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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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161.  にっぽん泥棒物語 《ネタバレ》 
山本薩夫監督が実際に起きた冤罪事件をもとにフィクションとして手がけた社会派喜劇。三國連太郎扮する主人公 林田儀助の泥棒時代のエピソードがかなりコミカルに描かれていて思った以上に喜劇要素が強く、どこかすっとぼけた味わいがあり、山本監督の社会派監督としてだけではない一面が感じられた。でもやはり、この主人公が列車転覆事件が起きる直前に線路を歩いていて怪しい9人の男とすれ違ったあたりからが山本監督の本領発揮といえる社会派ドラマになる。この事件で捕まった人たちの冤罪を証明するように周りから言われても、今は泥棒稼業を辞め、結婚して子供もできて、泥棒だった過去を隠して平穏な生活を手に入れている身では家族のことを思うととてもできないという林田の心の葛藤が胸を打つ。そんな林田が証言を決意するシーンはとても感動してしまった。ここまででもじゅうぶんドラマとして見ごたえあるのだが、ラストの証言シーンもみどころで、ここはもう三國連太郎の独演会といってよく、皮肉めいたことを次々と言うのだが、それが物凄く笑える。中でも「警察は自分よりも嘘をつく。嘘つきは泥棒の始まりというが。」というセリフ。元泥棒である主人公が言うからこその皮肉がこめられていて、笑えると同時にこのセリフにはそれ以上の底知れぬ凄さを感じた。喜劇映画のなかに冤罪という重いテーマを入れてしまうといつの間にかシリアスになりすぎ、喜劇的な部分がおなざりになってしまうのではと心配だった面もあったが、この証言シーンのおかげで最後まで喜劇映画であることを忘れない映画になっているのがいい。林田と腐れ縁の刑事を演じる伊藤雄之助のネチネチとした演技もやはり印象に残るし、妻を演じる佐久間良子や、冤罪被害者の一人を演じる鈴木瑞穂も良かった。でもこの映画はやはりなんといっても主演の三國連太郎に尽きる映画で、出演作の中ではあまり知られていないようではあるが、間違いなく本作も代表作の一本だろう。三國連太郎の喜劇といえば「釣りバカ日誌」シリーズをどうしても思い浮かべてしまいがちだが、やはりそれだけではないということを本作を見ると感じることができる。
[DVD(邦画)] 8点(2014-04-17 17:50:24)(良:1票)
162.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
「独立愚連隊西へ」に続き、岡本喜八監督が再び佐藤允と加山雄三を主役に起用した戦争映画で、タイトルからは分からないが「独立愚連隊」シリーズの3作目にあたる作品になる。今回は前2作に比べてやや複雑なきらいがあるのだが、それでも雰囲気的には完全に前2作を踏襲しているのが嬉しいし、喜八監督の演出もこの人らしいテンポのいい見せ方で見ていて飽きさせないし、やっぱり痛快さがあるのがなによりいい。ストーリーは敵の捕虜になった関大尉(夏木陽介)を佐藤允扮する百虎に集められた特務隊が救出に向かうというものなのだが、このメンバーが一癖もふたくせもあるような個性的な連中なのも面白く、中でも忍術を研究しているという砂塚秀夫演じる佐々木二等兵が脱出のためにパントマイムを使うシーンなどは傑作で思わず笑ってしまった。(この人は同じ喜八監督の「戦国野郎」でもコミカルな演技が印象に残っている。)喜八監督らしさは戦争そのものについてもよく出ていて、関大尉が自分の命令で銃殺になった捕虜の幻影に苦しめられるところはリアルだし、自らが捕虜になった後に主治医としてやってきた軍医がその銃殺された捕虜にうり二つというのも皮肉が利いていて印象に残る。それに日本軍についてもちくりと批判をやってみせるのも喜八監督らしいところである。関大尉や正宗大尉(藤田進)が独立愚連隊となった特務隊に加わり、日本軍に反旗を翻すラストシーンが爽快で好きなのだが、このシーンの正宗大尉のセリフが黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」での藤田進の「裏切り御免」を意識したものになっているのが笑えるし、特務隊が結婚式に紛れてという展開も「隠し砦の三悪人」を思わせている。思えば、喜八監督が本作の翌年に手がけた時代劇「戦国野郎」も「隠し砦の三悪人」に似た雰囲気の映画になっていたので、やはり喜八監督は「隠し砦の三悪人」が好きなんだろうなあと思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2014-03-20 17:32:39)
163.  暗黒街の弾痕(1961)
岡本喜八監督の暗黒街シリーズ3作目。ヤクザ映画という印象が強かった前2作と違い、自動車業界を舞台に産業スパイを描いていて、主演も鶴田浩二や三船敏郎に代わって「独立愚連隊西へ」や「戦国野郎」などで息の合ったところを見せていた加山雄三と佐藤允のコンビが担当し、前2作とは毛色の違う作品になっている。同じく自動車業界の産業スパイものといえば増村保造監督の「黒の試走車」が思い浮かぶが、本作はサスペンスよりもアクション映画としての色合いが濃く、同じ題材でありながら受ける印象はまったく違う。しかしあくまで娯楽アクション映画に徹したことと主演ふたりの対照的なキャラクターが喜八監督の作風に見事にマッチし、喜八監督の持ち味がじゅうぶんに発揮されていて、演出も前2作と比べると明らかにイキイキとしているのが嬉しい。結果、喜八監督が手がけた暗黒街シリーズの中ではいちばんこの監督らしさが出ていて面白かった。それに加山雄三と佐藤允のコンビがやはり本作でも息の合ったところを見せていて、このコンビの良さもしっかりと出ている。喜八監督の暗黒街シリーズとしては最後の作品になるのかもしれないが、その中ではぼくも本作がいちばん好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-03-13 18:26:49)(良:1票)
164.  ジャズ大名 《ネタバレ》 
江戸時代の日本に外国人が漂流というと「おろしや国酔夢譚」の逆パターンのような話になってしまいそうなところを、それがきっかけである潘の殿様(古谷一行)と家来たちがジャズにはまっていく姿を勢いよく描いていて、岡本喜八監督らしい実に軽快な映画に仕上がっていて面白かった。とにかくひたすら陽気でテンションが高くエネルギーに満ち溢れていて、1986年制作と喜八監督の映画としてはけっこう後年の作品にもかかわらず、衰えというものをまったく感じさせないようなパワーがあるのはすごい。そして何よりもこの映画を喜八監督本人が楽しんで演出しているのがよく分かるし、見ている人に対しても肩の凝らない映画をという思いもよく伝わってきて本当に何も考えずに気楽に見ていられる映画だ。ラスト20分の狂乱のジャズセッションのシーンはなんとも強烈で印象に残る。その狂乱の中でいつの間にか明治になっても「俺たちにはそんなこと関係ないぜ」とばかりに狂乱のセッションを続けるエンディングに喜八監督らしい反骨精神のようなものを感じることができた。「ああ爆弾」ほどではないがシュールなシーンも多く、中でもそろばんをスケボー代わりにして城の中を移動する姫には笑わされたし、ほかにも殿様をはじめとしておかしくて個性的な登場人物たちも面白い。喜八監督の映画を見るのはかなり久しぶりで、それもあってか見る前はちょっと不安な面もあったが、そんな不安は見ているうちに吹き飛び最後まで楽しく見ることができて良かったと思う。最後にもう一言、矢口史靖監督の「スウィング・ガールズ」はあんがいこの映画の影響を受けてる部分もあるのかもしれないと少し思った。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-13 18:29:13)
165.  日本一の男の中の男
古澤憲吾監督による植木等映画、かなり久しぶりに見たが、やっぱりものすごい勢いがあって面白い。昇進できると張り切っていた植木等演じる主人公 小野子等がストッキング会社の会長(東野英治郎)の一声で転勤することになり、最初は落ち込むが、すぐにポジティブな考えに転換するところはこのシリーズらしい展開でこれだけで見ていて前向きになれるし、このシリーズの植木等を見ていていつも思うが、人生何があっても明るく生きていこうというのが感じられ、見た後にとても元気になれるのがこのシリーズの魅力だとあらためて思う。既に青観さんが書かれているとおり、本作でも植木等演じる主人公は頭の回転が異様に早く、行動力があり、言いたいことは相手が目上の存在だろうがズバズバ言う。これが見ていて非常に気持ちよく、この主人公にある種、憧れのようなものも感じることができるし、本当に嫌なことなどきれいさっぱり忘れさせてくれる不思議な魅力がある。そして勢いのある古澤監督の独特の演出も面白さに拍車をかけていて飽きさせない。とくに軍艦マーチをバックに女子社員たちが屋上で行進するシーンはいかにもこの監督らしいシーンで印象に残る。これまでのシリーズで浜美枝が演じていたヒロインを本作では浅丘ルリ子が演じている(日活を辞める前後の頃だそう。)が、とくに違和感はなく、むしろどこかクールな感じで新鮮に感じられた。浅丘ルリ子といえばなんといってもリリーであるが、このシリーズには寅さんシリーズと違い、ペーソスとかそういうものは基本的になくひたすらお笑いに徹しているところが潔く、そこも魅力的で好きだ。(もちろん、寅さんシリーズも好きなんだけどね。) 本作を見終わってクレージー映画や、植木等主演の喜劇映画をまたもっと見たいと思ったし、また、今の日本映画にはもっとこういうあっけらかんとした前向きな映画が必要なのではないかとも感じた。 やっぱり植木等、好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-06 18:40:17)(良:1票)
166.  あの夏、いちばん静かな海。
北野武監督の第3作は暴力的な世界を描いた前2作とは趣を変え、サーフィンに次第にのめりこんでいく若者とその恋人を描いたラブストーリーとなっているが、自身は出演しておらず、企画としてもクレジットされているあたりにたけしの本作に対する本気度がうかがえるし、実際に映画としての完成度も非常に高い。「その男、凶暴につき」や「3-4X10月」で既にセリフに頼らず映像で見せていくというたけしの作風は確立されていたが、本作では主役のカップルを2人とも聾唖者に設定することで、セリフを排除し、2人の関係は映像のみで語られていくというのがいかにもたけしらしく、「その男、凶暴につき」から本作までの3本でたけしの映画監督としてのスタイルは完成されたものになったのだろうと思わずにはいられない。本作は主役2人のセリフがない分、ものすごく淡々とした映画にはなっているが、言葉で語る以上にこの二人がお互いを思う気持ちや切なさがじゅうぶんに伝わってきて、まさにサイレント映画の手法だが、あらためて映画というのはこういうものなんだと気づかされるし、その映画を演出しているのが普段はテレビでバカをやっているタレントであることにもやっぱり驚かされ、本作を見るとたけしという人は本当は才能のある人なんだと感じさせられる。主役のふたりを演じた真木蔵人と大島弘子もよく、いかついイメージのある真木蔵人はさわやかに好演していても違和感がないし、なによりもサーフィンに熱中する彼を見つめる大島弘子がすごく印象に残り、これ一本で引退したみたいだが、だからこそよけいに鮮烈なものがあるのかもしれない。夏の海が舞台だが、たけしらしい空と海の美しさも印象に残る。これがたけし映画初参加となる久石譲の音楽も映画の雰囲気にとても合っていて、美しくいつまでも耳に残り、これも映像とともに二人のドラマを描くのに効果をあげている。賛否両論ある映画のようだが、見終わってなんとも言えない気持ちになり、素直に良い映画だ、見て良かったと思えた。最近の「アウトレイジ」のようなたけし映画も悪くはないが、やはり本来のたけし映画の良さは本作のような独特の静けさを持った映画にこそあるような気がする。
[DVD(邦画)] 8点(2014-01-25 01:09:00)(良:1票)
167.  麦秋(1951) 《ネタバレ》 
小津安二郎監督と原節子のコンビによる「晩春」、「東京物語」と合わせて「紀子三部作」と呼ばれる作品群の2作目。「晩春」と同じく原節子演じる娘・紀子が結婚するまでを描いていて、最初は「晩春」と同じような感じ(冒頭に登場する海は「晩春」のいちばん最後のシーンと重なる。)なのだが、あくまで父と娘の話に絞ったストーリーだった「晩春」と違ってこの映画では大所帯の家族が描かれていて、この家族のドラマとしても一級品。「晩春」同様にとても味わい深さのある映画になっていて素直に名作だと思った。原節子演じるヒロインの人物像は「晩春」と比べるととっつきやすいし、小津監督らしいユーモラスな会話も「晩春」より多く、楽しめる。とくに原節子が友達(井川邦子)の結婚をほかの友達(淡島千景)とからかうシーンは下手に描けば嫌味になって笑えないところを実にうまくユーモラスに描いていてあざとさを感じさせず、これだけで小津監督の喜劇のセンスの良さが分かるし、会話の歯切れの良さも現代の映画では感じることができないものだろう。子供の描き方が実にイキイキとしているのも小津監督らしい。それに黒澤明監督の映画でお馴染みの俳優である高堂国典もコミカルで面白かった。見る前は「晩春」や「東京物語」のイメージからかこの映画でもヒロインの父親役は笠智衆が演じていると思っていたが、実はヒロインの兄役だったのはちょっと意外に感じた。(でもこれで年相応の役というからさらに驚き。)終盤近く、みんな離れ離れに暮らすことになった後のヒロインの父親(菅井一郎)のセリフが耳に残る。家族で写真を撮るシーンも印象的だ。「晩春」では結婚による親子の別離が描かれていたが、この映画で描かれているのは結婚による家族の別離で、核家族が当たり前となった現代を予見したかのような結末になっているのは小津監督の先見の明を感じるし、実際それは原節子が次に出演する小津作品である「東京物語」で切実さをもって描かれることになるのだなあと思わずにはいられない。今見ると多少時代を感じる部分もなくはないが、本作も「晩春」に劣らない名作だと思う。それにしても劇中に出てきた900円(←当時としてはえらく高価。)のケーキがとってもおいしそうだった。
[DVD(邦画)] 8点(2013-11-07 16:36:52)
168.  晩春 《ネタバレ》 
「東京物語」と並んで名作と言われている小津安二郎監督の映画だが、今回、ようやく見た。前半はやや冗長に感じる部分があるものの、思っていたよりも見やすく、ほとんどだれることなく見ることができたし、見ていてだんだん引き込まれてしまった。父親を心配するあまり結婚を拒む娘と、娘の結婚を願う父親。この二人の描写が秀逸でとても見ごたえのあるものになっている。笠智衆演じる父の再婚話を知った原節子演じる娘が二人で能を見に行った帰りに父に見せる態度など、娘の描き方はややストレートなのに対して、父親のほうは何を考えているのか分からない描き方で、ちょっと鈍感な感じがするのだが、ラストに至ってこの父親の複雑な心境が痛いほどに伝わってくるような構成が見事で、娘を送り出した後に姪との会話で「きっと遊びに来てくれるね。」などと言っている時点で既にこの父親の寂しさはじゅうぶんに伝わってくるが、なんといってもラストシーン、小津監督は最初この映画のラストシーンで父親が泣くというふうに設定していたのを、演じる笠智衆の注文で項垂れるというふうに変えたというが、このラストシーンが素晴らしく、娘を嫁がせ、一人になった父親の悲しみがよくこちらに伝わってくるまさに名シーンだ。(このシーンで父親が泣いてしまうと、映画の印象が少し変わってしまうかもしれない。)ほかにも父と娘が結婚や幸せについて語り合う夜のシーンも見ていてつい感動してしまう名シーンだろう。劇中で交わされる言葉の面白さや、コメディリリーフ的存在の杉村春子(姪の結婚相手の呼び方について話すシーンや財布を拾うシーンは面白すぎ。)など笑えるシーンが多いのも小津監督らしく、安心して見ていられる。実は今まで敷居が高くて敬遠していた映画だったのだが、まさにこれぞ名作と呼ぶにふさわしい映画で、素直に見て良かったと思える映画だった。本作を敬遠していたおかげで同じように嫁いでいく娘を描いた小津監督の映画はほとんど見ていないのだが、また小津監督のこういう映画を見てみてみたいと思った。そうそう娘の結婚相手が一度も直接画面に登場せず、登場人物たちの会話から想像してみるのだが、ゲーリー・クーパーに似ていて名前が熊五郎・・・。いったいどんな男なのだろう。ちょっと気になる。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-11-06 01:13:12)
169.  名探偵ホームズ2/海底の財宝の巻 《ネタバレ》 
本作では前半に「軍艦マーチ」をバックに大海戦シーン(←というにはドタバタすぎてちょっと大げさな表現かも?)が描かれ、どちらかといえばほのぼのした雰囲気だった「青い紅玉」とはがらりと雰囲気が変わっているが、やはり単純に面白い。宮崎駿監督は後年の作品でも群集のシーンが印象に残るものが多いが、ここでも見事な群集シーンを描いていてやっぱりうまい。「青い紅玉」では空中アクションで魅せてくれていたが、今回は海でのアクションがメインで、登場する潜水艦や駆逐艦が非常にカッコよく描かれ、大砲を撃ちまくるシーンなどはテレビ用と思えぬ迫力があり、宮崎監督の空だけではない戦闘シーンの描写のうまさを感じさせている。(下の方も書かれているが、このシーンはけっこう爽快だった。)それに手旗信号のシーンもどことなく「紅の豚」を思わせるもの。後半の深海に沈められた船からの脱出もハラハラもので、思わず見入ってしまった。永井一郎が演じる大佐とその双子の兄のキャラクター描写もコミカルで面白かった。ただ、本作は「青い紅玉」に比べるとホームズ自体の活躍は少なめでそこが残念と言えば残念。テレビシリーズ(ホームズの声が「大草原の小さな家」の父さんから「007」のロジャー・ムーアに変わっているらしい。)は一度も見た事がないので、また機会があれば見てみたいと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2013-10-15 00:29:09)(良:1票)
170.  名探偵ホームズ1/青い紅玉の巻 《ネタバレ》 
宮崎駿監督がイタリアの製作会社と組んで手がけたテレビ用の短編なのだが、テレビ用とは思えないほどのクオリティーの高さがあり、面白い。中でも空中でのアクションの見せ方がうまいのが宮崎監督らしいところで、見事としか言いようがない。やはり宮崎監督の作品は最近のものよりこの時期のもののほうが楽しめると改めて思った。映画としてどうなのかと言われると少し微妙な気もするが、単純に楽しめる娯楽ものに徹していて、比べるのは自分でもどうかと思うが、劇場公開時に同時上映だったという「風の谷のナウシカ」よりも個人的にはこっちのほうが好みかもしれない。ゲストヒロインの声を「天空の城ラピュタ」のパズーを演じた田中真弓が担当しているが、ボーイッシュな外見ではあるが、竜之介のような男勝りのキャラクターではなく、言葉使いにちゃんと女らしさがあり、少年役のイメージが強いだけに多少違和感がなくもないが、田中真弓のこういう女らしい演技はけっこう新鮮に感じる。(とはいえ前半はミスリードを狙っている感じなのだが。)「私は女よ。」と竜之介のようなセリフを言ったシーンでは思わず笑ってしまった。
[DVD(邦画)] 8点(2013-10-14 00:04:24)
171.  息子(1991) 《ネタバレ》 
まだ「男はつらいよ」シリーズをやっていた頃の山田洋次監督の映画には珍しく、山田作品の顔である渥美清や倍賞千恵子が出ておらず、そこに山田監督のいつもと違う雰囲気の映画にしようという意気込みのようなものが感じられ、地方に住む父親と、東京に住む息子たちの関係を描いていて、ストーリー的には小津安二郎監督の「東京物語」や「一人息子」を思わせており、実際に小津監督の作品のような雰囲気がある味わい深いものになっている。映画はこの父親と、東京でフリーター生活をする次男を軸に三部構成で展開していくのだが、この親子を演じる三國連太郎と永瀬正敏の演技が素晴らしく、二人の方言でのやりとりがリアルでまるで本当の親子のよう。また、次男の東京での暮らしぶりを軽いタッチで描く一方、父親の次男以外の子供たちとのシーンでは「東京物語」でも描かれた親子のすれ違いが描かれており、その対比のバランスもいい。(父親と次男以外の親子のすれ違いは「東京物語」よりもシビアに描かれているような気がする。)次男と和久井映見扮する聾唖の女性(初々しく好演。)との恋をもう少し膨らましてもよかったような気がしないでもないが、そうすると焦点がぼやける可能性があるのであくまでもサブ的なエピソードにしたのは正解だったかもしれない。彼女が聾唖であることを揶揄する田中邦衛や中村メイコに「いいではないか!」と叫ぶ次男には思わず感情移入できたし、次男が結婚相手としてその女性を父親に紹介するシーンはとても良かった。そして、岩手の家に帰ってきた父親が過去の幻影を見るラストシーンは一人残され、老いていくしかない老人の孤独が痛いほど伝わって来て切ないと同時に山田監督の優しさというものも感じられて印象に残るし、あまりあざとさを感じさせることなく素直に感動できる。この映画は山田監督、そして主演の三國連太郎、もちろん永瀬正敏や和久井映見にとっても代表作と言っていい名作だと思うし、「釣りバカ日誌」シリーズで脚本家と俳優という関係で長年組んでいた山田監督と三國連太郎の監督と俳優でのコンビ作がこれ一本きりなのはちょっと惜しい気がする。そうそう、本作には最初に書いたように「男はつらいよ」シリーズのメンバーはほとんど出演していないが、今になってよく見ると三國連太郎のほかにも「釣りバカ日誌」シリーズのメンバーである浅田美代子や奈良岡朋子、中本賢がそろって山田作品に出演しているのは面白い。(浅田美代子と奈良岡朋子はこの当時はまだシリーズには未登場だったけど。)
[DVD(邦画)] 8点(2013-08-09 00:23:16)
172.  上意討ち 拝領妻始末 《ネタバレ》 
小林正樹監督が「切腹」に続いて橋本忍とコンビを組み、滝口康彦の原作を映画化した時代劇。見る前はスタープロである三船プロの製作のため、あまり小林監督らしさは出ていないのではとも思ったが、見てみるとまったくそんなことはなく、「人間の条件」にも通ずるようなテーマが実に小林監督らしいとても重厚な見ごたえのある映画だった。藩が笹原家に出した要求はあまりにも身勝手で、藩の圧力にひたすら耐える伊三郎(三船敏郎)、与五郎(加藤剛)、いち(司葉子)にとても感情移入ができるし、主演の三船がなかなか刀を抜かずに静の演技が多いところにも、俳優の魅力よりも映画自体のストーリー性で魅せようという小林監督の意図が感じられる。黒澤明監督の「用心棒」や「椿三十郎」で三船と敵対する役を演じていた仲代達矢が今回は伊三郎の友人役で出演しており、本作でもクライマックスで決闘をすることになるのだが、敵対することになっても今回は友人同士という設定のためか、重苦しさがあり、派手さもなく、爽快感もないというのがやっぱり先の2本とは違うところで、本作は単純な娯楽時代劇というわけではないということもあるかもしれないが、このあたりに同じ二人の決闘でも印象の違いを見ることができる。(仲代が本作でも負けてしまうのはやっぱりお約束だろうか。)しかし、終盤30分はそれ以外でも三船の殺陣の見せ場が多く、それまでのドラマで魅せる展開を考えたら少しそこだけ浮いてしまった感もなくはない。殺陣による見せ場を三船と仲代の決闘だけに絞っても良かったのではと思う。そこだけがちょっと残念。でも、内容的に見るべきもののある映画で、「切腹」には及ばないものの、この映画もまた小林監督の時代劇での代表作と言っていい名作だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2013-07-17 17:38:00)
173.  喜劇 男は愛嬌
森崎東監督の第3作。主演は渥美清でストーリー自体も長い間旅に出ていた主人公が久しぶりに実家に帰ってきて騒動を起こすという完全に「男はつらいよ」シリーズのパターンと似通っており、脇の出演者も「男はつらいよ」シリーズの面々が何人か出ている(太宰久雄、佐藤蛾次郎)が、森崎監督らしいパワフルな(「破壊的な」と言う方が正しいかも。)演出やバイタリティーあふれる癖のある登場人物たちのおかげで「男はつらいよ」シリーズの一作のようでありながらそれとは一味違う映画になっている。森崎監督がこのひとつ前に手がけた「男はつらいよ フーテンの寅」も従来のシリーズとは一味違う映画であったが、ダンプが家に突っ込むシーンの過激さや、独特の下品さなど、本作はより森崎監督らしさが出ていて「フーテンの寅」よりも面白かったし、森崎監督のこういう作風はけっこう好きだったりする。出演者の中ではなんといっても主演の渥美清がすごくイキイキとしているのが嬉しい。やはりこの渥美清という俳優は「ああ声なき友」のようなシリアスすぎる役柄よりもこういう威勢のいい元気な役のほうが似合っているし、こういった喜劇でこそ本来の魅力を最大限に発揮できる俳優なのだと思う。そんな喜劇を演じる渥美清が好きだし、さっき書いたようにこの映画は「男はつらいよ」シリーズとは一味違うのだけれど、それでも渥美清が好きなら、寅さんが好きなら一度は見ておいて損はない映画だと言っておきたい。それにしてもこんなにイキイキとした渥美清を見るのは本当に久しぶりな気がする。渥美清というのは本当に魅力的な喜劇俳優だと改めて思った。
[DVD(邦画)] 8点(2013-07-03 21:02:44)(良:1票)
174.  なにはなくとも全員集合!! 《ネタバレ》 
ドリフターズの映画デビュー作。ドリフの映画を見るのはこれが2本目だが、やはりみんな若くてイキイキとしている。草津を舞台に駅とバス会社が温泉を訪れる客を奪い合うという内容なのだが、本作の主人公はドリフの面々ではなく、三木のり平演じる新任の駅長で、ハチャメチャコント映画というよりは普通に人情喜劇の体裁のため、駅前シリーズのスピンオフでも見ているような雰囲気がある。三木のり平の主演映画というのは初めて見た気がするのだが、ここでもライバルのバス会社の宴会を自分の歓迎会と勘違いして出席したりして、社長シリーズなどと同じように笑わせてくれるのが嬉しい。(この人は本当に宴会とかよく似合うよなあ。)一方のドリフはそんな三木のり平の引きたて役に徹しているのかと思えばそうではなく、いかりや長介(先日、「踊る大捜査線」のDVDを見たばかりなのでなにか異様に若く見える。)が目覚まし時計を食べ、腹の中で時計が鳴り出すシーン(これには思わず爆笑してしまった。)など(全員にではないが)ちゃんと見せ場が用意されている。とりわけメンバーの中で目立っていたのはやはり駅員の一人を演じた加藤茶で、駅長の娘(中尾ミエ)に惚れ、なんとか振り向かせようと奮闘する姿がどこまでも滑稽だが、憎めず愛すべきキャラクターなところが好感を持てて良い。見る前は少し不安な面も多かったが、素直に楽しむことができた映画だった。少し甘めの8点を。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-08 12:36:05)
175.  緋牡丹博徒 仁義通します 《ネタバレ》 
「緋牡丹博徒」シリーズ最終作。一作目から脚本に参加していた鈴木則文監督が参加しておらず、今回の監督である齋藤武市監督も外部からのシリーズ初参加ということで、いささか不安な面はあったが、ラスト作らしい盛り上がりを見せていて面白く、そんな不安は一気に吹き飛んだ。これまでもこのシリーズにお竜の周辺にいる登場人物のひとりとして何度か登場し、「鉄火場列伝」ではとくに印象に残る役回りを演じていた待田京介が今回もお竜の仲間のヤクザ役と思わせておいて、敵側のヤクザに寝返るというのは捻った展開で面白かったし、クライマックスの殴り込みも異常なほどに盛り上がっていて見ごたえじゅうぶん。(若山富三郎演じる熊寅が殴り込みに参加するのってこれが初めてのような気がする。)その中でお竜を殺そうとした待田京介の刃が一転して自分の仲間に向けられるあたりは分かっていてもグッとくるものがあるし、ここらへんがこの後の実録ヤクザ映画とは違い、まさに任侠映画らしいところ。片岡千恵蔵(時代劇以外で見るのは初めてなので、初めて登場したときは一瞬、誰だか分からなかったが。)はラストシーンでさすがの貫ろくでお竜をねぎらう。このシーンがお竜とそれを演じた藤純子へのねぎらいのように見えるのはおそらくそう見えるよう意図的に演出しているのかもしれない。最初のほうの菅原文太と松方弘樹の会話は見ていてつい「仁義なき戦い」の一幕のように思えたが、「仁義なき戦い」のシリーズはこの翌年の開始。偶然かもしれないが、なにやら藤純子の引退とともに勧善懲悪の任侠映画も終焉を迎えてしまったように感じられるのが少し興味深い。これでこのシリーズすべて見終わったわけだが、どの作品も水準が高く、娯楽性にも富んでいて面白いシリーズだったと思うし、富司純子としてしか馴染みのなかった藤純子の魅力に改めて気づかされたシリーズでもあった。そんな藤純子とお竜さんに心からありがとうと言いたい。
[DVD(邦画)] 8点(2013-04-24 14:59:19)
176.  緋牡丹博徒 お竜参上 《ネタバレ》 
シリーズ第6作。今回は「花札勝負」を手がけた加藤泰監督が再登板し、ストーリー的にも「花札勝負」の続編的内容となっているが、なんといっても加藤監督の映像美学が冴えまくる映画になっていて、全篇にわたって美しい映像が多く、中でも雪の降り積もる橋の上でのお竜(藤純子)と青山(菅原文太)のシーンはこれでもかというくらいに美しく、もはやこれは任侠映画を超えて芸術的な感じさえするし、このシーンだけでこの映画が只者ではないことが伝わってくる。ほかには、お竜が探し求めていた娘・君子と再会するシーンも普通ならカットを割ってしまうであろうところを長回しで捉えており、あざとさがなく逆に印象的な名場面となっていて、いずれにせよ最近の映画にはない質の高さを感じることができる。君子と島の銀次との恋もスパイスとして効いている。「一宿一飯」では凄みのある悪役として登場しながら、ラストの殴り込みでいいところもなくあっという間に倒された菅原文太が今回はお竜の味方となる流れ者を演じているが、その描き方もよく、ラストシーンも印象的だ。山下耕作監督の一作目の美しさも印象に残っているが、今回はそれ以上に美しさという点では秀でていて、映画としての質の高さも相まってシリーズ最高傑作との呼び声が高いというのも納得できる完成度の高い作品で、もちろん個人的にも今まで見たこのシリーズの中ではいちばんの傑作だと思う。あえて難を言えば熊虎(若山富三郎)の登場が唐突で、しかもその登場にややムリヤリ感があることぐらいだろうか。
[DVD(邦画)] 8点(2013-04-11 18:29:26)(良:1票)
177.  緋牡丹博徒 鉄火場列伝 《ネタバレ》 
久しぶりにこのシリーズ見たけどやっぱり面白い。相変わらず藤純子演じるお竜は強さと優しさを兼ね備えていて、美しく、それでいてかっこいいし、やはりこの役は藤純子だからこそここまで魅力的なのだとあらためて思うし、この「緋牡丹博徒」がシリーズとして続いた理由の一つもそこにあるのではないかと思う。さらに今回でいえば待田京介がなんといってもよく、今までこのシリーズを含め何度か見た俳優だが、あまり意識して見ていなかったせいか、ここまでかっこよく、そして印象に残るというのははじめてかもしれない。鶴田浩二と血のつながりのない幼い娘のエピソードはこの前見た「関の弥太ッぺ」を彷彿とさせている(探していた女が死んでいたと分かるシーンは「関の弥太ッぺ」と全く同じような印象。)が、両方とも同じ山下耕作監督だけに意識してるのかもしれない。でもこの親子のエピソードもやっぱり泣ける。とくに、鶴田浩二が死ぬ間際のシーンは、鶴田浩二の演技も相まってか、思わず涙が出そうになった。ヤクザ映画というと血なまぐさいリアルな決闘をつい思い浮かべるのだが、この映画での最後のお竜と天津敏の決闘シーンはまさに華麗に舞うようなという言葉がピッタリの演出で、非常に美しかった。中盤に突如として登場した丹波哲郎が最後にいいとこ持っていったり、阿波踊りをクライマックスに持ってくるなど、終盤は大盛り上がり。それでいてどこか切なさを感じさせているエンディングが山下監督らしいところだ。
[DVD(邦画)] 8点(2013-04-04 14:07:09)(良:1票)
178.  どついたるねん 《ネタバレ》 
赤井英和の自伝を映画化した阪本順治監督のデビュー作で、主演は赤井英和本人。つまり元プロボクサーがボクサーを演じるボクシング映画で、見る前は話題先行の映画かとも思っていたが、とにかく赤井英和がボクサー時代の自分を投影した主人公を熱く演じていて、素なのか演技なのか分からないところも含めてすごく魅力的でかっこよく、その存在感に圧倒され、彼のボクシングに対する熱い思いというものもじゅうぶん伝わってくる。ボクシング映画の名作といえば「ロッキー」だが、本作の赤井英和にはスタローン以上の闘志を感じることができ、この主人公の存在感はロッキーを上回っているとさえ思う。(あの目は本当に熱い格闘家の目だ。)それに本当にその世界を知っているからこそ出せるリアルさというのも確かにあって、やはり赤井英和がこの安達英志という自身の分身のような役を演じるからこそこういったリアリティーが出るのであり、純粋な俳優だとこうはいかないような気がする。また、阪本監督の演出も大阪という都市のパワフルさを見事に描ききっており、それも本作に勢いを与えている。敢えて試合結果を描かない唐突なラストも潔く、エンドロールでの安達の後ろ姿が強烈に印象に残る。脇を固める面々もよく、原田芳雄や相楽晴子、麿赤児、正司照枝などみんないい味を出している。しかし、美川憲一だけは見ていてなんか違和感しか感じなかった。
[DVD(邦画)] 8点(2013-03-28 16:11:56)(良:1票)
179.  夕陽に赤い俺の顔 《ネタバレ》 
篠田正浩監督は喜劇をやるイメージがないのでどんなものなのかと思っていたら、松竹マークの出るいちばん最初の部分から日活映画と見まがうような音楽が鳴り響き、中身自体も松竹というより日活、それも鈴木清順監督の「東京流れ者」のようなぶっ飛んだ演出が光るカルト映画としか言いようのないものになっている。先に後年の篠田監督の映画を何本か見ていると、これが篠田監督の映画とは信じられないほどの怪作ぶりだ。タイトルの出し方も凝っているが、そのバックに流れる主題歌が強烈で、ここからもう一気に引き込まれる。ストーリーは単純だが、それを独特の演出で描き、インパクトを持たせる手法や、突然ミュージカル仕立てになるところも「東京流れ者」と同じ。「東京流れ者」のほうがインパクトは上だと思うが、製作されたのは「東京流れ者」よりも5年ほど前というからすごい。篠田監督の映画は今まで見た範囲では、面白いと思えた映画は少ないのだが、これは本当にカルト映画の傑作の一本と言っていい作品で、今まで見た篠田監督の映画の中ではいちばん面白かった。本作は篠田監督にとって3本目の監督作で、はっきり言ってこの調子でずっといけば篠田監督は清順監督のようなカルト映画の巨匠になっていたかもしれないとさえ思えてしまう。変な映画だが、それでも夕焼けをバックにしたラストシーンは非常に美しい。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-02-20 23:28:50)(良:1票)
180.  映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ 天使たち 《ネタバレ》 
ドラえもん映画シリーズの中でも最高傑作の誉れ高い「のび太と鉄人兵団」のリメイク版。シリーズの中でもとくにメッセージ性の強い話で、また個人的にも深く印象に残っているので、かなり不安があったが、実際に見てみると、オリジナルの雰囲気を損なうことなく、本作独自のアレンジであるジュドの頭脳をキャラクター化したピッポの存在も含めてうまく脚色している。本作ではリルルと静香が友情を築いていくのと平行して、のび太がピッポと友情を築いていく過程が描かれる。見る前はいくらなんでも詰め込みすぎだろうと思っていたが、バランスよくかつ丁寧に描かれ、ピッポの心変わりがリルルをも変えていくという展開にしたのはうまいと思う。少し分かりやすすぎると感じるきらいはあるが、ここにオリジナルとは違うドラマ性をみいだすことができるし、ピッポを単なる子供受けをよくするためだけのキャラクターに終わらせていない。むしろピッポがいることによって静香だけではなくレギュラーメンバー全員が主役という位置づけになっている。ピッポがのび太に「のび太と戦いたくない。」と言って泣き出すシーンは思わずピッポに感情移入してしまった。クライマックスの消えゆくリルルとピッポがそれぞれ静香やのび太と交わす最後の会話はやはり本作でも感動的で泣けるのだが、本作ではその前にリルルとピッポの会話があり、すべてを受け入れた二人のやりとりがすごく切なくて、このシーンのほうが泣けた。ピッポの登場は賛否両論あると思うが、個人的にはこのアレンジは成功だったように思う。ただその分、ミクロスが単なる端役に終わっているのは残念な気もするが、これは致し方ないところか。ほかにも不満はないといってしまえばウソになってしまうが、本作はオリジナルよりも「友情」というテーマを前面に出し、それを見事に描ききっている。水田わさび演じる劇場版ドラえもんシリーズはリメイクものしか見たことがないのだが、その中でもいちばん完成度が高く、オリジナルに負けないくらいの傑作だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2013-02-06 00:36:34)
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