1. 裏窓(1954)
《ネタバレ》 場面の(ほぼ)全てをジェフが掌握する映画と言えばよいのか。そう、物語はジェフの視線の先で行われる。つまり、そこには常にジェフという第三項が介入しているということになるのである。バレリーナの卵が踊り、未婚女性が幻の彼と杯を交わし、演奏家がピアノを弾き鳴らすその先には常にジェフがいる。このようにして、ヒッチコックは「私とあなた」、「敵と味方」、「善と悪」といった、二項関係で終始する対決の図式(西部劇、アクション・・・etc)を抜け出して、第三者、第三項的な映画を創出した。興味深いのは、主人公であるジェフが物語を動かす重大な役目を担っていると思いきや、結局のところアパートの住人が織り成す物語を覗き見る「観客」でしかない、とるにたらぬ存在だということである。つまり私達が「映画をみてかれこれ思惟する」ようにジェフは「窓辺の向こうの出来事を覗き、事件の真相を巡って相談している」のである。いやむしろこういった方がよい。ジェフは、私達見る側と完全に同化している、ジェフは私であり、私は窓の向こうで起こることをこそこそ見ている、と。だからこそ、クライマックスのシーン、犯罪者と思しき大男がジェフの部屋を突然入ってきたとき、観客は自分の部屋に入られたかのような新鮮な驚きを覚えるのだ。 [DVD(字幕)] 10点(2006-07-17 14:44:38) |
2. ミリオンダラー・ベイビー
《ネタバレ》 映画にタブーが存在するならば、それはおそらく性か死の問題であろう。イーストウッドはまさに死の問題を扱い、それをシリアスに、しかしながら至極現実的に描いた。ただそれだけである。どうやら人はホラーなどより、現実の負の一面を見せ付けられたほうが遥かに衝撃で、暗いと重いと嫌悪をあらわにするようである。しかしこの映画は暗いのではなく現実の一部を切り取った映画にすぎない。 重要なのは、イーストウッドが感動的なハッピーエンドよりも、目の前の現実に向き合うほうに自らの映画的価値を置いているということ。死んでも蘇生するような非現実的世界を描くことよりも、終末期医療に一つの現実的な答えを(映画的特権を用いて)出す方がよっぽど難しいということである。以上のことを把握しなければ、本作は前半の成功劇に目を奪われ、後半部をただ暗いと斬って捨てるだけだろう。 個人的には、映画が娯楽性だけで秤量されるべきものならば、映画はなんとつまらないものだろうと思う。イーストウッドの、娯楽性を抑えてでも表現したかったもの、そこにこそ映画的価値が置かれてもいいのではないだろうかと思う次第である。 [DVD(字幕)] 9点(2006-12-14 17:43:59)(良:1票) |
3. イノセンス
前作と同様、ここにおいても主題となるのは主体性の問題である。しかしこちらの場合、主体性の問題を紡ぐツールとして「人形」が登場している。これにより主体性の問題を、異なるアプローチにより問いなおしている。つまり、身体のほぼ全てを義体化してしまったバトーと、「人形」を差異化するものはなにか? なによりも、集団の海(ネット)と同化させた素子(人形)と、バトー(主体的なもの)のコントラスト、そしてバトーに対し「今の私には葛藤はないわ」と言う素子の姿が非常に印象的である。 そこには自己の存在の希薄に対する憂いは微塵も存在せず、主体なき自分を楽しんでいるようである。それは「自分をしっかり持つことが大事」「私は何のために生まれてきたの?」と自らの主体性を問い続ける人々に対してのアンチテーゼに聞こえてくるのである。 [DVD(邦画)] 9点(2006-07-13 21:59:17) |
4. ロスト・イン・トランスレーション
外国人の視点からみた日本というものは、これまで映画化されたものでは、少なくとも私がみた中では、どれも首をかしげるようなものばかり、というのが率直な感想でした。というのも、いわゆる日本のよいところ(具体的に言うと話がズレそうなので割愛しますが)というのが描写されていない、のではなく、反対のよくないところがおよそ的外れ、行き届いてないこと。このことの方が、日本をロケーションする外国人の浅はかさを私に映し出すものでした。 ロストイントランスレーションは、この辺が非常に上手いと思いました。監督・脚本を手がけたソフィアコッポラの東京のイメージ、とりわけよくないところの描写が私が思い描く東京にかなり合致したものでした(こんなことを言うと愛国者ではないなと言及されてしまいそうですが)。おそらくこの映画を御覧になった日本人の方の多くは、若干の嫌悪感を抱くかも。たしかに藤井隆はないですね。でも私のようなチャキチャキの日本人にもかかわらず、全編通して痛快で仕方がなかった、という方も少なからずいらっしゃると思います。この辺が分かれどころで面白いですね。 この作品はマイブラッディバレンタインのケヴィンシールズが楽曲を提供してます。他にもエール、ジーザスアンドメリーチェイン、デスインヴェガス、フェニックス、ハッピーエンドなどなど(カラオケで歌ってる曲はおそらくロキシーミュジック)ヨーロッパの、特に英国のロックファンにはたまらない曲のオンパレードです。 エンディングのジザメリ、ケヴィン、ハッピーエンドのつなぎもいいですね。個人的にはケヴィンに曲を作らせただけでも賞賛の気持ちで一杯っス。 9点(2004-12-11 02:00:24) |
5. アマデウス
《ネタバレ》 コンスタンツェという女性が「悪妻」で知られることで有名ですが、この作品ひとつに絞れば、周囲の「悪妻」扱いには疑問の念が生じます。彼女はお金が底を尽き始めてからというもの、モーツァルトの仕事内容に言及する場面が度々ありましたが、それは決して闇雲なものではありません。娯楽性を重んじ、芸術性を軽んじる大衆オペラへの彼の奔走を、金銭的側面からでなく、あくまでも音楽的側面から批判したのです。むしろお金に対する執着で見境を失っていたのはモーツァルトの方、一升瓶片手に、曲作りばかりに専念し、それ以外を全て犠牲にしておきながら、彼女は涙を流しながら彼の身を案じてました。それは、彼の有り余る才能を認知していたからであり、唯一の彼の理解者だからこそ成せたことだと思うんですが・・・。夫の浮気癖に何度も頭を悩ませ、四六時中聞き飽きたユーモアに付き合い、それでも彼を愛し、おまけにおっぱいまで馬鹿でかいとくれば、こんな彼女のど!こ!を!非難しませう!! 9点(2004-05-06 01:07:58)(笑:3票) (良:2票) |
6. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3
2より内容的にも、スケール的にも数段上でしょう。ちなみにビフの連れの中に、二ードルスという刈り上げの男性が出てきます。この人は後のレッドホットチリペッパーというUSきってのバンドのベーシストという情報をある筋から入手いたしました。これは本当なんでしょうか?3ではニードルスという名前が字幕に出るため、顔も拝見できたのですが、いまいちピンとこないというか、キャラが違います。 9点(2004-02-10 11:24:49) |
7. 戦場にかける橋
大佐はオビワンだったのですね。まったくそれとは知らず、ただただ、彼の好演に見惚れてました 9点(2004-02-09 17:10:15) |
8. バック・トゥ・ザ・フューチャー
なんだかんだとこの孤高の傑作シリーズの評価をつけ忘れていた。奇想天外な発想に客をしびれさせる展開はさすがである。幾度と無く再放映されているという事実は、現在に至っても全く色褪せていないという確たる証拠であろう。ただ、こういった典型的起承転結な作品は、次はこうなるであろうというおおよその憶測ができてしまうため、少々の飽きは否めない。 9点(2004-02-08 23:30:37) |
9. サイダーハウス・ルール
トビーマグワイアは、なんかかっこいいですね。母性本能をくすぐるというか、親しみが持てるキャラクターです。かと思えば手術のシーンのような緊張感のある役もこなせます。役者のそういったギャップを魅せられるということでも名俳優であるかの判断材料になります。 9点(2004-02-06 01:37:41) |
10. イル・ポスティーノ
いやーいい映画っすわ。哀愁 9点(2003-11-24 15:11:40) |
11. キル・ビル Vol.1(日本版)
クエンティーノはなぜこんなにも奇抜に作れるんだろうか?久々に新鮮な映画みたわ~ 9点(2003-11-24 15:00:33) |
12. レナードの朝
あいやーいいです。 9点(2003-11-16 19:23:14) |
13. 遠い空の向こうに
青春映画として不動の地位を獲得した本作。これほど夢に満ち溢れた実話映画はそうそうないぞ~ 9点(2003-11-02 02:29:46) |
14. スター・ウォーズ/帝国の逆襲
二作目の方がいい感じ。ってかあんま内容覚えてない。 9点(2003-11-01 13:36:34) |
15. スター・ウォーズ/ジェダイの復讐
ラスト作が一番よかったんだけどなあ。老けすぎですけどね 9点(2003-11-01 13:33:52) |
16. スター・ウォーズ
SF映画ブームの火付け映画。すばらしい!!! 9点(2003-11-01 13:27:27) |
17. ショーシャンクの空に
不条理な状況に追い込まれてもなお足掻くことをやめず、突破口を見出す姿は美しい [映画館(字幕)] 9点(2003-11-01 13:11:52) |
18. シャイニング(1980)
妻のキャスティングには笑わせてもらいました。彼女がニコルソン役で出てたら、キューブリック色なんてかき消すくらいのホラーになっていたでしょうに・・・ 9点(2003-10-31 16:26:59) |
19. 告発
恐怖、怨恨、絶望・・・。映画全体は負の感情に満ち満ち、反動的な力によって支配されている。対抗するは、そのような絶望の最中においてもあきらめずに、最後まで抵抗する主人公のひたむきな姿である。絶対的支配に抵抗するアウトローと呼ばれる者に、ある種の理想像を見出すことが多々あるように、私達視聴者は主人公に対し、絶対的な者からの離脱を要請し、それを成し遂げる主人公から感動を享受し、賛美を贈るのである。この映画をみて、感動したり、面白いと思ったりするのはこうした処に拠っているのではないだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2003-06-26 19:59:06)(良:1票) |
20. 海辺の家
《ネタバレ》 主人公であるジョージにとって「家」とは、自分自身を映し出す鏡なのだろう。その「家」とは、台所とトイレの区別がない不法な家であり、父親への記憶を想起せずにはいられない忌々しさの象徴であり、その忌々しさの他方で、愛情という相反した感情が同居する家なのだと思う。彼はそのような記憶が宿る家そのものを壊したかった。でも自身の余命があと4ヶ月、おまけに会社まで解雇される、いよいよな状況に立たされるまで踏み切ることができなかった。もどかしい話だけど、自分自身の象徴を壊すこと、自分にとって普遍的な何かを壊すことって、状況がよほど切迫しない限り実はできないことなのかも。そういう意味で、私は本作の肝は、後半の家を立てることより、むしろ壊すことにあると感じた。 [DVD(字幕)] 8点(2008-06-22 12:53:10) |