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プロフィール
コメント数 107
性別 男性
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1.  イーグル・アイ 《ネタバレ》 
ハイテク・ポリティカル・アクションというより、ほとんどホラーだ。アクションは派手なのだが、せわしなくて、迫力に欠ける。技術的には高度なのだろうが、懲りすぎて失敗している感がある。最近はこんなのが多い。昔映画館で観た「キングダム」のアクションは、似たような感じでも結構好きなのだが、映画館で観るとまた違うのか、自分の趣味の問題か、演出のスキルの問題かよくわからない。ストーリーは割と面白いのに、その点が残念だ。そう、何か暗いというか、悪い意味で真面目すぎる。似たようなテーマの「エネミー・オブ・アメリカ」は、やっぱりスピード感がウリのスコット弟に、スミスのコミカルな演技がマッチして面白かった。個人的に、本編よりプロローグの方が萌えたりする。アフガンの空では、今日も無人偵察機が飛び回っていることだろう。他でも書いたが、こういうテーマをちゃちゃっと映画にしちゃうところが、やっぱりハリウッドの凄いところではある。アメリカ国家の演奏で、爆弾が吹き飛ぶというのが、何とも強烈な皮肉だ。しかし何故ツアーバスが日本の会社なんだか?
[DVD(字幕)] 7点(2010-05-16 22:59:16)
2.  マイレージ、マイライフ 《ネタバレ》 
会社はリストラ宣告で荒稼ぎ。全米を飛び回り、モチベーションのプロとして講演までこなす一流のビジネス・パーソンが主人公という、まさしくサメがうようよするような弱肉強食の世界と、誰もが羨むような、スマートな勝ち組の人々(ちょっと汚れ仕事というのがまたいい)を描いているわけだが、どちらかと言うと静謐で、ヒューマニズム溢れるハートウォーミング・ムービーに仕上がっていると思いきや、ありがちなハッピーエンドを軽くくつがえし、あのラスト。なかなか一筋縄ではいかない監督らしい。「JUNO」は未見だが。主人公は元の黙阿弥か?いやいや。人間というのは、様々な経験をして少しずつ変わっていくわけで、いきなり180度変われるなんてのは、まさに映画くらいなものなのである。それに人生というのは、人間関係も仕事もそんなに自由に選べるわけではない。そう、やっぱり自分についても、いろいろと考えさせられる、というか身につまされるものがあるわけだ。クルーニー様とは、大分レベルが違うが。彼のようにカッコ良くて金があれば、別に家庭とかいらないんじゃないの、とも思うのだが。ナタリーちゃんの顎の肉が少し気になる。あれも監督の趣味か。
[映画館(字幕)] 9点(2010-05-16 22:57:42)
3.  ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 
何といっても、偽札造りの犯罪者という主人公の小悪党キャラがいい。ナチの収容所を出て、正装でカジノに飛び込み、美女と海岸でタンゴを踊る。実に粋である。敵のために偽札を造らなければ殺されるという極限状態。クールに抑制した演出と演技が、緊張感を高める。男たちの汗とか泥の匂いがまったくしな。ここまでスタイリッシュな収容所映画がかつてあっただろうか。と思いきや、解放され、銃を向ける同胞たちの、あまりにもみすぼらしい悲惨な姿。壁を貫通する弾丸に響き渡る悲鳴。敢えて見せないことで、恐怖を増幅させる演出が巧い。収容所の中に、極秘の偽札工場があるという二重構造が見事だ。そして収容所を出て、戦争の影など微塵も感じさせない瀟洒なカジノへ。何とも不思議というか、やるせないというか。やり場のない怒りを爆発させ、偽札を全部賭けにつぎ込む主人公が痛々しい。正義と悪、小悪と巨大な狂気、生と死、様々な対立軸が複雑に絡み合い、囚人たちと観る者をキリキリと締めつけてくる。ナチ収容所サヴァイバル・クライムサスペンスといったところか。新機軸だ。ナチの制服がまたカッコいい。不謹慎だが。
[映画館(字幕)] 9点(2010-05-16 22:48:53)(良:1票)
4.  9デイズ 《ネタバレ》 
アクション・コメディなので、そのつもりで見ないと肩透かしを食らう。観る前にそれがわからないというのは、宣伝に問題ありだ。てっきりシリアスなスパイ・ムービーだと思っていた。本国では、タッカーというだけで見当がつくのだろうか。シューマッカー監督だけあって、映像は奇麗です。東欧の景色が美しい。アクションもいい。特に銃撃戦の音がいい。プシュプシュ、キンキンと薬きょうの落ちる音がたまりません。妙に力入ってます。ホプキンスが「君を殺す」って言うと、どうしてもレクター博士を思い出す。かなり怖いです。しかしタッカーのコメディ・センスというのは、日本人にはどうも微妙なようで、笑えることは笑えるのだが、あの甲高い声にはどうにも慣れることができない。作品の雰囲気にマッチしてるんだか、浮いてるんだか判断しかねるところがある。そのミスマッチがコメディたる所以なのだろうが、やっぱりこの美しいロケーションで、このネタだと、もっとシリアスなストーリーでも良かったのではないかと思うわけだ。元々タッカーありきの企画なのか、紆余曲折を得てこうなったのか、まあ今となってはどうでもいいが。軽い。と、ここまで書いて投稿しようとしたところで、タッカーとロックを混同していたことに気付いた。まあいいや。面倒なのでこのまま投稿してます。
[DVD(字幕)] 7点(2010-04-10 23:36:23)
5.  インビクタス/負けざる者たち 《ネタバレ》 
政治ドラマとスポ根の合わせ技というのは、初めて観た気がする。過去の作品で何かあったか、取り敢えず思い出せない。「パニック・イン・スタジアム」は全然違うし。こういう政治と歴史とスポーツと人間ドラマが絡み合った、恐らくよりゴチャゴチャしているであろうノンフィクションを、誰にでもわかりやすくチャチャッと撮ってしまうのが、ハリウッドとイーストウッドの本当に凄いところだと思う。イーストウッドは、演出もストーリーの流れも本当にチャチャッとしているのだが、あざといくらいの手堅い演出で安心して観ることができる。マリオ族の踊りが怖い。試合前にあんなことできるのか?パンフによると、特例で認められているそうだ。しかし日本という国は、南アが舞台の作品でも、愛変わらずお笑い担当なのだということがよくわかった。ラグビー映画というものに、アメリカ人はどう反応したのだろうか。「マンデラの名もなき看守」に続けて観ると、時間軸がぴったり繋がって面白いと思う。マンデラの偉大さはわかるが、現状は滅茶苦茶なんだよね。ワールドカップできるのかな。それにしても、何故このタイミングでこれを撮ったのだろうか?
[映画館(字幕)] 8点(2010-04-10 23:19:25)
6.  キャピタリズム~マネーは踊る~ 《ネタバレ》 
最近このテの本ばかり読んでいるので、正直言ってあまり衝撃というものはなかったのだが、それでもいろいろと驚かされるわけだ。パイロットの給料の安いこと。年俸1万数千ドルで、ウィトレスのバイトをしているというのは信じ難い。JALなんかは一体どうなっていたのだろう。そういえばオリバー・ストーン監督の「ウォール街」でも、弱小航空会社の買収劇が、ストーリー上の重要なポイントになっていた。あれもレーガノミックス下の規制緩和によって成立しえた話なのであろう。少年院を民営化して、判事がその会社から賄賂を受け取り、未成年を微罪で放り込む。もう滅茶苦茶。そりゃバレる。日本でも、刑務所か何かが民営化していると聞くが大丈夫か。労働の元の平等をうたった共産主義も、その実態強固な階級社会であり、結局崩壊したわけだが、アメリカ型資本主義も、同じ轍を踏んでいるように思える。冒頭では、ローマ帝国の崩壊を米国の未来に見立てていた。著しく不均衡で不平等な社会というものが、活力を失い崩壊するのは、しごく当然といえる。遅かれ早かれ、いつかアメリカも滅びる。もちろん日本も。誰か日本版をやってくれないだろうか。
[映画館(字幕)] 9点(2010-03-07 02:15:56)
7.  戦場でワルツを 《ネタバレ》 
夜のシーンがいい。色のない世界をこれほどリアルに表現した絵やアニメは初めて見たような気がする。日本のアニメとは、やっぱり動きが違う。技術的なことには無知なのですが、妙なところにリアリティを追及して、逆にアニメ的に見えたりして、アニメ的に大胆なデフォルメをしてしまう日本人とは表現に対する感覚が違うのかなあ、とか思ったりしたのだがどうなんだろう。イスラエル版「地獄の黙示録」といったところだが、まさにイスラエル自体の状況が万年ベトナム的。もう何もかもが狂ってます。絵も、戦争も、人間も、音楽も、ファランヘ党も、イスラエルも、監督も。兵士がライフルでエアギター始めて、そのまま戦闘のダイジェストに突入。機関銃乱射しながらワルツを踊る。「戦車の中だと安心だった」。やっぱり戦場というのは感覚が麻痺してしまうのが怖いんですね。敵性国家に包囲されたシオニズム自体が、まさしくそういう状態。イスラエル映画界からこのような作品が生まれたというのは大変意義深いことだと思います。失われた記憶で引っ張っておいて、オチが「僕はそこにいた」だけでは物足りないような気もしますが、基本ドキュメンタリーだから仕方ないのでしょう。最後の実写は記憶を取り戻したという解釈でいいのかな?イスラエルが、あるいは世界が意識的記憶喪失になっているというメタファーのようにも思える。西岸では今も「入植」が続いているわけだが、その事実を知っている人はどのくらいいるのだろうか。
[映画館(字幕)] 10点(2010-01-06 01:52:56)
8.  ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ編 《ネタバレ》 
怒涛の展開だったPart1に比べると、さすがに少々ダレます。まあ2本続けて観るには、このくらいの方がいいのか。しかし作品としてはともかく、本人のやってることは相変わらず滅茶苦茶なわけです。脱獄、強盗、誘拐の末に行きついた先は、ジャーナリストの惨殺。民衆が彼に共感したのは、本人の意図かどうかはともかくとして、国家や社会が抱える矛盾を、その類まれなる行動力で明らかにしたからではないかと思う。まあそういう時代でもあったし。しかし結局つまらない自己顕示欲によって、身を滅ぼす結果となったわけだ。犯罪者の末路とは概してこういうものなのだろう。女の子を殺して逃げ回ってる、不細工な小男とは大分格が違うけど。「バーダー・マインホフ」と双子の作品という感じがするのだが、世間の関心はやっぱり「パブリック・エネミー」のようだ。そっち経由で観てくれる人が増えると嬉しいですね。欧州女優の綺麗さも共通している。特にシルヴィアのギャルっぷりが最高です。「私の犬が」って、耳を疑いました。素晴らしい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-12-11 01:26:29)
9.  ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編 《ネタバレ》 
ジャック・メスリーヌ。フランスでは有名らしいが、私はゴルゴ13で名前だけ知っている程度でした。本作は実にハードでガッツのあるクライム・ノワールであり、アルジェリアの亡霊に苛まれ、革命思想が吹き荒れた70年代のフランスを描いた社会派映画でもある。OASはフレデリック・フォーサイス原作「ジャッカルの日」でも有名ですが、同時代を描いている。戦時中の残虐行為が、彼をあらぬ方向へ導いたと示唆されているわけだが、ここまで凄まじい暴走ぶりだと、動機も心理も全く理解の範疇を越えている。劇中でも、裕福な家庭に育ち、威厳のない父親というところまでは描写されているのだが、果たしてそれだけで、どうしてああいう人間が出来上がるものか、どうにもわからない。この辺はボニー&クライドでも、誰でも似たようなものなのだが。暴走と言えば、カッセルがブルース・スプリングスティーンに見えて、気になって仕方がなかった。あとたまにジョン・レノン。あれは意識しているのか。刑務所襲撃のカオスっぷりが最高。ジェラール・ドパルディって、パンフ見るまでわからなかったな。バイオレンスのカタルシス。
[映画館(字幕)] 9点(2009-12-11 01:24:46)
10.  ココ・シャネル(2008) 《ネタバレ》 
何か英語喋ってるなあ、オドレイ老けたなあ、とか思ってたら、「シャネル」違いじゃん。シャーリー・マクレーンじゃん。もう一作まだ公開してないじゃん。何て紛らわしい。現在に回想シーンを混ぜる構成は、なかなか見事。演出もハリウッド的にわかりやすい。しかし、この辺は評価が分かれるかもしれない。なにせファッション映画なので、わかりやすさよりも、より格調高い芸術性を求める方も多いのではないだろうか。と思いきや、私の大好きな超絶スパイ・アクション「アサインメント」の監督さんであった。ちなみに脚本は、ヴィスコンティ映画で有名なベテランの方だそうで、流石に熟練のセリフ回しである。この辺はフランス版と見比べてみるのも一興かもしれないが、どうしようかな。1本観れば充分という感じだが。シャネルと言えども成功するまでは、挫折の繰り返しだった。父親の不在により、自立心を養われたのだろうが、二人の男たちの存在が、彼女の成功に大きく寄与しているのも事実。仕事と結婚の相克は、やっぱり女性の永遠のテーマなんですね。ファッションは人生を変え、時代をも変える。ただブランドもん着てればいいというものではないのだ。しかし先日、日テレでドキュメンタリーを見てしまったので、ネタばれしてるのがイタイ。いやいや、その番組がなければ、多分観ようとは思わなかったろうし、難しいところだ。マクラーレンがすっかり老人でびっくりした。実に優雅でエレガントな作品。男性も、ファッションに興味のない人も、観て損はない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-28 01:34:50)
11.  バーダー・マインホフ 理想の果てに 《ネタバレ》 
ヌーディストビーチで、小さな女の子たちが駆け回っているシーンから始まる。これ海外で公開できたのか。その後もおっぱいの連続。しかも女優さんたちが皆揃いも揃って美しい。それはともかく、全編通じて異様な熱気、ハイテンションで圧倒されっ放しだ。現在では、彼らが語る革命理論も、空虚でうすら寒く響くが、当時は皆本気で信じていたのであろう。反体制派のアウトローに民衆が魅かれるのは、いつの時代も一緒である。まさに現代版「ボニー&クライド」。メンバーが逮捕されるシーンはもろに「明日に向かって撃て」だ。しかしヨルダンでは軍事訓練を投げ出し、ムスリムの若者たちの前でヌードになる無神経さ。共産主義や革命といったものは、彼らにとっては、暴れるのにいい理由を与えただけなのか。時代が違えば、嬉々としてユダヤ人をいたぶったりしていたのか。あるいは純粋さゆえの暴走なのか。連合赤軍などは、集団心理が何となくエスカレートしたような、何となく日本的なところがあるが、本作の場合は、何でもとことんやる、ゲルマン気質が作用しているような気もする。オウムの事件も記憶に新しい。コミュニズム、宗教ときて、次は何か。ネット右翼はあえなく玉砕したし。テロをやれとは言わないが、今の若者たちも、もう少しはちゃけてもいいのではないかと思う。とかいろいろと考えさせられます。ちょっと実写を使いすぎのような気もするが、とにかく凄い映画です。
[映画館(字幕)] 10点(2009-09-03 22:06:50)
12.  ソードフィッシュ 《ネタバレ》 
あれだけ派手に人殺しといて、愛国心がどうのとぶち上げて、犯人がイスラエル人というオチ。素敵すぎます。トラボルタが普通の悪役みたく死んでしまったら、企画通らなかっただろうね。ユダヤ人激怒するだろうね。あるいは上からの圧力で変更したのかもね。2001年公開ということは、テロの前に完成してたのかな。そう、本作はまさに単なるハイテク・クライム・ムービーの域に収まらない、「テロとの戦い」について問いかけた野心作なのである。確かにミスダイレクションだ。ただ単にハイテク版の「レザボア・ドッグス」と「ユージュアル・サスペクツ」を狙って外したような気もするが。トラボルタにわざわざ大天使の名前つけてるのも何だか嫌な感じだ。しかし「ゴッド・アーミー」を観れば妙に納得できるかもしれません。いずれにしてもアメリカ人がこういう姿勢では、テロとの戦いは永遠に終わらないに違いない。監督の意図かどうか知らないが。意外な怪作。さて「ミュンヘン」でも観ようかな。
[DVD(字幕)] 8点(2009-06-19 00:10:04)
13.  天使と悪魔 《ネタバレ》 
前作よりもかなり派手で刺激的になった印象。群衆スペクタクル、血塗れの殺戮シーン、大爆発に大炎上と、謎解きのプロセスはさっぱりであったが、怒涛の展開には圧倒される。時間を区切ったのが勝因だろう。広場の群衆シーンは、現地で撮影したのだろうか。バチカンであれだけのスケールの撮影をしたとはたいしたものだ。宗教に熱狂する人々の姿がバックグラウンドとして、物語のボルテージアップに役だっているわけだが、やっぱりいろいろと考えてしまうわけだ。米国の状況とか、日本でもあんな団体とか、こんな事件とかいろいろあるし(具体的には何も言うまい)。動機がわかりにくいのと、結局イルミナティの存在がフェイクだったというのが少々残念なところだ。反物質とかについては何もわからない。勉強しよう。しかし元空軍のヘリコプター乗りの司祭だか何だかというのが、凄いご都合主義的だが、計画変更がなければ、どういうオチにするつもりだったのだろうか。教授がプールで泳いでるシーンで「ピース・メーカー」を思い出した。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-19 00:07:22)
14.  ザ・バンク -堕ちた巨像- 《ネタバレ》 
銀行を悪役にしたサスペンスなわけだが、捜査対象は武器売買で、殺し屋がわんさかと群がり、グッゲンハイム美術館を半壊させるという派手さ。銀行がここまで過激な悪役を演じるというのも、時代の流れというヤツか。いやいや、その点に異存はないのだが、ここまで悪辣だと、昨今の金融危機と関係があるんだかないんだか。武器売買に要人暗殺とか、もうモラルの欠如とかいうレベルではないからね。パンフによると、企画は6年前から存在しており、実際の事件をモデルにしているという。まあ我が国でも銀行と地上げヤクザの関係とかあるし、別に目新しいことではないのだろう。そもそも原題が「The International」で、銀行を中心とした金融というシステムを介した、国際的な陰謀といったニュアンスだと思うのだが、すっかり金融危機に便乗している。その割に日本での興収はイマイチだな、きっと。一転して敵の冴えない殺し屋と一緒になって戦うという展開に超萌えます。ここだけのために観る価値があると思う。善と悪、表と裏が荒々しく交錯する、作品と時代を象徴するようなシーンだ。主人公の名前も「ライ麦畑」の作者みたいでいい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-22 22:47:51)
15.  男たちの大和 YAMATO 《ネタバレ》 
監修のクレジットに、悪名高い故瀬島龍三氏の名前がありますが、彼は必要だったのでしょうか。大和の関係者はどう思うでしょうね?さて、難点はいろいろある。人物紹介と状況説明をテロップとナレーションに頼るのはいかがなものか。照明技術が古い。50年代のハリウッドみたい。冒頭のフリゲート艦は必要だったのか。海自が無理やり押し込んだっぽい。大和のスペックと戦闘シーンの説明が不足。沈没があっけない。松山よ、何故蒼井を押し倒さない?一茂のスタンスが謎。意外と元気な反町の最期が謎。ラストがオーバーアクト。脚本も監督の担当だが、明らかに練り込み不足。脚本家がいないのか。その他にもいろいろあるが、まあ邦画としては頑張った方でしょう。最初から最後まで涙腺がうるみっぱなしでした。これは原作の力か。戦闘シーンは血飛沫使いすぎだが、凄い迫力で、CGもあまり違和感がなかった。コンセプトは「タイタニック」+「プライベート・ライアン」といったところか。BHDのレビューで私が書いたとおりになった。しかし角川と東映が総力を挙げても、やっぱりハリウッドには叶わないのか。そういう意味でも、実に大和的な作品である。
[DVD(邦画)] 7点(2009-05-11 01:55:07)
16.  ダ・ヴィンチ・コード 《ネタバレ》 
あれだけ長い原作を、よくここまでコンパクトにまとめたという点は感心する。本来トンデモ系のネタだと思うのだが、それにしても随分とシリアスで重厚な雰囲気に仕上げたものだ。映像化より原作の方が、お気楽に読める歴史サスペンスというのも珍しい。それにしても暗い。ひたすら暗い。画面が暗い。キャラも暗い。チェイスもののスリルにも、秘密教団的なおどろおどろしさにも欠ける。本来キリスト教がひっくり返るような危険なネタなわけだが、どうもカルトやマニアじみた連中がごそごそ動いているだけで、時間的にも空間的にもスケール感というものがまるでない。これだけ展開が速いと、原作未読だとついていけないし、既読者は物足りないだろう。まあ金もかかってるし、画も綺麗だし、トトゥも好みだし(ラストがいい)、ネタも嫌いじゃないので、割と観れるのだが、あくまでブームの一構成要素の域を出ない映像化作品という感じ。CBSドキュメントでは、詐欺師の作り出した妄想とぶった切られていましたね。やはりそれが現実か。夢もロマンもあったもんじゃないな。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-11 00:03:02)
17.  フィクサー(2007) 《ネタバレ》 
ストーリーのブツ切りに不親切な演出。またもやソダーバーグ一派か。ぼおっと見ていたせいか、馬のエピソードは、パンフを読むまで気づかなかった。フィクサーというのは、悪徳弁護士の意味もあるらしいが、普通の日本語の感覚からすると違和感がある。かといって原題だといまいちだし、最近こんなのばかりだ。本作で凄いのはやっぱりティルダ・スウィントンだろう。「フツー」のキャリア・ウーマンが殺人にまで手を出してしまうというのも恐ろしいが、それ以上に脇の下に汗じわーっとか、腹の肉ぶよっとか、もう正視に耐えない衝撃映像の数々には戦慄を覚える。何百億ドルもの訴訟を一人で仕切るなど、人間の限界を超えているというものだ。リーマンの鬱病なんてレベルじゃない。さすがアメリカ。殺人シーンも妙に機械的で怖いし、誰もが何気なく極限状態に陥っている様に、観ているこちらの神経までギリギリと締め付けられるようだ。正義を貫き勝利を手にしても、ハッピーエンドにならないのがいい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:59:21)
18.  大いなる陰謀 《ネタバレ》 
現在のアメリカが抱えるジレンマや分裂状態を、ここまで凝縮してわかりやすくコンパクトに仕上げた脚本はお見事。原題のエピソードだが、かつて我が国の軍隊も同じようなことを言われたことがある。「末端の兵士たちは優秀だが、指揮官がダメだ」と。この辺は現代でもあまり変わっていないのだろう。わが国でも十分通用するテーマだ。しかし三人の大学生のような優秀な連中ならともかく、偏った連中や凡庸な愚民ども(もちろん私も含めて)が下手に政治づいたりしても、またあさっての方向にいってしまうので、難しいところではある。まあ本作をわざわざ観たいと思うような人なら、そんな心配はないのでしょう。その存在を感じさせないのが最も理想的な政治と言ったのは誰であったか。狂気すら漂うトムの演技は圧巻。レッドフォードは男性ホルモン不足なのか、おばちゃんみたいだ。メリルはまあいつも通り。「第二次大戦は五年で終わった」というセリフがあったが、当時は従軍記者たちが最前線から命がけで記事を配信していたのだ。これも「特殊部隊は足が速い」云々というセリフの通り、アフガンの雪山に特殊部隊のヘリボーンでは、確かに取材もできないだろう。現地で何が起きているのか、結局のところ誰にもわからないというのが恐ろしい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:57:38)
19.  アメリカを売った男 《ネタバレ》 
アメリカでは、カソリック教会の神父が、長年にわたって子供たちに性的虐待を繰り返していたということで、以前から問題になっている。しかも一人や二人ではなく、全米の教会において。魔女狩りや異端審問というのもあるし、カソリックの世界というのは元々そういう倒錯趣味を内包しているのであろうか。そういえば福田和也氏が雑誌で「カソリックは人間の中に悪魔と神が両方いる、というのが基本的なコンセプト。告解すればOKって」というようなことを言っていた。2ヶ月という期間設定、時間にして2時間弱で、スパイの複雑怪奇な心的内面をよく描いていたと思う。脚本もいいが、クリス・クーパーさんの不気味な演技が素晴らしい。彼が勤務中に見てたゼタ子の映画は「エントラップメント」かな?そっちも騙し騙されって内容だった。しかし実話とはいえ、新米の若造がよくここまでやったなと思う。セクハラ捜査のつもりが、50人の捜査員に監視されていたとは、きっと本人も驚いただろう。二人の壮絶な心理戦は最高にスリリングだ。まだPCが普及し出した頃の話で、何バイトとかWANとか言っているのも、その分野に詳しい人には、きっと面白いことだろう。ラストも最高。ローラ・リニーさんもいい。国立公文書館というのだけはよくわからなかったが。
[映画館(字幕)] 9点(2008-03-27 04:02:51)
20.  ティアーズ・オブ・ザ・サン 《ネタバレ》 
今観ると、アフリカもののはしりのような気もする。しかし名作の仲間入りはできなかった。問題は戦争映画なのか、感動作なのか、いまいち方向性が定まっていないことであろう。軽い演出の戦闘シーンに、重苦しい音楽のせいか、戦争娯楽作としてのカタルシスはあまり感じないし、かといってヒューマニズム感動作にするには、キャラもストーリーも掘り下げが足りない。何と言っても、あの展開でブルースが最後に生き残るのが一番まずい。国境前で敵を引き付けるとかして、モニカの腕の中で死ぬとかしないといけない。最後に子供が「Freedom」とか叫んでも、興ざめも甚だしい。普通にダイ・ハードをやった方が良かったのではないだろうか。この監督さんは妙なところで生真面目なのか、突き抜けたところがないので、アクションではなく、人間ドラマとかをやった方がいいのではないだろうか。
[DVD(字幕)] 6点(2008-01-12 02:28:32)
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