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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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141.  BLOOD THE LAST VAMPIRE
デジタル技術はすごいが、かっこいいとは感じなかった。技術はあるが、センスがない。見せ方が上手いのはせいぜい冒頭の列車のシーンくらいか。せっかく日本刀という絵になる武器を持っているのに、普通にぶったぎるだけ。戦闘機に飛び移ろうとするモンスターを斬るクライマックスなんか、もっとドラマティックに演出できたはずで、これじゃ尻すぼみだ。セーラー服に日本刀というキャラクターも好評のようだが個人的には「?」。男みたいな顔立ちなので女子高生が日本刀を持つというギャップも薄れている。心理描写も少なく愛着も湧かない。本作ヒロインをモデルにしたGOGO夕張は可愛くてかっこいいのになあ。モンスター造型は安っぽいの一言で、デビューしたての三文漫画家レベルのデザインだ。いちおう退屈はしなかったので6点。短くまとめたのは潔くてよい。
[DVD(字幕)] 6点(2005-12-28 00:22:11)(良:1票)
142.  ボーン・スプレマシー
ボーンが超人ぶりを発揮しているのにも関わらず、ディティールが非常にリアルなのが面白い。たとえば車ごと河に転落したとき、車内の隅に残った僅かな空気を吸ってから行動に出るのだが、普通のアクションならこんなところまで描かない。工夫の積み重ねで単なる絵空ごとと感じさせない、厚みと迫力を出しているのだ。銃を乱射するでもなく、身の回りの日用品――トースター、酒、自動車などを使って敵を圧倒する。彼にかかれば丸めた雑誌ですら、人を殺す武器となる(この辺、浦沢直樹の『マスターキートン』に似ている)。同じ特殊工作員でもジェームズ・ボンドとはまったく違った、知的でクールなヒーロー像だ。これで脚本にベタ過ぎる展開がなければ最高なのだが……。(以下ネタバレ)とくにCIAの若いメンバーが上司に殺される場面、ちょっとバカバカしくなってしまった。あいつ『マイノリティ・リポート』観てたら死なずにすんだだろうな。
[DVD(字幕)] 7点(2005-12-27 22:21:59)(良:1票)
143.  Ray/レイ
レイが愛人に平然と子供の中絶を要求した時点ですでに薄ら寒い思いがしていたのだが、直後に怒り出した愛人に刺激を受けて新曲を発想、「その怒りを忘れないで」とそのまま歌わせたのには心底ぞっとした。観客を怖がらせようとする演出ではなかったが、あきらかにまともな人間の発想ではない。胎児の命には何の執着もなく、傷ついて怒りを露にする愛人の気持ちを察するよりもまず、音楽をとる。あの修羅場で平気で鍵盤を叩き出す神経には空恐ろしいものを感じた。奥さんがレイを説得する場面は感動すべきところなのだろうが、このときも何気なく「家族よりも音楽を愛している」という真実が語られている。どの分野でも天才と呼ばれる人々は、才能と引き換えに大きな犠牲を払っている。普通の人にはないものを持ち、普通の人にはあるものが欠けている。空高く飛べる分、地上を歩くのは下手糞だ。トラウマを絡めてヒューマンドラマに仕立てようとしたのは却って蛇足だったかもしれない(回復の場面は陳腐だ)。"音楽の神様"が"神様"たるためにいかに"人間"を犠牲にしていたのかということを知った。
[DVD(字幕)] 7点(2005-12-21 17:30:44)(良:1票)
144.  フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白
「これだけは強調しておきたい。我々が核戦争を回避できたのは単に運が良かっただけにすぎない」――ぞっとする言葉だ。マクナマラ氏は戦争を前にして人間の理性がいかに無力かを明確に語る。経験に裏打ちされているだけに、シビアな価値観が重い。「戦争がなくなると思うほど私は単純ではない」って、確かにね。マクナマラ氏はすごく理性的だし、思ったよりもずっと平和主義的な人物だが、下手な理想論はまったく掲げない。具体的かつ現実的に、世界平和のために何をすべきかを語る。世界の情勢は複雑怪奇で、一個人の予想や思惑などからは遠く離れた場所にある。それがわかっていてなお、よりよい世界のために努力する姿勢は素直に素晴らしいと思った。おそらく世界から戦争、核の脅威が消えることはなく、平和維持の試みは綱渡りのように危うく、細い道なのかもしれない。完全に平和な世界がありえないことを知りながら、細い綱を一歩一歩進んでいく。優れた指導者とはそうあるべきだと思う。彼もまた多くの間違いを犯してきたのだろうが、政治家を選ぶのだとしたら彼のような人を選びたいと思った。
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-14 21:16:13)
145.  チーム★アメリカ ワールドポリス
序盤はまあこんなものかと思ったけど、物語が進むに連れてお下劣っぷりが加速、後半は爆笑しっぱなしだった。『パールハーバー』のラブソング、質量保存の法則を無視した嘔吐のシーン、残虐に殺されていく実在の俳優たち……素晴らしい。実は普通の下ネタは好きじゃないのだが、ここまでやってくれるともはや褒めるしかない。下品さにおいては究極の領域に達している。クライマックスの名演説の汚さは『キラー・コンドーム』なんか目じゃないぞ!
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-14 08:20:26)
146.  ナポレオン・ダイナマイト
いるいる、こんな人(笑)。普通の青春ドラマでは間違ってもスポットライトの当たることがないオタクくん。でもあえてスポットライトを当ててみたら、意外と面白かったというのがこの映画。口を開きっぱなし、分厚いメガネに天パ、いつも変なTシャツを着用し(やはり裾はジーパンに入りっぱなし)、ここぞというときの服をファッションセンターしまむら(みたいな店)で購入する。いちいち言動がずれている感じが、非常にリアルだ。おそらく身の回りを捜してみれば主人公を髣髴とさせる人物が必ずいるはず。ゆるーい話なのに、ナポレオンの挙動不審ぶりが面白くてついつい夢中になってしまう。どうみても冴えないのに、いつのまにか愛すべきキャラクターとしか思えなくなっているのである。例のダンスシーンは超クール!! 文句なしに最高だった(ある意味本気)。オタクの人生にもそれなりのドラマがあり、それなりの喜びがあるということを教えてくれた。秋葉原系の人たちをバカにするような人間こそ、観るべきかもしれない。 【おまけ】本作最大の欠点は、邦題だろう。流行作品に題名を似せるだけで大して売り上げが増加するのかがまず疑問であり、むしろ一部の映画好きによって語り継がれていくような良作を埋もれさせてしまう危険すらある。変な邦題をつけたり、作品の方向性を歪めて宣伝したりするのは、短期的な視点で見ればいくらかは利益があるのだろうが長期的にはけっして得にならない。何より詐欺まがいの方法を使ってでも小金を掠め取ろうとする姿勢が、あまりにもあさましい。客に対しても作品に対しても、敬意がない。いつから配給会社はけちな詐欺師に成り下がったのだろうか? いい加減にして欲しい。
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-03 03:48:54)(良:2票)
147.  父、帰る
シャープで洗練された映像感覚が素晴らしく、個人的につぼにはまった作品。それだけで妙に高評価になってしまったが、冷静に考えるとそんなにたいした話ではないような気もしてくる。リアルで迫力があるし、宗教や政治についての象徴性はよく考えられているが、その実こころから感動できるほどのめり込める物語ではなかった。無骨で愛情表現の下手な父親との間の絆が、悲劇を通して回復する。子供たちに欠けていた父性が、わずか一週間で受け継がれるまでを描く。父親が自分の親の姿と重なり、少し切なかった。(ところで、説明不足な点はそんなに気にならなかった。大体見当はつくし、謎解きは主眼ではないので説明しなくてもほとんど差し障りはないと思う。)
[DVD(字幕)] 9点(2005-12-02 07:26:05)(良:2票)
148.  mute ミュート(2001) 《ネタバレ》 
ほとんど台詞なし、しかも老人の生活をたんたんと映しているだけ。なのに、不思議と飽きない。沈黙の場面が長いと聞いて素人くさい自己満足映画ではないかと疑ったのだが、案外形になっているように思えた。うら寂しい風景や、何気ない生活音が印象的で、静けさが上手く不気味さに昇華されている。そして話が半ばを過ぎて、劇中初めて口に出される言葉が"murder"(殺人)。これはちょっとかっこいいと思った。少女の亡霊の映し方も気持ち悪く、個人的にはオチも嫌いじゃない。地味だけど、妙に生々しい陰惨さがよい。
[DVD(字幕)] 6点(2005-11-30 22:07:58)
149.  歌え!フィッシャーマン
非常に退屈だった。この合唱のどこがいいのか、よくわからない。ほんのときどき美しく感じることもあるけど、全体的にごく平凡な歌声では? 私に音楽的な感性が不足していたのだろうか、だいたい似たような曲に聴こえてしまった。それでいて合唱シーンはすごく多いからたまらない。インタビューや自然の光景にも良い点がないわけではないのだが、やっぱり退屈だった。これだったら高校の吹奏楽部に密着する所ジョージの番組の方がずうっと面白い。テンポは非常に悪く、心に余裕のない自分には眠くて仕方なかった。大して洗練されているわけでもない映像をだらだらと流さないで欲しい。何度も寒々とした場所で歌わせるのも、狙いすぎ。鼻水を凍らせて歌っている団員の姿には笑ってしまった。
[DVD(字幕)] 3点(2005-11-27 23:43:35)
150.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
セオデン王とファラミアのエピソードのように、壮大な物語でありながら家族の確執のような小さなドラマを入れているのが上手いと思う。心理描写をおろそかにせず、むしろ各登場人物の小さな物語を積み重ね、織り上げるようにして巨大な世界を創造している。世界の物語とは同時に個人の物語でもある。細やかな描写があってはじめて、合戦シーンでの歴史のダイナミズムを感じることができるのだ。この映画がちっぽけな虫から始まり、平和な家庭に終わるのは象徴的。最初は10点だと思ったけど、SEE版には劣るので9点。やっぱりサルマンの死をカットしたりとか、まずいでしょ。
[映画館(字幕)] 9点(2005-11-27 04:31:02)
151.  案山子男(OV)
友人が「すごい面白い!!」と超絶賛していたので手に取った。今となっては、その友人との関係を考え直したい気持ちでいっぱいだ。ホラーとして怖くないのはもちろん、B級を楽しむノリで鑑賞して大して笑えない中途半端な出来。コメディを狙ったとしてもはずしている。ついでにメイキングも観た。殺人鬼役の条件として「体操選手であること」をあげる理由がさっぱりわからない。そういえば、少年隊みたいな動きして自動車に追いついてたっけ? 監督の言動には正直引いた。「人生は女と同じ。穴を見つけて(*´Д`*)ハァハァハァ 」……こいつはだめだと思った。本当に、だめだと思った。
[DVD(字幕)] 2点(2005-11-21 22:56:39)(笑:2票)
152.  恋愛適齢期
ジャック・ニコルソンの演技に関しては文句なくよかった。ダイアン・キートンも非常に魅力的。高齢の彼女がもてもての脚本は女性にとって都合が良すぎるという声も多いけど、男性の自分から見てもとくに違和感を覚えなかった。年をとってもあれだけ可愛らしければもてるだろう。  ただ途中までは俳優の魅力でとても楽しく観られたのだが、二人がケンカするシーン以降は冷めてしまった。無理やりドラマチックな展開にしようとして、無駄に長くなってしまっている。  それに主要登場人物の感覚が、あまりにも幼稚。精神年齢が低いので情緒も中学生レベル、思春期レベルである。恋愛適齢期はまだ来ていないんじゃないか? キアヌが可哀そう過ぎるぞ。コメディとしては楽しめるが、ラブストーリーとしてはバカバカしい点が目立つ。
[DVD(字幕)] 6点(2005-11-21 22:35:50)
153.  オペレッタ狸御殿
ああ、むちゃくちゃ。いい意味で、むちゃくちゃ。これは観るドラッグ、映画という名の幻覚剤だ。マジックマッシュルームを齧ってメリーゴーランドに乗ったかのような、サイケデリックなトリップ感。観ているだけで脳細胞がぷちぷち弾けていくような快感がある。点数としては7点をつけておいたけど、これはもう通常の映画のものさしで測れるような作品ではない。鈴木清順はもはや一つのジャンル、一つのまったく異なる世界であって、もう映画としてどうこういう気になれない。異次元を垣間見れて楽しかったね、って感じだ。とくにびるぜん婆の散り際が最高。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-09 18:14:46)
154.  エターナル・サンシャイン 《ネタバレ》 
詩的な映像と音楽がツボにはまり、最期まで夢中になって観ることができた。崩壊していく記憶のなかでの追いかけっこのシーンは美しく、ファンタジックで、それでいて身を引きちぎられるように切ない。幼年時代の記憶に紛れ込んで、ジョエルは「子供の頃に君と出会いたかった」という。愚かしい夢だけど、誰しも似たようなことを考えたことがあるんじゃないだろうか。クレメンタインが昔は自分をブスだと思っていたと話して泣き、ジョエルが抱きしめるシーンも好きだ。氷上に寝っころがった夜、転げて笑いあった雪の日、シーツごしの日差しのなかで抱き合った時間。美しい記憶の結晶が生み出した万華鏡。壊してしまって初めて価値に気づくなんて、ちょっと間抜けが過ぎる。二人で過ごした日々はお互いの心に深く深くくい込んでいて、記憶が消えたときには自分自身の一部をも失っている。失くした破片を捜して最後に再会したことは奇跡のようでいて、ある意味では必然だった。あまりにもきれい過ぎる恋愛物語は鼻につくのが通例だが、ここまで素敵な作品を差し出されては文句は言えない。斬新な脚本と洗練された映像で、『人を愛することの素晴らしさ』という普遍的過ぎてほとんど陳腐になりつつあるテーマを見事に現代的に描いてみせた。素晴らしい手腕に、素直に拍手。
[DVD(字幕)] 8点(2005-11-07 11:26:35)(良:2票)
155.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
最期の選択について。同じ障害を抱えていても強く生きている人はいるんだから、彼女も死ぬべきではない――そう思う人もいるだろう。でもボクシングというスポーツにすべてを賭けていた彼女が全身不随になってしまうことの苦しみ、しかも支えてくれる家族もいないという孤独を思えば、彼女の決断を責めるのはおかしいと思う。そもそも人の心の苦しみはあくまで主観的なもので、他のケースと比較して重い軽いとたやすく言えるものではない。身体障害のない人がどうこう言うべきではないし、たとえ障害があったとしても、苦痛の感じ方は個々人によって異なるのだ。  同じように、この結末に希望を見出せるか否かもまた人によって違う。少なくとも私は、救いのない絶望的な結末だとは思わない。むしろ不幸と断ずることは失礼じゃないかとすら思う。短い間とはいえ栄光を手につかみ、心から信頼できる人物と出会うことのできた人生。生きるために生きるのではなく、ボクサーとしての誇りのために、ほんとうの意味で「生きる」ために死んだ(*)。最後の瞬間、ベッドの上の彼女の笑顔にはまぎれもない幸福があった。重い物語ではあるけれど、一口に不幸とも幸福ともいいきれない、歓びと哀しみの入り混じった物語だ。少なくとも彼女の人生にはかけがえのない生の実感があったではないか。何の価値もない絶望的な人生だったなんて、誰が言えるだろう? 幸福のあり方は人によって違うのだから。この映画には確かに、生きることの美しさがある。イーストウッドの映画は暗い。しかしただただ陰惨なのではなく、光を探すために暗闇を見つめる、そんな映画なのだと思う。 (*念のためにいっておくと、全身不随の生活が「ほんとうの意味で生きていない」と言っているわけではありません。あくまでも「彼女にとって」の話です。文脈からわかると思いますが念のため)
[DVD(字幕)] 8点(2005-11-06 12:06:48)(良:1票)
156.  ロード・オブ・ザ・リング - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
監督のファンだし、続く二作については文句なく素晴らしいと思うが、残念ながら一作目については手放しに褒めらずにいた――この特別版を観るまでは。  30分増えただけで、まったく別の作品になっている! キャラクターひとりひとりに厚みが増し、通常版では詰め込みすぎに思えた脚本が、長くなって逆に自然で無理のないものとなっている。原作が大長編であるだけに、特別版のほうが本来の出来に近いのだろう。  主人公が弱々しいのでのめり込むのはたやすいし、異世界を舞台とした物語でありながら、登場人物たちの抱く感情は普遍的で理解できるものだ。CGを駆使した迫力満点の映像と、心から感動できる人間ドラマを両立させている映画はなかなかない。遊園地で遊ぶように楽しんで、しっとりした小説を読むように泣くことができる。とても贅沢な作品だ。  ところで、通常版を鑑賞したときは「ドワーフのギムルはだんだんお笑い専門になってきて可哀そうだなあ」と思っていた。しかし特別版を観て、最初から最後までお笑い専門だったことを知った。思ってたよりずっととぼけた、愛すべきキャラクターだったんだなあ。
[DVD(字幕)] 10点(2005-11-04 16:30:11)(笑:2票)
157.  ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
登場人物は個性的で魅力的だが、どっぷり感情移入できる人物は少なく、おまけに目まぐるしく展開するので物語が散漫。キャラは奇抜な割りに話は平坦で、大きなドラマはない。細部にこだわる前に、素直に楽しめる脚本を考えるべきだったのでは? 『ガープの世界』『ホテル・ニューハンプシャー』のようなアーヴィング作品を思い出したが、何か違う。最後に車が突っ込んできて犬が死ぬエピソードはいかにもアーヴィング的だが、アーヴィングは犬が死んだ直後に新しい犬を連れてくるなんていう無神経な話は絶対に書かない。たとえ寓話的な雰囲気でも、登場人物の心情をしっかりと描いて、血の通った存在にしなければ心を動かされることなどありえないだろう。自殺未遂のエピソードにすら痛々しさを滲ませることができないというのは致命的な欠点だ。この映画で人間として厚みを持って感じられたのはせいぜいロイヤル・テネンバウムス一人か。 長男親子の魅力に免じて、6点。
[DVD(字幕)] 6点(2005-10-29 11:51:05)
158.  インファナル・アフェア 無間序曲 《ネタバレ》 
悪党であるはずの人間がほんの一瞬だけ垣間見せる人間らしさ、あるいは善良であるはずの人間が魔が差したばかりに犯す取り返しのつかない罪。善と悪、どちらに転んでもおかしくない人間の性が上手に描き出されている。とくに死の間際のハウの表情には心を動かされずに入られなかった。心から信頼していた弟の裏切りに気づいた瞬間、彼の胸にはどんな思いが去来したのだろう?  ただし、サムについては役者の選出に失敗しているように思える。深刻なシーンでも、いまいち役者がブサイクすぎるというか、犯罪組織の頭が持ってしかるべき迫力というものがなく、入り込めない。  ハウが四人を組織に引き込むシーンや、四人を粛清するシーンには迫力があった。後者はあきらかに『ゴッドファーザー』に似ているが、それでもなお魅せる。映像のセンスが現代的で洗練されている。  しかし疑問が一つ。サムによって兄を追い詰められたヤンが、どうしてサムの仲間になれて、しかも後々絶大な信頼を得るようになったんだろうか。ハウの遺骸に泣いてすがっていた男を、ハウの一族を皆殺しにしたサムが信じるか? 復讐されてもおかしくないんだから殺しておくのが当然では?
[DVD(字幕)] 8点(2005-10-26 00:06:24)
159.  ヴァン・ヘルシング
最初から遊園地のアトラクションを楽しむつもりで観たので、何の不満もない。話の整合性がないのも許せる。お行儀よくまとめるよりも、とにかくやりたいこと全部やってしまう、子供のような大胆さがいい(皮肉でなく)。CGとアクション先行のイベント系作品のなかでも、ソマーズほど徹底的にふざけて、遊んで、冒険してくれるバカ(悪口でなく)は逆に貴重だ。必ず、いくらなんでもやりすぎというくらいにやってくれる。  ターザン的空中ブランコシーンが山ほどあって、しかも毎回それなりにひねっているけど、よっぽどああいうアクションが好きなのだろうか? でも冒頭の対ハイドの場面がいちばん好きだな。あと、ヘルシングといいヒロインといい、君たちの肋骨は鋼でできてるんですか? ゴムまりみたいに弾んでましたけど。  ラストシーン、批判も多いけど案外好き。ヒロインが途中で言っていた2、3の意味ありげな台詞の意味が一気に氷解するんだよね。不覚にも、ちょっぴり泣きそうに。これで泣いたらマジで不覚なので、我慢したが。
[DVD(字幕)] 7点(2005-10-19 02:24:18)
160.  シン・シティ
『パルプ・フィクション』への最高にクールなオマージュ。これほどの敬意をもらって、タランティーノも幸せだろう。  想像を絶する暴力と、その奥底に流れる温かな情愛。原作はコミックだし、単純に面白いのも確かだが、暴力のカタルシスの裏には常に悲しみが潜んでいて、浅いドラマには終わっていない。敵役だけじゃなく、ヒーローも皆罪を犯している。善を成すためには悪を為すしかなく、罪を償うためには罪を犯すしかない、という運命が苦い。  この街で頼りになるのは力だけ。だけど力の影にはときおり優しさが見え隠れし、暗闇に支配されたこの街が、ときおり途方もなく美しい瞬間を見せることに気づく。ときには交叉しながら繰り広げられる三人の物語が重層的に「罪の街」を浮かび上がらせ、この荒唐無稽な世界がいつのまにかリアルになる。それと気づかぬうちにこの冷え冷えとした世界に魅き込まれ、観る者はいつのまにか「罪の街」の住人になっている。目を逸らしたいのに、いつまでも見ていたい、残酷で美しい街。  グロテスクな映像が苦手じゃなければ、お奨めします。
[映画館(字幕)] 9点(2005-10-16 04:16:59)(良:1票)
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