1761. 座頭市(2003)
有名な殺陣師というのは殺陣のシーンにおいてはまるで監督で、本来の監督の演出を無視した殺陣をさせるそうだが、北野監督は我を通さない殺陣師を紹介してもらったらしい。正解です。本当の真剣勝負というのは一瞬できまるもんだと思います。ましてや居合や仕込みは、一瞬で切る為の術。よかったです。これまでの殺陣=チャンバラをあざ笑うかのようなシ-ンがガナルカナル・タカが3人に剣術を教えるシーン。そう思ってみたので、その後の展開に大爆笑しました。映画で”大爆笑”というのは久々です。キャラ配置からストーリー展開はすごくマンガチックでした。もちろん良い意味で。ただ、娯楽に徹した作品であることは、事前に知っていたので過大な期待はしないようにしてたんですが、やはりキタノ作品ともなれば100%そう思えないんですね。キタノらしい美しい映像を、静かな緊張感を、少し期待していたようです。次回作、本気作を期待しております。 6点(2004-03-22 13:22:35)(良:1票) |
1762. 第三の男
《ネタバレ》 モノクロなのに夜のシーンや下水道のシーンの暗い画面が観ずらくない。”モノクロなのに”ではなく”モノクロだから”なし得た美しさがある。死んだはずの人間の顔が暗闇に照らしだされる。猫が足に絡みつく時点で観ている者にはだいたいの想像がつく。しかしハリーの顔を私達は劇中でまだ見ていない。そこにヌッと顔が現れる。判っていても衝撃のシーンである。ニクイ演出だ。どんなシーンもチター1本で奏でられる音楽と画とのアンバランスさは、ウィーンの”平和”と平和が産み落とした”非平和”の矛盾をうまく表現していると思う。 7点(2004-03-19 12:23:55)(良:2票) |
1763. シェーン
「シェ--ン 髪バー-ック」という育毛剤のCMを思い出す。そんなことはさておき、この作品で悪として描かれる農場主の言い分を聞くともっともな言い分で、なぜ入植者が悪とならないか不思議に思う。しかしこれがアメリカなのだろう。インディアンから土地を奪い盗っても侵略者ではなく開拓者なのである。前進する者が正義となる国。主人公シェ-ンもこの新しい正義の波に乗り遅れた一人にすぎない。つまり農場主と同じ立場の人間。ただのヒーローものに終わらせず「努力したが変われなかった」と言わせたところがこの映画の素晴らしいところ。だから余計に、一見ヒーローものに見えるつくりが気に入らない。 6点(2004-03-18 12:22:55)(良:1票) |
1764. ノー・マンズ・ランド(2001)
ここに描かれるボスニア紛争に限らず、今も世界のあちこちで戦争があり、そこにはメディアと国連が人道という大義のもとに関わる。しかし現実は人道とはほど遠い目的のためにこの二者がいる。ビジネスであったり自らの存在意義のためだったり。「事件は現場で起きてるんだ!」と叫ぶ映画があったが、現実は叫ぶことすらできない。この映画、後味は最悪である。何かに対して怒りさえ覚える。何かとはきっと戦争そのものだろう。あたりまえのことなのに今さらにそう感じる。戦争の現実をまざまざと見せつけられたような気がする。今作の監督の経歴(ボスニア兵として戦場へ行き、また戦争ドキュメントも撮っている)を聞き初めてリアルに感じるところが映画としては残念なところ。いや、きっとあまりの衝撃に私自身が映画だけの話として捉えたかっただけかも。この映画は平和な日本で戦争というものを、テレビや新聞といったマスメディア以上に感じさせてくれたような気がする。 7点(2004-03-17 14:50:32) |
1765. ディーバ
出てくる人物達が、黒人オペラ歌手、ベトナム人少女、台湾のレコード業者、悟りをひらいたという謎の男、警察に売春組織の殺し屋とバラエティ豊か。そしてストーリーは純愛ロマンスでありながら、カーチェイス(バイクチェイス)あり、サスペンスありとエンターテイメント性を重視しながら、オペラや部屋の内装、オブジェに芸術に対するオマージュもしっかり描く。下手すりゃごちゃ混ぜすぎて見れないものになってもおかしくないものを全然すっきり見せてくれます。ただ、謎の男がかっこよすぎる。話がうまくまとまりすぎる。 今作のポスターを見ているだけでもそそられるスタイリッシュさも一つの売り。魅力を感じる反面、命を狙われる恐怖感や純愛ストーリーの中での不安感が少し損なわれているような気がしないでもない。何度も観ているせいで、私が安心しきって観ているせいかもしれませんが。 7点(2004-03-16 11:21:30) |
1766. チャンス(1979)
最初観た時は、コメディと判明するのに時間を要しました。作品から溢れ出る質の高さのせいだと思います。ただ、可笑しいんだけど笑えない雰囲気が私には合わないようです。黒人のお手伝いさんが「白人なら誰でもいいのか」というセリフがあったけど、差別問題は黒人の過剰な被害妄想にも原因があると言っているようであまり気持ち良くなかった。そう思うのは私の偏見なのだろうか?それとも、ただの政治批判だったのか?シャーリー・マクレーンはおばさんになってもかわゆい。 6点(2004-03-15 12:23:37) |
1767. クロッカーズ
黒人社会が抱える問題とともに病めるアメリカを痛烈に描いた作品。犯罪はびこるニューヨークの一画の貧しい黒人街。ここでは犯罪は憧れの対象でもある。まじめに生きる人間はバカにされる。まじめに生きることが難しい場所。麻薬の元締めの男もまた、その環境に順応したに過ぎない。スパイク・リーの半ば諦めにもとれるメッセージが痛々しい。貧しい黒人街があること自体を批判しているように感じる。アメリカ大統領は『インデペンデンス・デイ』を絶賛する前にこういう映画をもっと真摯に受け止めるべきである。おまえに言われなくてもわかってるって?ホントかなー。 7点(2004-03-12 11:02:03) |
1768. 旅路(1958)
元は舞台劇だったものをうまく映画化してると思います。登場人物達は皆それぞれに孤独感を持って生きている。そして自らが孤独であることを知っている。というか、知りすぎている。少佐の自己分析なんて完璧です。皆が皆、自分のことをよく理解している。そこがきれいすぎるというか...。人間臭さが無くて、すっきり見れると言えばたしかにそうなんですが、何か物足りない。良くも悪くも舞台劇らしい映画。最後、おばあさんのことを考えなければそれなりに後味も良く、うまくまとめたなと。 7点(2004-03-11 12:28:47) |
1769. シーズ・ソー・ラヴリー
評価、低っ!かなり好きな映画なんですけど..。演技をまず絶賛したい。ショーン&ロビン・ライト、うますぎ!ロビン・ライト・ペンの10年後の顔はまさに母親の顔になってました。ショーン・ペンが警官に包囲されたシーンなんてリアリティありすぎでドキドキしました。そりゃーたしかに理不尽ですよ。子供がかわいそうだし母親失格ですよ。でも辛そうだったじゃないっすかー。泣きそうでしたよ。笑いあり涙ありで良かったっす。笑いがあったかって?9歳の長女のビールの飲みっぷりは笑ったっしょ?笑えなかった?もーいっぺん見てください。あの不機嫌そうな顔して飲んでる姿は面白いって。 8点(2004-03-10 12:04:35)(笑:1票) |
1770. クロッシング・ガード
被害者の苦悩と加害者の苦悩をどちらか選べと言われたら、昔は絶対被害者の苦悩を選んだ。加害者の非難を浴びながらも一生罪を背負う苦悩など、私には絶えられないと思ったから。でも娘が生まれて変わった。娘を奪われるくらいなら、加害者を選ぶ。この映画は娯楽として第三者的に見れば全く面白くないが、感情移入できればググッとくるものがあります。日ごろから車の運転をし、小さい娘もいる私はそれが出きる。それから私の場合、兄が3歳で交通事故で亡くなっているということもあり、この手の作品を真面目に作られていることにまず敬意を表したい。ロビン・ライトの存在は生への執着の対象として重要な役どころなのだが、そのあたりの描写が駆け足で描かれており残念な部分。被害者夫婦の葛藤は壮絶で、ささえ合うことの重要性を見た。 7点(2004-03-09 11:58:47)(良:1票) |
1771. ひまわり(1970)
反戦映画として評価しろと言われれば、微妙です。理由は(1)この二人のように強く愛し合っていなければ場合によっては幸せな結末となる。(2)戦争でなくてもあり得る設定。たとえば『シーズ・ソー・ラブリー』は精神病院に入れられてる間に相手が結婚し...という話。だけどだからといってこの映画を否定しているわけではなく、悲恋モノとしては自分たちの意識が届かぬところで運命を左右される戦争を原因とすることで、無情感がいっそう引き立つ良作になっていると思う。反戦を全く感じないわけでもありません。ひまわりと対比させたたくさんの墓標には反戦を感じます。交渉に交渉を重ね初めて外国のカメラが入ったというソ連での撮影は当局の目もあってかソ連の描写が好意的で、ソコがかえって名作となし得たところかも。 7点(2004-03-08 12:09:09)(良:1票) |
1772. カノン
《ネタバレ》 主人公の内なる思いは自分勝手にも程があり、自らの堕落の言い訳を延々聞かされる。言ってることは過激でも実際暴力を振るったのは妻に対してのみ。映画史上最悪の主人公である。ここまで人間の弱い部分、恐ろしい本性を包み隠さず映像にしたものを見た事が無い。この挑戦的な映画自体は評価しても良いが、虚無感で覆い尽くされる気分の悪さがどうもダメ。ラスト付近の例の「警告!」そしてカウントダウンは思わず姿勢を正しました。その後のバッヘルベルのカノン(私にとってこの曲は希望を感じさせる曲)が流れ、「あー、いい映画だったんだー」と思ったのも束の間。出かかった涙が一気にひいて呆然としてしまいました。おっさん、あんたって人は...。 6点(2004-03-05 14:47:51) |
1773. カルネ
いきなり「警告!」そして衝撃映像にはっきり言って、ひきました。いくら時間が短いといってもこんな映像ばかり見せられたんじゃたまったもんじゃない。しかしその後はいたって普通に観賞できた。おそらく最初の映像のインパクトが凄すぎたせいだろう。実際、なかなか頭から離れてくれない。女の子が生まれ、胸が膨らむまでに成長する年月を、ブォン!という音と字幕を使うことで不必要なものをことごとく排除し一気に見せる。40分てのは凄い。個人的には絶賛の続編「カノン」より高く評価したいが、”「カノン」ありき”の映画なので評価が難しい。 6点(2004-03-05 13:57:48) |
1774. 7月7日、晴れ
世界的アーティスト?まあいいとして、そんなだいそれた人に簡単に電話番号書いたメモを渡せるなんて。ボディガードは即解雇は間違いない。だいたいなにも世界で一番明るい夜と言われる東京で、天の川見ようとするなよ。でもみんな消しちゃうんだもんなぁ。 2点(2004-03-04 11:46:13) |
1775. 黄泉がえり
演技がみんなわざとらしい。しかしこれは役者のせいではなく(草なぎ君以外は)演出のせいです。テレビ局が製作に関わった映画はしょせんこんなものか。メイン二人以外のストーリーもちゃんとあるのはいいんだけど、個人的には群像劇らしくすべての、いやせめてあと一組のストーリーとメイン二本立てで見せてくれたらなかなかの作品になったんじゃないだろうかと思う。シックスセンスショックも良かったんだけど、その時の草なぎ君の演技がなぁ..。なんでさっきから草なぎ”君”ってつけるんだろう? 3点(2004-03-04 11:27:34)(笑:1票) |
1776. 日曜日が待ち遠しい!
それなりに面白いんだけど、日本の2時間枠のサスペンスものみたいというのが正直な感想。モノクロが”恋愛もの”より”犯罪もの”をかんじさせてくれて良かったです。 5点(2004-03-03 12:51:51) |
1777. シベールの日曜日
《ネタバレ》 お互いに唯一の拠り所とする関係なので、二人が永遠にいっしょでなければハッピーエンドは無いと判っていたが...。二人の跡をつけた恋人のマドレーヌの、二人の純真であどけない関係に微笑んだカットに安堵して観ていたのに...。少女役の子のぽろぽろと涙がこぼれる演技が素晴らしい。彼女の豊かな表情により記憶に残る映画になった。 7点(2004-03-03 12:48:18) |
1778. 日曜日の恋人たち
SEXによって生きかえった女がいる。SEX=「生」なのかと思ったら、SEXによって死を待つ男がいる。愛のないSEXを続ける主人公は生きながらに死んでいる。なんか無理やりSEXと「死」をセットにしたような強引さが気になる。いろいろやりすぎてテーマが見えてこない。過激な映画を予感させるオープニングには惹きつけられたが、意外に中身はヒューマンドラマしている。 5点(2004-03-03 12:40:49) |
1779. わが谷は緑なりき
人生は山あり谷あり。しかしこの作品で語られる炭坑夫一家には谷あり谷あり..。もちろんタイトルの”谷”とこの”谷”とは何の関係もないのだが、少年の最後のセリフ”我が谷は緑だった”は谷あり谷ありの不幸な思い出を不幸ととらない”それでも人生ってすばらしい””それでも私にとっては良き思い出”ととれる。そして観ている側も、決して悲劇とは思わない。なぜか清清しい。恐るべしジョン・フォード! じゃあ、なぜ7点かって?うーん、映画の好みは人それぞれってことで..。*一応私の7点は高評価なんです。 7点(2004-03-02 15:59:00)(良:1票) |
1780. 緑色の部屋
人間というのはどんな悲しい事も忘れる動物である。だから生きてゆけるのだと何かで読んだことがあるが、トリュフォー扮するジュリアンは頑なに忘れようとしない。この本能と反する行為はもしかしたら大切なことなのかもしれない。しかし本作はよく解からん。それが愚かな行為と言ってるのだろうか?それが難しいと言ってるのだろうか?それから、いっしょに生活している子供のエピソードの意味は?よー解からん映画でした。ごめんなさい。トリュフォーに思い入れがあるなら、あの飾られた写真がそれぞれ誰なのかを探るだけでも面白いかも。 4点(2004-03-02 15:45:51) |