1. 時計じかけのオレンジ
人は欲望の奴隷であると共に、 理性の生き物である事を再確認した 灰汁の強い作品。 自分の性癖を否定されている様で 恐怖さえ感じた。それ程完成度の 高い一作。 [DVD(字幕)] 8点(2005-09-12 02:25:17) |
2. アメリカの友人
人の“あこがれ”と言うモノは、要は自分にないモノ(要素)への興味、羨望。 二人の相反する人物が互いに交流し、友情が生まれる。それは、“あこがれ”から派生した絆。 人は“あこがれ”に対し、得がたいものと知れば、強くなり、一方では簡単に諦める。そんな関係をこの作品は描いているように感じられる。 リプレーはその“対象”が友情を通わせる者に為ろうとは、四方や考えもしなかった筈。 ナヨタンとっても、その“対象”に一時でも強い信頼を持とうとは思いもしなかっただろう。 リプレーの“あこがれ”「幸せな家庭、平穏な日々」 奔放に闇を掻き分けながら歩いて来た彼にないモノ。 ナヨタンの“あこがれ”「自由(奔放)、冒険、陰を落とす危なさ」 平凡だが、愛する妻子と暖かい家庭を病を抱えながらも守ってきた彼にないモノ 二人の間に出来た絆は互いにの引き合っていれば、長年の友情(愛情)よりも硬く強い。其れも、情が他へ向けられない程の強さだ。一種のヒステリー状態なのかも知れない。 だが、一端に何らかの綻びが生じれば、その絆は脆く、あっ気無く切れてしまう。始めに綻んだのはナヨタンか……。愛する家族を振返った結果なのか...それとも、あまりにも違い過ぎる“対象”への諦めが生まれたか…。何れにせよ情が水の様に引いて行った。 リプレーは再び孤独に為った己を哀れ、ナヨタンは家族へ還る代わりに妻子に悲しみを残した… 寂しさが全面を覆う様な、灰色の印象が強い。そんな気分にさせられる。 9点(2004-12-24 02:32:08)(良:1票) |
3. ディア・ハンター
私が本作のDVDを購入(ほぼ衝動的に)して帰ると、伯父がちょっと意外そうな顔をして私を見ていた。「お前そんなん観るの?」怪訝そうに「何故?」と聞くと「観りゃわかる…」其れが、妙に記憶に残っている。 チミノの描く流麗なダンスシーンは、その後展開する恐ろしい惨劇を全く予期させない。戦場へ向かう仲間達に些かの憂いがあったとしても、そんな物を表に出すことすらタブーの様に馬鹿騒ぎしてみせる。 戦場に立つまでの一時を過ごす彼らには、その生活が一変してしまうかも知れないと云う不安は薄かった…否、同じ様にこれからも皆仲良く連む事が出来る、其れが当たり前..と信じていたのかも知れない。 そう思いながら、あのシーンを回想すると一層悲しくなる。 戦争は全てを変えてしまう。其れが自然であったり、命であったり、友情であったり、形は様々だ。失ってしまうものの大きさは計り知れない。英雄となって街に戻ったマイケルは、親友を失し、ニックは心を失してしまう。再会して、マイケルを認識した瞬間、ニックのこめかみを貫く銃弾…ひたすらショックだった。 感動したか?そんな物ではない。衝撃だったと云うしかない。そして、この作品が米国映画であると云う事に些か驚き、更には腹立たしささえ覚える。観賞後の後味の悪さから言えば、No,1。 第2のベトナム戦争だのと揶揄されているイラクの一件。同じ悲しみを抱える人が少なからず存在する事を、米国大統領に言ってやりたい。言ったところであの偏屈が判るかは甚だ疑問だけど… 未だに「観りゃわかる…」と云った伯父の言葉の真意を確かめていない...。 私自身の中だけで補完してしまう事にする。 9点(2004-06-14 00:24:05)(良:2票) |
4. ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど
昼メロ+戦争+サスペンス…まるでお子さまランチの様な、欲張りワンディッシュ映画。そして、私のBest紅茶映画。何と言っても、さり気ないセリフが素敵です。甘過ぎてかなわん…と思い始めると、戦闘場面の緊張感はなかなかのスリルで○。「紅茶って水っぽくて渋いから嫌い」なんて言ってるそこの貴方!コーヒーも良いけど、この作品で紅茶の楽しみ方勉強しましょう! 6点(2004-06-14 00:22:48) |
5. さすらい(1976)
先ず、この作品を創ってくれた事、出会えた事に感謝したい。 「さすらい」を観てから、自分の中の“映画を観るスタンス”を改めて軌道修正する切っ掛けになった。本来娯楽である『映画』をどこかで、堅苦しく考えがちだったから。理屈で映画を観るわけではなく、知識が無くては映画を楽しむ事が出来ないわけでもない。“頭で観る”のではなく、『感じる』..これが、この作品を観た事で、甦った。「さすらい」自体もまた、理知的に理解してゆく類の作品ではなく、人間の本来持った自然的な面を受け皿にするべき作品。 序盤から、徐々に身体に染みてくる情景の素晴らしさ。過ぎるミラー越しの風景は不安も希望もモノクロームの色合いに柔らかに織り込まれている様だ。 ブルーノの旅は紙に書かれたコースを巡回すること…最後の映画館を後にすれば、また振り出しへもどる。変化のない歪な円を描く旅路。ロベルトの旅は元いた場所から離れる..逃げること…どんなに離れようとしても、気持ちは足の向く方向とは逆に向いている。 2人は前進しながら、それぞれ前に進もうとはしていない。まるでゴールのない双六だ。 やがて、道は行き止まり..『分岐点』の出現。そして、再び動き始める。糸は一刹那一つに縒り合わさっただけ、元に戻るには程無い。旅は終わることなく、2人の軌跡は交差点を残して伸びてゆく…それは、あてどない行き道のほんの一部でしかない。 9点(2004-05-28 00:35:43)(良:2票) |
6. 都会のアリス
彼の望む『風景』はファインダーを覗き込んだ瞬間に逃げてゆく。其れは、彼自身の現状から逃げ出したい、離れたいと云う願望の現れか..。或いは、自己の存在を確認する術か..。迷うペン先が触れるのは、アメリカの現況ではなく消えかけた足跡なのかも知れない。「キレイな写真ね、空っぽで」少女の無垢な瞳が裏付ける。そして、その言葉の主もまた、“何か”が欠落している。 故郷に帰る事を決心し向かう空港、そこで出逢った母子。此処で波線は徐々に繋がりを求めて伸び始める ― どこかに忘れてきたのか、それとも完全に壊してしまったのか…空っぽ同士(“LOST SOUL”)の自分を修復する、あてどない旅路の始まり。 少女と青年は、お互いを『他人』の枠で囲い、根無し草の如く彷徨い始める。やがて、紡がれ始める絆は綻んだ傷口を覆うものとなり、2人に変化が訪れる。露出オーバーの背景に彼らの影は一層薄く..だが、確実に繋がった絆は切れる事無く存在し。孤独もまた密かに付き従う。そして、突如訪れる旅の終わり…“自分探しの旅”は彼らの中では、終演を迎えることはない…。 アンチ・クライマックスを感じさせる俯瞰の映像に、観る側は平穏と不安を同時に憶える。其の線上に、予定させる結末を霞ませる程に。 9点(2004-05-23 21:04:26) |
7. スティング
改めて私に、映画の素晴らしさと可能性を教えてくれた大きな存在。 こんな凄い映画をリアルタイムに観られた人達は幸運です。この作品きっての大詐欺師 故J・ロイ・ヒル監督!貴方こそEntertainer だ! 騙されてこんなに気持ちが良くて、嬉しくなるのは「スティング」とサプライズ・パーティーぐらいなもの。ああ...観て良かった!! 10点(2004-03-27 15:14:57)(良:1票) |
8. 2300年未来への旅
邦題の件は、もうこの際放っておきます。云うまでもない… 設定的にはとても面白い作品です。ですが、演出がひたすら勿体ない!鑑賞を途中で止めようかとさえ思ってしまう程、肌に合わないのが判った。管理社会的な要素に惹かれたがどうにも… どの辺が「旅」だったか、この脳タリンにどなたか教えて下さい。 3点(2004-02-15 14:21:56) |
9. ザ・ドライバー
近年の派手なカーアクションに目が慣らされている方には、冒頭からシンプルに攻めているこの作品は物足りないか、又は新鮮に感じてしまうかも知れませんね。 印象はスマートなカーアクション映画。 プロットも至ってライト。派手すぎるクラッシュや爆破を多用しない、テクやマシンに対してのウンチクが無い、セリフも控え目。制作費の関係上、小規模にとどまっている様です。それがかえって独特のクールな雰囲気と人物描写の魅力を引き立てている。この時代のアメ車(ムスタング等)がお好きな方には、スマートさと共に楽しんで頂きたい。このシンプルさ、エンドクレジットにも反映されています。 8点(2004-02-15 13:56:06)(良:1票) |
10. ひまわり(1970)
男性と女性とでは、感じ方が異なってしまうのかな?とみかん様のレビューに考えさせられました。 ヘンリー・マンシーニの調べと一面のヒマワリ畑…、幸福なアントニオとジョアンナの結婚、戦争に引き裂かれる夫婦。そして再会。後味は「イングリッシュ・ペイシェント」に次いで暗くブルーになります(苦笑)ただ、ジョアンナとアントニオが現在の『家族・愛するべき人』の元に戻る、と云う潔さに救われて思いの外感動できた作品です。 復員して来る夫を待つ妻と、別の女性を愛する事に自責の念を背負う夫は、戦争に傷ついた心を現しているのでしょう。 立派な反戦映画である一方、立派な悲恋の物語でもあります。 8点(2004-02-01 20:33:43)(良:2票) |
11. まわり道
ヴィム・ヴェンダースのロード・ムービー3部作の内の一つ。 コンプレックス(或いはある不安)を抱え旅に出る作家志望の青年と、トラウマを抱えた大道芸人(?)の老人とその孫、青年が目を奪われた女優と自称詩人の男が偶然集まり、さまよい歩く様は「気まま旅」のようで現実逃避をひたすら類友と繰り広げているように見えてしまい、とても憂鬱。正に「まわり道」です。人物設定には哲学的な意味を持たせているのですが、それがまた重い...。ラスト、「仲間」と別れた主人公がその後どんな「旅」をしてゆくのか考えるだけでもちょっとした鬱状態に陥りそうです(笑) まるで、自分を観ている様なやるせな~い気持ちにさせる映画でした(^^; ご注意・寝不足ピークの方は、調子のいい日に回して下さい。結構マッタリ系?なので寝てしまう可能性大! 8点(2004-01-25 13:56:06) |