1. 竜二 Forever
本作に出会うまで高橋克典は只の兼業俳優だという目でしか見ていなかった。しかし、本作での彼には金子正次が乗り移っているようだ。決して外見は似ていないのだが、ギラギラした目の奥に映画主演に命を賭けた金子の魂が宿っているのだ。作品は、金子が伝説の映画『竜二』を完成させるまでの紆余曲折を描いたもので、リメイク作品ではない。そして、細野辰興監督は、伝記ものとしてではなく、フィクションとして金子の人生を再構築しており、映画製作というものが人生を切り売りしていく、いや自分の生き様をぶつけるものであることを二重性をもって訴えかけてくる。松田優作をモデルとした羽黒役の高杉亘のそっくりぶりも含め、命を賭けた映画製作においては、金子が乗り移った高橋の名演のような奇跡が起きる。これだから映画はやめられない。金子が起こした奇跡である『竜二』も素晴らしいが、俺は『竜二Forever』の方が好きだ。 10点(2004-01-27 20:14:02) |
2. トイ・ストーリー
CG技術には全く興味のない俺も本作のプロットの巧みさに舌を巻き、見事にはまってしまった。自分がおもちゃであるというアイデンティティーの問題を扱いつつも、人間が失いかけている真の友情を高らかにうたいあげる。この辺りアニメだからこそ恥ずかしがる必要もないわけで、CGアニメというジャンルの可能性を作り手がしっかり認識している証拠だろう。 10点(2004-01-05 14:35:19)(良:1票) |
3. 父の祈りを
『マイ・レフト・フット』に続くジム・シェリダンとダニエル・デイ・ルイスのコンビ作。いくらでもヒートアップした演出が 可能だった『マイ~』でも、抑制を効かせた演出でドラマを静かに盛り上げたシェリダンが本作でも、熱くなりすぎず丁寧に父子のドラマを紡いでいく。役者陣もみな素晴らしく、母子家庭に育った俺には、P・ポスルスウェイト演じる父親の存在がうらやましく、涙を流してしまった。 10点(2003-12-07 20:09:16) |
4. 十二人の怒れる男(1957)
観ているだけで汗が出る。人の生死を賭けた12人の男達のぶつかりあい。取り扱われる事件自体は大したものではないが、陪審員達の票の流れが変わっていく緊張感。ワンシチュエーションでこれだけ画面に釘づけさせるとは・・・さすがルメット。個人的には笑いのある三谷版パロディの方が何度も観たいと思える。しかし、それは本作の緊迫度が凄まじく、俺が怖じ気づいてるからだろう。 10点(2003-11-29 20:16:21) |
5. 市民ケーン
《ネタバレ》 う~ん・・・評価低いなぁ。確かにこういった手法は今ではなじみのものであるため、新鮮味が足りないんだろう。でも俺は、20歳の時にこの映画にとりつかれてしまった。別に難解な作品とも思わず、「新聞王ケーンに何があったのか?」「薔薇のつぼみって何だ?」と謎にひきつけられていった。そして、全てがわかるラストで号泣。家庭環境に近い部分があるのも大きいが、年に一回は鑑賞し涙を流している。 10点(2003-11-28 16:51:18) |
6. 七人の侍
幸運にも数年前に劇場で観ることができた。キャラクター造型・ストーリーの運び・映像の力・テーマ性ともに文句のつけようのない傑作。また、画面の迫力もさることながら、劇場で観られた最大の利点は、中盤にある休憩時間にトイレに行けたこと。公開当時の人々と時空を越えて同じ時間をすごせる幸せを感じながら、用を足した。 10点(2003-11-28 14:44:04) |
7. ゴッドファーザー PART Ⅱ
評判がよかったもののマイケルが暗黒世界に足を踏み入れたことでもう完結していると感じていて、どうも観る気がおきなかった。しかし、このような手法でくるとは! デニーロの物真似では収まらない深みのある演技に寒気を感じた。この作品によって、『ゴッドファーザー』は歴史となった! 10点(2003-11-26 17:39:52) |
8. ゴッドファーザー
設定に説得力を持たせたブランドの圧倒的な存在感。運命に翻弄され父の後を継ぐことになるパチーノの苦悩漂う演技。カザール、カーンなどのキャラクターも出色。暗黒社会を舞台にしているにも関わらずゴージャスでありながら、感情移入をせざるをえない普遍的な物語。コッポラに感謝。 10点(2003-11-26 17:33:37)(良:1票) |
9. スタンド・バイ・ミー
受験戦争に敗れ、第2志望校に入学した俺に母は「次は頑張らなきゃダメよ」と塾通いを課した。見えない未来だけを目標にしなければいけなくなった俺は高校に通わなくなった。そんな時友人が一本のビデオを見せてくれた。死体を見つけるなどという不純な動機にも関わらず、目的を持った彼らの瞳は直視できないほどまぶしかった。30を越えた現在でも、俺が今を見つめて生きていられるのは、この時の8つの輝く瞳のおかげだ。 10点(2003-11-23 22:56:40)(良:1票) |
10. ダイ・ハード
ブルース・ウィリス自らマクレーンにユーモアを加えたとのこと。そのおかげでマクレーンはただのアクションヒーローとはひと味違うキャラクターとなった。個人的には、本作品でB・ウィリスがオスカーにノミネートされなかったことは納得がいかない。弱さこそ時には最大の強さにつながること。この映画は男としての俺のバイブルである。だから、俺は家でも決して裸足にはならず靴下だけは履くようにしている。特にこれからの季節には。 10点(2003-11-21 14:52:29)(笑:2票) (良:1票) |
11. アマデウス
高校時代、休講を連発していた音楽の先生が珍しく3週連続して授業を行い、見せてくれた作品。当時はモーツアルトの奇行にしか目がいかず、ピンとこなかったが、大人になってから再観賞し言葉を失った。天才に敵わない秀才の苦悩。そうか、俺も罪作りな男だったわけか。小学校時代俺に一度も相撲でかなわなかったYクン。今更ながら謝るよ。キミもなかなか強かったよ・・・。 10点(2003-11-21 13:16:44) |
12. アパートの鍵貸します
さすがはB・ワイルダー。現実を見つめるシビアな視点を持ちながらも、軽妙なタッチで描ききっていく。役者陣の的確な芝居も含め、これは映画の教科書である。まだ観ていないみなさん。すぐにレンタルショップへ走ってください。 10点(2003-11-21 12:29:19)(良:1票) |
13. ロッキー
似たような作品は古今東西ゴロゴロしている。おまけにプロスポーツの世界に目を転じれば、これ以上の感動話はたくさんある。それでもなおこの作品の魅力が失われないのはなぜか? それはきっとキャスト・スタッフの希にみる熱意がしっかりと焼き付けられているからであろう。この先、フィルムが劣化しようともスタローンの魂は色褪せない。いや、それどころか希望が持ちにくくなった現代こそ、さらに燦然と輝いていくことだろう。これぞ不朽の名作。 10点(2003-11-21 05:53:41)(良:3票) |
14. シックス・センス
《ネタバレ》 もう知らない人もほとんどいない本作の意外な真相。しかし、本当の見所は2回目の観賞にこそある。コール少年の台詞・言動全てが真相を知った後では違う意味を持ってくるのだから。そして、それが人間の様々な「愛」と「関係」を浮き彫りにしていく。コミュニケーション不足が指摘される現代をえぐった傑作。 10点(2003-11-20 06:22:48) |
15. ザ・フライ
《ネタバレ》 悲劇のきっかけである主人公セス自身による人体実験。彼が女性を好きになることになれている男だったならば、誤解することなく彼女が戻ってくるまで待てただろう。この後も、プロットの展開は全て愛のすれ違いに端を発している。そして、愛する女性と一つになりたいという究極のエゴ・・・。この物語は『東京ラブストーリー』など遠く及ばないほどの傑作純愛映画として語りつがれるべきだと思う。 10点(2003-11-20 02:56:55)(良:2票) |
16. オープン・ユア・アイズ
《ネタバレ》 リメイク作とのもっとも大きな違いは主役の汚れ具合。これはトムがあまり顔を崩さなかったということだけでなく、精神的な面でも、本作のセザールは壊れている。 感情移入を許さないほどのセザールの横暴さは何だ? 親友の彼女を寝取ろうとしておいて、自業自得の事件で顔面崩壊。その後は、逆に親友が彼女に近づくのを非難する。どうして、こんな主人公の設定にしたのだろう? そんな疑問も、ラストシーンを観て納得。これは冷凍保存自体も夢なのではないか? そもそも、全てがある日セザールが見た「一つの夢」。親友の彼女を寝取ってしまった罪悪感。真の愛を知ったことで生じた、裏切り続けた女たちへの罪悪感。この2つの罪悪感が生み出した夢。 LE社の社長はラストで、主人公以外の人物を脇役と断言し、アイデンティティーを全否定した。これは、セザールのこれまでの価値観。しかし、アイデンティティーを喪失したアントニオを見つめ、あのセザールが他者を心配する。 彼は、この2時間に渡る一つの夢の中で、街(世界)には自分以外にも人々がいて、それぞれに尊重すべき生活があるという当たり前のことをようやく学んだ。つまり、クライマックスは、SFなどではなく、自己欺瞞との戦いだったのだ! 主人公は、当然顔など崩れることもなく(事故も夢)、これからも愛しい彼女と暮らしていく。そんな主人公が愛によって人間的に成長したからこそ見た夢だと理解し、本作に深く感心させられた。 この解釈に異論がある方も多いだろうし、押しつけるつもりも全くないが、自分としては、アメナーバルの企みが、ただ一点「(顔ではなく)自己欺瞞の崩壊」にあると感じられた。人間はどれだけ力をもとうと、決して神にはなれず、様々な人間との関係にのみ存在できる。それを表現するために、自分が神のようにになれるはずの空間である「夢」が必要であったのであり、同様に神の真似事をしようとする存在の「LE社(SF的設定)」が物語に必要だったのに違いない。 リメイク作との比較などせずとも、本作はアメナーバルの偉大なる成功作であると評価したい。 ☆最後に、これほどまでに憎々しいキャラクターを見事に演じきったE・ノリエガ(R・マドリッドのラウール似?)の役者魂を称えたい。ついでに、ペネロペちゃんのcuteさ&sexyさ&脱ぎっぷりにも・・・って、散々偉そうに語っておきながら、結局おっぱいネタ(笑) 9点(2004-10-23 07:38:02) |
17. ヴィレッジ(2004)
《ネタバレ》 シャマラン監督は、これまで以上に演出力を上げたなぁというのが第一印象。本来ならば情報量的に描き足りないはずのカップルの愛を、美しい画作りによって充分浮かび上がらせている。シャマラン作品というと、とかくオチばかりが語られがちだが、本作にもいくつかのツイストが用意さている。しかし、そのツイストによって驚かせようという趣向ではなく、観客の興味を維持しつつテーマを浮き彫りにさせるために用いている。第一世代が文明社会・資本主義社会から逃げ、作り上げたユートピア。その存続のためには、文明を頼れば治すのことのできた愛娘アイヴィーの目も、わずか8歳にしてこの世を去ることになるダニエルをも犠牲にする。人間の欲による犠牲者達が、欲を抑制するが故に生まれる悲劇。『シックスセンス』には及ばないものの、本作は示唆に富んだなかなかの傑作である。 9点(2004-09-13 18:59:22) |
18. ドッグヴィル
天使か? 悪魔か? (キャッチコピー)と問われても ____だって、人間だもの みつを 9点(2004-09-07 01:18:23)(良:1票) |
19. ラヂオの時間
三谷幸喜の演出はぎこちなさもあり、少々不安定。だが、舞台でも高評価を得ていた本作のプロットは、構成が抜群に面白い。しかし、そんな理屈はどうでもいい。日本が誇るエンターテイナー・井上順をこれだけフューチャーしてくれれば、何も文句をつける気になれない。井上順、バンザイ! 9点(2004-05-29 00:04:45) |
20. スクール・オブ・ロック
《ネタバレ》 ジャック・ブラックによるロック版『いまを生きる』。だが、当然のごとくコメディに比重が置かれ、深さはない。プロットも大雑把で、決して出来はよくない。なのに……なぜなんだろう。クライマックスのコンテストシーンで鳥肌が立ち、全身が小刻みに震えだし、急に目頭があつくなってきた。そう、やっぱり映画って理屈じゃない。脚本の理屈では「そこそこ」でしかなくても、そこに「魂」が吹き込まれると、映画の奇跡が起きる。ブラック&ホワイト万歳! 9点(2004-05-28 23:10:07)(良:3票) |