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1.  清須会議 《ネタバレ》 
時代設定のせいか(お陰か)、あざとい『三谷色』は薄まり、個人的に一番観やすい三谷映画でした。 138分の長さを退屈させないだけでも好感。比較的、穏やかに楽しみました。 とはいえ、あからさまなドタバタコメディ展開はこの映画の中では、浮いていて違和感がありました(特に旗取りや滝川一益のくだり全般)。 お市の描き方はあまりにもキャラとしての深みがない事。 いくら悲惨な過去があろうが、全く好感すら持てない、非常にイヤな女にしか見えず・・ そのお市に惚れてアタックを掛ける柴田勝家も感情移入しづらくなりました。 そもそも勝家全体の描き方も間抜けが過ぎるかと・・ とやかく言いましたが過去の三谷作品の中では個人的に良かったです。
[映画館(邦画)] 7点(2013-11-10 20:55:52)
2.  R100 《ネタバレ》 
事前に松本人志監督が「非常に卑怯な映画やと思ってます」「べつに映画を撮ってる気もないんですけど」という『逃げ道』『言い訳』と思われても仕方がない発言をされてました。 それでも『作品が面白い』『(内容は)分からないけど何かグッとくる』であれば何を監督が言おうと関係無いと思っていました・・ が・・実際、観ると『それ以前に単に作りがずさんで、つまんね』という結論でした。 コント的な展開もテンポが絶望的に悪いので、瞬間的にクスッとはしても、 すぐ退屈に戻る感じです(大森南朋がかなり頑張っているのは救い)。 クラブのSMプレイも恐るべき単調ですし、大してぶっ飛んでもいないという中途半端さ・・ ラストの家の前の大合唱はただ閉口しましたねぇ・・。 そして合間合間に挟まれる、実はそれまで観ていた秘密クラブの話は100歳の映画監督が作った映画という事が明かされて、 試写をみた評論家達が我々、観客が思ったであろう本編のアラの『突っ込み』を代弁するという展開・・ 最後のオチもその『物語』を観終えた評論家の溜息・・。 そして悦に入った笑顔の監督は松っちゃん自身に見え『お前らの観てるのは、ワイの自己満足映画、つまらん卑怯な映画やから。それをわざわざ金払って観てるお前ら(笑)』と観客に挑発、または嘲笑してるかのよう・・ まぁそれは本編がバシッと決まった出来の後のオチとしてなら、ギョッとしていい意味での『肩透かし』になってたのでしょうが。 映画内で『この作品はつまらない』と描いておきながら、松本監督自身は公に自画自賛してるって言うのも・・なんだかなぁと。 こういう感想は監督からの最近の発言から汲み取ると『理解できない馬鹿』になるのでしょうが・・ やっぱり、どう考えても松本監督の作風は映画と根本的に食い合わせが悪いんですよ。 映画じゃ彼の才能は発揮出来ないと思います。やっぱり松っちゃんはテレビだと思いますよ・・ とはいいつつ果敢にガンガン『挑戦』してるという姿勢は嫌いじゃないんですがねぇ・・
[映画館(邦画)] 2点(2013-10-06 15:45:27)(良:1票)
3.  エリジウム 《ネタバレ》 
予告で思った通りの展開と出来でした。普通に面白かったです。 銃撃シーンや格闘アクション、世界観、武器、装着した器具のデザインが『第9地区』を彷彿とさせる感じで、ニヤリとさせられました。 でも大きな不満が・・・ラストで人々が『市民』となり、こぞって宇宙のエリジウムに向かいますが 最終的に人々が求めるのは『治療マシン』の性能だけに集約されてる印象に・・ エリジウムが凄いんじゃなくて、その『治療マシン』が凄い話になってるだけじゃね? あと治療マシンが別にエリジウムの環境じゃなければ機能しないとか、 そこになければいけないという理由もないので、じゃあ舞台が宇宙のエリジウムじゃなくてもよくね?と・・。 見終わるとエリジウムの存在意義が何か霞んで見えてしまいました。 そのマシン以外にエリジウムがいかに『特別』な場所か見えづらいんですよねぇ・・ なんか快適な風景の画だけ見せられても・・。 富裕層専用の治療マシンが何らかの理由で、あの街に置いてあって各立場の連中がそれの奪い合いする話でも成立するような気がします。 オチもそれで問題解決とは思えないんだよなぁ・・さらなる混沌の幕開けの気がしました。 7点付けた映画の感想とは思えなくなりましたが・・・不満に感じながらも、それなりに楽しんだのは確かです。
[映画館(字幕)] 7点(2013-09-21 03:06:35)
4.  許されざる者(2013) 《ネタバレ》 
あの名作の邦画リメイクと知った時には『バカなの?』と率直に思いました。 しかしいざ観ましたら主要役者陣の重厚な存在感と演技はもちろん 蝦夷の風景の美しさとセットと小道具諸々の作りこみも徹底していて見事でした。 オリジナルからの諸々の改変も上手く行ってると思いました。 堂々たる仕上がりです(オリジナルはイートウッドの演じてきたキャラ達の流れも踏まえ、表情と雰囲気の重みですべてが分かる説得力。それと謙さんを比べるのはさすがに酷か・・) ただ・・どうしても気になった事があります。 遊女の顔を傷付けられる事件が物語、キャラクターの行動、すべての発端な訳です。 しかし顔が傷ついた遊女役の忽那汐里の傷メイクは映画上ではあまり目立たず、 非常に可愛いまま・・オリジナル版では娼婦の傷はしっかり凄惨さと痛ましさがあり、 主人公達が行動する理由に足り得るように表現されています。 しかし今作は確かに顔の傷は何箇所かありますが女優の顔を醜く見せるのを微妙に避けた及び腰メイク、 傷自体が『線』にしか見えない問題・・顔を見ても『あんた可愛いままじゃん』と思えて、 物語を動かす主軸の『傷』がこのザマなので物語の推進力が減退してしまったのは否めません。 そのせいか他の遊女達も何か物語の中で埋没してしまってる気すらしました。 あと後半から終わりに向けてはオリジナルと比べると、何か冗長な印象もあって気になりました。 色々と惜しい部分もありますが、あの名作のリメイクという高いハードルをしっかりクリアーしたと思える出来であったのは素直に嬉しかったです。
[映画館(邦画)] 8点(2013-09-14 11:07:56)
5.  共喰い 《ネタバレ》 
性交中、女を殴る事が性癖の男の息子・・ そんな父に普段は反発しながらも、女性と行為に及ぶと血は争えない所が出てしまう・・。 拭えない『何か』に途方に暮れてしまう、主人公演ずる菅田将暉が実に素晴らしいです。 一見、穏やかに感じますが、何かどんよりとして深みにハマったら抜け出せない粘着性が ある映像、雰囲気が自分にハマったのか片時も飽きる事無く観れました。 前半は男との関係に翻弄、引きずられたまま生きている女性キャラ達が 後半は『殴られた』女性がみんなさらに逞しくなっていき 男が置いてけぼりを食らわされてる感じが妙に滑稽・・ ラスト前のセックスの光景は、もう吹いてしまいました。 女優陣も見事としか言えない存在感!田中裕子の母親はより映画に厚みと説得力を持たしてました。 もちろん、どうしようもない男だし、すべての『元凶』なのにどこか憎めない父親役の光石研も素晴らしかった。 最後に・・いくつかある食事シーンが、どれもこれも、すごく印象的でした。 いい食事シーンがあると個人的に『いい映画』の確率が多いです。
[映画館(邦画)] 8点(2013-09-08 14:30:38)
6.  マン・オブ・スティール 《ネタバレ》 
重厚で見応えのある『スーパーマン』でした。 ヘンリー・カヴィルのスーパーマンは見事な肉体と気品も感じさせる顔立ちで本当に素晴らしかったです。 『スーパーマン』の戦闘アクションは後半まで抑えられています。 そしていざ始まったら、すごいシーンの連続で単純に『おおっすげえ!』と思いました。 ただ観ていて何か居心地の悪さが残りました。 今回の『スーパーマン』はやたら人が死ぬんですよね・・ 特に後半のビル街大破壊シーンは間違いなく数万単位で殺されてる(映画上リアルな感じなのに一般の犠牲者は殆ど見せない上にどれくらいの犠牲が出たかも触れていない)・・。 EDでは大破壊が何事もなかったように仕事とかしてますし(どれくらい時間が経ったか分かりませんが)・・。 トドメに『スーパーマン』がする、ある行為(もしくは選択)も流れ的には仕方がないとはいえ違和感が拭えず・・ 戦いの勝利が数々の犠牲で成り立っているという重みが、その後の展開から感じられないんです。 この映画の重厚なトーン故に余計に気になりました。 『スーパーマン』を今風のリアルで追及したら、そりゃこうなるだろうとは思いました。 実際に面白かったのは間違いないです。しかし今回の『スーパーマン』を手放しでは褒められない・・ もう少し時間が経ったら、また観てみます。 余談・今回のゾッド将軍は正直、野蛮なだけで何か物足りなかったです。
[映画館(字幕)] 7点(2013-08-31 20:35:51)(良:2票)
7.  ガッチャマン 《ネタバレ》 
この映画、あまりにも空っぽでした。まず主要キャラクターの恐るべき魅力の無さと薄っぺらさで誰一人にも感情移入出来なかったので、話に乗れる訳も無く・・役者の方達には申し訳ないですが一人残らず『大根』にすら見えてしまいました(これは監督の責任)。冒頭のアクションは変な所でカット割ったりゴチャゴチャしていて迫力を削ぎ、ショボさが際立つ始末です。それ以降はクライマックスも含めて本当に冗長!極端な事を描けば、中盤以降はキャラがグダグダ、ダラダラと説明台詞の垂れ流しするシーンの羅列のみ!しかも恐ろしく物語の『面白さ』として機能していない!(あ、パーティーシーンも物語上蛇足の極みでした)。そしてやっとクライマックスですがここで酷いのは最後で東京の危機が迫っていて時間が無い切迫した状態なのに、中身のないグダグダ、ウジウジ会話の間延び地獄・・『お前らいい加減にしろ!』と心で何度も叫んでイライラしてました。とにかく、ずっとスクリーンを通して作り手の熱量が微塵も感じられなかったです。恐らく作り手は『ガッチャマン』への思い入れ、愛情は大して無いんだろうなあ・・。そんなのがスクリーンから容易に汲み取れる映画が面白いなんて有り得ないですねぇ・・・
[映画館(邦画)] 2点(2013-08-26 20:37:06)(良:2票)
8.  漫才ギャング 《ネタバレ》 
今作は『ドロップ』同様にアクションの見せ方は相変わらず迫力もキレがあって上手いと素直に思いました。 褒める所はそこだけです。全体的にはやっぱり不快な映画でした。漫才的テンポを映画の中にもふんだんに取り入れてますがしかし私は『うるせぇよ!黙れ』と死ぬほどイライラしました。前半の佐藤隆太演ずる飛夫が連発する状況の『説明』は本当にウザくて・・ウザくて・・だってすでに映像で状況を分かりやすく見せているのにその上にしつこく『説明』されたらイライラしてしまいます! 他のキャラクターも『説明』突っ込み連発でウザい。 そして最大の問題。キャラの扱いの描写は『ドロップ』より悪くなっているのではないでしょうか? 佐藤隆太の主人公の飛夫への周囲の甘やかされ過ぎは異常です! 特に石原さとみ演ずる彼女の飛夫への人間味が感じられないほどの奉仕っぷりは驚きました。 主人公の身勝手な対応にいくら彼を想っているとは言え、何かしらの感情すら表さず、どんな時もただ薄ら笑顔で尽くすだけって・・ キャラとして美しいと思っているのか? 何も味も魅力もなく、この女の描写に非常にムカムカしました。上地雄輔演ずる相方の龍平も主人公を甘やかしてるし、さらにその龍平も周囲に甘やかされてしまっているので そんな状況でこいつらの成長をどう感じろというんですか? 具体的に書きますと、飛夫が龍平の突っ込みの才能を見込んでコンビを組んで、練習してステージ立ちますが、ここが問題です。彼等は行き成り初ステージで爆笑を取ってしまっている事です(そもそもネタが私は笑えないですけど)。 いくら二人に漫才の才能があるからって簡単過ぎます。二人の漫才が壁に立ちはだかる状態を描こうよ・・。宮川大輔の闇金屋は単体では面白いところはありましたけど、こいつも何故かどんどん物分りのいい主人公達を甘やかすキャラに変貌してムカムカしたり・・ 不良グループとの抗争は何かものすごく中途半端でなあなあに回収したり、飛夫が終盤でブレイクする過程もやっぱりごっそり省いて何が何だか・・みんな簡単にしすぎ! トータルで主人公二人が全く成長してるようには見えません。よって周囲に甘やかされたこの二人がこれから先、まともに社会を生きていけるとは感じず最終的に『勝手にしろ』と思いました。『甘やかし』が品川監督の味なんですね・・『ドロップ』よりも嫌いな映画だわ。  
[映画館(邦画)] 2点(2011-04-04 20:07:47)(良:1票)
9.  あしたのジョー(2010) 《ネタバレ》 
会話式レビューA『まず役者陣はよく頑張ったと言いたいですね。』B『特に力石役の伊勢谷くんは思った以上に力石的存在感が上手く出せていたな・・山Pのジョーは確かに頑張ってはいたけどジョーの獣的な感じには程遠かったな・・昭和40年代頃の時代設定に合う顔じゃないから違和感がどうしても残った』A『ただ初めてこの実写版で「ジョー」に触れた人だったら、割と好印象を持たれるのではないかと』B『丹下のおっちゃんは恐ろしく丹下っぽくて好感持てたな』A『少なくとも役者の熱演に関しては不満は少なかったです。試合もなかなかのもので「おおっ」と思いました』B『問題なのは、話とキャラ描写の浅さだよ。ジョーの登場から力石の死まで131分で描き切るなんて困難なんだからどうしてもエピソードを大幅にカットしてジョーと力石に焦点を絞るのは最もなんだけど・・』A『個人的に好きなマンモス西とかウルフ金串のキャラが薄いのは残念ですが実はジョーという男の背景の描写も薄いですよね、時折セリフで自分について語りますけど取って付けた感じでいまひとつ感情移入が出来なかったです。セリフじゃなく彼の佇まいでその背景を匂わす事も出来てないと思います』B『力石とジョーの関係も力石があそこまでの執念を実らすほどの積み上げも不足してるので唐突感は否めず・・難しいね』A『段平に関しても同じですね、白木葉子と過去のドヤ街エピソード、ドヤ街とジョーの繋がりがすべて描写不足です』B『試合も色々映像加工して工夫はしてるけど肝心のクロスカウンターの場面は凝りすぎて逆に迫力に繋がってないかなぁ、漫画やアニメと同じようにしたいのは良く分かるんだけどね。』A『色々不満もありますが観て損をしたとは言いません、でも素直に誉めたい感じもしませんでした』B『かつての「ジョー」好きが本作をきっかけにアニメや原作を再び目にしたり、あまり知らない人が本作を入門編にして原作、アニメに触れてもらうなら本作は役割を果たせているかな』A『言うまでも無いですがやっぱり「ジョー」は漫画、アニメだからこそ輝けた作品ですね』
[映画館(邦画)] 5点(2011-02-13 16:56:08)(良:1票)
10.  座頭市 THE LAST 《ネタバレ》 
会話式レビュー・・A『心底つまらない映画だったよ、何あれ?』B『座頭市始め、キャラ達がちゃんと描かれてないから、全編しみったれた話の上に味気ないから退屈でした。』A『まず座頭市が全く強く見えない。モタモタしてて斬られすぎなんだよ!しかも斬っても血があんまり出てない・・』B『血といえば、別のシーンでは手首切断とかあるのに血が一滴も出ませんね』A『不自然にも程がある』B『市は居合い斬りの達人の筈なのに、あまり見えないですね』A『盲目の市が居合いとそれ以外の能力が、桁外れな部分をドーンと見せる所に「座頭市」のカタルシスがあるのに今回、何もありゃしないのはひどいねぇ・・』B『針の穴に糸を市が通すシーンでそういう部分を見せようとはしてるのに長回しのシーンだから遠くてその様子が全く見えない!何やってるの?と』A『香取慎吾は勝新っぽくしてたけど、あのスリムな体系じゃ不自然にしか見えないしセリフ回しもちょっとね・・頑張っているんだけどね』B『他のキャラも問題ですね。ARATAや豊原功補の演ずる男が市のライバルとなるキャラと思いきや、おざなりに描かれるから、重要なシーンで出てもどうでもよくなってしまいます。豊原功補の侍は市と一対一の対決をするんだから、ちゃんと強さと存在感を出さなきゃいけないのに・・』A『仲代達也の親分は意味不明な事しか言わないし、何がしたいか伝わらない。その息子の高岡蒼甫も同じ!ただ「伏線」を見せるために作り手に利用されただけのバカにしか見えない。』B『終盤の直訴状のくだりは見せ方含め実におかしな事になってました。ああキリがない・・』A『ラストもボロボロの市がただのチンピラに背中刺されるって、ちょっと!・・その後もグダグダ感満載でひどかった』B『今回は最後という事で今までとは違う「人間」座頭市を描きたかったのでしょうが・・これを見る限り、こんな「人間」座頭市なんか観たくなかったと、はっきり思いました』A『勝新にこんなもん見せたらどう思うのだろうか・・』
[DVD(邦画)] 2点(2011-01-21 02:13:03)(良:1票)
11.  ソーシャル・ネットワーク 《ネタバレ》 
正直、フェイスブックやザッカーバーグについて殆ど知らなかったので、最低限の知識を事前に入れて鑑賞。展開はテンポよくサクサク進み全く退屈しなかったです。ただあまりに作品としてスピーディーな語り口なせいか、鑑賞後にそのままサーッと印象が流された感じが私は否めなかったので、一回だけの鑑賞では捉えきれないものがありました。ちょっとしたきっかけとアイディアと行動力でザッカーバーグは恐るべきスピードでフェイスブックを巨大化させていく下りはちょっと恐くなり戦慄すら覚えました。そしてそれによる代償と結果も同時に見せて『一体、何だったんだ・・?』と虚無感も感じました。ザッカーバーグ始め他のキャラクターの人間性の深いドラマ部分の描写に関しては、この映画の中では敢えてあまり見せておらず、色々な解釈の余地を残しており誰に特別、感情移入をする事無く冷静に各キャラを観れたのは良かったです。ザッカーバーグはいいヤツではないかもしれないが、すべて間違っているとは思えない、訴訟を起こした兄弟も共同設立者のエドゥアルドの言い分も最な所もあるし、ナップスターのショーンもドラッグ以外はすべてが悪いとは言えない・・巨大なうねりの中ですべての歯車が噛み合うとは思えないし、時には冷酷な判断を下すのは止む得ない所がある、誰が悪いかの善悪の判断は難しく、色々考えさせられました。ラストの五億人の友達を作ったと銘打たれた男のたった一人の『友達』の承認を待ち続ける姿は、淡々としていながら実に彼の孤独を的確に表した見せ方と感心しました。ラストのテロップ『登録者5億人、企業価値250億ドル』・・驚異的な事なのに、じんわりと虚しく響く・・
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-16 16:57:17)(良:3票)
12.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
物語そのものは実にシンプルなので展開も極力無駄なドラマを排しストレートなパニックものとして90分台に映画をまとめたのは好感を持ちました。主演が名優デンゼル・ワシントンですから、彼の存在感だけでもこのキャラクターの重みが感じられますのでOK!共演のクリス・パインも味わい深い存在感があり、なかなかの健闘振りでした。冒頭での職人達の仕事の些細なミスが後に障害として彼等に立ちはだかる所もいい意味でのイライラ感がつのって良かったです。暴走列車を止める対処そのものは大胆かつシンプルで単調になりがちですが、合間、合間に彼等の私生活のドラマが邪魔にならない程度に挟み込まれているので感情移入もスムーズで、彼等が危機を前に大胆な行動に出る時のハラハラ感がいい塩梅で出てると思いました(まぁ彼等の家族達のものすごい添え物的な見せ方は気にはなりましたが、潔くもあったかなと・・)。傑作とか名作の類ではないかもしれませんが、本編を『適度』にまとめて、『適度』な満足感を鑑賞後のお土産に出来たこの映画をとても好ましいと思いました。 潔さに8点献上します。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-09 13:48:13)(良:1票)
13.  SPACE BATTLESHIP ヤマト 《ネタバレ》 
アニメのヤマトは子供の頃、見たきりであまり覚えてなかったので今回、アニメ版を大して意識せずに済んだのは良かったです。ヤマトや敵の艦隊のCGがなかなかで感心しました。全編、退屈はせずに観れたので思った以上でしたが(観る前の期待値の低さも有り)それ以上でもないなと思います。まず最初に『あれ?』と思ったのはヤマト出撃のシーンが全然盛り上がらない所です。アニメでは人類同様に朽ち果てる寸前のヤマトの姿を十分に見せているから人類の最後の希望の下、ヤマトが勇壮な姿で甦り出撃する瞬間に最高のカタルシスがあるのに・・今回は朽ち果てたヤマトの姿を少しだけ画面上に映しているだけなので印象に残らず、出撃時になってヤマトが唐突に登場する感じになりカタルシスがないです。中盤の戦闘では乗組員が残っている第三艦橋をヤマトを守る為に切り捨てなければいけないという展開がありますが、そこに取り残された人達の姿を一切見せないので結果、イボでも切り取る感じになり犠牲の重みを感じません。よって後の古代の苦悩がまるで伝わらずに大事なシーンが台無しになっています。後半の展開はアクション満載なのに何故か淡々と起伏なく流れていくだけに見えました。ラスト近くは大仰で『感動』を無理矢理、引き伸ばしてしまい冗長・・クレジットで流れるシーンもくどい。個人的に思うのは役者陣の演技が全体的に平板に見えた演出が主な原因かと・・特に黒木メイサの森雪の演技の単調さは際立っていて、感情的なシーンでも他のシーンと『同じ』に見えてしまいます。ミスキャストかなぁ。キムタクの古代進は古代コスプレしたいつものキムタクでこの話とは本質的に食い合わせが悪いです(森雪と古代が突然、キスするのは話の流れ上、唐突しすぎ!そこに至るまで十分に関係を築いてないでしょ!)他のキャラも何か取って付けたような『感情』を貼り付けた感じで薄いな・・デスラー含めた敵キャラの扱いの雑さも問題ですね・・デスラーの存在感とそこの演出が大昔のテレビSF特撮を見てる様な微妙な感じで残念。(佐渡先生が女になって酒瓶や猫を無理に持たせてもなぁ・・違和感しか残らない)かなりの労力を費やしたであろうCGをスクリーンで観れたのは収穫でしたし、それなりに好感を持ちました。ただ人間ドラマの描写の浅さが作品の出来を損ね、観終わった後の余韻がすぐ消えます。アニメの実写化ってつくづく難しいものです。
[映画館(邦画)] 4点(2010-12-12 15:13:15)(良:1票)
14.  エクスペンダブルズ 《ネタバレ》 
まさにスタローン流男塾。『男は女を守らなければいけない』『女を殴るような奴は死ぬほど痛い目にあってもヨシ!』『男は仲間の為に命を投げ出す覚悟も必要だ』特に女性に関しては紳士といっていいようなスタイル!それを体現する役者陣がスタローンやバリバリの肉体派アクションスターが揃ってるから、存在だけで何か説得されてしまいそう・・はい、基本はとても楽しかったです。アクションの見せ方は往年の80年代で見られた肉体アクションを誇張した感じで、最近のCGを駆使したアクションと比べるとシンプルに見えますが役者の力で重量感ある生身のアクションが堪能出来ました。ストーリーも至ってシンプルでランボー的。間に部隊の仲間達の私生活や人間性の脆さも見えて魅力的に描かれているとは思いますが・・・何だろうなあ、過大に期待してたせいなのかトータルで見ると散漫な印象が拭えなかったです。まず前半でスタローンとステイサム二人が島の偵察の為に保護団体のメンバーとして潜入(それ以前に明らかに異常な雰囲気の二人が自然保護団体に見えないだろ・・ギャグか?)して、現地の案内人の女と合流しますが、ここはただ行って軍隊に見付かって逃げるだけで偵察にもなっておらず何がしたかったんだ?と感じになります。そこでアメリカに戻った後の展開は緊張感も展開も途切れてしまいテンションがグッと下がった印象で迫力のアクションがありながら冗長な感じがしてクライマックスにまで足を引っ張ってると感じました。再潜入からの終盤のアクションも何か単調でしたし・・うーん個人的には島に行ったら、島の中で最後まで展開させるか案内人の女とは別に仲間が捕らえられたかと緊張感が途切れず地続きに見せられたのでは?と思いました。物語の重要な要な筈の敵であった将軍と案内人の娘との間の葛藤も弱く感じて、取って付けたような印象でした。ドルフ・ラングレンのキャラの扱いもドルフ・ラングレン用の見せ場だけ用意されたような感じで取って付け感が・・色々惜しいです。でも前半のステイサムが飛行艇の先頭で決死のアクションをするシーンは文字通り燃えましたし、女を酷い目に合わす奴は徹底的に痛めつけられる所は痛快、男どものボンクラ仲間感はニヤニヤしますし、何と言っても名を馳せたアクション・スターがザッと集まっただけでテンションが上がるのは確かですので、やっぱり楽しくなるのが悔しいところ・・・。
[映画館(字幕)] 7点(2010-10-17 14:14:49)(良:2票)
15.  死刑台のエレベーター(2010) 《ネタバレ》 
かなりオリジナルに忠実に作られて、シーンや物語の展開は基本そのまんまと言っていいです・・って50年前のフランス映画を今、この日本でリメイクするに当たって『そのまんま』リメイクでいいのでしょうか?このリメイクは『今』の映画として全く感じなくてオリジナルの表面的な所をなぞってる演出なので、当然ながら『今』と噛み合う訳もなく、どこか古臭く陳腐な所が際立ってテレビの『火曜サスペンス劇場』か一昔前の『昼ドラ』をスクリーンでそのまんま流してるのかと思い、『映画』になっていないのでオリジナルよりも退化してる事態になってます。まぁ一応、諸々の設定とか展開、描写は今風に加味はされてはいますけど、何か取って付けたような感じで本編の冗長な間延びに貢献してるだけです。吉瀬美智子、演じる女は衣装も雰囲気もセリフ回しも何か浮きまくってます。オリジナルのジャンヌ・モローの演技をまんまトレースしてるだけだもんなぁ・・。そして最大の改変は主人公の車を盗み、後に殺人事件を起こす若者役の玉山鉄二と北川景子・・男が今回はチンピラではなく警察官になっていますが、彼がチンピラに拳銃を盗られ、平泉成演ずるヤクザの親分の手に渡ってしまい、拳銃を取り戻すために彼が追跡していると思ったら実はその親分の情婦が警官の元カノ・・しかも警官が未練アリなので、情婦との男女のゴタゴタ話にすり変り、展開もおかしな事に・・どうしても余計なシーンを付け加えてる印象です。北川景子の美容師の役はもっと訳がわからず、自分の馴染みのお客である阿部寛の主役の車を盗もうとする男を制止すらせず、男と一緒に何も考えずに乗っているので、ただのバカ女に見えます(オリジナルの若い女は最初は男の行動を何とか止めたり、多少の後ろめたさも示している)・・・色々と思う所が多すぎでした。何でも監督は『オリジナルと比較するような野暮な真似はしないで』と発言されたようですが・・オリジナルとはまた違う2010年の『死刑台のエレベーター』になっているのなら、その理屈も通るかもしれませんが、今回のようにオリジナルにほぼ忠実なコピー・リメイクになってるので、オリジナルを観た者は、どうしても比較してしまいますよ。作り手側がそんな観客の意識の制約を求める『野暮』を言うとは・・一体、何の為の50年後の『リメイク』なのか・・また一つ、リメイクのダメなお手本が出来たようです。
[映画館(邦画)] 3点(2010-10-14 04:22:03)(良:1票)
16.  悪人 《ネタバレ》 
原作は未読です。映画全体は冗長で、全編グジュグジュと煮え切らない様を延々見せられ、人物表現に多少、見られた陳腐さも気になり、最終的には『何だかなぁ・・』と複雑な印象になりました。まず『悪人』の妻夫木演ずる祐一の殺しの動機の真相は、どう見ても『元々悪いのは被害者の娘、佳乃。こうなるのも仕方がなかった』というような感じで、祐一のおばあさんを恐喝する業者をはじめ、被害者・佳乃の本来の相手の増尾のような『悪人』として描かれるキャラとはまるで違う一線を引いて『祐一は他とは違って悪人ではない』と見せてますが・・・でも祐一は佳乃の正気を失った行動に激情して殺害に走ったと言ってもやはり自分の意思で身勝手に殺したのだから、やっぱりどう同情的に表現しようとも彼もまた『悪人』なのです。フェアじゃないよな・・いいじゃない彼も元々『悪人だった』でその為の深津絵里演ずる光代がいる訳です。彼女の存在で彼は灰色の人生に潤いを与えられ変っていくと描写している訳なのにねぇ・・。でも光代が祐一を悪人呼ばわりする妹に対し『彼は悪人じゃない』と電話で言いますが、最終的に祐一に娘を殺されひどい心の傷を付けられた家族の姿を見て『理由はどうあれ、彼は世間的には悪人でしかない』と言うような感じで終わるのは何とか良かったと思います(色々な解釈の余地はありますけど)。あとはこの映画の仕組みは被害者と加害者とその家族の描写が主軸ですけど、特に樹木樹林のおばあちゃんのエピソードは何か繋がってないような浮いている感じがしましたね。樹木樹林の存在感で何か重点を置かれてる気がしますけど、実はあまり関係がなくね?と・・。そしてさらに気になったのはそれを追っかけるマスコミの描き方・・あれって『誰も守ってくれない』と同じで本来、事件に関係のない加害者の家族を執拗に追い詰めるようなマスコミの姿に閉口。しかも老いた普通のおばあちゃんに対して・・現実にあり得る?かと、こういう所はガッカリしますね。もちろんそれぞれの役者陣の演技は素晴らしいと思いましたし良かった所はありました。でも、諸々の散漫さと展開の冗長な感じがどうしても否めず作り手が強く伝えたいであろうテーマが薄ぼけてしまったような作品でした。
[映画館(邦画)] 5点(2010-09-26 16:34:03)(良:2票)
17.  十三人の刺客(2010) 《ネタバレ》 
オリジナルとはまた違った感じに仕上げていました。個人的には今風の下手な泣かせを入れたような家族描写などは敢えていれずに徹底的に凄惨な出来事として描き切ったのは正解かと思います。語り口も基本、単純です。刺客たちが使命に突き動かされる動機の大事な描写に関しては稲垣吾郎演ずる暴君の狂気の所業をこれでもかと描き、その残酷性に対する客観的怒りが感じれば十分に伝わると思うので、刺客側のダラダラとしたドラマは極力描いてなく、あっさり風味なのもいいです。敵側も暴君以外に市村正規のキャラだけに集中して描かれるので無駄な描写もなくスッキリしてると思いました。そして脇を固める役者陣も万全で多くを語らず、存在感で語る役者なので素晴らしい。そしてクライマックスの戦闘はド派手で凄惨、血みどろになり後半は刺客も相手も疲れきって型もクソもなく無様に這いずり回って殺しまくるという地獄絵図ですが、そこのアクションは見応えがあり見入ってしまいました。特に松方弘樹の殺陣はまさに鬼の如き凄まじさなのに美しい・・彼の殺陣が再び大スクリーンで観れたのは個人的な喜びでした。基本はとても面白く堪能しましたが・・不満は、あの伊勢谷友介が演じる山男、まぁ侍を客観視するキャラとか『七人の侍』の菊千代的な役割なのでしょう・・彼の様々なシーンは完全にこの物語では浮いていますがそれは悪い浮き方と感じました。『三池的』センスの行使キャラでもある訳ですが、そういうシーンも悪い意味で浮きまくり(そこが狙いかもしれませんが)・・とにかく上手い効果が出てるとは思いません。ラストの奴の終わらせ方も『はぁ?』という感じで余韻がおかしなものになってしまいました。あまり嬉しいキャラではなかったです。あと指摘したいのが、作戦はいかに刺客側が周到な計略をし、待ち伏せの場所まで敵を導かせるという面白さもあると思うのですが、今回は計略は基本、博打の運任せで大雑把と感じて、ちょっと頭脳戦的面白さが欠けているのは残念に思いました。それが合わさりクライマックスの大殺陣になったらさらなる痛快さも生まれていたと思い惜しいです。しかしこのご時世にここまで血みどろでド派手な時代劇アクションを大スクリーンで存分に堪能できたのはやっぱり快感でした。
[映画館(邦画)] 8点(2010-09-25 16:00:48)(良:3票)
18.  食堂かたつむり 《ネタバレ》 
会話式レビュー。A『とにかく映画全体は単調で、何となくいい感じ的な雰囲気で余白を埋めているけど実につまんなかった』B『早く終われと思いました』A『まず柴咲コウが演じる倫子さんが口が利けないという設定だけどさ、全体通して別に口が利けなくてはいけないという物語的な必然性がないじゃん』B『前半は心の中で声出して倫子はブタと会話してるので余計にそれを感じます』A『純朴そうな娘として描いているようだけど、久し振りに再会した人に行き成り店を建てる程の借金を頼む図々しい変な女という認識も拭えない』B『それで金を貸す男もすごいです』A『そして彼女が作る料理を食べたら何でそんなに奇跡が起きるか全く理由が示されないのもなぁ・・号泣したり、若返ったり、ラブラブになったりってねぇ・・ファンタジー的世界観とはいえ納得が行かないよ』B『それ以前に美味そうにも見えないですけどね、特にあのドロドロスープ』A『後は食堂の繁盛を嫉妬して満島ひかり演ずる元・同級生の女が料理に虫を入れたてたけど、何で虫を見せないのよ?どんだけの虫を入れたか分からないから行為の嫌悪さが全く伝わらないよ。しかも、その件に関して女が倫子に真相を告白したまま、決着は放ったらかしって・・はぁ?』B『ラストの結婚式で何食わぬ顔で虫入れた女が出席していて、びっくりしました』A『個人的に最大のびっくりは倫子の出生の秘密の件か・・』B『母親の処女懐妊ですね・・水鉄砲にたっぷり精子入れて・・馬鹿馬鹿しい』A『身勝手な母親は終盤で諸々の真意は分かるけど、別にそれが分かったからって母親のあの身勝手さの印象は変んないとか・・ああーキリがねー』B『後は何で母親がガンになって飼いブタを食わなくてはいけないのか・・』A『画面に向かって『はぁ?』と言ってしまったよ・・』B『もうこの辺にしましょう・・結局、まともに考えたらおかしな事を雰囲気で強引に丸め込めて、何となく流してしまう感じが私は不愉快でした』A『これ観て食堂かたつむりに行きたいと全く思わないよ。どいつもこいつも不気味すぎるわ!』
[DVD(邦画)] 1点(2010-09-20 23:59:21)(良:1票)
19.  ヒックとドラゴン 《ネタバレ》 
観ている間は小学生気分が甦ったのか、スクリーンに向けて『すげぇー』『危ない!』『うわぁどうなっちゃうんだよーヒック!』『頑張れトゥース!』『ああっお父さん・・(涙)』と心で叫んで終始ハラハラドキドキしてました。とにかく最高に楽しかったです。ヒックという少年は物づくりの才能はあるけど、軽口叩わ、弱っちくみんなからもバカにされるキャラクターだけどドラゴンのトゥースに出会ってから、自らの才能である創意工夫でトゥースを乗りこなすと同時に凶暴な生き物としか見られなかったドラゴンの本当の一面を知り、交流を深める過程は丹念に描かれてとても素晴らしい!ヒックがドラゴンの操り方を知るようになってからは今までバカにしていた連中もヒックに一目置いてこれまでの鬱憤が晴れたかのような楽しさはありますが、他の住民達は変らずドラゴンに対する敵意を持ち、複雑な思いのヒックをさりげなく描かれ、どこかこの先の展開の不穏さを感じさせる演出も見事です。トゥースも最初は爬虫類そのもののような目をしてましたが、ヒックとの交流が深まると目が丸くなり・・単純に可愛い・・他のドラゴンもケダモノとして扱われていたのにクライマックスではもう愛すべき生き物・・この変化にグッときます。ヒックの仲間達も実に無駄ないというかそれぞれのキャラの特性があるのでクライマックスの戦闘で上手く行かされ無駄がなく、ヒックもトゥースとの飛行で培われた創意工夫が見事に生かされて最高!そしてヒックとのお父さんと深刻な関係の決着はこれ以上ないというくらいの素晴らしい見せ方で決着!お父さんとトゥースとの海中での決死の対面はウルッときました。エンディングは最高にスッキリとしていてもう『面白かった!』と叫びたい気持ちでした。大スクリーンの3Dで観るのが必須です。
[映画館(吹替)] 9点(2010-09-19 16:28:04)
20.  カラフル(2010) 《ネタバレ》 
傑作だと思いました。非常に丹念に丁寧に作り上げられたキャラクターは完全に生きているかのような実在感があるので(現実の住人ではないプラプラでさえ)飽きさせません。特に数多く登場する食事のシーンは特筆で、その様子によって真と家族の関係が分かるくらい見事に描かれています。母親の愛情が全開に伝わるような美味しそうなハンバーグを口にもせず、口にしても無表情で全く美味そうに見えません、母親の不倫を許せない真の心そのものを言葉に表さず明確に伝えてます。(お菓子はパクパク食べますがあくまで『間食』としての役割のお菓子なので、本当の意味の『食事』ではないですね。)だからこそ彼が友達の早乙女君と美味しそうに肉まんやチキンを食べるシーンはグッとくる訳ですし、クライマックスともいえる家族の鍋の食卓の時は初めて母親の作った料理を感情豊かに美味しそうに真が食すシーンに心から感動しました。ああっ真は母親と和解へ大きな一歩み寄れたのかと(監督は完全な和解ではないと語ります)。早乙女君とのエピソードも秀逸でただ廃線となった都電の線路を巡ったり靴屋に行くだけですが、観てる私も清々しい気分になります。真が早乙女君のような友達とはしゃいで行動するのが楽しくなってきている過程が見ていてじんわり伝わり安堵します。色々な出来事を体験し真は自分の『過ち』に気付き自分を取り戻し人生を本当の意味で再スタートしますが、それが完全な『ハッピーエンド』とは見せず『普通』っぽく終わらせたのも素晴らしい。何気ないような淡々とした『日常』を丹念にアニメで描くとこんなにも魅力的に写るのかと発見がありました。だからといってこれが実写化になるとただの普通な映画に成り下がってしまうんでしょうね。とてもいい映画を観ました。
[映画館(邦画)] 9点(2010-08-29 16:18:31)(良:2票)
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