1641. ロング・グッドバイ
本作の原作はもちろんチャンドラー「長いお別れ」ということになるのですが、基本プロットのみを借りて別世界を作り上げたような作品ですね。原作をバッサリ刈り込んだのみならず、大きな改変もあるのですが、それより何より、ここでフィリップ・マーロウ役を演じているのはエリオット・グールド。あの1人称の乾いた語りで描かれる反骨と行動の男とは大違い、飼い猫の機嫌を取り損ねて家出されてしまう、ただヨレヨレのオッサンな訳です。隣人がハダカでヨガをやってるオネーチャンたち、というのも脱力させられます。一応は、友人の妻殺し疑惑と自殺とか、行方不明の作家の捜索依頼とか、基本プロットに則った展開はあるものの、本作におけるマーロウのイメージたるや、何だか「自分がいじめられている事に気づいていないいじめられっ子」みたいなんですね。そういうマーロウが、何を仕出かすかわからない奇妙な登場人物たちに囲まれつつも、飄々としている。それが何ともユーモラスなのですが、同時に彼自身もまた何をやらかすかわからない存在となっていて、つまりは原作と離れた行動も平気でとってしまう油断のならない存在ともなっています。ラストシーンに至っては、『第三の男』の引用かと思いきやそれもおどけて崩して見せる。実にシャレた作品です。ところで本作の後半で、シュワそっくりの若者が登場して、しかも服を脱いでムキムキボディを披露してくれるのでシュワ本人であることが我々にもわかるのですが(笑)、本作といい、『さらば愛しき女よ』のスタローンといい、チャンドラー映画には何か「筋肉枠」みたいなものでもあるんですかね? [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-31 08:55:43)(良:1票) |
1642. 狩人の夜
不思議な作品。内容的には、一種のサイコサスペンスでして、宗教の仮面を被ったシリアルキラーたるロバート・ミッチャムが、隠された金を目当てにやってきて、未亡人を洗脳してしまう。そして金のありかを知る子供たちを執拗に狙い、子供たちは身の危険を感じて・・・ってな感じ。だけど、サイコサスペンス路線へ一直線、という訳ではなくって、もっと奇妙な味わいがあります。サスペンス描写に的を絞るんなら、もっと子供の視点に限定することで(つまり子どもたちの知らない「何か」が行われていることを匂わせることで)ロバート・ミッチャムの怪しさなり、迫りくる危機なりを描くこともできたと思うのですが、そして実際、本作にもハラハラドキドキな場面が描かれてもいるのですが、必ずしもその方面へと徹底した作品では無いようです。サスペンスというよりも、一種の寓話であるかのような見通しの良さがあり、それがまた、何とも言えない不気味さにつながっているのが、本作の特徴。ラストも、解決したという感じがあまり無く(というより、安易な解決を求める我々を揶揄しているかのような)、かなりキモチワルイ作品です。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-26 23:20:52) |
1643. ヒート
ド派手な銃撃戦のこの作品に対して、こういう喩えをするのも妙なんですが、それでもこの映画、なんだか“線香花火”を連想しちゃうのよね。ラストの対決の場面なんて、どこか、線香花火の最後の「散り菊」のような余韻を感じさせます。この映画の物語自体も、ひとつのテーマを循環形式のごとく変奏していくような感じ、これもまた、単色ながら変容を繰り返す線香花火。警察と強盗団の対決を描いているようでいて(いや実際描いているけど)、「どのように捜査して」「どのように相手の動きを突き止めて」などといった細かい描写は大胆に省かれており、まるでお互いが相手に執拗に絡む事が当然であるかのような、まるでそのことが運命として定められているかのような。物語には何組かの男女が登場し、それが決して対照的に提示されるのではなく、むしろ、対決する男たちの間に存在する共通項をあぶりだすために提示されているようでもあります。アル・パチーノとロバート・デ・ニーロとの関係、それはライバルというよりはもはや、共犯関係とも言うべきもの。アル・パチーノがギョロ目をむき、短足に鞭打ってオッサン走りを繰り広げる姿は、なかなかにカッコよかったりもします。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-26 22:37:19) |
1644. ガタカ
生まれつき「劣等」の烙印を押された男は、他人になりすまし宇宙飛行士を目指す。わずかな痕跡からも人物同定がなされてしまう未来社会。異分子である彼は、ひたすら「自分自身の存在を消すこと」によってのみ、存在が許される。うわーコレ、ツラい。何がツラいって、我々も社会生活を乗り切っていくにあたって多かれ少なかれ、そういう不自由、偽りの仮面を被って素の自分を隠し続ける不自由の中に、生きてる訳ではないですか。何とも身につまされますなあ。そういえば、同様に身につまされ系設定のSF作品『TIME/タイム』も、同じくアンドリュー・ニコル監督の作品でしたね。まあ何にしましても、本作の主人公、別に我々のように穏便に暮らしたいがために自分を消している訳ではなく、宇宙飛行士となる夢のために敢えてこの苦難に身を投じている、というところにドラマが生まれます。打ち上げられるロケットが遠くに垣間見える。この「垣間見える」ということが、主人公の憧れの気持ちを実によく表現しています。現実世界以上に厳しい設定の世界でありながら、ラストはいささか甘いものであるかも知れませんが、ただ甘いだけではなく、そこには犠牲を伴うという苦さもあって、余韻が残ります。それにしてもジュード・ロウ、「他人になりすまされる」役が、良く似合う・・・? [CS・衛星(吹替)] 9点(2015-05-19 22:39:09) |
1645. 13日の金曜日(2009)
なんぞ極端に軽そうなモンでも観ようかい、という訳で、この2009年版13金。しかしこりゃいくらなんでも軽すぎて、そもそも、旧作の設定をまーったく知らずにコレを見た人がいたとして(多分いないと思うんだけど・・・)、何が何だか、わかりますかね。「設定その他、どうせ皆知って観てるんだから」とばかり、もうテキトーなんです。冒頭からショックシーンを持ってきて、でも、描写というものが「断片的=緊迫感」とでも思ってるのか、ただ見えづらいばかりで、「コワイ」以前に「よく見えない」「ワカラナイ」が感想として先にくる。以降のショックシーンも押しなべて同様。ただ、殺人シーンでは、肉体に対する貫通というものを好んで描きたいらしく、ちょっと手作り感のあるショック描写が微笑ましかったりもするのですが。殺戮描写だけでは映画になりえず、それ以外の部分で、例えば不気味な平穏さみたいなものがあればよかったんですが(旧作13金ではそういう部分がチープさでもあれば魅力でもあった)、そういうのもなくって、その一方で「被害者の一人がジェイソンに囚われている」という羊たちの沈黙風のノリを加えてくるのが、いささか鬱陶しくもあります(囚われの彼女にどういう危機が迫っているのか? ただ単に囚われているだけ)。妹を探す男と山荘オーナーの息子との折り合いが悪く、「警察に連絡を」「出ていけ」と大ケンカしている場面。黒人青年が「外を見てくる」と出ていったとたん、その後は家の外の黒人青年側の描写ばかりとなって、家の中(先ほどの大ゲンカ)などそっちのけ。こういうのも、いかにもテキトーだなあ、と。ま、何かと懐かしさみたいなものは感じさせる作品ですが、懐かしさだけじゃあ、ねえ。 [DVD(字幕)] 4点(2015-05-17 09:06:02)(良:1票) |
1646. ロビン・フッド(2010)
《ネタバレ》 ロビン・フッドの映画、ってんだから、弓矢を曲芸のように射まくるのか、と思いきや。そういうファンタジーのノリではなく「伝説になる前の、生身の男」を描いた作品。主演はラッセル・クロウだからかなりオッサン臭い。もうちょっと若い俳優でもよかったんじゃないの、とも思うのだけど、要するにグラディエーターの変奏曲みたいな感じ。しかし大きく違うのは、この主人公、復讐のために立ち上がるのでもなんでもなく、背負った男気に導かれるままに流されて、最後には気が付いたら民衆の先頭に立って戦ってる、ってな感じなんですね、そこが面白い。フランス軍との海岸での戦い、弓矢部隊が放った矢は放物線を描いて敵へ雨あられと降り注ぐ、その様が実に見通しよく単純な構図で描かれるのだけど、必ずしも弓矢の腕前を劇中で発揮してこなかった主人公が、その無数の矢を代表するかのように最後、一本の矢をこれまた放物線状に放ち、宿敵を仕留める。実にカッコいいじゃないですか。普通のオッサンが「伝説」となる、まさにその瞬間なのです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-13 22:23:06)(良:1票) |
1647. 緋牡丹博徒 花札勝負
100分に満たない短さの中に、人物とエピソードをこれでもかと盛り沢山に配置していく、確かにその演出の手際の良さってのはありますね。実際、えらくオモシロいんです、が・・・ちょっと盛り込み過ぎて、ほとんどハミ出ちゃってますね(本作単独では意味をなさないような助っ人がイロイロと登場)。そういうバカバカしさと、高倉健あたりから漂ってくるシリアスさとが、どうも噛み合わないところもあり、クライマックスの殴り込みがもうひとつカタルシスに繋がらない感じも。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-05-09 16:37:44) |
1648. 007/カジノ・ロワイヤル(2006)
冒頭でパルクールを(こんなに長々とやる必要もないくらい長々と)展開して、新生007映画は肉体アクションで行きますよ、と。実際、新ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグは、数々のアクションをこなしてみせ、実際、全力疾走するシーンもやたらカッチョよいのです。うーむ、やっぱボンドと言えばロジャー・ムーアでしょ、という病んだ世代(笑)としては、あの「アクションはすべてスタントマンに任せてますから」と言わんばかりの涼しげな表情が懐かしくもあったりするのですが、ま、アレはアレとしまして。なにせこの、クレイグ=ボンドのかっこよさ。そして「新・第1作」と言うか、むしろ「第0作」とも呼ぶべきこのリニューアル作品ならではの、ときに感情を隠すことなく人間味をみせる(それなりに、ですが)ボンドの姿があります。いくらボンドだって、睾丸を攻撃されれば痛いし恐怖も感じるのです(これまでの作品におけるボンドはそもそも、まず睾丸を第一優先で守ってたもんね)。正直、カジノの場面はさほど盛り上がらないし、映画の終わりの方も間延びした感じ、全体的に作品をもう少し引き締めて欲しい気もするのですが、それでも007シリーズの中で異彩を放つ作品、いいもん見せてもらったな、と。 ただ、ダニエル・クレイグがボンド役を退いたら、次やるヒトは大変ですな。ロジャー・ムーアの功績はやはり、「誰でもボンド役が演じられそう」なところまでハードルを下げた点ではないでしょうかね、ハイ。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2015-05-09 09:47:15) |
1649. フルスロットル(2014)
ワイルド・スピード第7作と並び、ポール・ウォーカーのいわゆる「遺作」(=没後に公開された作品)となった作品ですね。ワイスピ7がやや中途半端な出演(なのをいささか強引に彼にスポットライトを当てて追悼作にした)だったもんで、彼の最後の勇姿を味わうには、本作の方がよろしいかも。って言っても、コチラもそれなりに中途半端ですが。もう一人の主人公である超人的身体能力のダヴィッド・ベルとのコンビが、絶妙のナイスコンビとも言えず、好対照な凸凹コンビとも言えず、どうも色分けのはっきりしない組み合わせ。1足す1が普通に2になっただけの脈絡ないコンビがたまたま一緒に戦っている、という感じでいまいちパッとしないんですね。しかしパッとしないからと言ってツマラン訳じゃない。ダヴィッド・ベルがアクロバティックな身体能力を見せつければ、ポール・ウォーカーもまた数々のアクションを自らこなして見せてくれます。さらにカーチェイスシーンともなれば、オレに任せろ、といった感じ、アクション俳優としてのポール・ウォーカーをたっぷり堪能することができます。で、主演2人が展開するアクションというのも、実は細かいカット割りに支えられており、もう少し長回しのアクションがあってもよかったんじゃないの、とも思わないではないですが、カット割りの楽しさってのもここにはある訳です。あと、主人公2人の性格付けがはっきりしないのを補うかのように、RZAが中華包丁片手にユニークな敵役を演じてます。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-05-07 22:34:49)(良:1票) |
1650. 黄色いリボン
退役間近の老大尉を演じるジョン・ウェイン、当時はまだ40歳過ぎ。だもんで、ヒゲ生やしたり、老眼鏡かけたりした役作りで、時々あまり彼らしく見えない場面もあるのですが、しかし主人公のキャラに関してはまさにジョン・ウェインそのもの! というよりはもしかしたら、この作品が結果的に彼をその方向に引っ張って行ったのかも知れませんが。一見頑固で武骨で、でもどこか茶目っ気があって。後の『ヘルファイター』とか『グリーン・ベレー』とかにおけるジョン・ウェインも、この流れの中にあればこそ、何だか憎めない。本作、先住民族と一触即発の状況にある騎兵隊を描きながらも、派手な戦闘シーンはあまり無くって(でも馬の疾走シーンではちゃんと迫力を味わえます)、むしろ主人公の大尉は、無用な戦闘を避けるために先住民の長老との話し合いに臨む、この辺りは年の功とでもいいますか。若者に手を焼いているのは、敵も味方も同じ。引退を迎える最後の日まで、職務に忠実であり、それ以上に、仲間である隊に忠実であり続ける、名もなき老大尉の姿。つまり、国を守り支えてきたのは、決して「戦い」などではなく、「人間」そのものなんだなあ、と。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-05-05 09:53:47)(良:1票) |
1651. 借りぐらしのアリエッティ
《ネタバレ》 冒頭、車から降りた少年は、まず木漏れ日を見上げ、次に視線を上から下に移動して草陰に動く「何か」を見る。この何気ない動きがいいですね。彼は小人の姿を見ることを望む。まあ、この「見たい」って欲望が、なかなかにイヤラシイ感じもしちゃうのですが、何度かもう少しで姿を目にしそうになりながら果たせない。この繰り返しが、ついに少年と小人の少女アリエッティが正面から顔を見合わせる場面を盛り上げるのだけど、このシーンが本当にイイんですね。ゾクッとくるのです。このゾクッとくるのは、イヤラシサとは違った感じ。見つめあった瞬間に風が吹き、背景の花が揺れる、あの美しさ。これぞアニメーションの魅力とでもいいたくなります。またこの場面に限らず、随所で見られる、とことんまで細かいアリエッティたちの動きにも作者のこだわりが感じられ、これも作品の感動に結びついています。そして、人間から隠れつつ人間に依存するだけの弱い存在と思われた小人、そのひとりであるアリエッティが、心臓病を抱え手術を前にした少年に、勇気を与える存在となること。「借り」とか「貸し」とかいう表現が妥当かどうかはわかりませんが、エエ話ではないですか。 [地上波(邦画)] 8点(2015-05-04 17:01:29)(良:2票) |
1652. バグダッドの盗賊(1940)
ディズニーアニメ『アラジン』の原点。というか、そのまんまですやんか。アブーにジャファーにジニー。いやそれより、ジャファーにたぶらかされる王様のおまぬけな表情が、あんまりソックリなもんで。それにしても特撮満載、アイデア満載の、実に楽しい作品。そりゃ多少はチャチなシーンもあるけれど、巨大クモの動きとか、人間を乗せてスーッと向うに飛んでいく空飛ぶ絨毯とか、目を奪われるシーンも多々。ヒーロー役がヘナチョコで何とも頼りなく魅力に乏しい点、これには目をつぶる必要がありますが。あとはツボから現れた巨人の赤フンがいろんな意味で目にまぶしい、1940年カラー作品。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-04 11:40:22)(良:1票) |
1653. ライラの冒険/黄金の羅針盤
よく特撮を売りにした映画でCG画面が暗いと「よく見えない!」とか文句を言われるのですが、いやいや、暗いからこそ出る雰囲気ってのもある訳で。例えば本作の、明るく見通しよくそれ故にどうにもオマヌケなシロクマ対決などを見ていると、やっぱりそう思っちゃうのです。それにしても本作のこの中途半端さ、どうしたものか。ライラはアタリマエのように「冒険」とやらに乗り出し、いかに怪しそうなオバちゃんはやっぱり怪しく、なんだか段取り良く「冒険」とやらが進んでいく。黄金の羅針盤にも神秘性が感じられず、ちっともワクワクしない。いったいどう楽しめばよいんだろう、と思ってしまい、とりあえず続編が作られないらしい、というニュースに少しほっとしてしまう。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-05-03 20:30:49) |
1654. 大菩薩峠 完結篇(1961)
監督が森一生に交代した第3作、概ね前2作の雰囲気が維持されていて、大きな違和感はありません。今作はいよいよ完結篇、中盤は完全にお化け映画と化し、ラストはケープフィアーばりの大スペクタクルが待っております。しかしこの大映版3部作、内田吐夢の東映版からほとんど間もなく製作されておりますが、アチラが相当にイッちゃってるのに比べると、比較的おとなしい感じがするのは、千恵蔵のアクの強さに対する雷蔵の上品さ、でしょうか。結局は悪の道に染まり切れない雷蔵・竜之介、その最期において、とってつけたように息子の名前を連呼するのが、何だか弱々しい感じの否めないところ。しかしいずれにしても、この大映版も、人知を超えた超自然を感じさせるのは、確か。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-05-03 08:55:47) |
1655. ワイルド・スピード/SKY MISSION
カーチェイスをお腹いっぱい、本当にありがとう。と言いたいところなのですが(カーチェイス大好きなので本当にそう言いたいのですが)、うーん、ちょっと残念なところも。アゼルバイジャンの山中での断崖や斜面におけるアクション、お次はアブダビの高層ビルにおける、『ブラックライダー』的なアクション、さらにはアメリカに舞い戻っての、街ごと破壊する勢いのアクション。そのいずれもが、前作以上に、「カーチェイス=2次元の戦い」にとどまらない3次元的な動きを見せ、各セクションはそれぞれ間違いなく「スゴイ!」のですが―――セクションごとに物語が完全に分離してしまっていて、次第に否応なく高まる盛り上がりというようなものがあまり感じられません。凄まじいアクションを次から次に一通り見せてはもらったけれども、映画全体を貫く緊張感という意味では今一つ。さらに問題なのが、アクションの最中に、登場人物たちの間に、「指示」という形での解説調のセリフを交わさせること。確かにワカリヤスサには貢献するけれど、これも緊張感を削ぐ一因。ちょっと4作目『MAX』の停滞感を思い出したりもするので、今回、監督がジェームズ・ワンに交代したことが原因とは限らないとも思うのですが。まあいずれにしても、サービス精神に満ち溢れた、呆れるばかりのド迫力アクションであることは間違いない訳で、やっぱりその点に関しては、ありがとう、と言っておきましょう。ポール・ウォーカーの死後完成され公開された、いわゆる「遺作」という形になった作品で、最後は「ポールに捧ぐ」」というクレジットで締められるのですが、彼のために捧げられたラストシーンは、たとえそのために作品がいびつなものになろうとも、7作続いたシリーズの掉尾を飾るものとして、ふさわしいものとも言えましょう。ただ、まだシリーズを続けそうな含みがあるのがちょっと心配(笑)。ついでに一言、カート・ラッセルの役どころはよくわからん。ベルギービールのうまさもよくわからん。 [映画館(吹替)] 6点(2015-05-03 08:24:41)(良:1票) |
1656. 大菩薩峠 竜神の巻
《ネタバレ》 三部作の第二部は、机竜之助が天誅組と行動を共にし、争いの中で失明するくだり。第一部では登場人物たちを物語の中で配置していく面白さがあったけど、第二部となるとどうしても、主要登場人物たちの関係がある程度固定されてしまい、これによって物語もやや停滞してしまいます。第一部ですでにあり得ないような偶然のめぐり合わせを乱発してしまっているのも、第二作で息切れしてしまう一因かも。とは言え、三隅監督の目を奪うダイナミックな演出は前作に続きここでも健在。雷蔵の妖気も健在。そして前作と同じく兵馬との対決を前に映画は終わり、次回斯うご期待。何もそこまで前作に合わせなくとも。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-30 18:01:53) |
1657. 大菩薩峠(1960)
《ネタバレ》 この机竜之助を観たらもう、眠狂四郎役も市川雷蔵に回るってもんです。虚無感あふれる、魔道に堕ちた剣士。何を考えているかわからない、たぶん何も考えていない(笑)この主人公を特徴づけるのは何といっても、雷蔵の眼光ですね。この眼光の前には、登場人物たちが都合よく再会するご都合主義なんて、まるで気にならない、まさにすべてが起こりうる世界。とは言ってもこの第一部は、新撰組との絡みもあったりして比較的なじみやすい物語です。で、ラストは、兄の仇をうつべく竜之介の前に現れた兵馬との、(竹刀ではなく)今回は真剣勝負、というトッテモいいところで終わってしまい、次回斯うご期待、となる訳ですが。雷蔵演じる妖怪・机竜之介に対し、中村玉緒がこちらも負けじと見事な妖怪ぶりを発揮して、ホンモノのオバケは登場しないまでも、十分に怪奇映画テイストを味わえる、伝奇チャンバラ映画となっております。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-04-30 10:05:43) |
1658. 旗本退屈男(1958)
市川右太衛門映画出演三百本記念作、という訳で、往年の大スターから若手スターまで、もう出るわ出るわ、まさにスター百科事典の様相。天下御免の向う傷、ご存じ旗本退屈男・早乙女主水之介を、右太衛門がクドい表情と流麗な殺陣で演じれば、彼の右腕として若き日の錦之助もキンキン声で大活躍。伊達忠宗役の千恵蔵はバカ殿としてコミカルな一面を見せますが、年齢を隠すべく厚いメイクを施した右太衛門の顔が照明に白く浮き上がる時、千恵蔵よりも右太衛門の方がよほどバカ殿に見えてしまったり。さて内容はと言えば、伊達藩におけるお家騒動、お世継ぎの毒殺未遂事件に、そこに甲賀忍者やら伊賀忍者やらが絡んできて(黒装束の忍者軍団、カッコいい割に妙に弱いのが気になりますが)、スターが盛り沢山なら内容も盛り沢山、まさにごった煮状態。さらに、スターらしい大仰な演技の右太衛門と千恵蔵のセリフの聞き取りにくさに加え、大友柳太朗はいつも通り滑舌が悪く、もう内容云々よりもこの豪華な雰囲気さえ楽しめれば、とりあえずよろしいかと。千恵蔵が右太衛門をにらみつければ、背景に浮かび上がる右太衛門の影が千恵蔵を睨み返している、カッコよさ。東映の、豪華時代劇大作です。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-29 17:36:15) |
1659. ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE
幼稚園の息子にどういう映画から聞いたら「あんまり たい って感じじゃないな。どっちかというと コナンふれあうルパン って感じやな」と申しておりました。何のこっちゃ、ただしまあ、気持ちはわかる。いずれにしても、ルパンとコナンを一挙に登場させて、これだけ贅沢感を味わえない内容ってのも、ずいぶん寂しい限りです。そもそも、事件に魅力ないしねえ。スカイツリーにぶら下がるシーンなんて、本来ならアニメの腕の見せ所だと思うんですが、平凡な描写に終わってます。 [地上波(邦画)] 3点(2015-04-29 12:29:54) |
1660. 戦うパンチョ・ビラ
メキシコ革命の英雄パンチョ・ビラの姿を、彼とともに戦うことになったアメリカ人の目を通して描くのですけれども、精悍な顔つきで何考えてるかワケがわからんビラ役のユル・ブリンナーに対し、このアメリカ人の主人公の役がロバート・ミッチャム、ヨレヨレとしたテキトーな感じがいい味出してます。そう、このヒトもたいてい、テキトーでして、メキシコ革命のドサクサまぎれに、複葉機を操り武器を売る商売、はたまた世話になったおっちゃんの娘にさっそく手を出してみたり、おいおい、大概にせえよ、と言いたくなるのですが、パンチョ・ビラはその数段上を行くテキトーさ、要するに規格外の男。このいかにも陽性のアナーキズムが、本作の楽しいところです。主人公は自慢の複葉機でビラとともに戦うことになり、空からの攻撃をさらに空撮を多用してダイナミックに捉えたアクションシーン、見応えあり(ヘリからの撮影と思うのですが、まるでクレーン撮影のように用いて、なかなかやってくれます)。善悪に単純にとらわれない自由さ、クールに自らの信条に従うチャールズ・ブロンソンの存在も光ってます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-04-27 22:30:59) |