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鱗歌さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3957
性別 男性
年齢 53歳

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1701.  ローン・サバイバー
実際の事件に真摯に向き合おうとしていて、あるいはそのことに引きずられすぎている面もあるかも知れないし、またその割にはアフガニスタンが舞台にも関わらずロケーションがいかにも、アメリカの森、という感じがしちゃって、これでいいんだろうか、という気もするんですが。でも凄い。冒頭に過酷な訓練シーンがあり、要するにこの作品に登場する彼らは皆、この凄まじい訓練を受けてきたエリート軍人なんだけれども、作戦の途中に発生した不測の事態、民間人ではあるけれど敵かも知れない目撃者の処置については、どんな過酷な訓練もその答えを教えてくれはしない。前半は、森に身をひそめる彼らの姿が嵐の前の静けさのように描かれ、しかしそれも、無抵抗な相手を殺すかさもなくば自分たちを危険に晒すかという苦しい選択の焦燥感に置き換えられていきます。そして後は。ひたすら襲いかかる敵との絶望的な戦い。あくまでアメリカの側から描かれてるので、相手側がジャンジャン殺されていく割に、主人公たる4人の兵士はケガを負いつつもしぶとく戦い続けるのですが、だからと言ってご都合主義とは言えない、言う気も起らない。崖から転落し、敵に撃たれ、満身創痍、それでも生きている限りは戦い続けなければならない、この辛さ。むしろいっそ、簡単に撃ち殺された方が楽ではないのか。しかしそれでもなお、生き残ろうとし、あるいは仲間を生き残らせようとし(そのためにある者は自らの命を失うことになり)、さらに終盤では「仲間ではない他国の兵士すらも生き残らせようとする」姿までもが描かれる。生と死が何で分かれるのか、それはまさに紙一重なんだけれども、少なくとも生を支えているのは自分だけの力ではない、だからこそ尊い「生き延びる」ということ、それをこの映画は、真正面から徹底的に、描いています。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2015-02-02 22:45:55)(良:1票)
1702.  マレフィセント
「昔々あるところにお爺さんとお婆さんがいました」でいいのに、それは一体いつなんだどこなんだ誰なんだ、と無粋に詮索するような、そういった類の作品ではあります。爺さん婆さんの若き日の恋愛を描いておこうとか、鬼ヶ島の鬼との因縁を描いておこうとか、そうだいっそ、彼らにはかつて3人の息子がいたが鬼の魔力によって犬・サル・キジに姿を変えられたことにしちゃおうとか(たかがキビダンゴで命がけの鬼退治に行く訳がない、という原作の矛盾点はこれで解消され納得がいく、とか)。んなこと、どうでもいいんです、というか、むしろ余計なことばかり。いや、本作を『眠れる森の美女』のパロディとして観るのなら、それはそれでアリかも知れませんけどね。3人の妖精があまりに不甲斐ないので、マレフィセントが実はオーロラ姫の面倒を見てました、だなんて、いかにも落語のネタに向いてそうじゃないですか。ただ、パロディ路線として楽しむには、いささかハジケ方が足りません。アンジェリーナ・ジョリーの、いかにも「マレフィセントの複雑な心理を演じてます」的な重たい演技が、いい方向には働いてない感じも。あと、比べちゃいけないのかも知れないけどやっぱりアニメ映画『眠れる森の美女』と比べちゃいます。見事なアニメの動き、雰囲気、スピード感。やっぱりあのアニメは凄かった。例えばオーロラ姫が糸車の針に指を刺してしまうあの場面の不気味さ。オーロラ姫のイッちゃった表情はアニメに軍配を上げざるを得ないし、ここで流れる音楽「長靴をはいた猫と白い猫」、どうしてこうも完璧にこのシーンにマッチしちゃうのか。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-01-27 22:48:15)
1703.  スタンピード
“スタンピード”ってのはあくまで邦題で、一応中盤にスタンピードな場面はあって見せ場にはなっとりますが、まああくまで中盤の一場面です。原題はThe Rare Breed、なんか地味ですね、でも物語のオチには直結しています。惜しむらくは、オチだけではなく、ジェームズ・スチュアート演じる主人公の生き様にも、古き良きカウボーイとしてのRare Breedが投影されていればなお良し、だったんですが、主人公のキャラクターが少々弱いかな、とも思います。イギリスからやってきた母娘とモコモコ牛、牧場までの彼らの旅を、スチュアート演じる主人公が案内するのですが、イギリス人にイギリス牛、何かと手を焼かされます。一方、彼らを妨害し付け狙う悪漢がジャック・イーラム。先にも述べたように逃げ場のない谷を牛の大群が押し寄せてくるシーンあり、悪漢との対決あり。しかしあくまでこれは中盤まで。後半はなんだか、どんどんおとなしい展開になっていっちゃいます(これも、主人公の存在の弱さが、一因かと)。とはいえ、全体的にユーモアが横溢していて、(オチも含め)楽しい作品にはなっております。モコモコ牛がゴッド・セイブ・ザ・クイーンの口笛におとなしく従う(ヴィクトリア女王の時代でしょうから「クイーン」ですね)のが可笑しいですが、作中にもあるようにこの曲、英国国歌であると同時に、米国では「アメリカ」として知られてたのでした(C・アイヴズ作曲の『アメリカ変奏曲』も、このテーマに基づく作品でしたね)。 また本作、音楽はジョン・ウィリアムズ(名義は“ジョニー”になってます)、彼の初期の仕事ですが、気合の入ったところが楽しめます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-24 11:08:28)
1704.  コクリコ坂から
『ゲド戦記』という父殺しの作品を作った宮崎吾朗監督が、今回は父を想う作品を作ってきた。と思いきや、脚本にかかわっているのが当の父親本人だもんで、額面通り受け取ってよいのやら。主人公のウミちゃんが、母から事の真相を聞いて涙する場面。一見、「愛する俊くんと実のきょうだいではなかったことを知り、安堵の涙」とも受け取れるけれど、そうではないのかも知れない。彼女がその前に涙を流したのは、夢で父親と再会した場面であったから。亡き父へ送っていた旗の信号を受け取っていたのが、実は俊くんであったから(そして、彼女も「旗が父の代わりに俊くんを呼んだ」と思っている、あるいは思おうとしている)。そして、この場面の彼女の涙は、母親の「お父さんと彼は似ているのか」という質問にうなずいた直後のものであったから(実際、俊くんの育ての父に言わせても似ているらしい)。そんな訳で、高校生の恋愛という題材を借りてはいるけれど、実際は、セクシャルなものではない、近しい者に対する普遍的で無条件の愛が、ここでは描かれているんだろう、なーんて思うと、実はコレ、『ポニョ』の変奏曲みたいな作品なのかもしれませぬ。
[地上波(邦画)] 9点(2015-01-23 00:04:54)
1705.  アメイジング・スパイダーマン2
このアメイジング・スパイダーマンというシリーズは、「スパイダーマン」という器を借りた、実は青春ドラマらしくって、ココに登場するスパイダーマンは、「青春」に忙しく、基本的に敵と一生懸命には戦ってません。それはそれでいいのかも知れないけれど(私はヤだけど)、その結果として、悪役の怪人にも魅力が無くなってしまっているのが残念。エレクトロが、とことんキラキラピカピカしまくる、しかしそれだけ、という作品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-01-22 22:45:14)(良:2票)
1706.  マーシャル・ロー(1998)
他国に干渉し、他国との間にさまざまな軋轢を抱えながら、自国の平和と自由を維持することはできるのか? アメリカがテロの標的となり、国内で次々に多数の犠牲者が発生する前半に対し、後半は、戒厳令の発令、アラブ系の人々への弾圧が描かれていきます。自由が損なわれ、国内もバラバラになっていく、その姿は、「軍人」と「FBI」が廊下を互いに別方向に歩み去り、間に「CIA」が残される、という構図にも象徴されています。が、バラバラになっているうちが、まだしも相互批判の余地があって健全なのかもしれません。本当に恐ろしいのは、戒厳令すらも必要としない無批判な熱狂による暴走、の方でしょうから。そういう意味では、やや楽天的な見通しの映画なのかもしれませぬ。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-20 22:41:17)
1707.  2ガンズ
冒頭のいきなりの放火、主人公ふたりの軽妙な掛け合いに、放火の手際の良さ、その割に放火の理由がやたらクダラナイのが、たいへん結構です。そこから時間は遡り、主人公それぞれの抱えたヤヤコシイ背景が描かれる訳ですが、もう面倒だとばかりに、クライマックスでは、事態を引っ掻き回した挙句に全部投げ出してしまうようなハチャメチャな展開。デタラメなのが、たいへん結構です。デンゼル・ワシントンにハズレなし、マーク・ウォールバーグにハズレなし、と(大して彼らの映画を見てる訳でもないのに)勝手に思っていたのですが、また当たってしまいました。デンゼル・ワシントンがマーク・ウォールバーグにライフルで狙われるシーン、一瞬「エッ何が起こったの?」と思わせる瞬間がありますが、クドクド説明しないでさっさと映画を先に進めていっちゃうのも、シャレてます。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2015-01-20 22:01:36)
1708.  柳生武芸帳 剣豪乱れ雲
うわー、山形勲さんだとは、気づきませんでした、失礼しました。さて、柳生武芸帳を巡るあれやこれや、もはやどうでもいいんですけれども、アクションが楽しめるからとりあえずOK。武芸帳を狙うやくざ者3人組のうちの二人が、画面外の十兵衛と睨み合う場面。一瞬の斬り合いの後、二人の頭から血がタラーッと流れるのが、カッチョよいではないですか。直前の睨み合いなんて、刀をこちらに突きだし、まるで3D映画。さらには、忍者軍団の襲撃に、槍を振り回し戦う十四郎十兵衛。ちょっと大袈裟な立ち回りも、彼がやればまさにお見事。戦いの最中に、行方知れずだった武芸帳がアッサリ見つかり、武芸帳に手を伸ばす敵の手を、十兵衛の槍が突き刺す。手はゴム製らしく、槍で貫かれた瞬間のプルプルッとした感触がなかなかにタマラナイのですが、流血シーンと合わせ、ちょっとした残酷描写がアクセントになってます。またさらには、妙に念いりにカットを割って妙に長々と続く、馬上の追跡シーン。こういうのを見てると、アクションこそ命、ストーリーなんてもうどうでもよくなる(それに、直前のシーンが夜みたいだったのに急に昼間になったことも、どうでもよくなる)。そして宿敵との対決。多少クサイところはあっても、十四郎サマなればこそ、この貫禄。というか、剣豪とも思えぬ必死の表情や地団太踏む悔しそうな表情を見せるあたり、十四郎サマの真骨頂でありましょう(それに比べ、松方弘樹の落ち着いたこと。演技しにくかったのは、父と子の果たしてどちらであったことか)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-01-15 23:41:02)
1709.  怪盗グルーのミニオン危機一発
子供がしきりに「ミニオンはどうしてみんなゴーグルみたいなのをつけてるんだろう」と気にしているのだけど、その前に、そもそもアレはどういう生物なのか、という疑問を持つのが先だろう、と。でもそういう疑問は持たない。いいことです。この第2作、1作目よりもさらにナンセンスを徹底。一応、第1作は子供たちとの交流だったから第2作は女性との交際、という訳なんでしょうが、正直どうでもよくって、とにかくバカバカしくって気持ちいい。「ウソ臭い動きをリアルに描く」CG描写もまた楽し。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-01-15 22:26:16)(笑:1票)
1710.  ミネソタ大強盗団
ざらついた映像に、細かいカット、そういう野心的な表現の先に待ち受ける激しいクライマックス(雨、執拗に鳴り響くオルガン、銃撃)と虚無的なラスト、といったところは、ニューシネマな感じもするんですけど、でも何となく違う。主人公をどこか突き放していて、等身大の人間としての主人公のあがきみたいなもは、ここにはありません。『ロング・ライダーズ』でも取り上げられた、ジェシー・ジェームズ一味が主人公ですけれども、何というか、単なるゴロツキみたいな描かれ方。義賊のような一面をチラと見せても、北部に対する鬱屈が先に出てしまうし、と言って陰に籠る訳ではなく、開けっぴろげで野蛮。黎明期のベースボールの(今見れば)トンチンカンな描写を、空中の球を銃で粉砕することで断ち切ってしまうのが、さらにそれを上回るトンチンカンさ。一方で彼ら一味を追う連中もなんだか垢抜けない。新しい時代の訪れの中で古い時代のギャングが消えていく姿、なんだろうけれど、それ以上に「辺境」の雰囲気が支配的に色濃くって、国の歴史というものの大半は、こうやって「辺境」で人知れず繰り広げられてきたことなんだなあ、と。いずれにせよ一風変わったユニークな映画でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-15 22:06:52)
1711.  グランド・イリュージョン
マジックのタネを知りたいという我々の下世話な欲求に乗っかった作品(しかし出てくるトリックは、乱歩の怪人二十面相モノ並み、という気もするけど)。さてこれが面白いのかというと、うーん、「トリック解説」という説明的な表現を超えられていないのが、ちょっとツライかな、と。ホントは(小説でも映画でも)まさかその場面にトリックがあると思っていなかったところにトリックがあった時にこそ、驚きがあるんですけどね。いや本作でも少しそういう趣向はあったりもするけれど、最初から作品の中で“ミスディレクション”という概念を強調しまくってるもんだから、そりゃそう簡単にはこちらも驚きません、驚けません。というわけで、本作の楽しみはトリックよりもむしろ、後半に展開するアクション(前半は少しダレる)。マジックを駆使して追手と戦う、ってのは、まあそれなりに楽しい。だけど、「マジシャンだから、とにかく色々できるんです」的な単発のツマラナさもあって、これを思うと、特殊効果マンの活躍を描いた『F/X 引き裂かれたトリック』って、あれは面白い作品だったな、とも思い出してみたり。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-01-11 09:58:56)
1712.  フック
『E.T.』で大人に対抗する子供の世界を描き、『未知との遭遇』では大人になることを拒絶していたスピルバーグが、ここでは「大人になったピーター・パン」を通じて、子供の親となる喜びを描いています。自分の子供を通じて、子供の心を追体験できるのだから……って、要するに、やっぱり本当は大人になるのはヤなんですね。誰でも大人にはならざるを得ないけれど、心だけは子供に戻れるその喜びが、ロビン・ウィリアムズの気持ちよさそうな空中遊泳によく出ています。スタジオでのセット撮影の利点を生かし、カメラも縦横に躍動して、楽しい作品になってます。ただ、背景の「空」がまともに描かれていないのが、これは残念というか、正直ヒドイんじゃないの、とも思いますが。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-11 09:18:27)
1713.  ディファイアンス 《ネタバレ》 
第2次大戦下、ナチス及びその協力者からの迫害を逃れ、生き延びるために森の中にユダヤ人コミュニティを作り上げた三兄弟のお話。まず緑の森が印象的に描かれた後、冬の訪れにより森が雪景色となり、生活も厳しいものになっていくと、はたして彼らは無事に春を迎え、あの緑を再び目にすることができるのか、という気持ちになってきます。もっとも、春が訪れたところで無事に暮らせる訳ではないのだけど……。本作で特に描かれるのは、三兄弟の長男で、リーダーである主人公の、矛盾と苦悩。武闘派の次男に対し、穏健派の長男(それとて一度は復讐に手を染め、その虚しさを知ればこそ、なのであるけれど)、しかし意見の対立から殴り合いの喧嘩になったとき、石を手にし相手を撲殺しかねなかったのは、長男の方であった時の衝撃。ユダヤ人たちが集まり組織が大きくなるにつれ、統制も取れなくなっていく。捕えられた無抵抗のドイツ兵をユダヤ人たちがリンチする場面、我々は主人公がこれを止めることを我々は期待するのだけど、彼はその光景を虚しく眺め、無力に立ち去っていく、その時の絶望感たるや、物凄いものがあります。もはやそれほどまでに、明日が無い身である、ということ。神をいくら信じても、現実には奇跡は起きない、ということ。その絶望感を、最終的には兄弟愛が救う、というのが、出来すぎたヒューマニズムかも知れないけれど、本作が提示する「救い」として、やはりそれは美しいと思うのです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-01-11 09:00:41)
1714.  ハンガー・ゲーム2 《ネタバレ》 
この長さでこの中身の無さは、ケタ外れですね。映画の半分以上が、ゲームが始まるまでの前置き。いや、前置きだって何だって、ちゃんと後に繋がるような要素があればいいんだけど、ホントに単なる前置きにしか思えない。いや、「革命」という要素が布石として盛り込まれているんだろうけど、少なくとも本作の中ではほぼ何にもまともに繋がらずに終わってしまう(例えば、うまくいけばそれなりに印象的にもなったであろう、あのモットモらしい3本指を挙げるポーズ。一体何なんだったんだか)。ようやくその“ゲーム”とやらが始まっても、何を競っているのやら、サバイバルな要素は(前作以上に)感じられず。結局のところ、本作の半分以上が前置きどころか、本作そのものが次作の前置きに過ぎないことがわかったところで映画が終わる。監督が代わって一作目より良くなった部分もあるけれど、基本的にこういう「第2作」の存在自体、良心的とは言えませんよねえ。
[ブルーレイ(吹替)] 3点(2015-01-05 21:03:00)(良:1票)
1715.  草原の野獣 《ネタバレ》 
傲慢な地元有力者の父に、彼でも手を焼く困り者の長男、正義感は強いが無力な次男。やがて、長男がある事件を起こしてしまい、裁判となるが……と、なんだか松本清張あたりが書きそうなテーマですが、一応、西部劇。いかにも物語らしい物語で、オハナシとして変に完結してしまってる感じがしてしまい、映画としてこのテーマをどう処理してやろうとかいう姿勢があまり感じられなくって。結局は長男を射殺し、号泣する父、そして、先住民の血を引く女性と交際する次男を許す父。って、こんなわかりやすいラストでいいんでしょうか。とほほ。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-01-05 20:25:52)
1716.  ウェス・クレイヴン’s カースド
人狼に襲われた人も人狼となってしまう、とか、人狼は銀がニガテとか、お約束事にこだわるのが定番ホラーの楽しさ。しかしまさか、犬までが人狼(?)になるなんて、アホ過ぎますね。CG使えば変身シーンなんてお手のもの、本作でも盛大に変身してくれますが、見せるばかりが能じゃない、襲ってくる人狼の足だけが見えてる場面とか、エレベーターのドアの隙間から外の様子を窺う場面とか、やっぱり基本に忠実。意味があるのやら無いのやらよくわからない、登場人物たちの人間模様の描写なんかも、雰囲気作りに一役買ってるのですが、これは別に無意味な雰囲気作りだけではなくって、本作の「犯人探し」のオハナシのためでもあるのでした。犯人探しとはすなわち、「私たちを人狼にしたのはいったい誰?」という趣向。ま、これも意外な犯人云々というよりは、単にクライマックスを引き延ばすためのギミックなんですけれども。これぞ、安心して楽しめるサスペンスホラー。って、安心してどうすんだ。
[DVD(字幕)] 8点(2015-01-05 20:13:46)(良:1票)
1717.  ベイマックス
子供たちと一緒に楽しませていただきました。本作におけるベイマックスってのは、疑似的な人間としてのロボットではなく、あくまで“モノ”なんですね。人を癒す道具として、“モノ”としてのベイマックス。人間の痛みに対する理解は、あくまで十段階のデジタル方式。人の感情の捉え方は、体内分泌物の量としての生理学的な分析。決して感情と呼べるものを持ち合わせている訳じゃない。そもそも顔なんて、大半のシーンでは表情らしきものはまるで無い、記号のような顔だち(「鈴」を元にしたらしいけど)。体は風船、ケガしても空気が漏れるだけ、とにかく滑稽な存在だけど、人間に手を加えられりゃ、なすすべも無く「戦闘マシーン」にもされてしまう。という、“モノ”に過ぎないベイマックスだけど、人間に尽くす愛すべき愚直さがあって、時には機械的であるが故に鋭い人間に対する反問があって、そして何よりも、その“モノ”であるベイマックスに投影された兄の想い、また兄に対する弟の想いがある。ベイマックス自体は“モノ”に過ぎなくとも、それは人間の想いを具現化した、かげがえのない“モノ”であり、観ている我々もまたいつのまにか、ベイマックスから離れられなくなっている……。最後の方では、ベイマックスが自らにプログラムされたルーチンから自由となるような含みも見せたりしますけれど、あくまで“モノ”であり、まあそれ故に製作者も最後は堂々と、人を食ったような厚かましい(?)ラストを準備している訳で、この終わり方、どうなんでしょうね???
[映画館(吹替)] 8点(2015-01-04 20:57:56)
1718.  ホワイトハンター ブラックハート 《ネタバレ》 
作中でイーストウッドはいつも何か小道具を持っている。葉巻、タバコ、シャンパングラス、そしてもちろんライフル…。手ぶらで登場する場面は、その後「何かを取り出して手にするため」に手ぶらであったに過ぎない(で、ハリウッドの面々がロケ地にやってくる場面では何を手にしていたかというと、ここだけ何故かサルだったのは、意表をついてて笑いました)。ラストで彼が“敗北感”を味わうところだけ、完全に手ぶらなんですね。大筋では、勝手な事ばかりしている映画監督の野心と挫折が描かれるのですが、単に主人公を憎まれ役(最後に敗北することが確約された人物)として描くのではなく、差別に対しては決然とNOをつきつける等、あくまで一本筋の通った人間として描くことで、物語とも言えないようなこの物語にきちんと流れをもたせ、ラストのカタストロフにしっかりとした“落差”を持たせることに成功しています。それにしてもいったい、この一見地味な物語が見事に映画となることを、イーストウッドの野性の勘が見抜くのか、それともイーストウッドはどんな題材であっても映画に化けさせてしまうのか。ラストの感動と余韻が、本作の最大の意外性だったりします。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-12-30 07:12:57)
1719.  戦火の馬 《ネタバレ》 
冒頭、馬の姿と、馬を見つめる少年の視線とが提示され、やがて馬と少年とを同じショットに収めるシーンが提示されることで、両者の距離が縮まっていくことが表現される。なんてのは、映画の定石なのかも知れないけれど、全編にわたって、登場人物たちが、馬への視線を介して何らかの形でつながっていくというのが、やっぱり感動的なんだな。しかも、馬があくまで生き延びていくのに対し(そりゃ途中で死んじゃったら映画が繋がらないので)、人間たちは戦争下、アッサリと、実にアッサリと命を落としていく、この残酷さ。馬が生き延びていくことが、我々に残された数少ない希望となります。少年もやがて兵士として戦場にやってきて、毒ガスにより目を負傷してしまう。愛馬と距離的には近づいていながら、少年はかつて愛馬に注いだ眼差しを一時的に失っている、というハラハラさせられる場面で、今度は「音」が効果的に使われるのが印象的です。そしてまた、包帯で目隠しされた彼の代わりに、周りの者が、そして我々が、泥まみれになった馬の汚れを落とし、馬への視線を送る役目を担うことになる、というクライマックス。怖い場面はひたすら怖く(『プライベート・ライアン』と同じ撮り方はしない。“同じ”は、怖くないから)、それだけに優しい場面がどこまでも優しい、この素朴な計算高さが、スピルバーグの魅力だなあ、と。このヒトには逆らえん……。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-12-30 06:43:31)
1720.  独眼竜政宗
政宗が暴れん坊将軍化しています。山道で忍者軍団の襲撃を受け、孤軍奮闘、大立回りを演じたり(暴れん坊将軍というより、宮本武蔵ですな)、忍者のひとりが放った矢が片目を直撃して失明しつつも戦い続けたり(失明というより、どうみても致命傷なんですけどね)、素晴らしく荒唐無稽な作品です。伝記映画と思わせておきながら、ね。終盤の山形勲が登場するあたりからの展開はもう、サイコーです(とはいえ、この場面が本作で唯一、史実に忠実なシーンだったりして)。という、ステキな映画なのですが、もうちょっと丁寧に撮られていたらなあ、とも思います。人物にカメラが寄る際に、必ずといっていいほどカメラがブレてしまうのはさすがにちょっと見苦しい。馬上の人物にあてる撮影用の光も何だかブレて安定してないみたいだし。合戦シーンも、できればもうちょっとガンバってくれれば……。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2014-12-30 05:59:39)
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