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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2452
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1881.  ノーバディーズ・フール 《ネタバレ》 
正直あまり期待しないで観たのですが、これが予想をはるかに上回る良作だったので嬉しかったです。この映画のポール・ニューマンの演技は、彼の晩年でもっとも素晴らしいものだと私は思います。これでオスカー獲っててもおかしくなかったし、『ハスラー2』なんかより全然いい! こういう静かなほのぼのとした小品を撮らせると、ロバート・ベントンはホントに上手い人です。メラニー・グリフィスもなかなか魅力的な役柄でしたが、ほんの一瞬オッパイを見せる瞬間芸は笑わせていただきました。あれは、彼女のアドリブだったんじゃないでしょうか。ジェシカ・タンディもニューマンや他の共演者の素晴らしい演技に見送られる様に逝けて幸せだったのでは。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-04 00:32:30)(良:3票)
1882.  黒い狼 《ネタバレ》 
フェリーニの『悪魔の首飾り』の主人公テレンス・スタンプは“世界初のカトリック西部劇”に主演するためにローマに来ます。“カトリック西部劇”なんて奇妙な代物が実は本当にあったんですね、驚きました。主演がジョン・ミルズとダーク・ボガードという二大英国名優、舞台がメキシコ、しかも時代が現代(1950年代?)、とまあここまでくせ球を投げてくるとはさすが英国映画です。“無法者が支配する町に新任保安官が赴任してくる”という西部劇では一般的なプロットで、保安官が神父であるところが違いだと言うことです。本作のボガードは、『荒野の七人』のユル・ブリンナーみたいな黒づくめコスチュームで登場してきて実にカッコ良い。当然、“善”のミルズ神父と“悪”のボガードの対決という図式で物語は進むわけですが、ボガードを単純な悪ではなく権力や教会に不信感を持った屈折した男なのがなかなか良い。そこに地主の娘ミレーヌ・ドモンジョ(当たり前だけど、若い!)が絡んでくるのですが、神父に恋してしまい三人の三角関係がラストの悲劇に繋がってゆくところは思ったより重厚な展開です。また、どうもボガードも神父にホモ的な愛情を持っているみたいな雰囲気もあり、そういう類の演技をさせたらボガードはピカ一ですね。この映画の最大の問題は、別に西部劇みたいな設定にする必然がないということでしょう。 原題は「歌手が大事なんだ、歌じゃない」という意味ですが、これはカトリック教会に対するけっこうきつい批判でもあります。余談ですが、字幕が「神父」と「牧師」を混同しているのが気になりました。「牧師」はプロテスタントですよ。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-02 23:58:30)
1883.  暁の出撃(1955) 《ネタバレ》 
ピーター・ジャクソンがリメイクしているそうですが、オリジナルもこのたびDⅤD化されました。第二次大戦で英空軍がルール工業地帯のダムを爆撃した『チャタライズ作戦』は戦史上有名な作戦で、本作はこの冒険的な作戦を史実かつオーソドックスに再現しています。 ダムを破壊するには普通に爆弾を落とすだけでは効果がなく、特別に製作したドラム缶型爆弾を低空飛行で接近して水面に落とし、水上を跳躍(スキップ)させてダムにぶつけ、なおかつダムの底で爆発させないと効果がない。実はこの作戦自体がマイケル・レッドグレーブが演じる民間技術者が考えついたもので、彼が軍を説得して実行させたというのが面白いところです。この人ちょっとマッド・サイエンティストみたいなおっさんなのですが、レッドグレーブはおたくっぽい雰囲気で感じを出してましたね。リチャード・トッドが演じる爆撃隊長はレッドグレーブの無理な要求に苦労して解決方法を見つけてゆくのですが、このいかにも英国人らしいタイプのヒーローぶりは好演です。実際に作戦に使われたランカスター爆撃機は飛行可能な実機を使っているので、私の様な飛行機マニアにはたまりません。肝心のダム爆撃シーンですが、これがオスカーにノミネートされたとは思えないちゃちな出来で、そこは非常に残念でした。作戦は成功しますが爆撃隊は4割も撃墜されてしまい、「こんなに犠牲が出るとは思わなかった」とレッドグレーブが嘆くところでこの映画は終わります。ダムが決壊して大洪水がおこりルール地帯の重工業は一時的に大損害を被ったのですが、史実では民間人に1,200名もの死者が出たそうです。そういうことはこの映画ではまったく触れられてはいませんが、戦争に関してはアメリカもイギリスも大して変わらない、どっちも非情だなとしみじみ思います。 ちなみに夜間に爆撃に行って明け方に帰還する作戦なのにどうして『暁の出撃』という邦題になったのでしょうか? 大間違いです。 
[DVD(字幕)] 6点(2011-02-01 01:10:53)
1884.  私は死にたくない 《ネタバレ》 
女性死刑囚を演じてオスカーを獲ったのは『モンスター』のシャリーズ・セロンが記憶に新しいですが、元祖は本作のスーザン・ヘイワードで、もっとも映画自体は『デッドマン・ウォーキング』みたいなテイストです。ロバート・ワイズは『ウェスト・サイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』の様な大作の監督というイメージが強い人ですが、本来はフィルム・ノワールを撮ってきた人で、この映画もノワール的な色合いが濃い作品です。前半三分の一はヘイワードが軽罪を重ねた末に殺人容疑で収監されるまでを、ノワールっぽいカメラワークを交えながらスピィーディに見せてくれます。この映画が『モンスター』などと違うところはヘイワードはあくまで冤罪で死刑執行されたとしているところでしょう。彼女を有罪にするためにロス市警が使う手口のあまりの汚さには嫌悪感を催します。とにかく彼女が死刑確定するまでに登場する人物は、マスコミを含めてゲス野郎ばかり(ヘイワードも含めて)なのが特徴です。この映画の凄いところは収監されて死刑執行されるまでのセミドキュメンタリータッチの演出でして、ガス室の準備をする手順を黙々と見せたり、執行日直前まで何度も執行が延期されるところなど、観ている方まで打ちのめされる様な重苦しさが伝わってきます。ヘイワードの演技は確かに熱演なのですが、ワイズの緊迫感あふれる演出があってこそのオスカー獲得だったと改めて確信しました。死刑執行の様子をガス室の外で群がって見物する新聞記者たちの姿には、これほどシュールで醜悪なシーンも珍しいと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-01-30 09:44:07)
1885.  邪魔者は殺せ 《ネタバレ》 
なんでも英国映画で初めてIRAの活動が描かれた作品なんだそうです。冒頭に「この映画は組織の活動を描いたものではない」という曖昧なテロップが出るところを見ると、まだ遠慮というか配慮があるみたいですね。舞台が北アイルランドのベルファストなのでIRA活動家と敵対しているプロテスタントの住民たちも多く強盗に失敗したジョニーは逃げ回ることになるわけですが、『第三の男』の原型とも言える陰影が深いモノクロ映像は一見の価値ありです。ラストのジェームズ・メイスンとフェイ・コンプトンの死の場面は、まるで浄瑠璃の心中物でおなじみの“道行き”の様で、英国製フィルム・ノワール史屈指の名シーンです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-27 00:34:24)
1886.  ルートヴィヒ(1972) 《ネタバレ》 
“巨匠”と呼ばれる様になってからのヴィスコンティ映画はあまり自分は好きじゃない。彼の晩年の作品は大芝居を工夫のないカメラワークで延々と見せられるというイメージが強いし、民主党の大嫌いな某大物政治家が最近どういうわけか『山猫』を演説で引用していることを知ったことも一因かな。でもほとんど遺作と言っても良い本作にはさすがにヴィスコンティの執念が伝わってきます。ヘルムート・バーガーの演技はルードヴィヒの霊がとり付いたかの様な迫力で必見です(そういや最近お姿をスクリーンで見かけませんが、どうしてるんでしょうか)。全篇にヴィスコンティの貴族趣味に満ち溢れていて、民衆や大衆が歴史もののくせに全く画面に登場しないという徹底ぶり(バジェットの関係かな)。そしてロミー・シュナイダーの“シシー”にはただうっとりさせられるばかりで、さすが“シシー”は10代からの彼女の当たり役だけのことはあります。“赤い貴族”と呼ばれたヴィスコンティですが、マルクス主義者のくせに頽廃の甘美な魅力をこよなく愛しており、そこが頽廃を誰よりも鮮やかに映像化するくせに本当は頽廃を嫌悪していたフェリーニとの大きな違いでしょう。 まあお暇なときにはこの4時間の頽廃の極北を味わってみるのも良いんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-01-24 23:56:50)
1887.  クライング・ゲーム 《ネタバレ》 
まるで出来の良い短編小説を彷彿させる語り口は見事です。この映画はスティーブン・レイとフォレスト・ウィテカーやその他の“男の友情”がテーマなのですが、その分ミランダ・リチャードソンが演じるIRA女テロリストの凶暴振りが強調されているのが上手い脚本だと思います。事件の発端だって、リチャードソンが“男の友情”に割り込んできたのが始まりですからね。そういう意味では“アンチ・フェミニズム”映画と言えるかも。
[DVD(字幕)] 8点(2011-01-23 18:45:36)
1888.  ミッドナイト・ラン 《ネタバレ》 
このサイトではえらい高評価ですけど、自分としてはどうなんでしょうか、それほど高い評価はつかないですね。プロットは色んな乗り物が出てくるロード・ムービーっぽいところは『大災難P.T.A』のパクリの様な気がするのは否めないところ。チャールズ・グローディンのキャラはどうも会計士らしくないし、会計士としての設定もあまりストーリーに反映されてない様な気がします。デ・ニーロは相変わらず余裕で良い演技なのですが、こういうシチュエーションの映画で一度もキレないデ・ニーロはちょっと不気味なくらいです。最後の最後でデ・ニーロがグローディンからお金を受け取ったのは脚本上の大失敗で、道中でグローディンから何度も買収の申し出を蹴って来た意味が無くなっちゃったのでは。「そういや、この映画では派手なドンパチがある割には人が誰も死んでないよな」と好感をもったけど、良く考えたらデ・ニーロがヘリコプターを撃ち落として間違いなく死人が出てることに気が付きました。ちょっと、残念。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-22 23:03:43)
1889.  ドラキュラ(1992) 《ネタバレ》 
前半ははっきり言って退屈ですが、アンソニー・ホプキンスのヴァン・ヘルシングが登場してからは俄然面白くなる。このヘルシング博士が、ハンニバル・レクターを思わせる嫌らしい奴で、オールドマン・ホプキンスの二大変態名優がゲップが出るほど濃厚なパフォーマンスを見せてくれます。ウィノナ・ライダーもドラキュラに血を吸われてからの後半は彼女らしいゴスっぷりが爆発で、そうなるとキアヌ・リーブスの影がどんどん薄くなってきてちょっと可哀想なほどです。歴代ドラキュラ映画の中ではもっともドラキュラに感情移入が出来る撮り方で、コッポラの意図はまあ成功したと言えるのでは。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-20 22:59:18)
1890.  グローリー 《ネタバレ》 
脱走に失敗して、鞭打ちの刑を受けるデンゼル・ワシントン。鞭を受けながらマシュー・ブロデリックを見つめる眼から一筋の涙が流れる。それを観て「なんと美しい顔なんだろう」と思わず唸ってしまった。まさしく、名優が誕生した瞬間だったのだと思います。この映画の黒人俳優たちはみな表情が素晴らしい。彼らがワグナー要塞攻撃の前夜、焚き火を囲んでゴスペルを歌うシーンは涙なくして観れない名シーンです。そしてマシュー・ブロデリック、弱々しいお坊ちゃんが指揮官に任ぜられて奮闘する姿が健気で、内面の成長はともかくとして最後まで初々しい姿のまま戦死してしまうのがまた涙を誘います。第二次世界大戦では日系人部隊でも同じ様なドラマが繰りかえされていることを決して忘れてはならないと思うし、ぜひハリウッドでこの物語も映像化して欲しいところです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-01-19 23:41:29)
1891.  レポマン
80年代のサブカル風味満載、パンクでポップでオフビート、この三拍子がそろってしまえばもうおじさん世代には理解不能です。25年以上前に製作されたのに現代の眼で観ても色あせていない訳の判らなさは、ある意味偉大です。かろうじて理解できたのは、元ネタが『キッスで殺せ』なんだなということぐらいでした。
[DVD(字幕)] 4点(2011-01-18 22:24:55)
1892.  ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー 《ネタバレ》 
「作家性が強い映画監督のデビュー作にハズレ無し」の私の持論を見事に証明してくれる傑作。まるで地下鉄工事現場の様なもの凄い騒音をたてるオープニングの金庫破りシーンからもうぐいぐい引き込まれます。ジェームズ・カーンの不器用だが金庫破りのプロとしての矜持を保つ漢っぷりはまさにハリウッドの高倉健と呼ぶにふさわしく、彼のフィルモグラフィ中最高の演技でしょう。タンジェリン・ドリームの起用も大正解で、マイケル・マンのセンスの良さを見せつけています。面白いのはジェリー・ブラッカイマーがプロデューサーに名を連ねていることで、こいつも若いころは真面目に映画に取り組んでいたんだなと見直しました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-01-18 01:37:16)
1893.  トラブル・イン・ハリウッド 《ネタバレ》 
『ヒート』『ファイトクラブ』などのプロデューサーであるアート・リンソンが自身の体験をもとに脚本を書いた映画製作の裏側をプロデューサーの視点で描いたバックステージものです。「プロデューサーのデ・ニーロが体験する悪夢の二週間」というプロットなわけですが、彼はその間にショーン・ペン主演の映画を完成させ、ブルース・ウィリス主演の映画をクランク・インさせるのに四苦八苦することになります。ペン主演映画はキース・リチャーズそっくりのパンク野郎みたいな監督が悩みの種で、犬が射殺されるシーンが映画のラストなので試写会の観客や配給会社の社長から大ヒンシュクを買ってしまいシーンを改変しないといけなくなるがパンク野郎の監督は応じない。考えてみれば、劇中劇とはいえ犬が撃ち殺される映像があるハリウッド映画ってたしかに珍しいですし、この脚本はこれがやりたくて書かれたのではとも思えるぐらいです。人間が殺されたり拷問されたりする作品はOKなのに動物が殺されるのはNGというのだから、ほんとアメリカ人ってやつは理解しがたい。 ウィリスの映画は彼自身が大トラブルで、ぶくぶくに肥った上にヒゲぼうぼうの姿で撮影所にやって来て、これまた映画会社はヒゲを剃らないと制作中止だと大激怒。このウィリスが地なんでしょうけど、もう我がままし放題暴れまくり放題で、嬉々としてセルフ・パロディを演じています。 この二つの映画のトラブルはそれぞれオチがあるのですが、観ていて何となく予想した範囲のオチだったのがこの映画の印象を薄くしている原因かと思います。デ・ニーロの私生活でのトラブルも並行して描かれるのですが、それが本筋とはまったく絡まないので余計に散漫な映画になっちゃいました。このジャンルはアルトマンの『ザ・プレイヤー』という傑作があるし観客にも飽きられ気味な題材なので、これ以上製作されても興行的には難しいでしょうね。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-16 22:21:13)
1894.  奥さまは魔女(2005) 《ネタバレ》 
ニコール・キッドマンは、ルネ・クレール版『奥さまは魔女(‘42)』のヴェロニカ・レイクを相当に意識した役作りだと思います。確かにこの映画でのキッドマンは可愛い(?)と言えなくもないけど、例の鼻ピクピクなどやたら顔のオーバーアクションを見せてくれるキャラなので、彼女の人工的な美しさでは相当無理がある演技になっているのでは。やっぱこの役はレネー・ゼルウィガーやリース・ウィザースプーンの様な顔芸が得意な女優の方が適役だったと思いますよ。 ミスキャストと言えばウィル・フェレルで、オリジナルを知っている人間には「こんなのダーリンじゃない!」と思わず叫びたくなってしまいます。脇をマイケル・ケインとシャーリー・マクレーンが固めてとっても豪華なのですが、マクレーンは中途半端なキャラで彼女の使い方としては実にもったいない。凝ったプロットですが、オリジナルを観てた人も知らない人も満足させられない失敗作です。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2011-01-16 08:27:20)(良:1票)
1895.  悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス
申し訳ないですけど、これ、観なかったことにさせていただきます(怒)。 PS、金かえせとは言いませんがTSUTAYAさん、これを借りた記録を抹消してください。
[DVD(字幕)] 0点(2011-01-15 00:05:52)
1896.  キング・コング(2005) 《ネタバレ》 
リメイクとしては近年もっとも成功した作品ではないでしょうか。ギラーミン版とは違い時代設定をオリジナルと同年代に設定しているのがまず嬉しいところです。オリジナルはコングをあくまで凶暴な魔獣として描いていましたが、コングとアン・ダロウの関係はギラーミン版を踏襲して一大悲劇とし、ナオミ・ワッツの好演もあり素晴らしい効果をあげましています。 またコングのアクションや仕草が実に見事で、決して安易に擬人化されたわけではなく、ジャック・ブラックよりよっぽど良い演技してました。島でのエピソードは実に長いのですが、画面を追っていると酔ってしまいそうなまるで絶叫マシーンに乗せられた様な気分で、『ジュラシック・パーク』を凌駕するコングとTレックスの怪獣プロレスには満足しました。プテラノドンが出てこなかったのは残念ですが、オリジナルではカットされた伝説の蟹蜘蛛が登場したことは大満足です。 そして何よりうれしいのはピージャクのオリジナルへのリスペクトが満ち溢れているところで、タイトル・バックだけでなく細かいカット割りやコングの動作でオリジナル版を再現しています。ひとつ残念だったのは原住民の描写で、オリジナル版以上にひどくてまるでゾンビが襲ってきたような描き方はちょっとやりすぎかと思います。 最近は邦画でも名作のリメイクがブームですけど、どれを観てもオリジナルに対するリスペクトが全然感じられない。ピージャクの爪の垢でも煎じて飲め、と関係者に言いたいところですが、彼らには「映画愛」が欠けているので無駄でしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-01-12 22:47:21)
1897.  es[エス](2001) 《ネタバレ》 
観終わってからの後味の悪さは『ミスト』に匹敵しました、いやー久々に地雷を踏んじゃった。アメリカのけっこう有名な実話をもとにしているそうですが、ドイツ人の監督がドイツに舞台を変えて映像化していることに意義があると思います。なんせドイツ人は合法的な選挙でナチスを政権につけ国民投票でヒトラーが独裁者になることを認めたイタイ歴史を持っているので、この実験はドイツ人の国民性に対する痛烈な批判にもなっているわけです(もちろん、実験の結果自体は誰にも起こり得る普遍性を持っていますが)。強制収容所の看守でまだ生き残っている人やその子や孫がいるドイツで良く上映出来たものだと感心しますよ。 脚本上の粗が目立つのも事実ですが、あえて実験の失敗をエスカレートさせて死者まで出てしまう結末に持ってゆくラストの展開には息を飲まされました。私には海辺で静かに過ごすふたりを映したラストシーンは、ささくれ立った鑑賞者の神経をケアするのに必要だったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-11 22:09:05)
1898.  アイズ ワイド シャット 《ネタバレ》 
果たしてキューブリックはこの映画で何を表現したかったのだろうか、というのが観終わっての私の頭に残った疑問です。 ポルノ?フロイト心理学風味の不条理劇? ニコール・キッドマンを始め美人のヌードがゲップが出るほど拝めますけど、その裸体を捉えるカメラがキューブリックらしくとても無機質で、どの裸も『シャイニング』に出てきた殺された管理人の奥さん(ジャック・ニコルソンを裸で誘惑してるうちに腐乱死体に変身するシーン)みたいで、ちっともエロさが感じられない。そもそも「便器に座って用を足すニコール・キッドマン」なんてキューブリック以外の誰が撮るでしょうか! まあキッドマン自身は良い経験だったみたいで本作以降は演技開眼して大活躍するのですから判らんもんです、女ってやつは(もっとも、ほとんど脱がなくなったのも事実ですが)セットで撮られたNYの街並みなど、全編が人工的ないかにもキューブリック的な世界の中でトム・クルーズとキッドマン夫婦が浮き世離れした哲学的な対話を交わすのを見せられて、果たしてそれが面白いかというのが悩ましいところです。 このペースで映画を撮っていれば生物的に言ってあと何本映画を製作できるかキューブリックが意識していたかどうかは定かではありませんが、まさか自分のフィルモグラフィの最後を飾るセリフが“Fuck”になるとは思ってなかったでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-01-10 15:38:24)
1899.  コンタクト 《ネタバレ》 
オープニングシーンやワームホールの描写など、さすがカール・セーガン監修だけあって説得力ある映像は見事です。クリントン大統領の実写映像を巧みに取り入れているのも『フォレストガンプ』のゼメキスらしさが出ています。だけど、宗教色が強くなっている脚本はセーガン原作らしくなく、セーガンとはひと悶着あったのではと思います。進化論すら学校で教えることを禁止する州があるアメリカのことですから、神をある程度前面に持ってこないと興行的に難しい面があったのでしょうか。「人類の95%が何らかの神を信じている」というセリフがありましたが、そんな話は初耳です。「アメリカ人の95%」の間違いじゃないですかね。ガンの進行を抑えるためロシアの宇宙ステーション・ミールに乗る謎の大富豪は、本作完成後にやはりガンで亡くなったセーガンの姿が投影されている様に感じました。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-09 23:25:51)
1900.  ブルースカイ(1994) 《ネタバレ》 
完成直後に監督トニー・リチャードソンがエイズで亡くなるわ製作会社が倒産するわで、お蔵入りになりかけ完成後3年経ってようやく公開されたという因縁作だそうです。リチャードソンの後期作らしく演出にキレがない凡作ですが、オスカーを獲ったジェシカ・ラングの演技はさすがに見事です。情緒不安定で直情型の人妻という役柄は演じやすそうですが、ラングみたいに「プラス純情」まで表現できる女優はなかなかいませんよ。『キングコング』の屈辱デビューから15年あまりで2度もオスカー受賞する大女優に成長したのですから大したものです。旦那のトミー・リーも、女房の奇行を受け入れ核実験での事故を隠蔽しようとする上司にも耐え忍ぶ軍人役で、最後に上司をぶん殴って精神病院に閉じ込められるところなぞ、東映やくざ映画の高倉健みたいで好演しています。
[ビデオ(字幕)] 6点(2011-01-07 22:37:05)
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