1. 殺陣師段平(1962)
王将と同じように殺陣師一筋の夫をけなげに支える妻。その妻の田中絹代も これが初見のハンサムな雷蔵ももちろんいいけれど、なんといっても変化自在に軽妙かつ重厚に殺陣師段平を演じる鴈治郎のうまさ、存在感が圧倒的ですばらしい。死の間際にあって「これがリアルや」と最後まで死の殺陣を見せる鬼気迫るシーンは圧巻。一方東山千栄子との息の合ったやり取りでは「ラブレターやなくてヤブレターやね」と笑わせたりするのもなかなか楽しい。 最初から最後まで正に名優と言うにふさわしい鴈治郎を堪能できる。これで今まで見た以上に魅了され感服してしまった。 [DVD(字幕)] 8点(2005-04-10 21:26:53) |
2. ああ結婚
ラスト、晴れて結婚して涙ぐむフィロメーナに”良かったねぇ”と思わずもらい泣き。 貧しく無学ゆえ娼婦になった17歳から20数以上も妻同様に尽くして耐えてきたのも彼を愛すればこそだし、また密かに育てている3人の子供のためでもある。一見恐妻風ではあるけれど健気な女心がいじらしい。そんな彼女を都合よく利用している男に対抗するにはこのくらいの肝っ玉ぶりも必要で、まさに母は強しで逞しい。S・ローレンはウブな10代からゴージャスないつもの美女~くたびれた中年まで感情豊かに表現して素晴らしい。 無責任男のマストロヤンニとの絶妙のカップルが織り成すこの話は、コメディというより人情ものといった感じなのであまり笑いは期待しないほうがいいかも。 8点(2005-02-22 23:49:58)(良:2票) |
3. 招かれざる客(1967)
別段泣くような作品ではないと思うのだけどキャサリンの母心に泣き、ポワチエの思いに泣け、スペンスの決意にまた泣けて、、と感動の涙がこぼれる。それくらい脇役まで含めて出演者たちの演技や丁寧に作られた脚本が素晴らしい。 時代が変わった今見ても親心に変わりはなく、それぞれの気持ちが分ってしみじみする。 帰ってきた娘の突然結婚話、それも再婚の黒人で半日そこそこで賛否を決断しなければならないという。申し分のない立派な人物ではあるが、大事をこんな性急に決めるなんてたとえ相手が誰であっても戸惑うだろう。 偏見なく一途に恋に突き進む娘に父は世間から受ける差別を憂慮するが、母はそんな娘を誇りに思い理解する。 ジョンは情熱をぐっと抑え相手の親子の絆を第一に尊重しようとする。 ジョンの両親やリベラルで気さくな神父もやってきて、父親同士、母親同士、ジョンと娘の父、母と娘、父と神父などの会話の中からそれぞれの思いが吐露され見事なドラマとなっている。人種差別も今よりずっと激しかった時代にこの堂々とした リベラルさは立派。作品も爽やかで後味がいい。スペンスはこの作品の完成後まもなく67年6月10日67歳で亡くなった。ずっと健康を損ねていて久々の出演ということで弱々しい感じはするものの、最後の見せ場の存在感はさすがだった。キャサリンにもポワチエにも改めて惚れぼれ。お勧めです。 9点(2005-02-17 21:55:57)(良:1票) |
4. キューポラのある街
映画は時代を映す鏡でもある、ということで、↓そうそう、こんな時代もあ~ったねと♪(byみゆきさん)つい強調したくなる。この映画が作られた昭和37年というとまだ高度成長期前で大方の人が生活に余裕もなく貧しさも当たり前だった頃。 暮らしが大変だからこそ大人も子供も困難も多く頑張らざるを得ないのだけど、それが悲惨とか暗いというのではない。 そういう時代なんだしそういう中でも夢や希望もある。前向きで明るいジュンのようなしっかりものや逞しく頑張る子供たちの姿は時代が一変した今見るといっそう感動的。特に弟のタカユキと彼を「親分」と呼んで付き従う朝鮮人少年とエピソードの数々が生き生きとしてて素晴らしい。今なら北朝鮮へ帰ったあのサンキチや家族には過酷な運命が待っているだろうと分かるが、この当時はそんなことを知るはずもなく希望を持った帰郷だと誰もが信じてたわけで・・・ いろんなエピソードも登場人物の誰もが見事に調和し、前向きに一生懸命生きる素晴らしさを力強く訴えてくる。 9点(2005-01-30 21:42:08)(良:2票) |
5. 十三人の刺客(1963)
《ネタバレ》 これぞ娯楽時代劇、って感じで悪役の殿様が徹底して憎憎しく、勧善懲悪がはっきりしててとても分かりやすい。ま、単純なパターンなんですけど待ち伏せ作戦という展開が頭脳戦でもあり面白い。13人の刺客に対して明石藩側が53人、一人4人やっつければいいのね、と単純計算してたら、千恵蔵親分と寛寿郎は作戦本部にいて戦ってない、、why? 猫の手も借りたいくらいの手薄なのになぜかおっとり構えてるのが不思議~ 袋のねずみ状態で弓矢をあれだけ射掛け、切りまくっても敵がなかなか減っていくようにも見えず延々と戦いが続くのはちとクドイ気もするけど、ラストの対決に武士らしい筋を通す気骨を見せた千恵蔵がかっこよくて貫禄十分。 他月形龍之介とか時代劇でおなじみの名だたる面々はみなそれぞれ存在感があってさすがです。 7点(2005-01-25 22:30:59)(良:1票) |
6. ミトン
素朴な絵とお話にほのぼのと暖かい気持ちになる。BGMと犬の鳴き声などの音はあるがセリフのないたった10分ほどの話でも少女の気持ちや状況がよく分かる。ミトンが可愛い犬になった嬉しさ、賢い編みぐるみの犬が棒探しで一等だったのにひもが絡んで残念、、というシーンのホロ悲しさ、ミトンを撫で付けるやさしい手つきの暖かさなど豊かな感情のイマジネーションを呼び起こす。これを見るとむしろ言葉などないほうが想像力を掻き立てるような気がします。 小さなお子様には特に見せていただきたいような作品です。 濃淡の影や表情などからもとても丁寧に作られた作品であることが分かります。 8点(2005-01-22 23:02:51) |
7. テキサスの五人の仲間
うーん、、このひっくり返し方のすご技にはびっくり仰天。何も知らないで見て良かった~ 仕掛けの筋は砂の城のように危うくもろい気もするけど・・・・・・・・ 以下いろいろ書いてみましたが何か書こうとするとネタばれしそうなので結局省略。 2度目以降は安心してコメディで楽しめそうです。 7点(2005-01-16 20:47:55) |
8. 秋津温泉
戦争をはさんでつかず離れずの微妙な男女関係の17年間が秋津温泉を舞台に描かれる。17歳の明るく健康的な新子(岡田)が17年後に疲れ果て絶望の末にたどるラストは痛ましい。はつらつとした女学生からしっとりとした女性まで美しく魅力的に 見せる岡田茉莉子が終始素晴らしい。これは成島東一郎の撮影も効果的だったかもしれない。斜め頭上から、あるいは下から、ロングショットでと変化のある構図が印象的で美しい。若いときの着物姿に真っ赤なマフラーとか赤の使い方も素敵。 ただこの相手の周作(長門)という男が無責任でいい加減なのに彼女はずっと執着し続けて身を滅ぼす、というのがなんだか腑に落ちない。 出合った頃心中を持ちかけるほど生きる気力のなかった男は新子の生気に助けられたのに、17年後に立場が逆転した時男は新子の気持ちに気づく風もなく適当な慰めを言う。そんな周作は腹立たしいが長門裕之のダメ男ぶりは悪くなかったと思う。 7点(2004-11-27 19:49:02)(良:1票) |
9. 愛と死をみつめて
今まで日活青春コンビが演じたヒット曲がらみの泣かせる話、程度に思ってて見たことがなかったんですがこれは見てビックリ、そういうのにありがちなあざとさを感じさせない真摯な純愛映画でした。 顔の半分を切り取るというこの上なく残酷で理不尽な運命に見舞われながらも最後まで気高く生きた道子さん、辛い彼女を真心で支え続けた実さんの実話が切なくてもうボロボロに泣けました。大泣き映画というジャンルがあれば ベスト10に入れたい。小百合さんの朗読する日記にも胸を打たれるのですが、これほど切々と心に響くナレーションもそうそう聞けるものではありません。公開年がこの話の時に近いので早いなぁ、、と思いましたら、映画の企画は彼女の生存中に始まってたのだと友人に聞きました。小百合さんは道子さんと面会もしてたのだそうで、作品からも道子さんへの熱い思いが感じられます。 相手役の浜田光夫も好演で二人の純粋な生き方には今見ても感動させられます。 8点(2004-11-16 21:41:28)(良:1票) |
10. 二人で歩いた幾春秋
これは木下監督が道路工夫の河野氏の歌集に感銘を受けて書き下ろしたもの。ということで作中には彼の素朴で生活感あふれる歌がいくつも引用され、そのままエピソードとなっている。戦後の貧しい夫婦が一生懸命働いて一人息子を大学に入れて、、という苦労話の年代記もの。主演も「喜びも悲しみも幾年月」と同じ佐田・高峰コンビというので二番煎じのような感じもする。話も淡々と流れメリハリがなく印象は薄い。 [ビデオ(字幕)] 5点(2004-11-06 18:27:39) |
11. バターフィールド8
おっ、これは思いがけずお馴染み様の二人部屋、おじゃまします。そうですねェ、オスカーはノミネートだけとか病気とかでリズへの同情票かも。どうせ受賞するなら「熱いトタン屋根の猫」のほうが作品としても納得できるんですが。 リズは熱演してて悪くはないけど娼婦というにはイマイチ雰囲気がないし、恋人のいる幼馴染との関係でも都合のいい甘えに好感持てず。 何よりダメだったのは彼女が愛したというリゲットの支離滅裂さ。人前であれほど罵っておいて実は愛しているなんてのは唖然としてしまう。彼に愛情があるなんて見てても思えないんですけど、リズ側から見ても彼女が初めて心から愛したという説得力が感じられません。これだけ人物が立ち上がってこないのは脚本が悪いんでしょうか。薄幸のヒロインのメロドラマでも心に響いてきませんでした。 5点(2004-10-09 21:16:12) |
12. シャイアン
勇猛さで知られるシャイアン族は先祖伝来の地イエローストーンから何千キロも離れた砂漠のインディアン居留地に移住させられたが、移住時の約束は守られず劣悪な環境の中飢えや病気で多くの人々が死んでいく。 たまらず故郷を目指す旅に出る彼らに警備隊が出動するがそれは尾ひれ葉ひれがついて、先住民がさも残虐行為を働く恐ろしい悪人のように宣伝される。 確かに西部劇では悪者扱いだった先住民が実際にはどんな目にあったのかという一端は描かれてはいる。 しかし中盤のダッジ・シティでワイアット・アープとドク・ホリディが登場し、コメディタッチで展開する部分だけがまるで軽い娯楽作のような作りでちょっと違和感がある。まぁここが一番生き生きしてて面白い気はするんだけど、この中途半端な流れを別にしても話が表面的なだけという気はする。 E・G・ロビンソンやカール・マルデンなど何気に存在感のある俳優が出ているのは楽しめる。 5点(2004-10-02 15:25:23) |
13. 拝啓天皇陛下様
軍隊なんか誰だって嫌なものだろうに、そこが天国のように思えるというのはよほど生活が苦しかったということで、1年目は2年兵に苛められても我慢、2年目には立場が逆転する。2年兵の西村晃がうまい。 彼を哀れんだのか軍の中隊長は新兵の教師(藤山寛美)を教育係りにつけてくれたり除隊の時に着物をくれたりする。愛情に恵まれなかった正助は初めて暖かい情を受けて彼を父のように思う。ちょっとコミカルな中隊長の加藤嘉が絶品で思わずホロリとさせられる。 この作品には大勢の人が出入りしてそれも楽しめる所だが、最初から最後まで登場する中心人物は正助の渥美清と、彼と軍隊で知り合い長い付き合いをすることになる長門裕之の二人。ボケとツッコミでもないけどなかなかいいコンビで楽しい。渥美清が演じるので正助は一見気のいい人に見えるが、新兵に威張ってみたり卵や鶏をかっぱらってきたりする。一目見た天皇に感激し軍隊に疑念のない彼が戦場ではどうであったのかと思うと、そうそう好人物とばかり言えないかもしれない。コメディとしては十分楽しく面白い作品だが、正助や軍の描き方などにもう少し毒(パンチ)があればもっと面白くなったかもしれない。 8点(2004-09-13 18:58:19) |
14. オーシャンと十一人の仲間
今まで評判のいいのがリメイクされるのかと思っていたのでオリジナルの本作は出来がいいのだろうと思ってたら、、、 「リメイク作はオリジナル作品を越えられない」という先入観をみごとに覆された。 大体リメイクでさえイマイチという印象だったのに、あの傑作「西部戦線異状なし」と同じ監督なのだからなおびっくり。だる~い展開で見るのに2日もかかってしまった。 シャーリー・マクレーンがどうでもいいようなちょい役で出てますが、彼女はシナトラやD・マーティンとお友達だったから友情出演ってことで顔出したんでしょうかねぇ。メインキャストでなくて良かった・・ 3点(2004-08-30 22:31:33) |
15. 好人好日
立派な数学者だけど常識にはまるで疎くて貧乏暮らしという変わり者の学者が、文化勲章を受賞しておこる周囲の騒動が明るくコミカルに描かれる。お金や常識に無頓着なこの主人公は、泥棒に入られると騒ぐどころか受賞した勲章をやってしまうし、返しにきたら「泥棒に追い銭」というようなありえないような変人ぶり。こんな破天荒な話もコミカルで面白いが、結婚前の娘(実は戦災孤児)と父の会話や、長年連れ添った妻との描き方などホームドラマとしても心地よい暖かさがある。 笠さんの飄々とした変人ぶりや淡島千景、三木のり平など味わいのあるキャストの他にも、ほんの脇役で高峰三枝子や野川由美子、北林谷栄など多彩なキャストも楽しめる。 コーヒー1杯40円でテレビを見に行く、文化勲章の年金が50万円など世相もうかがえる。小品だけど後味のいい佳作といったところ。 7点(2004-08-09 15:59:40) |
16. うたかたの恋(1968)
名高いこの話の真実に疑念はあるけれど、華やかな王朝での美男美女の悲恋は魅力的ということでこのリメイク版。 はじめアラブ系のオマー・シャリフが皇太子って違和感を感じないでもなかったが結構説得力があった。 マリーのドヌーブは美しくていいけど20歳って言ってたのは実際は18歳のはず。 ダリューは実年齢だったがドヌーブは26歳で落ち着いてて大人っぽい。 皇后エリザベートはかなりほっそりした繊細なイメージなのでエバ・ガードナーは貫禄がありすぎてミスキャストの気がする。 カラーで華やかだけど化粧も現代的だし、クラシカルでロマンティックな雰囲気はやはり35年版のほうがいい。 6点(2004-07-31 16:34:27) |
17. ブーベの恋人
殺人で14年の刑の満期終了時、ブーべ37歳・マーラ34歳というから、裁判当時それぞれ23歳と20歳。 知り合ったのはさらに1~2年前と思われるから、マーラはブーベに「靴を買ってくれる?」など最初は子供っぽかった。 その彼女がすでに7年もブーベに面会するために2週間ごとに汽車で通い続けている。さらにこの先の7年だってなんてことはない、という彼女は恋人以上の母性的強さを感じさせる。 ブーベは貧乏だし愛情表現も下手なうえ、感情に任せて殺人を犯してしまうなど思慮も浅く彼女には苦労ばかり。 彼の逃亡中にステファノという頼れる恋人もできたのに、ブーベにとって彼女だけが希望の光と知っている彼女は、有罪になったブーベを見捨てることができない。 辛苦を経て大人になり、彼を支えようと達観したカルディナーレの毅然とした横顔が美しい。 テーマ曲の「ブーベの恋人」は映画音楽のスタンダードで哀愁あふれるいい曲です。 7点(2004-07-31 16:07:07)(良:1票) |
18. 突然炎のごとく(1961)
何ともいえないムードや展開は興味深かったので飽きずに最後まで見たんですが、、、 身勝手で奔放なヒロインの振る舞いも理解し難いけど、 そんな彼女に惹かれて共有するような男二人の気持ちも分からない。特に夫は妻を深く愛しながら 親友に妻との情事を許し、友情は固いという三角関係はますます分からない。 モノクロでも自然の風景の美しさや、3人の楽しそうな自然なショットはなかなか良かった。anemoneさんと同じく いい映画かもしれない、、という気もするのだけれど、私にはやはりこの関係はよく分からなかった。 5点(2004-07-22 13:17:39) |
19. 悲しみの天使
いやぁ~懐かしい!これは題名を見て思い出しました。制作年が66年となってますが確か見たのはもっと後だと思うので、公開年はずれてるんでしょうか。 厳しいミッションスクールを舞台にした少年同士(年は上下)の、友情以上の幼い同性愛感情が引き起こした悲しい話で、妙なる音楽のように美しいフランス語と 繰り返し流れる哀愁漂うメロディ効果で涙ボロボロだったという記憶があります。 年下の悲劇の少年、ディディエ・オードパンが文字どおり天使のように愛らしい可愛いさでした。 7点(2004-07-05 21:02:15) |
20. テキサス
ドロンのコメディがあったなんて初めて知りました。真面目なコメディアンぶりですがなかなか魅力的です。でも今ひとつテンポが良くないのか乗りきれないところがある。 作品自体の出来がもっと良ければ、ドロンのコメディはもっと作られたかもしれないとちょっと残念。 テキサスが舞台でどこを掘っても黒い水(石油)が出てしまって、白人も先住民も「こんな土地はいらない、、」なんて笑えるオチは愉快です。 先住民もヘナチョコで笑えるコメディアンになってるのが珍しくておかしい、、といろんな意味で珍品かも。 5点(2004-06-20 22:48:09) |