに出会えたのも良かった。「下妻物語」を見た時もそうだったが、予告や登場人物の雰囲気だけで見る見ないを判断すると良い映画を見逃す場合もあるので気を付けたいなあと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2016-07-16 18:24:41)(良:4票)
139.  舞妓はレディ 《ネタバレ》 
周防正行監督が「シコふんじゃった。」以来、久々に手掛けた青春映画で、「マイ・フェア・レディ」を下敷きにひとりの田舎臭い少女が京都で一人前の舞妓になるまでを描いている。周防監督がいつか「シコふんじゃった。」と対になる青春映画を作りたくてようやく実現した映画だというが、男性だけの世界である相撲に対して女性だけの世界である舞妓に目をつけるのは着眼点がいい。ミュージカル仕立ての映画で、そこはまさしく「マイ・フェア・レディ」を意識しているようで、何よりもまず、見ている人にこの映画を肩の力を抜いて楽しんでほしいという周防監督の思いも感じられ、最近は社会派映画も手掛けているが、やはりこの監督は硬派な社会派映画よりもこういった軽い感じの娯楽・コメディー映画のほうが合っている気がするし好きだ。主人公の少女を演じるのがそれほどの有名人ではなく、これまで周防監督の映画に主演した役所広司や加瀬亮と同じようにオーディションで選ばれたほぼ無名の若手というのもよく、ここも周防監督らしい。主人公・春子を演じる上白石萌音は本当に素朴な感じでいかにも田舎っぽい雰囲気がよくハマっていて、本作はこの主演女優の存在が大きく、何もわからないまま飛び込んだ世界で成長していく主人公の姿と、本作で初主演に抜擢された上白石萌音の姿がうまく重なっている気がする。春子に言語学者(長谷川博己)が京都弁を教えるくだりはまさにイライザとヒギンズそのままなのだが、若い娘が頑張る姿は応援したくなる。極度のストレスで声が出なくなり、それが治るシーンも春子の気持ちをうまく表していて良かったし、ラストシーンの後味もいい。もう少し書かせてもらえれば冒頭の草刈民代の登場シーンで「緋牡丹博徒」の主題歌のメロディーが流れ、女将を演じているのが富司純子なのはニヤリとさせられる。主な登場人物の大半が歌っているが、その富司純子も何曲か歌っているのはサプライズで、ひょっとしたら周防監督は若いころ藤純子や「緋牡丹博徒」シリーズのファンだったのかもしれないとつい思った。それに周防監督の映画で竹中直人を見るとなんだか安心する。次回作はまた社会派映画かもしれないが、周防監督にはまたいつかこういうカラッとした明るい映画を作ってほしい。
[DVD(邦画)] 8点(2016-05-07 17:59:49)
140.  紙ひこうき 《ネタバレ》 
ディズニーの短編アニメ。全編モノクロ・サイレントという渋いつくりであり、ストーリーもファミリー向けというよりはほぼ完全に大人向けという感じ。でもこの短い時間で深みのあるドラマをきちんと紡ぎ出していて、たとえ短くてもドラマは描けるというお手本のような映画で、素直に見て良かったと思える映画だった。主人公の男性が一目ぼれした女性に思いを伝えようと、隣のビルにいる彼女に向かって仕事の書類で作った紙飛行機を飛ばし続けるのが切なく、これだけでもう普通に恋愛ドラマとして見入ってしまう。もちろん、あきらめかけた男性を励ます紙飛行機たちの描写など、アニメならではの映像表現も素晴らしい。ハッピーエンドだとは思っていたが、それでもラストシーンは好きだ。とても小さな物語だが、じゅうぶんに傑作だと思う。ディズニーの同時上映短編は単なるおまけ・前座という意識があったが、これを見るとそうも言えなくなるなあ。
[地上波(字幕)] 8点(2016-03-29 00:48:57)
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