1. ナイト・オン・ザ・プラネット
登場人物は皆やさしい。終わってはじめに出てきた言葉がこれだ。初めのロサンゼルスでの話で、若いタクシードライバーの女、そして役者の仲介をしている女性が出てくる。初めは若い女の荒い振る舞いや暴言に辟易していたのに、会話を進めていくうちに女性の目は暖かい視線へと変わり、そして受け入れる。若い女の全てを受け入れてるわけではない、しかしその存在を認めたのだ。観ている僕らと、ジャームッシュの、視線は交わり繫がり、存在する人間を受容する。その他笑いもあり、涙もありで、あきさせない力強さは映画への興味を釘付けにする。ああ、ええわ、ジャームッシュ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-07-20 19:11:45) |
2. ベルリン・天使の詩
哲学的だとか、詩的だとかは感じなかった。台詞に詩を使ってはいるものの、ストレートで素直なものばかりであるとおもう。メタを軸にした映画だとみて考えることもできる。がしかし、ラストの男と女の対話のシーンから僕が率直に受け取った、「得たいの知れない力強さ」に、何かあるような気がするし、あると思う。言葉には出来ないが、女のアップでの台詞に心動かされるものがあった。「決断」、「必然」、あと「物語」であったり、この言葉と僕が感じた感覚とは、何かリンクする気がするし、僕を思考させる。この映画は決して難解ではないと思います。むしろシンプル。ゆえに退屈と感じるのかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2005-04-10 10:36:56) |
3. タイムレスメロディ
《ネタバレ》 みんなこの映画をみてくれー。素晴らしいぜ。この映画、「イントロダクション」「スクラッチ」「タイムレスメロディ」、と三部構成になってて、このことでストーリとしては少しわかりにくくなっとるかもしれんが、観客を拒絶するまでに難解だなんてことはなくて、映画にいい締りを与えてておもしろいくらいだ。とにかく人物の機微の描き方がいい。ストーリとしてはタルタルでおもんないという人がいるかもしらんが、見るべきところは人物で、1シーンで人物の関係性、人物像を観客に想像させてしまうというのは、うまいとしかいえません。ふわふわしてる奴らばっかでてきます。自分の居心地の良い、または 居心地が良いとは決して思くてどこか値に足がついていない感じを持っているが、差し当たり行くべきところ、行きたいところを持っていないので、そこに留まることを容認するしかない、というような奴ら。彼らの間での人間関係も同じようなもので、決定的に自分から行動することを避けていて、ある程度の距離を保っている。自らの領域を出ようとはしていない。映画としてはこれを否定、肯定のどちらの態度もしめしてはいないと感じた。(なんとなく)しかし三部「タイムレスメロディ」での三人での船の一時をあれだけ美しく描いていることを映画の一つのメッセージと取る。美しすぎる。彼らの表情があまりにも楽しそうで、命に溢れていて、僕はそれにすがりつきたくなった。この感情はなんであろうかと考えてみた。そのシーンの前で登場人物である男が突然死ぬのであるが、それを追憶してよくある感傷的な気持ちになっていたのかというとそうではなくて、死んでいなくてもこのシーンは感動したのだとおもう。過去に対しての郷愁であったり、想い、であるの同時に、未来に対して説得力をもったベクトルとして、われわれに訴えかけてくれるような気がする。次作波は「この」部分がないから僕は辛くなってもう一度観ようとは思うわないのですが、タイムレスメロディは船のシーンを リピートで繰り返しみてしまうのです。 [DVD(字幕)] 9点(2005-04-09 06:07:58) |
4. 青春デンデケデケデケ
大林節はあまり受け付けない方なのだが、それを差し引いてもおもしろかった。ラストまで笑いあり、涙ありと、勢いよく展開していくのが、見ていて爽快だった。時代設定が自分の青春時代よりもだいぶ古いわけだが、すんなりと感情移入でき、やはりあの年代の感覚というのは共通しているのだと改めて実感した。構成も抜群であったし、ペーソスもうまく利いていて、エンドロールでは心動かされた。やはり、小説にしろ映画にしろ「あの感覚」こそ醍醐味であろうかと思う。 あ・・・あと演奏シーンはやはり同録でやって欲しかった、映画も心も高まっているところなのに、クールダウンしてしまいそうになった。何とも勿体無かった。 8点(2005-03-03 06:25:24) |
5. 幻の光
《ネタバレ》 宮本輝のファンである僕が一番はじめて触れたのが、幻の光だった。女の独白によって語られる物語に人生の哀歓と、賛歌を感じたのを覚えている。さて映画だが、原作にほとんど忠実に作られている。台詞もそのまま使われているのではないだろうか。しかし、見終わった感想として、期待しすぎたからだろうか、物足りない印象があったのは間違いない。整った美しい画の中にさらりと感情を描くのは、是枝監督のリアリズムであるのだと思うが、果たして小説を読んだことのない人に、伝わるのだろうか、疑問である。原作を知っているが故の感想なのかもしれない。是枝監督にとっての「幻の光」であると考えれば、感情表現をぎりぎりまでに抑えて、富山の風景と、人物の何気ない会話、動作と、丁寧に愛情を込めてつくられているこの作品は、すばらしい映画であるのかもしれない。 ただ僕が感動したのは、愛していた男との埋まることのない距離を必死に埋めようとする女の悲しい独白であり、原作者宮本輝の人間観であったので、やや物足りない。 6点(2005-02-27 04:37:20) |
6. 沙羅双樹
映画のかたちとして、何か問題提起をして、映画の虚構の中で何らかの形で昇華する、といったものがこれまでたくさん作られてきた。登場人物が提起に対する行動を担っているわけだが、あくまで虚構の中の夢芝居と言いたくなるような、いわゆるデキレースを見せているようなものがあるのも確かである。さて、この映画だがそういった型にはまった映画ではない。しかしながら前置きを入れたのは、この映画もそういった類のひとつに数えられると感じるであります。登場人物はそれぞれ負の部分を抱えて生きています。これを問題提起とするとき、何を持って、映画の答えと考えるとき、僕が思うに、祭りのシーン。彼らはただ踊っているだけである。えんえん5分間くらい雨に打たれても、むしろそれを歓迎しているように躍動している。そして映画は終わる。僕の解釈だが河瀬監督は、人間の業に対して、僕ら人間の解決とは何ぞやと考えたときに、純粋な人間のエネルギーへ絶対的な信頼だと考えているのはないでしょうか。彼らが自らの心と向き合い、そして理解し、己を知る、人間を知ることこそが答えだと考えているのではないでしょうか。長々駄文すみません。感じたことを連ねてみました。 9点(2005-01-09 08:25:50)(良:1票) |
7. 珈琲時光
《ネタバレ》 淡々とした物語は、観る人によっては、消化不良な印象もあるだろう。台詞の少ない登場人物に退屈を感じてしまうかもしれない。しかし僕はこの映画は素晴らしいと思う。ラストシーン、ホームに陽子と肇、去っていく電車、そして流れ出す音楽、これには震えた。妊娠してシングルマザーで生きていくことを決めた陽子、その陽子に思いを寄せるも、打ち明けられず、ただ見守る肇、二人のおもいが確実に時間の流れとともに変化し、成長し、頼りないながらも未来へと進んでいく、その刹那をこのラストのシーンで感ずることが出来た。丁寧にとらえている東京の風景は、監督の愛情に満ちていて、懐かしさを感じさせるものである。小林稔侍さんの演技も良かった。台詞が少ないながらも、娘との微妙な距離関係をうまく演じていた。この映画は決して古臭くない。これから目指すべき作品だと思う。 9点(2004-10-11 23:39:26)(良:1票) |
8. 約束 ラ・プロミッセ
マーティがじいさんに魅かれた理由がいまいち弱いような気がした。じいさんと相部屋に至るまでの展開がやや強引だったきがする。ラスト、マーティとじいさんは「約束」をするわけだが、マーティ病気の背景がいまいち分からないし、危険なことだというのは、医師の言葉から知れるのだが、いまいち死の緊迫感が伝わらなかったということから、ラストは盛り上がりにかけたような印象だった。それでも二人の関係の雰囲気から察することが出来る、温かい空気で十分っちゃ十分感動できる。もう少し尺をのばして撮ったら、重厚なものになったと感じた。 7点(2004-08-27 20:40:56) |
9. リリイ・シュシュのすべて
《ネタバレ》 圧倒的な映像の鮮やかさの前に、精神の揺さぶりを感じた。少年の心と対比するような、田園の緑には、病みつきなる美しさがある。この映画が他の同じ題材、素材を扱った映画と一線を画すところは、やはり客観性にあると思う。すべての人物を等価に扱っていて、こういうテーマで陥りやすい、安易な押し付けがましい、メッセージを排している。監督は、あくまで少年たちの、内面世界を画くことに徹している。鬱屈とした彼らの叫びを、青臭い心のフィルターを通して、表現することに成功している。映画中に散らばったシーンの断片が繋がるとき、映画と僕との距離は確かに狭まり、同時に溶け込んでいくような感動を覚えた。篠田昇の映像美は、痛々しいほどの叫びとの、対比なのか、それとも、彼らの心の奥底に、確かに鼓動している小宇宙の象徴なのか。ラストのシーンから大きな希望を感じるのは僕だけではないはずだ。閉塞された世界から未来への成長を感じる。どんな青春映画より、感情移入できたし、これは傑作だと思う。 9点(2004-08-27 20:23:50)(笑:1票) (良:1票) |
10. ロスト・イン・トランスレーション
お互いに分かり合っているのか、いないのか、悲しいかな、何となくで、生活は出来てしまう。何と適当に生きていることだろうか。本当に伝わったかどうかより、自分自身で伝わったと思い込むことによって、しばしば私たちは、納得しがちである。コミュニケーションが取れない異国での、男女の交流。微妙なタッチで二人の関係は描かれている。恋愛映画だと私は感じた。セックスも愛の言葉もない。でも見ている側は感じることが出来る。二人の微妙なしぐさや会話の中には、心の交流が見て取れるのだ。「愛してる」なんて台詞は出てこないが、二人の間には愛が存在している。[言葉],コミュニケーションの上でこれほど重要なものはない。しかし間違えてはいけない。言葉は言葉単体で成り立っているものではない。同じ「愛」という言葉でも、使う人、場所、状況、によって、違ってくるものだ。昨今は違う言語の人とはもとより同じ日本人でもコミュニケーション取れているのか不安になることがある。大事なのは言葉の裏側の感情なのだ。悪く言えば地味であいまいな映画。でも私は大好きだ。どんな激しい恋愛劇よりも、心に迫るものがあった。アメリカ人が撮ったとは思えない。むしろ日本人が撮ったような印象を受ける。上質。 [映画館(字幕)] 8点(2004-08-20 17:12:01)(良:1票) |
11. あずみ
斬って斬って斬って。皆のいうほど退屈ではなかったのだが、やはり長い。場面場面の演出はセンスがあると思うのだが、ストーリーの盛り上げ方、構成はいまいち。ラストのほうで男が敵に突っ込んでいくシーンが、あったんだが、泥にまみれて、這いつくばる姿は、熱くさせてくれた。なんというか場面場面の演出はセンスがあって大好きなのだが、ドラマが完成していないから、復讐やら殺人に対する罪の意識、キーになる主人公たちの感情は伝わらない。 6点(2004-08-19 08:22:10) |
12. AKIRA(1988)
この作品が周りに与えた影響のすごさが、「ああ、ここがすごいって言われてるのね」程度でしか分からない。ものすごく取り残されたような、大好きな番組を見逃してしまったような、そんな気持ちになる。リアルタイムで観たかった。当時4歳だけれども。芸術とはいつの時代にも受け入れられて、普遍的な要素を含んでいるものである。なんか否定的なコメントになってしまった。うーん。うーん。いや、面白いのだよ。うん。 6点(2004-08-19 07:57:12) |
13. パリ、テキサス
何といってもトラヴィスとジェーンがマジックミラーを隔てての対話の場面がいい。作品はあの場面に内容のほとんどが語られて、見ている側の情感も昇華、消化、される。回想シーンなど使わずに、対話によって、感情のぶつかり合いによって、画くことで、トラヴィスという滑稽で寡黙で不器用な男の虜になっている私たちの胸には、リアルに届く。結末については何もいうことはない。男と女は結ばれぬ関係であった。それだけだ。しかし、悲しい、辛い、寂しい。トラヴィスの去っていく背中は悲しすぎる。 9点(2004-08-18 22:43:09) |
14. ナイン・ソウルズ
個性的な役者陣を生かしきれてない。設定がおもしろいのに、つくりが雑で、話が散漫になっている。音楽と映像で情感は幾分かあおられはするが、それが余韻に残らないのは、やはり脚本の浅さ、人物描写のお粗末さ、が挙げられる。板尾、Jr、原田、松田、とすばらしい演技なのは間違いない。これだけの俳優陣をそろえてこの出来はあまりにも残念。焦点を松田、原田に絞って、テンポ良く、話も作りこんで、テーマを掘り下げていけば、秀作になったんじゃないでしょうか。砂浜から九人が次々にわっさわっさと走ってくるオープニング、板尾の「フィリピンの料理っすか」は、最高。 5点(2004-08-18 21:39:57) |
15. バタアシ金魚
意外に面白かった。太って変わり果てたソノコを目の前にして「愛している」とカオルはいうのだが、自分の心の揺れに気づき、耐えられなくなって、逃げ出してしまう。ソノコのカオルになげかけた「あなたが愛しているのはカオルという自分よ」いう言葉どおり、人間は愛している相手の中に、自分を投影して見て、自分自身を愛しているのかもしれない。だからどうしたのだ、この映画はそういっているような気がした。青春映画として完成しているし、テーマもしっかり掘り下げられている作品だと感じた。 7点(2004-08-16 16:16:32) |
16. 黄泉がえり
音楽が良かったから、感動した。RUIのコンサートシーンね。映画の宣伝のとき、一緒に主題歌も流れてたんやけど、ビビビッときて、でまあ内容はどうでも良くて、音楽聴くために映画館に行ったんよ。映画見てる間も、いつ流れるかいつ流れるか待ち構えてたけど、やっとこさ、きたと思ったら、竹内さん、消えかけてるじゃないですか。クサナギ君、走ってるじゃないですか。ダー、ですよ。涙ダー。ダー。まあ、まじめなことを言えば、ジャンルとしてファンタジーに徹するなら、デティールをしっかりやらんとなあ。世界観大事だから。なんと穴がチャチイことた。細かいエピソードはまずまずだったけど、主要ストーリーがイマイチ、パンチが足りん。でも音楽よかったから、涙はダー。点数は5点。 5点(2004-07-30 08:11:48) |
17. ウォーターボーイズ
よく分からんが。シンクロ良かったから7点。たぶんみんなシンクロ良かったから高得点なんだろうね。作品中の友情とか恋とか青春とか、何となく感じとれたような印象を受けるのは、ぜーんぶシンクロの勢いだろうな。 7点(2004-07-30 07:54:00) |
18. アカルイミライ
どうも感ずることが出来なかった。しっくりこなかった。二回見たら新しい発見があるのかもしれんが・・・。主題歌は大好き。 6点(2004-07-30 07:39:49) |
19. 東京ゴッドファーザーズ
この映画において、「あんな都合いいことばかり起こるはずがない!」というのは評価の観点がずれていて、一種のファンタジーだと理解すればいい。映画は虚構の上に、虚構が構築されているのではなく、人間ドラマはもちろんのことだが、ファンタジーにしても、虚構の上の、「リアル」に支えられ、成っているものだ。東京という場所のリアリティが完成されているので、話はグッとしまっている。主役三人のキャラクターは好感が持てた。クリスマスという時期設定や赤ん坊といった、不思議めいたというか、聖なるというか(よく分からん)、作品の雰囲気で、道中の都合が良すぎる出来事対する違和感は、とにかく説得出来ていると感じた。引っかかったのは、人物の心理である。どうも構成優先の気がしてならなかった。人物をストーリーにそって、動かしていた印象を受けた。好感は持てるが共感は出来ず、人間の心理が雑で、どうも「おはなしくささ」があった。目の前で起こる不思議な都合良すぎる出来事に対して、登場人物は、まるで当たり前のことかのように、ふるまっている。ファンタジーだという前置きはあくまで観客に向けてのものであり、作品中の人物がそれを変だと思わないのは、違和感がある。人物は動かすものではなく、動くものなのだ。みんなの評価の高さをみて、私は頭が硬いのかなと感じずにはいられんが、どうもイマイチだった。 5点(2004-07-28 01:23:34)(良:2票) |
20. ナチュラル
ストーリー的に強引で無理があるところも多々あった。しかしラスト二十分の演出は、ノスタルジックで「夢見心地」を想起させる、うつくしいものだった。暗闇の中、ライトから流れ落ちる火花を受け、ダイヤモンドを駆ける主人公。そして金色の草原でキャッチボールをする親子。「人生と夢」を感じることが出来るのではないでしょうか。 7点(2004-07-21 19:10:48) |