1. ナイト・オン・ザ・プラネット
登場人物は皆やさしい。終わってはじめに出てきた言葉がこれだ。初めのロサンゼルスでの話で、若いタクシードライバーの女、そして役者の仲介をしている女性が出てくる。初めは若い女の荒い振る舞いや暴言に辟易していたのに、会話を進めていくうちに女性の目は暖かい視線へと変わり、そして受け入れる。若い女の全てを受け入れてるわけではない、しかしその存在を認めたのだ。観ている僕らと、ジャームッシュの、視線は交わり繫がり、存在する人間を受容する。その他笑いもあり、涙もありで、あきさせない力強さは映画への興味を釘付けにする。ああ、ええわ、ジャームッシュ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-07-20 19:11:45) |
2. 青春デンデケデケデケ
大林節はあまり受け付けない方なのだが、それを差し引いてもおもしろかった。ラストまで笑いあり、涙ありと、勢いよく展開していくのが、見ていて爽快だった。時代設定が自分の青春時代よりもだいぶ古いわけだが、すんなりと感情移入でき、やはりあの年代の感覚というのは共通しているのだと改めて実感した。構成も抜群であったし、ペーソスもうまく利いていて、エンドロールでは心動かされた。やはり、小説にしろ映画にしろ「あの感覚」こそ醍醐味であろうかと思う。 あ・・・あと演奏シーンはやはり同録でやって欲しかった、映画も心も高まっているところなのに、クールダウンしてしまいそうになった。何とも勿体無かった。 8点(2005-03-03 06:25:24) |
3. 幻の光
《ネタバレ》 宮本輝のファンである僕が一番はじめて触れたのが、幻の光だった。女の独白によって語られる物語に人生の哀歓と、賛歌を感じたのを覚えている。さて映画だが、原作にほとんど忠実に作られている。台詞もそのまま使われているのではないだろうか。しかし、見終わった感想として、期待しすぎたからだろうか、物足りない印象があったのは間違いない。整った美しい画の中にさらりと感情を描くのは、是枝監督のリアリズムであるのだと思うが、果たして小説を読んだことのない人に、伝わるのだろうか、疑問である。原作を知っているが故の感想なのかもしれない。是枝監督にとっての「幻の光」であると考えれば、感情表現をぎりぎりまでに抑えて、富山の風景と、人物の何気ない会話、動作と、丁寧に愛情を込めてつくられているこの作品は、すばらしい映画であるのかもしれない。 ただ僕が感動したのは、愛していた男との埋まることのない距離を必死に埋めようとする女の悲しい独白であり、原作者宮本輝の人間観であったので、やや物足りない。 6点(2005-02-27 04:37:20) |
4. バタアシ金魚
意外に面白かった。太って変わり果てたソノコを目の前にして「愛している」とカオルはいうのだが、自分の心の揺れに気づき、耐えられなくなって、逃げ出してしまう。ソノコのカオルになげかけた「あなたが愛しているのはカオルという自分よ」いう言葉どおり、人間は愛している相手の中に、自分を投影して見て、自分自身を愛しているのかもしれない。だからどうしたのだ、この映画はそういっているような気がした。青春映画として完成しているし、テーマもしっかり掘り下げられている作品だと感じた。 7点(2004-08-16 16:16:32) |
5. 私たちが好きだったこと
原作より先に映画を観たのですが、原作をうまく表現できていたのではないかと感じました。というのも、けっして感傷的なものを入れず、厳しく真摯に人間をとらえる視点は宮本氏のそれと同じものをみることが出来たからです。人間の繋がりは弱々しく、胡散臭いものである。作品はこのことを優しく温かく、達観した人生観で包みこんで感じさせてくれ、美しい余韻に浸らせてくれます。地味ですがいい佳作に仕上がっています。 7点(2004-03-25 11:51:31)(良:1票) |