121. 座頭市の歌が聞える
《ネタバレ》 傑作「座頭市物語」の敵友、天知茂の起用といい、 貫禄の琵琶法師といい、 話を盛り上げる役者が多いのに、 クライマックスがモンスターばりの座頭市では、ちとシラケる。 子母沢寛の原作「座頭市物語」は、討つもの、討たれるものへの敬意のこもった短編だった。 いくら非道とはいえ、こんなにバッサバッサ斬ったんじゃ座頭市の根底にある 世界観に疑問もっちゃうよ。 そろった役者がいいのに、残念! [DVD(邦画)] 7点(2023-07-01 01:04:48) |
122. ある男
《ネタバレ》 見応えある。 ラスト、一瞬、シャラマンばりのフェイクストーリー?と思わせるとこが面白い。 騙された? でもそうじゃない。詐欺師の柄本明が「本物」だからだ。 偽物の奥さんと一緒にいる妻夫木弁護士を看破していたからだ。 つまり、本物の犯罪者は、本物だってことなんだろう。 救いは、安藤サクラの言葉だ。 「真実」を知らなくても、実際平和だった私たちの幸福こそ真実じゃないかというセリフだ。 傑作である。 [DVD(邦画)] 8点(2023-06-29 22:58:04) |
123. レニ
《ネタバレ》 レニ・リーフェンシュタール。 才能ある女性が、美を求めたら、こうまで突っ走るか・・ ただ彼女は、醜いものは避け続ける。 人間の醜い部分、特に突出しているのが戦争だ。 ヒトラーと同時代に生きた彼女は、技術と美学の創作本能にのみ、力を入れて、 ナチス宣伝映画「意志の勝利」、あるいはヒットラーご満悦五輪の記録映画「民族の祭典」を魅力的に創り上げてしまう。 結果、歴史の判定で、彼女は罵倒し続けられる。 その後、アフリカ、水中生物へと、美なるものを求めて、彼女はまい進する。 女性が力を持ってきた現代、美を追求させたら、女性の方がスゴイかも、などと考えてしまった。 ただ人間の闇を捉えることは、男性の方ができるかもしれない、などと・・ [DVD(字幕)] 7点(2023-06-20 01:42:27) |
124. 八日目
《ネタバレ》 八日目のタイトルの意味が大きい。そして、鑑賞後、疑問が湧いてくる。 6日目に創られた人間の男と女と子ども。 そして、それだけでは不足と、神が満足すべき存在として創られた障害者ジョルジュ。 しかし、ドラマは過酷な現実を前に彼の死を描く。 そこで、さぁ「我々」は生きていかなきゃと捉えるべき内容なのか? これは「現実」が壊れていると言っているのではないか? ジョルジュは、問題行動が多く、健常な女性には受け入れられない。 しかし、セールスマンの絶望的な孤独(これも現実社会がもたらしたものなのだが・・)の前に ジョルジュは神がかりな精神的ケアを男にほどこす。 「僕は皆と違う」と嘆くジョルジュに対し、男は言う。 「そう、君はすばらしい」 このセリフがあるから、救われた。 [DVD(字幕)] 7点(2023-06-17 21:30:26) |
125. カモン カモン
《ネタバレ》 モノクロの画面がアメリカ人の心象風景にマッチしていて、バンドデシネコミックみたいな味である。 子どもを描いた映画は楽しい。 本作は、感受性の高そうな少年と叔父さんの、楽しいお泊り会の様子を描いてる。 タイトルの「カモンカモン」は「先へ先へ」という意味である。 世の中、不安だらけの世界ではあるが、 確実に子どもたちは世に出てきている。 自信喪失の大人に対して、子どもたちの「さぁ未来へ行こう」という声の映画である。 何より、頼りなくても愛してくれる大人がいたら、 子どもは未来にはばたく。 子どもの予測不能な部分を 「我々は、母親に、社会や我々自身の最も厄介な重荷を押し付けている」という ジャクリーンローズ氏の本からの引用文が心に響く。 大人には理解できなくても、彼らの個性は、希望なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2023-06-11 20:24:49) |
126. ベイビー・ブローカー(2022)
《ネタバレ》 是枝監督の映画で一番泣きました。 何かと暗いペドゥナがお母さんになった表情を観て、ほっとしましたし・・ 是枝さんってロードムービー似合いますね♪ あまりに感動して、何か音楽聴きたいなと思い、 エディットピアフの「愛の賛歌」を聴いたら、これがフィットしました!? でも何か違和感が・・ そうです。ソンガンホの決着はアレ以外なかったのでしょうか? 彼の娘さんが人殺しの娘になってしまうのに・・ 是枝さんらしいと言えば、そうですが・・ ピアフのように劇的に幕!とは、しないのですね・・ [DVD(字幕)] 10点(2023-06-10 21:55:00) |
127. 青春の門 自立篇(1982)
《ネタバレ》 信介と織江のコンビが、東京で色んな人間関係を見守る体の映画。 筑豊カップルは、揺るがない。 できれば、この後も、シリーズもので二人をずっと見続けていたかったが、 本作で終わりなのが、残念。 この映画が映画館で公開された後、小生、本作でもお馴染みのキャンパスに通ったが(但し夜間)、 「なんで早稲田に来たの?」という質問を多数投げつけられた。 「青春の門」をみて、やっと理由が分かった(笑)、 当時、このシリーズに感化されて、この大学に来たものが多かったのだ。 [DVD(邦画)] 7点(2023-06-03 23:10:03) |
128. 青春の門(1981)
《ネタバレ》 佐藤浩市、初お披露目! なんともフレッシュな記念作である。 小生も福岡ながら、この有名すぎる福岡作品をやっと初めて観た。 放映当時は、杉田かおるが脱いだと話題だったが、やっと鑑賞(泣) いや~色んな作品観てますけど、炭鉱で働いてる映像がある映画って この原作ものくらいじゃないですかね? 世界遺産の山本作兵衛の絵くらいでしか見たことないです。 地元のローカルのニュースで、炭鉱で働いてるニュース映像をたまに見るくらいです。 貴重なシーンですね。 次の自立編は、東京の大学、しかも早稲田に行く話らしいですね。 人生劇場もそうですが、何かと義侠モノと早稲田は相性がいいのですかね? [DVD(邦画)] 7点(2023-06-01 00:10:10) |
129. ザ・フォッグ(1980)
《ネタバレ》 今では、当たり前の演出でもある映画の中の夜の霧。 スピルバーグもよく使いますよね。 「レイダース」の冒頭や「E.T」がそうですね。 でも「未知との遭遇」で、宇宙船から下りてくる宇宙人の演出は、 本作よりも前です。 案外、カーペンターもこの演出、温めていて、スピルバーグがやっちゃったから、 もういっそ霧だけの映画を創ろうとしたのかも(笑) 発明気質のカーペンター、先を越されて、はがゆかったのかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-30 22:51:16) |
130. 老人と海(1958)
《ネタバレ》 スペンサートレイシーが、見る角度によっては、 どこかロイシャイダー似である。 ロイシャイダーと言えば、あの「ジョーズ」である。 ニヤリとしてしまった。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-29 22:01:44) |
131. リコリス・ピザ
《ネタバレ》 アンダーソン監督は、映画通に評価高いんだけど、 なるほど、どの作品も面白い素材を扱ってるなぁって気はしてた。しかし、 どストレートの青春もので、この質の高さは、やはりこの監督、すごいと 思わざるをえない。 年上の女性との、ひと夏の思い出って内容は、アメリカ映画で、ニューシネマが流行ってた頃も、 スター俳優を起用した映画などで、70年ごろに結構、創られ続けていた。 例えば、「おもいでの夏」など。 ツルゲーネフの「初恋」みたく、苦い思い出になりがちな内容だったが、 この映画は違う。 年下のお坊ちゃんに幻滅はするものの、やはりラストは、ヤッターって感じだ。 いいね、この鑑賞後の気持ちのよさ。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-28 22:55:38) |
132. 戦争と女の顔
《ネタバレ》 戦争中の二人の女性。 ドラマが進むにつれ、二人の戦時下で置かれた、厳しい境遇がはっきりしてくる。 静かなテンポで進む骨太な話。 空虚な男を描く映画は多いが、ここでは空っぽな女性を描く。 話題になった漫画「戦争は女の顔をしていない」の原案が元らしい。 漫画も読んでみたくなった。 [DVD(字幕)] 8点(2023-05-28 00:01:52) |
133. その手に触れるまで
《ネタバレ》 ダルデンヌ兄弟のヒューマンドラマ。 あまり馴染みがない宗教の話だが、本質はそこじゃない。 異教徒の恋人ができた恩師の女性への憎しみに、ちょうどこの宗教がはまったのである。 基本は、同じ地球人。 だが、この主人公の青年、異教徒の女性とキスした経験がなければ、どうなっていたか? 最後の最後まで、恩師に危害を加えようとするが、それも失敗。2階から落ちて、地上に叩きつけられる。 そして、恩師との対面。そこで青年は泣いて謝るのであるが、 その理由は、この邦題にある、という話。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-24 01:54:31) |
134. 昼下りの決斗
《ネタバレ》 本作のペキンパー西部劇、素直に面白い! 日本の時代劇と西部劇は呼応するかのように面白い筋が生まれてる。 時には、西部劇の話を参考にすることもあろうかと思う。 この話は面白いのだが、なぜか時代劇にこれに似た話はない。 (女性のために闘うというのは、座頭市あたりにあるかもしれないが・・) 一つは、キリスト教がこの女の子のウブさに大きく関わっているからだろう。 日本は結婚も本人の意思でされるものでもなく、本作のようなストーリーは、無理なのかもしれない。 だけど、ラストの撃ち合いに、敢然と立ち向かう老ガンマン2人。 このカッコよさはただ事ではない。 これが時代劇で再現されてたら、しびれるのだが・・ [DVD(字幕)] 8点(2023-05-22 13:36:49) |
135. 騙し絵の牙
《ネタバレ》 やっぱ、騙し騙され、最後に笑うのは誰?って映画は、観るのがウキウキするね。 それを、悪人を裁かない吉田監督と大泉洋だから、なおさらテンションMAXです! 全員悪人、って前作の「羊の木」で撮ってらしたけど、 今回、全員クセモノの実社会(出版社)を舞台に、「アウトレイジ」みたいなテンポで二転三転と描いていく! 吉田監督は、本作のような娯楽作品も悪くないけど、今までの問題意識も忘れないでくださいね~ [DVD(邦画)] 7点(2023-05-20 14:35:38) |
136. ブンミおじさんの森
《ネタバレ》 感性という言葉がある。 風土から生じるそれは、東洋の国にもある。 精霊や前世は何?ということを、それぞれの国で、人々は自然の中で考える。 それを感性というのだろう。 頭を無にして観ると面白い。 この監督の「メモリア」を先に観てたので、こんな作品だと分かってたので、本作は楽しめた。 この先、どうなるんだろうと思わず鑑賞すると、面白い。 ストーリーは、死んだ嫁が迎えに来るという話である。 そこで、昔、王女が自分の顔にコンプレックスを抱いてることを湖のほとりで泣いてるところを ナマズが彼女を抱いて、きれいにするというエピソードが入る。 ナマズとの性交のシーンが、エロスの極みである。 そして、死んだ嫁と抱き合った男は、死にに森に入る。 そういう話である(・・と思う) 終盤、この監督得意のSF仕立ての味付けも忘れない。 ファンが多いのも分かる気がする。 [DVD(邦画)] 8点(2023-05-16 08:56:24) |
137. シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
《ネタバレ》 いや、見応えありました。 細かい設定までは、理解できなかったんですけど、 男の子の成長ストーリーとして鑑賞させてもらいました。 良かったです。 僕は、バブル破裂後、リストラにあって地元に帰って来たのですが、 そこで職業訓練に通ってた時、一人の青年があるアニメのオープニング、すごくいいですよ、 と声かけてきました。 それがリアルで放送されてたエヴァでした。 彼は、こんなに大きな背中を追いかけるのかぁと、鑑賞後、思いました。 映画史に残るシリーズ映画だったと思います。 [DVD(邦画)] 9点(2023-05-07 21:14:45) |
138. 家族はつらいよ
《ネタバレ》 こんな家族、今どきいないよ~、と思うのが大間違いであるのは、このサイト投稿者なら分かっているはず。山田監督は、今の映画監督とは違って、映画に求めるものが違うのだ。日本の悲惨な現状を問題提起する映画ばかり、評判が出るので、みんなもう映画など行きたくないと思う人が増えたのではないだろうか?山田監督は、映画はつらい現実を忘れさせてくれる、そんな世界をスクリーンの向こうに求めてる。山田監督が世の中分かってないわけではないことは、「学校Ⅲ」や「虹をつかむ男」を観れば、分かることだ。だが、しかし、2つの時代変化を山田監督は自分の中でどう消化されたのかが、僕は気になる。それは「いじめ」と「3.11」だ。この二つで日本社会はかなり変質してしまった。だから昔「男はつらいよ」を見てた頃のとらやの風景に感じていた心地よさが、もう感じられない。でも山田監督が自らの人生に終止符をうつべく、ここ何作か映画作りをしていることが分かっているので、もうそういうことはどうでもいいことなんだけどね。山田監督、本当にお疲れさまでした。あなたの映画でどれだけ、現実に向き合う勇気が与えられたことか。そう、本当はとても好きな映画なんだけど、そうも言えない世の中になってしまったなぁという感じです。ありがとう。さよならは言いたくありません。 [DVD(邦画)] 7点(2023-05-06 00:37:07)(良:2票) |
139. 耳をすませば(2022)
《ネタバレ》 ハッピーエンド? いや、いい話ですよ。 でも、衰退していく日本から世界に発信していくって、あなた・・ これから、聖司君の日々を考えたら、二人は晴れて一緒になったものの、 聖司君は日本の交響楽団に履歴書を書く日々が待ってるわけで、 しかし、職は見つからず、働きながらチェロをして、生活者の音楽を目指すとか 言い出したりして、それじゃ「蜜蜂と遠雷」ですからぁ~ 挙句の果ては、地球屋を継いだりして・・ ちゃんと「愛」を奏でてくださいよ! そして、世界に打って出てくださいよ! 頼みますよ、もう! [DVD(邦画)] 7点(2023-05-05 23:47:58) |
140. PLAN 75
《ネタバレ》 全国の満男たちが、あ然とする映画。 あのラストじゃなきゃ、いたたまれない。 ラストの車の暴走は、若者たちの「僕らはどうすればいいんだぁぁぁ」という 叫びにも似たものを感じた。 それを抑えつける警官に、少し笑った。 [DVD(邦画)] 7点(2023-05-05 01:32:09) |