1761. 炎のランナー
むかーし初めて見たときってのは、正直あのテーマ曲がお目当てだった(しかしラストまで出てこないんだこれが)んですけど、内容に関しても、意外に面白いやんか、というか、(実際には劇的なのであろう優勝劇を)えらく地味なドラマにしている割に、見始めたらつい引き込まれるなあ、と。でもですね、とりあえず引き込まれちゃったのは、スローモーションを多用あるいは濫用した「キレイでしょ」的な映像で引っ張ろうとするからでして、だからつい観ちゃうんだけれども、だからどうなんだ、とも。いわば、飽きの来ない、超薄味。中心的に描かれる二人の主人公、リデルとエイブラハムスの対比がここにあるんだろう、と頭ではわかるんだけど、その対比が感覚として伝わるものがあまりない(ってか、二人それぞれ別の金メダルをとっちゃうという顛末をそのまんま描くことで、「対比」がほとんどスレ違いみたいな感じに)。各国のライバルを形だけもっともらしく登場させるのも、なんか余計というか、胡散くさいし。美しく丁寧に仕上げられた映画、だけど“ドラマ”って、こんなんで、いいんですかね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-02-19 22:41:12) |
1762. ミニミニ大作戦(2003)
あの支離滅裂意味不明なまでに素敵に仕上げられた『ミニミニ大作戦』を、わざわざ「意味不明でない形」、つまりありきたりな形にリメイクするする必要があるのか(さらにはこの恥ずかしい邦題まで復活させる必要があるのか)とは思うのですが……しかしコレ、意外に面白いのです。敵がヘリから監視しているのに、何でわざわざあんな目立つ色のクルマをつかって金塊強奪をたくらむのか、と言えば、カーチェイスに見栄えがするから、ですね。ハッカー野郎が何であんな場所で作業してるのかも、何だかわからないけれど楽しいし、本作も十分、アホなことやってくれてますね。なかなかうまいリメイクだと思うのですが、どうでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-02-18 23:05:36)(良:1票) |
1763. ミュータント・タートルズ(2014)
このジョナサン・リーベスマンってヒト、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』の監督ですよねえ。この時点で観るのやめようかと思いつつ何故か観ちゃうのですが、どっちかというと、マイケル・ベイ色の方が強く出た映画でした。それはともかく、前半はまったくいただけません。ヒロインとカメたちの結びつきを暗示するようなシーンを積み重ねていってくれるのならともかく、「カメの活躍を偶然目撃したちゃった」とか、コレ、脚本ヒド過ぎませんか。しまいにゃカメの師匠であるネズミがとくとくと過去の経緯を解説し続けて、「ここまでぶちまけりゃ観てる皆さんにもワカリヤスイでしょ」と言わんばかりの、捻りも何もない説明中心の構成。正直、かなり辟易して、退屈したりもしていたのですが。それが後半、トコトンおバカなジェットコースタームービーとなって、それも、『世界侵略~』みたいに押してばかりのインチキリアリティ作品ではなく、いかにもマイケル・ベイの息がかかった感じの、押してみたり引いてみたり、しかしやってることはどこまでもムチャクチャな世界。ま、半年前の『~ロストエイジ』をもう一度観させられたような既視感があるのも事実ですが。ただこの作品、ヒーローたちが、「カメ」、なんですね。甲羅を背負った体は、徹底的に頑丈な構造。頑丈だからこそ、彼らは映画の中でとことん酷い目にあわされ続ける。頑丈だから何とかなってしまい、またさらに飛んだりぶつかったりと酷い目にあう。この点、本作は、「主人公がカメである」ということに対して、見事な必然性を結びつけており、この点だけでも、前半の失点を取り戻して、ちょっと関心させられたのでした。何よりも、頑丈な彼らが体を張り続けることが、映画のアクションを盛り上げることに大いに貢献してますからね~。ちなみに、ウチの子供たちも映画が終わった瞬間、「あ~面白かった~」とつぶやいておりましたから、幼稚園児にも十分楽しめる作品です。 [映画館(吹替)] 6点(2015-02-18 22:49:13) |
1764. ターミネーター
幼稚園の息子がどうしても観たいというので借りてきて、「コワイから観たくない」という小学生の娘もダマクラかして一緒に見せ、ついでに私とカミさんも久しぶりに楽しませてもらう。やっぱり、面白いものは面白いのです。シュワ型ターミネーター(という呼称は当時はなかったけど。というより正式名称では勿論ないけど)の超おおざっぱなサラ・コナー狩り、これだけでも天才的な発想だと思います。この猪突猛進型・出たとこ任せの強引さは、いくらあの(これも面白かった)『ウェストワールド』を引き合いに本作を二番煎じ呼ばわりしたって、ユルブリンナー型ロボットにはこのユニークさは無かったよね。銃砲店のオヤジのアワレな運命(同年の作品『グレムリン』でのアワレさも印象的だったディック・ミラー)が特に、シュワ型のアバウトさを象徴しています。このいい加減シュワに対し、マイケル・ビーンの貧乏くさい(いや失礼)、影の薄い(これも失礼か)、憂いを含んだ表情がいい雰囲気。シュワほどムキムキではないけれど引き締まった肉体が織りなすアクション、倒した警官から手錠のカギを奪う際などに見せる熟練兵士らしい冷静沈着さも魅力的です。シュワは無敵の強さだけど、戦いの中で、髪が焦げてチリチリになり、眉毛もなくなり、さらには手の故障、目の故障、足の故障、そして…と、少しずつ壊れていく様が、かえってそのタフさを表現しているのも面白いですよね。未来における機械と人間の戦争、その最終決戦が現代で行われるという設定が、解説調にならず物語の中で徐々に解きほぐされていくあたりも、脚本が念入りに編まれているし、といってもちろん複雑になりすぎることなく、スピード感としつこさを併せ持ったアクションで引っ張っていきます。戦いの終わりの方では、もはや怪奇趣味といってもよいようなテイストで緊張感を持続し、トドメの場面ではこれでもかという細かいカット割りによって、真のクライマックスを築き上げる。やっぱりこれ、いい映画です。面白いです。 [DVD(吹替)] 10点(2015-02-14 13:54:57)(良:2票) |
1765. ハロウィン(1978)
久しく観てないなあ、とレンタル借りてきて、やっぱりこりゃエエわ、と。大してスプラッターな描写も無い地味な作品だし、それで終わりかよ、というアッサリ感も否定できないのですが。ただ、映画って別に過剰なサービスは要らないんじゃないの(もちろん過剰さが嬉しい作品もあるでしょうけど…)、とあらためて思っちゃう。例によってカーペンター自身が手掛けたらしい音楽も安っぽい単調なものだけど、しっかり効果を上げてます。本作における適度なサービス、それは、前半の昼間、つきまとう人影に怯えをみせていたジャミー・リー・カーチスが、それを綺麗サッパリ忘れたかのように、夜が更けた肝腎の後半は大胆な行動をとろうとするところですね。こういう、我々と主人公との感覚のズレ、サスペンスを盛り上げるのに効果的。あとは、いつも遠目にカメラに捉えられていた謎の白マスク男を、狭いクローゼットで主人公と邂逅させてやれば、ちゃんと恐怖映画になっちゃう。早い・安い・美味いの3拍子、って、例えばこの作品のことでしょう。 [ブルーレイ(字幕)] 10点(2015-02-14 11:09:15)(良:1票) |
1766. ザ・ベイ
チェサピーク湾に面した、とある小さな街で、奇妙な疫病が発生。それは寄生虫の仕業によるもので、人間の体内で急速に成長しては感染者を増やし、町は瞬く間に感染者だらけになっていく、という訳ですが……これ、フェイクドキュメンタリーの形式なんですね。取材カメラ、一般人の撮った動画、監視カメラなどを模した映像のコラージュになってます。それによってリアリティを出そうってことなんでしょうけど、正直「映像が下手くそだからリアルに見えるはず」ってなスタンスは基本的に関心できないし、取材カメラまでがこんなにヘタクソって、逆にあり得んでしょ、とも言いたくなるんですけれども。しかし本作、必ずしも「リアルに見せること」にのみ腐心してそこにとらわれ過ぎちゃうような作品という訳ではなく、たまたま撮られた映像の数々を誰かが編集したという体裁になっている上、BGMも挿入されていて、要するドラマが作りこまれた形になっています。だからそれなりに盛り上がる。ドラマったって、何がどうなってこうなりましたと時系列に整理して語るのではなく、それこそよくできたドキュメンタリー番組のように、時間や視点を行き来しながら事件の全貌を描き出していくことで、群像劇としての面白さを出すことに成功しています。町が平穏だったころに無邪気な表情で映像に映っていたあの人この人が、やがて迎える悲劇。こういうフェイクドキュメンタリーの形式をとる必要があったのか、という疑問が消えるには至らないとは言え、確かにある種の効果を上げてはいるかな、と。ただあと一点、「寄生虫」の造形として、ああいう「ムシでございます」と言わんばかりの形態を思いつくセンスというのはやっぱりよくわからん。線形動物とか扁形動物とかヒモ形動物みたいな形態こそが、不気味さの象徴だと思うんですけども。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-02-14 00:29:58)(良:1票) |
1767. 十兵衛暗殺剣
本作の倉田準二監督という方、すみません存じ上げませんでしたが、ああ、『恐竜・怪鳥の伝説』の監督さんだったのですね。なるほど、道理で(笑)。将軍家指南役の柳生十兵衛に対し、我こそは真の新陰流継承者なり、とライバル心をむき出しにし、彼を付け狙う幕屋大休。道場破りなどの嫌がらせを繰り返した挙句、竹生島での決闘を挑んでくる。どんな汚い手を使っても十兵衛を倒すべし、とばかり、現地の湖賊(琵琶湖版の海賊みたいな連中)とタッグを組んで、十兵衛を待ちかまえる。という、非常にワカリヤスイ展開なのがうれしいですね。船で湖を進む十兵衛一行に対し、水中から攻撃を仕掛ける湖賊たち。ここでは、時代劇なのにまさかまさかの水中撮影。サンダーボール作戦もびっくりですな、これは。きっとこの撮影が、『恐竜・怪鳥の伝説』でも多少は生かされた、のだかどうだか。それはともかく、敵役の幕屋を演じるは大友柳太朗、泰然とした彼と、すぐに地団太踏むような表情がすぐ顔に出てしまう近衛十四郎では、どちらが「剣豪」のイメージにふさわしいかと言えばもう聞くまでもない訳ですが、門弟や湖賊の戦いを交えて引っ張って行って、ラストの対決はそれなりに盛り上げてしまう、この勢い、大したものだと思うのですが、いかがでしょうか。ロケーションも魅力的。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-02-09 14:08:03) |
1768. プロフェッショナル(1966)
これは面白すぎる! 誘拐された女性の救出を、その夫から請け負った4人組。それぞれ特技を持ってるってのが、まず楽しさの基本。と言っても、特技をまともに生かしているのは、バート・ランカスターと、『バファロー大隊』のおっちゃんの約2名だけ、という気もしますけどね。4人とも、結構、イイ歳なんですが、頑張ってます。映画中盤には早くもダイナミックな救出作戦が描かれ、後半は追手からの逃亡劇が展開されます。このテンポの良さ。しかし映画はこのままスピード感を持って駆け抜けるのではなく、終盤にはちょっと意外なしっとり感。ジャック・パランス演じる敵役ラザがここで存在感を示します。ここまでの彼は、いわば強さと冷酷さそのものの存在であり、一方でクラウディア・カルディナーレにより人間的な面を間接的にほのめかされてもきたのですが、この終盤において、革命家としての彼の生き様が表され、4人のプロフェッショナルたちの生き様をもあぶりだす存在となります。娯楽色たっぷりで、後味の良い余韻を残す、楽しい作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-02-09 13:30:32) |
1769. ワイルド・ビル(1995)
90年代のウォルター・ヒルにこんな作品があったんですね、知りませんでした。しかしこれは。シブいというか、娯楽色が薄いというか、いやそれ以前に、だいぶ、イッちゃってますね。冒頭、ビル・ヒコックの葬儀の場面に始まり、そこから遡って要するに彼の死までが描かれるという訳で、カラミティ・ジェーンとの交流などが描かれるんですけれども、まとまったストーリーもなく、ひたすら断片的。イザコザが発生しては、彼が誰かを射殺するエピソードが、ジョン・ハートのナレーションによって淡々と「紹介」されてゆきますが、銃撃の場面はさすがにウォルター・ヒル、いかにも「相手を撃ち倒す」というハードな描写になっています。で、大勢を殺してきたビル・ヒコックも、緑内障を患い、はたまたアヘンにはまり(彼の見る幻覚の描写が、また映画をイッちゃったものにしています)、どんどん浮世離れしていく。この映画のヒコックは、もはやほとんど妖怪みたいな存在ですね。だから、彼を付け狙う青年が登場するけれど、この青年もなかなか彼に手出しができない。規格外の男が生きながら伝説と化してく姿を、ウォルター・ヒルがまあ正直よくワカラン思い入れをもって描いた、不思議な作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-02-07 10:16:21) |
1770. ニード・フォー・スピード
とりあえずカッチョよいクルマが走りまくる映画です。クラッシュシーンもありますが、とりあえず破壊マニアよりスピードマニア向けの映画、といったところでしょうか。公道でのカーレースで、仲間を殺された挙句に、その罪を着せられ服役させられた主人公。仮釈放後、仲間を殺した男・ディーノへの復讐のため、カーレース開催地であるサンフランシスコへと、はるばる車を走れらせる。と言えば何だかロードムービー風で、しかもその途上では、彼のレース参加阻止を企む刺客が襲い掛かる、とくればこれはゼッタイに面白くなるはずなんですけれど……なーんか、薄味なんですよね。この道中をどれだけタップリ描けるかが見せ場のひとつだと思うのですが、もうひとつ印象を深められないまま、映画の尺だけは2時間超と間延びしてしまって。ラストのレースも、どこがゴールであとどのくらいの距離なのやらもわからず、そりゃスピード感は満点ですが、それでもやや漫然とした感じで、切迫感に欠いてます。逆に言えば、高級車仕様のキレイに仕上げた映画、といったところでしょうか。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-02-07 09:27:07) |
1771. ロボジー
ムラタセイサク君をはじめとする、テクノロジーの粋を結集して作られるロボット、しかしそれと同じモノないしそれ以上のモノが、ジイサンひとりいればできてしまう、という身も蓋もないオハナシ。全編にわたる、レトロ感というかダサさというか加齢臭というか、そういう雰囲気が何とも可笑しくて。不慮の事故に際して危険を察知し、見事に吉高由里子を助けたロボット“ニュー潮風”、いったいどう設計すればこんな高度なアクションを取ることのできるロボットが作れるのか、と学生たちがカンカンガクガク。要するに、ジイサンという生物がいかに高度な存在か、という訳ですね、これは。ロボットとジイサンにも意外な共通点があって、ネオジム磁石を用いれば、小型で強力なブラシレスモーターが作れる一方、ジイサンの腰痛治癒にも効果があるという事。ホンマかいな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-02-04 23:10:59) |
1772. 仁義なき戦い
文太さん追悼放送で久しぶりに観ました、昔はゴールデン洋画劇場なんかでやってて、あの頃は正直、この“乱暴な”描写が、何というか一種の安っぽさのように感じられて、少々苦手だったりもしたのですが(あと、早々に主人公が小指を詰めちゃうシーンがあって、この後映画が終わるまで小指がカメラに映らないように、うまくできるんだろうか、とかいうどうでもいい心配をしてしまったりもしたのですが)。しかしいいなじゃい、“乱暴”で。このむせ返るようなエネルギー。あと、学生の頃見るのと違って、社会人になってから見ると、活き活きと暴れまわった連中が次から次からドンドン死んでいって、その一方で金子信雄演じる山守がしぶとく生き残っていく姿、ってのが、どうにもこうにも、身につまされちゃうのよね。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-02-02 23:03:00) |
1773. ローン・サバイバー
実際の事件に真摯に向き合おうとしていて、あるいはそのことに引きずられすぎている面もあるかも知れないし、またその割にはアフガニスタンが舞台にも関わらずロケーションがいかにも、アメリカの森、という感じがしちゃって、これでいいんだろうか、という気もするんですが。でも凄い。冒頭に過酷な訓練シーンがあり、要するにこの作品に登場する彼らは皆、この凄まじい訓練を受けてきたエリート軍人なんだけれども、作戦の途中に発生した不測の事態、民間人ではあるけれど敵かも知れない目撃者の処置については、どんな過酷な訓練もその答えを教えてくれはしない。前半は、森に身をひそめる彼らの姿が嵐の前の静けさのように描かれ、しかしそれも、無抵抗な相手を殺すかさもなくば自分たちを危険に晒すかという苦しい選択の焦燥感に置き換えられていきます。そして後は。ひたすら襲いかかる敵との絶望的な戦い。あくまでアメリカの側から描かれてるので、相手側がジャンジャン殺されていく割に、主人公たる4人の兵士はケガを負いつつもしぶとく戦い続けるのですが、だからと言ってご都合主義とは言えない、言う気も起らない。崖から転落し、敵に撃たれ、満身創痍、それでも生きている限りは戦い続けなければならない、この辛さ。むしろいっそ、簡単に撃ち殺された方が楽ではないのか。しかしそれでもなお、生き残ろうとし、あるいは仲間を生き残らせようとし(そのためにある者は自らの命を失うことになり)、さらに終盤では「仲間ではない他国の兵士すらも生き残らせようとする」姿までもが描かれる。生と死が何で分かれるのか、それはまさに紙一重なんだけれども、少なくとも生を支えているのは自分だけの力ではない、だからこそ尊い「生き延びる」ということ、それをこの映画は、真正面から徹底的に、描いています。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2015-02-02 22:45:55)(良:2票) |
1774. マレフィセント
「昔々あるところにお爺さんとお婆さんがいました」でいいのに、それは一体いつなんだどこなんだ誰なんだ、と無粋に詮索するような、そういった類の作品ではあります。爺さん婆さんの若き日の恋愛を描いておこうとか、鬼ヶ島の鬼との因縁を描いておこうとか、そうだいっそ、彼らにはかつて3人の息子がいたが鬼の魔力によって犬・サル・キジに姿を変えられたことにしちゃおうとか(たかがキビダンゴで命がけの鬼退治に行く訳がない、という原作の矛盾点はこれで解消され納得がいく、とか)。んなこと、どうでもいいんです、というか、むしろ余計なことばかり。いや、本作を『眠れる森の美女』のパロディとして観るのなら、それはそれでアリかも知れませんけどね。3人の妖精があまりに不甲斐ないので、マレフィセントが実はオーロラ姫の面倒を見てました、だなんて、いかにも落語のネタに向いてそうじゃないですか。ただ、パロディ路線として楽しむには、いささかハジケ方が足りません。アンジェリーナ・ジョリーの、いかにも「マレフィセントの複雑な心理を演じてます」的な重たい演技が、いい方向には働いてない感じも。あと、比べちゃいけないのかも知れないけどやっぱりアニメ映画『眠れる森の美女』と比べちゃいます。見事なアニメの動き、雰囲気、スピード感。やっぱりあのアニメは凄かった。例えばオーロラ姫が糸車の針に指を刺してしまうあの場面の不気味さ。オーロラ姫のイッちゃった表情はアニメに軍配を上げざるを得ないし、ここで流れる音楽「長靴をはいた猫と白い猫」、どうしてこうも完璧にこのシーンにマッチしちゃうのか。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-01-27 22:48:15) |
1775. スタンピード
“スタンピード”ってのはあくまで邦題で、一応中盤にスタンピードな場面はあって見せ場にはなっとりますが、まああくまで中盤の一場面です。原題はThe Rare Breed、なんか地味ですね、でも物語のオチには直結しています。惜しむらくは、オチだけではなく、ジェームズ・スチュアート演じる主人公の生き様にも、古き良きカウボーイとしてのRare Breedが投影されていればなお良し、だったんですが、主人公のキャラクターが少々弱いかな、とも思います。イギリスからやってきた母娘とモコモコ牛、牧場までの彼らの旅を、スチュアート演じる主人公が案内するのですが、イギリス人にイギリス牛、何かと手を焼かされます。一方、彼らを妨害し付け狙う悪漢がジャック・イーラム。先にも述べたように逃げ場のない谷を牛の大群が押し寄せてくるシーンあり、悪漢との対決あり。しかしあくまでこれは中盤まで。後半はなんだか、どんどんおとなしい展開になっていっちゃいます(これも、主人公の存在の弱さが、一因かと)。とはいえ、全体的にユーモアが横溢していて、(オチも含め)楽しい作品にはなっております。モコモコ牛がゴッド・セイブ・ザ・クイーンの口笛におとなしく従う(ヴィクトリア女王の時代でしょうから「クイーン」ですね)のが可笑しいですが、作中にもあるようにこの曲、英国国歌であると同時に、米国では「アメリカ」として知られてたのでした(C・アイヴズ作曲の『アメリカ変奏曲』も、このテーマに基づく作品でしたね)。 また本作、音楽はジョン・ウィリアムズ(名義は“ジョニー”になってます)、彼の初期の仕事ですが、気合の入ったところが楽しめます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-24 11:08:28) |
1776. コクリコ坂から
『ゲド戦記』という父殺しの作品を作った宮崎吾朗監督が、今回は父を想う作品を作ってきた。と思いきや、脚本にかかわっているのが当の父親本人だもんで、額面通り受け取ってよいのやら。主人公のウミちゃんが、母から事の真相を聞いて涙する場面。一見、「愛する俊くんと実のきょうだいではなかったことを知り、安堵の涙」とも受け取れるけれど、そうではないのかも知れない。彼女がその前に涙を流したのは、夢で父親と再会した場面であったから。亡き父へ送っていた旗の信号を受け取っていたのが、実は俊くんであったから(そして、彼女も「旗が父の代わりに俊くんを呼んだ」と思っている、あるいは思おうとしている)。そして、この場面の彼女の涙は、母親の「お父さんと彼は似ているのか」という質問にうなずいた直後のものであったから(実際、俊くんの育ての父に言わせても似ているらしい)。そんな訳で、高校生の恋愛という題材を借りてはいるけれど、実際は、セクシャルなものではない、近しい者に対する普遍的で無条件の愛が、ここでは描かれているんだろう、なーんて思うと、実はコレ、『ポニョ』の変奏曲みたいな作品なのかもしれませぬ。 [地上波(邦画)] 9点(2015-01-23 00:04:54) |
1777. アメイジング・スパイダーマン2
このアメイジング・スパイダーマンというシリーズは、「スパイダーマン」という器を借りた、実は青春ドラマらしくって、ココに登場するスパイダーマンは、「青春」に忙しく、基本的に敵と一生懸命には戦ってません。それはそれでいいのかも知れないけれど(私はヤだけど)、その結果として、悪役の怪人にも魅力が無くなってしまっているのが残念。エレクトロが、とことんキラキラピカピカしまくる、しかしそれだけ、という作品でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-01-22 22:45:14)(良:2票) |
1778. マーシャル・ロー(1998)
他国に干渉し、他国との間にさまざまな軋轢を抱えながら、自国の平和と自由を維持することはできるのか? アメリカがテロの標的となり、国内で次々に多数の犠牲者が発生する前半に対し、後半は、戒厳令の発令、アラブ系の人々への弾圧が描かれていきます。自由が損なわれ、国内もバラバラになっていく、その姿は、「軍人」と「FBI」が廊下を互いに別方向に歩み去り、間に「CIA」が残される、という構図にも象徴されています。が、バラバラになっているうちが、まだしも相互批判の余地があって健全なのかもしれません。本当に恐ろしいのは、戒厳令すらも必要としない無批判な熱狂による暴走、の方でしょうから。そういう意味では、やや楽天的な見通しの映画なのかもしれませぬ。 [DVD(字幕)] 8点(2015-01-20 22:41:17) |
1779. 2ガンズ
冒頭のいきなりの放火、主人公ふたりの軽妙な掛け合いに、放火の手際の良さ、その割に放火の理由がやたらクダラナイのが、たいへん結構です。そこから時間は遡り、主人公それぞれの抱えたヤヤコシイ背景が描かれる訳ですが、もう面倒だとばかりに、クライマックスでは、事態を引っ掻き回した挙句に全部投げ出してしまうようなハチャメチャな展開。デタラメなのが、たいへん結構です。デンゼル・ワシントンにハズレなし、マーク・ウォールバーグにハズレなし、と(大して彼らの映画を見てる訳でもないのに)勝手に思っていたのですが、また当たってしまいました。デンゼル・ワシントンがマーク・ウォールバーグにライフルで狙われるシーン、一瞬「エッ何が起こったの?」と思わせる瞬間がありますが、クドクド説明しないでさっさと映画を先に進めていっちゃうのも、シャレてます。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2015-01-20 22:01:36)(良:1票) |
1780. 柳生武芸帳 剣豪乱れ雲
うわー、山形勲さんだとは、気づきませんでした、失礼しました。さて、柳生武芸帳を巡るあれやこれや、もはやどうでもいいんですけれども、アクションが楽しめるからとりあえずOK。武芸帳を狙うやくざ者3人組のうちの二人が、画面外の十兵衛と睨み合う場面。一瞬の斬り合いの後、二人の頭から血がタラーッと流れるのが、カッチョよいではないですか。直前の睨み合いなんて、刀をこちらに突きだし、まるで3D映画。さらには、忍者軍団の襲撃に、槍を振り回し戦う十四郎十兵衛。ちょっと大袈裟な立ち回りも、彼がやればまさにお見事。戦いの最中に、行方知れずだった武芸帳がアッサリ見つかり、武芸帳に手を伸ばす敵の手を、十兵衛の槍が突き刺す。手はゴム製らしく、槍で貫かれた瞬間のプルプルッとした感触がなかなかにタマラナイのですが、流血シーンと合わせ、ちょっとした残酷描写がアクセントになってます。またさらには、妙に念いりにカットを割って妙に長々と続く、馬上の追跡シーン。こういうのを見てると、アクションこそ命、ストーリーなんてもうどうでもよくなる(それに、直前のシーンが夜みたいだったのに急に昼間になったことも、どうでもよくなる)。そして宿敵との対決。多少クサイところはあっても、十四郎サマなればこそ、この貫禄。というか、剣豪とも思えぬ必死の表情や地団太踏む悔しそうな表情を見せるあたり、十四郎サマの真骨頂でありましょう(それに比べ、松方弘樹の落ち着いたこと。演技しにくかったのは、父と子の果たしてどちらであったことか)。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-01-15 23:41:02) |