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161.  ファム・ファタール(2002) 《ネタバレ》 
巻頭、エロティシズム溢れる白昼の宝石略奪シーンからデ・パルマ印全開の本作は、結論から言うと、昨今流行りの“脳内映画”の変種だと言える。仲間を裏切って宝石を独り占めして姿を眩ましたまではよかったが、追われる者の恐怖感からか、はたまた後ろめたさからくる強迫観念からか、延々と続くヒロインが見る悪夢(しかしそれは実に刺激的で魅惑的な)に、我々観客は否応なくつき合わされ、そして翻弄される。従って映画の大半はいわゆる「騙し絵」であって、要はルール違反なのだが、それでも先の展開が読めないほど巧妙に入り組んだプロットを、流れるようなカメラワークとデ・パルマの見事なストーリーテリングで、観客に有無を言わさず、ぐいぐい引き込んでしまう手腕はさすがで、実に魅力的な作品に仕上がっている。
7点(2003-12-03 00:30:42)(良:1票)
162.  阿修羅のごとく
四人姉妹が主人公というで、谷崎の「細雪」を連想しがちだが、昭和初期といった時代色が明確なのに対し、本作の時代はほんの二十数年前といった設定。それだけに、風俗や人物描写の表現に微妙なさじ加減は重要なポイント。たばこの自販機や清涼飲料水、あるいは白菜の漬物やヒビ割れた餅といった小道具で、この時代の雰囲気を出そうと躍起になってはいるが、むしろわざとらしくてあまり効果的でないように思われる。極めて古臭く一方では極めて今風といった、何とも奇妙なアンバランスさを感じるだけに、どうせなら21世紀の現代に置き換えても良かったのではないだろうか。で、森田芳光は向田邦子の作品世界を損なうことなく手堅く再現してみせたが、彼流の辛辣なアクの強さは陰を潜め、とりたてて目新しくも無いエピソードを羅列しているにとどまっている。要は森田作品らしさが感じられないのだが、これを力量の後退と見るか、円熟味を増したと見るかは、意見の分かれるところ。それにしても、「青春の門」で可憐な少女を初々しく演じた大竹しのぶが、こういった役柄を演じるようになったのかと、ある種の感慨を覚えるが、まだまだ役不足。八千草薫は誰を演じてもやはり八千草薫であり、そのキャリアからすれば仲代達矢ともども、可も無し不可も無しといったところ。深津絵里と中村獅童のカップルが図抜けて素晴らしいだけに、余計そう感じる。終盤が少々長いのもマイナス材料として挙げられる。
7点(2003-12-02 16:26:39)
163.  バッドボーイズ2バッド
CGか実写かの区別もつかないほどの、ド肝を抜かれるスピード感溢れる凄まじいカー・クラッシュ。このシーンは、まさにアクション映画専門監督M・ベイの面目躍如たるものあるが、全編を通してみると、彼らしくアクションはプロ、それ以外はまったくのシロウトだということが、今更ながらより顕著に感じてしまう。彼のモタモタした演出は冒頭のツカミから既に始まり、次々と場面転換していくそれぞれのシーンの尻切れトンボな中途半端さや、何の脈絡も無いエピソードの羅列に、話の本筋は一体何処にあるのかとイライラが募るばかりで、しかも上映時間は呆れるほど長いときた!この演出家不在、脚本家不在の“もの”が、果たして映画と呼べるのだろうか?まさに“映画のようなもの”、もしくは“映画もどき”とでも言いたくなるが、その徹底した破壊のド派手さだけは一見の価値あり。
6点(2003-12-02 00:28:31)(良:2票)
164.  ソルジャー・ブルー
いわゆるアメリカン・ニューシネマの中でも、本作はハリウッドの伝統的な西部劇のスタイルを覆し、歴史に埋もれた真実を鋭く暴いた異色作で、公開当時はかなりの衝撃作として物議を醸し出した。とりわけ終盤で描かれる騎兵隊のインディアン大量虐殺シーンの数々は目を覆いたくなるほどの残酷描写であるが、それまでがふたりの男女の青春ドラマにウエイトが置かれていた為に、がらりと画調が変わり一気呵成に見せられる事で、より衝撃度が高まったようだ。そういう意味では実に効果的な構成だったと思う。で、この時代から先住民に対する米国の虐殺の歴史が始まったとも言われ、今日に至るまでの、まさに支配者たる米国の歴史は繰り返されているというメッセージが読みとれ、反戦というテーマが浮かび上がってくる。(もっとも余りに良く出来た殺戮シーンの為、好戦映画と批判も浴びた事もあったが・・・。)バフィ・セント・メリーのテーマ曲とR・バッドの透明感溢れるスコアは、本作により力強さと爽やかさをもたらしている。
7点(2003-12-01 00:31:44)
165.  マジェスティック(1974)
都会型アクションが少々マンネリ化してきた為に目先を変える意味で、郊外に活路を見出したアクション映画が登場したのがこの頃。本作もそのうちの一本で、なんとC・ブロンソンが西瓜畑の経営者という設定も珍しい。しかしその風貌からしてまったく違和感のない役柄で、ことさら田園風景がよく似合っている。話は、自ら経営する畑と雇い入れたメキシコ移民たちを、ならず者の襲撃から守ってやるという、ごく単純なもの。このならず者のリーダーがこの時期の売れっ子悪役A・レッティエリで、凄味があって迫力をも感じさせるが、いつもどこか間の抜けたようなキャラも併せ持っていて、心底憎めない人だ。で、散々嫌がらせを受けたブロンソンはついに怒りを爆発させ、一気呵成に反撃に出るが、美しい田園風景の中で展開されるアクションは、R・フライシャー監督のテンポのいい演出もあって、実に爽快感溢れたものとなっている。とりわけ大きくバウンドするトラックの荷台からの銃撃戦や、窓ガラスを突き破って飛び込みざまショットガンをぶっ放して相手を倒すなど、軽業師顔負けの活躍で、むしろ悪役たちが気の毒になるほど。こんな強い西瓜畑の経営者がいることも不思議だが、だからこそそれだけ余計痛快さが際立った作品だったともいえる。
7点(2003-11-27 23:49:07)(良:1票)
166.  昭和歌謡大全集
本作は或る通り魔殺人に端を発し、その復讐を果たす為、おばさんグループと若者グループとが死闘を繰り広げ、その挙句の果てにアッと驚く結末が用意されているといった、まさに過激で奇想天外な現代の寓話だと言える。とは言うものの、その日常生活は極めて現実的に描写され、再三出てくる食事のシーンなどでは、おばさん対若者といった図式が明確に示されていて面白い。ここに登場する若者たちは、マニアックでオタクっぽく何処にでもいそうなガキとして描かれる一方、おばさんと言っても、樋口可南子を始め彼女たちの何と生き生きとして魅力的なことか。オンナを棄てた女にはとても見えないところがご愛嬌で、キャスティングの巧妙なところ。そして、この両陣営に協力するのが中年オヤジというのが共通項としてあって、この作品のキモでもある。中でも若者に荷担する原田芳雄演じる金物屋のオヤジが傑作。この男、女どもにはさぞや苦々しい思いで生きてきたのであろうか、若者たちにその武器使用の理由を聞くや、嬉々として武器を売りつけるという闇の武器商人といった趣で、中年男性の象徴として強烈な存在感を示している。(核爆弾を“原爆”と言わせるところなど、いかにもタイトルの「昭和」という時代を意識したセリフだ。)さて個々の殺戮シーンには、そのテクニックを強調されはしても思い入れというものは無く、あくまでも直截的であり即物的に描かれていく。特に“♪チャンチキおけさ”のシーンは秀逸で、昭和の流行歌が効果的に使われた一例でもあり、決して刺身の妻などではないのである。それにしても、お互いに絶命するまで限りなく続くこの復讐劇と昭和という時代とに、果たしてどれだけ深い意味合いがあるのだろうか。本作は村上龍が終始描いてきた現代社会の不条理さを映像化し、現実と非現実とが渾然一体となって醸し出され、閉塞感漂う世の中の鬱積したものの吐け口をひとつ間違えると、歯止めが利かないままとんでもない方向へ進んでしまうという事を、見事に提示した実に面白い作品となったわけだが、彼らの悪夢は昭和から平成になって、さらに深刻でより過激になっている事を再認識する必要がある。所詮、寓話などと笑ってはいられない、「今」とはまさにそういう時代なのだ。
9点(2003-11-27 00:12:24)(良:2票)
167.  ヘヴン 《ネタバレ》 
冒頭、いきなり高層のエレベーターの爆発から物語は始まる。夫を失った悲しみとその恨みから、或る麻薬密売人に復讐する為に爆薬を仕掛けたのだ。覚悟の上での犯行だったが、しかし恨みを晴らすどころか、関係ない人たちを爆死させてしまう結果に。この時のヒロインの英語教師を演じるC・ブランシェットの凍りついた表情が印象的だが、普通の一般市民のテロ行為がまかり通る国家の恐怖を感じざるを得ないエピソードではある。この後、取調べに通訳として立ち会った若き憲兵が、彼女を助けながら思いを遂げさせるという展開となるが、何故彼はそこまでして彼女に想いを寄せるのかは、あまり多くは語られないので、やや唐突な印象を受ける。絶望感に打ちひしがれ、もはや生きていく気力も失いかけていた彼女だが、青年の純粋な愛に応えるべく、共に逃避行を決心するのが物語の後半。それはまさに絶望に向かってのものだが、サスペンス・タッチの前半から舞台がトスカーナ地方に移ったこともあって、陰惨さというものが徐々に薄れていき、いつの間にかピュアで詩情溢れた画調に変転している事に気づく。極度にセリフを抑え、表情だけで純粋な愛の形を描出したT・ティクヴァ監督の、この流れるような演出の手際の良さは実に見事である。ブランシェットと相手役のJ・リビジは共に本作のイメージ通りの透明感溢れる好演を見せているが、既に「ギフト」で共演していた事もあって、さすがに息がピッタリであった。二人を乗せたヘリが上空高く舞い上がり、やがて小さく小さくなって空に吸い込まれていくラストは、まさしく天国に召されていくという象徴的なイメージで、近年における名場面だといえる。
8点(2003-11-25 01:02:45)(良:1票)
168.  ローリング・サンダー(1977)
この時期に多く製作された、いわゆる“ベトナム後遺症モノ”の中でも異色中の異色作。主人公は空軍将校。長く苦しい捕虜生活から解放され帰国した彼を待ち受けていたのは、お座なりの歓迎と待っている筈の妻の夫への裏切り。失意の中、やがてならず者に妻子を殺され、自らも右腕を失ってしまう運命に。ベトナムで負け戦を強いられ、帰郷しても生きる気力を無くしかけていた彼が、復讐を果たすことで見せる男としての最後の意地。それは自らのアイデンティティを確かめる闘いでもある。脚本が「タクシー・ドライバー」のP・シュレイダーということもあり、本作もクライマックスの凄まじいバイオレンス・シーンに力点が置かれていて、我慢に我慢を重ねやがて怒りを一気に爆発させるというシチュエーションは、まるで日本の仁侠映画のようであり、かつての戦友(若き日のT・L・ジョーンズ)を従え、売春宿へ弔い合戦に向かう姿などはまさにそれ。軍服に身を包み、義手に銃身を短くカットしたショット・ガンを構えたW・ディベインには強烈なほどの凄味を感じたもので、そういう意味でも彼の代表作だと言える。
8点(2003-11-24 17:40:46)
169.  マグダレンの祈り
この映画ばかりは、なんの予備知識もなく崇高なタイトル(邦題)だけで鑑賞に臨むと、その余りのイメージの落差に愕然としてしまうだろう。もちろん修道院での女性たちを描いていることには違いないのだが、このマグダレン修道院は更生という名の強制収容所で、まさにここでの女性たちは徹底して罪人のように扱われる。人間として本来あるべき自由を奪われ、永久にともとれる外界からの断絶から、希望を失い、生きる気力すら奪い去られ、虐待と屈辱の日々を送り続ける女性たち。いったい彼女たちがどんな罪を犯したというのだろうか。レイプされて本来なら被害者であるはずの女性が、不貞な女としてのレッテルを貼られこの修道院へ送られるように、映画は終始、こういった理不尽さで貫かれていくが、要は彼女たちは十九世紀からの古い因習と歪められた信仰の犠牲者なのである。権威というものは長きに続くと堕落したものになりがちである。カトリックもまたそうであるが、腐敗させているのは他でもない、盲目的な信仰心を持つ人間そのものなのである。そしてその古い価値観に目覚め抗する女性たちが出現し、自分たちの権利を主張し始めたのも、この映画の時代以降だというから驚きだ。
8点(2003-11-24 16:47:25)
170.  リード・マイ・リップス 《ネタバレ》 
仕事はこなせるものの難聴というハンデの為、会社ではなにかと苦々しい思いをしながら日々を送るヒロイン。そんな陰鬱でストレスの塊のような彼女に、ある日ひとりの助手が充てがわれる。この見るからに風采の上がらない男は、務所帰りのチンピラで、更生を誓っての職探しの結果、彼女のお眼鏡に適ったという訳。しかしどこが気に入ったのだろうか。お互い社会に爪弾きにされている孤独な者同士という、まさに“類は類を呼ぶ”であり、この女と男の愛称の微妙さを、少ないセリフながら表情の変化で積み重ねていくプロセスが見事で、とりわけ男に恋心を抱くヒロインの変貌ぶりが心地いい。映画はやがて、難聴のため読唇術に長けたヒロインとこの盗みのプロとが大金強奪を決行するや、物語は一気にクライム&サスペンスの様相を呈するようになる。そして捕われの身となり窮地に追い込まれた男が、咄嗟に思いついた或るアイデアを、遠く離れた彼女に読唇術を使って自分の唇を読ませ、一発大逆転の行動に出るというシークエンスが実にスリリングで、この映画の最大の見所となっている。このあたりのヒヤヒヤ感は「バウンド」と酷似しているが、キッチン・ルームの使い方など、むしろ一連のタランティーノ作品に近いものがある。ハンデを持ったヒロインが活躍する作品に「暗くなるまで待って」という秀作もあるが、本作の場合には動機が不純ということもあって、あくまでもダークなイメージで描かれている。そこがまさにこの時代の女のしたたかな生き様であり、本作の狙いの面白いところ。まさに映画は時代を映す鏡なのであります 。
8点(2003-11-21 23:23:45)(良:2票)
171.  夜の訪問者
確か、テレンス・ヤング監督とC・ブロンソンとが初めて手を組んだ作品だったと記憶しているが、南仏の港町が舞台のれっきとしたフランス映画という割には、アメリカ映画といった印象が強いのも、やはりこの二人の持って生まれた資質がそうさせているのかも知れない。そして、ベルイマン作品の常連であるリブ・ウルマンを相手役に担ぎ出したのが、本作の特徴であり驚きでもあった。彼女がこういったアクション映画に出演したのは後にも先にも本作だけだっただけに、そういう意味においては実に貴重な映像を残してくれたと思う。それにしても本編は、小気味いいアクションとスリリングなカー・アクションが実に軽快なテンポで展開されていくという、まさに手に汗握るシーンの連続であり、T・ヤングの力量が存分に発揮されたといえるが、同時に筋立ての荒さも気になってしまった。ラストの救難用の照明弾の使い方には、“007のヤング”ということもあり、思わずニヤリとしてしまう。
7点(2003-11-18 23:05:09)
172.  アリスの恋
夫に突然事故死され、子供一人抱えたアリスは家財道具を処分して、もう少しマシな地方都市へと車を走らせる。母子の前に広がるのは無限の荒野と長い道だが、心細くなりながらも元気を取り戻していく。これこそがフロンティア・スピリッツで、いかにもアメリカ的人間そのもの姿であり、その活力が彼女たちを生き抜かせていく。友達関係のようなアリス母子の描写が面白く、又、アリスがウエイトレスになって、最初は喧嘩ばかりしていた先輩格の女とやがて仲良くなって、太陽の光を浴びながら二人で話をしているアップの秀逸なカット等々、M・スコセッシの印象的な演出は冴えわたる。
8点(2003-11-18 16:25:34)(良:2票)
173.  ハンテッド(2003)
追う男のイメージがすっかり定着した感のあるT・L・ジョーンズと、独特の不気味な雰囲気を醸し出すB・デル・トロ。この作品はそんなひと癖もふた癖もある二人の共演が最大の見所であり、とりわけ本作でのデル・トロの凄味ある演技は特筆に価する。そしてCG全盛の今、徹底した生身のアクションにこだわる監督W・フリードキンの意気や良しだが、使い古されたシチュエーションでパターン化されて、新味に乏しいのが残念。
6点(2003-11-18 11:49:53)
174.  少女の髪どめ
M・マジディ監督の新作は今までとは趣が違い、貧困に喘ぐアフガン難民の問題に深く切り込んだ作品である。しかしその語り口はあくまでも静謐で詩情溢れるものであり、決して声高に主張したりはしない。いかにもマジディらしい暖かい眼差しを感じさせる作品である。少女へ無償の愛を捧げようとすることに懸命になるラティフ。何かを語るすべも知らぬ少女は、ただ日々生きていく事に懸命であり続ける。彼の一途さに応える気持ちの余裕などあろう筈もない彼女の姿に、ラティフの苦悩もまた深まる一方なのだが、純粋な淡い恋心というよりも、もはやこれは人間愛にまで昇華しているのである。少女との刹那的な出会いと別れ。アフガン難民の象徴が彼女なら、ラティフは監督自身ではないだろうか。「一日も早く平和が訪れますように・・・」 マジディ監督の祈りにも似た切ない願いが心に重く響く秀作。
8点(2003-11-18 11:07:49)(良:1票)
175.  クジラの島の少女
本作は、島の族長を男が継承するという伝統と古い因習の残る島で、女として生を受けた少女パイケアの「男として生まれたかった」ことへの苦悩と反撥を描くと共に、自ら運命を切り開いていき、やがてアイデンティティーを確立するまでの闘いの物語と捉えたい。ここでの女性たちは皆それなりに自己主張を貫き、決して男尊女卑といった単純な図式としては描かれてはいない。あくまでも島の伝承にのみ拘っているのだが、パイケアが島の他のどの少年たちよりも、族長を継承する能力に優れているかが痛快なほどに示される。それだけに「男として生まれてきて欲しかった」と、孫娘パイケアをこよなく愛する祖父の無念さもまた胸に迫るものがある。映画は島の人々の生活を現実感溢れた描写をする一方で、ファンタジックな味付けをも施している。終盤のエピソードがそれなのだが、このあたり宮崎アニメにでもなりそうなドラマツルギーではないだろうか。まさに1000年の時を経ての「鯨への恩返し」と相成った訳で、島の人々の思いと願いとが十分に伝わってくる感動的な幕切れであった。
8点(2003-11-16 18:09:31)
176.  ドッペルゲンガー
剥き出しの欲望とその大胆な行動力。曖昧さというものが無い分身たち。社会の様々なしがらみの中でもがき苦しみひたすら正常さを保とうとする我々だが、果たして自分らしさとは、そして自分らしく生きる事が出来たなら・・といった事は万人の久しき願望である。人間の二面性というものを、ドッペルゲンガーという具象化された分身を登場させる事によって、作品は寓意に満ちたものとなっている。何かと深読みしたくなるようなテーマ性を感じるが、黒沢清流ナンセンス・コメディといった趣の作品だ。しかし見所はたっぷりで、何と言ってもまったく違う性格を匠に演じ分ける役所広司の上手さ。この人が演じる狂気には他の誰とも違う凄味があり、迫力をも感じさせるのはさすがだ。同一画面に登場させる特殊技術のみ頼ることなく、分割画面を多用するなどのアイデアで、単調になりがちな画面にひとつのリズムを生み出している。その撮影技術の見事さ。そして薄暗がりの部屋の片隅にぼんやりと立っているだけで、得体の知れない恐怖感を味あわせてくれる、お馴染みの黒沢流ホラー演出は今回も健在で、まさに恐怖の極致といえる。永作博美や柄本明といった登場人物たちの前半部分と後半とでは、性格やその行動力が微妙に違うと感じたのは私だけだろうか。“彼らもひょっとしてドッペルゲンガーか?”“だとしたら本人たちは・・・?”“本音剥き出しの分身たちばかりの世界になったら。”・・・などと考えたら際限がないが、しかしそんな事は所詮どうでもいい事であって、要は確りとしたアイデンティティーを維持していく事の大切さと難しさを、試作ロボットが叫んでいるようだ。
8点(2003-11-13 18:25:52)(良:1票)
177.  ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー
スーパー強盗に押し入った男女三人が、警察の追跡をかわしながら逃避行を続けるという、一種のロード・ムービー。P・フォンダ主演という事もあって、いわゆる反権力を謳ったアメリカン・ニューシネマのようなテイストもあるが、むしろこの頃の主流である「田園郊外型アクション」の代表作の一本と位置付けたい。物語の性格上、全編が凄まじいカー・アクションで貫かれていて、とりわけ地元警察の保安官が乗るヘリとの攻防が最大の見せ場となる。この保安官フランクリンに扮するのがV・モローで、そのクレイジーさはラリーと好一対をなし、追う側としてのインパクトは強烈で本作をより面白くしている。追われる側の三人だが、フォンダ演じるラリーは元レーサーという事もあって、その抜群のドライバー・テクニックを駆使して、カーチェイスを楽しんでいる野放図な男として描かれる一方、相棒のディーク(=A・ロアーク)は自分たちの行動に何かと疑問を抱く良識派として対比させていく、その妙味には捨てがたいものがある。そして、この二人に絡むチャーミングだがいかにも粗野で頭の弱そうな娼婦メリーを、この頃の売れっ子S・ジョージが好演という様に、アクション以上に登場人物のキャラが際立った作品でもあった。後半のある小さな事故が衝撃のラストの伏線としても効いていて、本作はこの時代の無軌道な破滅型の若者の青春を鮮やかに浮び上がらせている。
7点(2003-11-13 16:59:31)(良:1票)
178.  10億分の1の男
タイトル、とくに邦題で作品のイメージを(勝手に)決めつけて鑑賞に臨むと、時として肩透かしを食らった印象を受ける場合がある。本作もその一本で、何やらSFチックな映画を連想してしまいがちだが、極めて狭い範囲の地味でしかも少々マニアックなサスペンス・ドラマだと言える。ストーリーは、世界一運のいい男を決定するゲームに参画した様々な登場人物たちの運命を描いたもので、むしろハリウッドが好みそうなテーマである。それだけにハッタリや大規模な仕掛けといったケレン味など一切排除した作品で、ひたすらクールにそしてスタイリッシュさにこだわってはいるが、起伏に乏しいストーリーに加え画面が単調ということもあって、相当気合を入れて鑑賞しないと、睡魔に襲われることは必至だ。
6点(2003-11-13 16:46:03)
179.  ピロスマニ
死して評価された芸術家の代表格としてゴッホの名がまず挙げられるが、本作のニコ・ピロスマニもその一人。「彼の画を鑑賞すれば、グルジアを理解できる」とまで言われたほどで、ピロスマニは民衆の中から生まれ、独学でグルジア民族の魂を豊かに描きあげた偉大な画家である。とは言え、彼の画は日々の糧を得る為に描かれた作品ばかりで、所詮、看板の絵描きに過ぎなかった。この映画は、そんな飢えと孤独のうちに報われぬ生涯を閉じた不遇の天才画家の半生を、詩情豊かに描いた秀作である。本作の最大の見所といえば、ピロスマニがこよなく愛したグルジアの美しい風土と、そこに暮らしている人々の生活を、彼が描いた画そのままを映像化している点にある。画の構図やタッチなどは彼の画そのもので、この映像表現はまさに画期的であり、同時に極めて芸術性が高いものだと言える。その事によって我々観客は、彼の作品世界そのものを存分に味わえるという恩恵に与かるのである。世界映画史にややもすると埋没しかねないほどの隠れた名作とも言え、それだけに出来るだけ多くの人に鑑賞していただきたいと、切に願うのであります。
9点(2003-11-13 14:32:01)(良:2票)
180.  妖星ゴラス
円谷特撮の集大成的作品として永遠に記憶に留めておきたい逸品。今、仮にこの作品をリメイクしたとして、果たしてオリジナルを超えるほどのテイストが残せるだろうか。40年も前に創られた映画ということもあって、特撮がチャチという意見もあるようだが、それは古典を読んで“古い!”と言っているようなもので、映画芸術の基本が解かっていない証拠。確かにテクノロジーは進歩したが、しかし現状ではそれを生かせていないばかりか、むしろ後退しているのではないかとさえ思えるだけに、かつてないほどの大胆な発想とアイデアで、これだけのスケール感を伴った作品を創造するのは、今の技術力をもってしても到底不可能だと信じて疑わない。新しい技術をどれだけ膨らませて、それ以上のものを生み出せるかがポイントで、誰でもが達成できるものではない。要はテクノロジーと言うよりも工夫とセンスが問題となってくる訳で、やはりある特殊な能力が必要不可欠となってくる。そういう意味でも円谷特撮の“画作り・見せ場作り”の巧さは、やはり天性のものだと言え、他の追随を許さない。本篇では、日々接近してくる暗赤色のゴラスの姿を、世界各地から遠景で捉えたショットの不気味さや、美しい紋様で弧を描く土星の輪が徐々に歪んで、ゴラスに吸い寄せられるシーンなどは実にリアルであり、息を呑むような美しさを感じてしまうほど。探査ロケットや周囲の星々が一瞬にして消滅していく視覚効果や、津波や地割れといった天変地異のスペクタクルなど、全編が見せ場と言ってもいい程のサービスぶりで、円谷英二は当時の技術をフルに生かして見事なエンターティンメント仕上げた訳だが、単なるマニア向けだけの作品でない事はご覧いただければ解かると思う。
10点(2003-11-11 23:40:03)(良:4票)
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