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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1.  この世界の(さらにいくつもの)片隅に 《ネタバレ》 
「この世界の片隅に」に約40分の新たなシーンを追加したロングバージョン。前作(この場合、そう言っていいのか分からないが。)を見てから一週間ほどしか経っていなかったが、あえて間を空けずにこちらも見てみた。前作はすずさんたちを通して戦争が当たり前にあった時代の普通の日常をリアルに描いた映画という印象だったのだが、このバージョンで主に追加されているのは前作ではチョイ役程度の出番だったリンさんとのエピソードで、このリンさんとすずさんの関係を描くことで、人間ドラマとしての深みが出ているし、それによって丁寧に描かれる日常の中で、すずさんの成長や、自分で運命を切り開いていくといったような決意が前作よりも踏み込んで描かれていて、少し前作とはすずさんの印象も変わってきているが、間違いなく本作はすずさんの物語として捉えることができる。だから、ラスト近くで初めて出会った橋の上で周作さんにかける言葉である「世界の片隅で、見つけてくれてありがとう。」という言葉は今回のほうが見ていて胸に来るものがあった。それに「この世界に居場所はそうそうのうなりゃあせん」、「死んだら心の中の秘密も何も消えてなかったことになる」というリンさんの言葉も深くて忘れられない。見る前は前作があまりにも名作だったこともあり、追加シーンが足をひっぱっていないか不安だったのだが、また違った見方ができる映画になっていてやはり名作だと思った。前作を含めれば見るのは2回目ということもあって、始まるや否や引き込まれ、168分という長さも中だるみを感じることなく本当にあっという間だったのだが、子供が見るには前作のほうがいいかもと思う。でも、二つともに素晴らしい映画には間違いなく、優劣をつけることは出来はしない。
[DVD(邦画)] 9点(2021-01-03 02:38:41)(良:2票)
2.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
戦時中の広島が舞台の映画というとつい身構えてしまうのだが、本作は広島から呉に嫁いできた主人公・すずさんを中心にそこに生きる人々の日常を描いていて、あくまでも戦争はその延長線上にあるという描き方をしている。リアルで丹念に丁寧に優しいタッチで描かれるすずさんたちの日常も作り手が登場人物たちと同じ目線に立ってとても大切にしている感じがして、見ているこちらもこの日常がとても身近なものに感じられ、登場人物たちに自然と愛着というか親近感がわいてきて、とても愛おしくなって、ああ、ただ戦争が背景にあるというだけの違いで、すずさんたちの日常は今の自分たちと変わらないほど普通だったのだと思えてくる。だからその背景にある戦争も決して異常なことではなく、ごく当たり前に普通に身近にあるものだと感じられるのも当然なことかもしれない。そう思うと変に身構えることなく、すっと入っていけた。本作は反戦映画だが、戦争や原爆の悲惨さを直接的に描いて反戦を声高らかに訴えかけるようなことはしていなく、特有の硬さも感じられないところが戦争や原爆を扱ったほかの映画と大きく違う点だが、そういうところをあえて描かなくても、反戦を声高に叫ばなくても、その時代を普通に生きて暮らしていた人たちがいるというだけで、伝わってくるものがあるし、きっと監督のメッセージはそこにあるのだろうと思う。また、どうしても暗く重くなりがちというイメージもある題材だが、すずさんたちの日常がユーモアを交えて描かれていることもあって、楽しく見ていられる部分が多かったのも良かった。(しかしこれを通して戦争中だからと常に緊張感を強いられ、おびえて暮らしていたわけではないことがよく分かる。)登場人物たちは誰もが魅力的に描かれているが、やはり何といってもすずさんの健気さがたまらなく、夫・周作さんの姉である径子さんの子供である晴美さんを守りきれなかったことと自らも右手を失くし、(今までいろんなことをしてきた右手のことを思い出しているシーンが切ない。とくに好きな絵を思うように描けなくなったことはどんなに悲しかっただろう。)家の手伝いができなくなったことで、居づらくなり、出ていくことを決めるいじらしさも泣かされるが、険悪になっていた経子さんと和解するシーンのやりとりがまた良い。それにやはり、玉音放送のあとでやり場のない怒りを泣きながらぶつけるシーンはすずさんの気持ちが痛いほど伝わってきて、普段、おっとりしているすずさんだからこそよけいに胸に迫るものがあり、思わず一緒に泣いてしまった。そんなすずさんの声を演じるのん(能年玲奈)の声も見事に合っていて、すずさんの声はこの人以外にない、そう思えるほどに素晴らしかった。(「あまちゃん」を見たとき、あまりにアキ役にはまり過ぎていて、これ以上のハマり役に出会うのは難しいのではと思っていたけど、そんなことはなかったようで一安心。)まさに日本映画だからこそできる映画で、絶対に名作として今後後世に残っていくであろう映画であることは間違いない。いや、ぜひ残していくべき映画だ。
[DVD(邦画)] 9点(2020-12-29 17:57:43)(良:2票)
3.  家族はつらいよ 《ネタバレ》 
山田洋次監督が「東京家族」のメインキャスト全員を再び起用して手掛けた映画で、再び家族を描いているが、こちらは「家族はつらいよ」というタイトルが示す通りの喜劇映画。かなり前からもう山田監督は喜劇映画はやらないのかなと思っていたので再び喜劇映画を作ってくれたことがまず嬉しい。もう冒頭のオレオレ詐欺の電話と間違えられるシーンから爆笑の連続で、見ていてまったく退屈しないし飽きない。妻・富子(吉行和子)から誕生日プレゼントに離婚届に判がほしいと言われたときの夫・修造(橋爪功)の表情も笑えるが、富子の浮気を疑って長女夫婦(中嶋朋子、林家正蔵)が用意した探偵(小林捻待)の初登場シーンの描写が完全に寅さんのような描写なのがまた良くてすごく笑えるし、修造の愚痴を言っているときに本人が現れる間の悪さや、両親の離婚についてみんなで話し合っているときにそれを知らない次男(妻夫木聡)が家に恋人(蒼井優)を連れて来るという間の悪さ、家族会議の最中にちょっとしたことでケンカになるのもまるで「男はつらいよ」シリーズのとらやでのやりとりを見ているようなおかしさがあり、思わず懐かしい気分になった。最初に書いたように家族役は「東京家族」のメインキャストが演じているが、「東京家族」と違って団結した家族なのが対照的。でも、本作のほうが山田監督らしい家族の描き方に感じられる。そんな家族が繰り広げる寅さん的な世界を見ていて、山田監督の「男はつらいよ」シリーズへの思い入れの深さや、また寅さんのような明るい喜劇映画を作りたいという気持ちが伝わってくるし、きっと山田監督は肩の力を抜いて楽しんで本作を演出していたんだろうなあというのが想像できる。見ているこちらとしても山田監督の映画を見て久々に心の底から笑うことができたし、同じキャストでも「東京家族」よりこちらのほうが好きだ。そして、どんなにシリアスな映画で評価される監督であってもやはり山田監督は寅さんシリーズの監督であり、喜劇映画の監督だということを改めて感じることができたのも嬉しい。ここ10年ほどの山田監督の映画の中では文句なしにいちばん面白く、本当に楽しい映画だった。
[DVD(邦画)] 9点(2017-04-01 20:45:37)(良:2票)
4.  トイ・ストーリー3 《ネタバレ》 
前作から11年ぶりに作られたシリーズ3作目。冒頭のアンディーが楽しそうにおもちゃで遊ぶシーンは自分もああいう頃があったなと妙な懐かしさに駆られた。そしてそのあと、成長したアンディーがおもちゃで遊ばなくなり、何人かの仲間は既にいなくなっているというのが切ない。自分が遊んでいたおもちゃは今でも物置にしまってあると思うが、どうなっているだろうということを考えてしまった。シリーズ今までの作品は娯楽活劇的な要素が中心であってもドラマ部分にも手を抜かないというつくりだったと思うが、今回はまず「アンディーとおもちゃたちとの別れ」というのがテーマであり、娯楽映画としての要素はもちろん健在だが、前2作よりもドラマ性が高くなっている。ラストシーンはアンディーのおもちゃたちへの思いというものが伝わってきて泣けるし、アンディーと同じくウッディたちもこれから新しい持ち主のもとで新しい人生を歩んでいくという結末が素晴らしく、シリーズ完結編としてはこれ以上ないほどのエンディングだろう。また今までのシリーズをすべて見ているからこそよけいにこみあげてくるものもある。公開当時は前作との間があきすぎだろうとも思ったが、今は成長して大人になった1作目の頃のアンディーと同じような子供に向けられて作られた続編と考えればこの長いスパンも納得できる。このシリーズはどの回から見ても楽しめるが、できれば1作目から順番に見てほしい。そうすればこのシリーズの本当の良さが分かると思う。
[DVD(吹替)] 9点(2012-06-21 15:33:28)(良:2票)
5.  レディ・プレイヤー1 《ネタバレ》 
ストーリーはともかく、本当に「おもちゃ箱をひっくり返したような映画」という言葉がぴったりはまる映画で、とにかく見ていて純粋に楽しめた。冒頭部分からの金田バイクの登場は2か月前に「AKIRA」を再見したばかりというのもあって出てきただけで興奮したし、ガンダムとメカゴジラの戦いももちろん見ていて燃えたし、子供の頃にソフビで遊んでいた感覚を思い出してなにか懐かしくなってしまった。あえて野暮な欲をいえばメカゴジラの登場シーンでゴジラのテーマではなくメカゴジラのテーマ(74年Or93年)を使ってほしかったところ。でも、いちばんの見どころはやっぱり「シャイニング」の再現の完成度の高さで、かなり気合いを入れて作り込んであって、ここが見ていていちばん興奮してしまったし、久しぶりに「シャイニング」見て見ようかとも思った。こういう映画は元ネタを知らないと楽しめないかもというのがあるのだが、この「シャイニング」のシーンで、中に入るメンバーの中に「シャイニング」を見ていない人物を一人入れているのは、実際に見ていない観客と同じ立場の人物を置いておくことでその観客が置いてけぼりを食らうのを最小限にとどめるためだと思うが、これは良かったと思う。映画の世界を疑似体験できるVRというのはそのうち実現するだろうなと思わずにはいられない。それにしても70を過ぎたスピルバーグがまだこういう直球勝負なエンタメ映画が作れるということに驚くとともに嬉しくなる。映画に興味を持ったのは中学の頃で、きっかけとなった中には「BTTF」や「ジュラシック・パーク」があるわけだが、この映画が今のこれから映画に興味を持とうという人のそういったきっかけの一つになれば嬉しい。
[DVD(吹替)] 8点(2020-09-22 13:03:38)(良:1票)
6.  映画 聲の形 《ネタバレ》 
見る前はあまり期待もなかったが、始まるや否や一気に見入ってしまった。内容は確かに障害者やいじめの問題を描いているが、単に差別やいじめは良くないというこういう作品にありがちな単純なメッセージよりも、根本的なテーマはもっと深いところにあり、とても重いが、同時にとても考えさせられる映画だ。小学生の頃、転校してきた聾唖者である西宮に対するいじめの中心人物だった石田がやがてスケープゴートになり逆にいじめられる側になるというのはリアルだし、それが原因で五年たって高校生になっても周囲と打ち解けずにいる石田の西宮に対する贖罪や、彼自身の成長と再生が本作のもう一つのテーマだ。そんな石田の目から見た同級生たちの顔には全体に×印がついているというのも、わかりやすい演出ではあるが、石田の心情をうまく表していると感じるし、そうしていることで、石田にとても感情移入しやすくなっている。そんな中であるきっかけで友達になってくれた永束と、西宮を必死で守ろうとする彼女の妹であるゆづるの存在は石田にとってどれほど心強く、大きな存在だっただろう。出てくる同級生や小学校の担任の教師、西宮の母は問題のある人物として描かれていて、とくに同級生は小学校から高校まででなにも変わっていないような連中が多く、中でもとくに川井と植野は見ていてイライラするほどだったが、同時にそこにリアルさを感じられる部分もあり、映像の美しさや作画の丁寧さもそうだが、人物描写も繊細で丁寧で、作り手が石田をいじめる側の同級生たちも決して完全な悪役のように描かず、どこか愛が感じられる描き方なのがいい。そしてもちろん石田という主人公をきっちりと描いているのが良かった。他人と交わり、完全にではなくても分かり合えることの大切さ、話すことの大切さ、そういうことをあらためて教えてくれる映画で、もちろん、賛否両論はあるのは当然のことだと思うけど、素直に見て良かったと思えたし、じゅうぶん見る価値のある映画だ。最後にこの映画で京都アニメーションの制作作品初めて見たんだけど、実際に作品を見ると、あんなひどい事件が起こってしまったのはあらためて非常に残念で哀しく思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-12-30 16:02:56)(良:1票)
7.  富士ファミリー2017〈TVM〉 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。前作が良かったので見る前は少し不安な面もあったが、そんな心配はなく、むしろ前作を見ているのもあって最初から安心して楽しむことができた。今回も富士ファミリーの面々の日常がコミカルに描かれているが、その笑える中にも前作同様に人間の不器用さや弱さがサラリと、でも、しっかりと描かれているところにこのシリーズの良さがあるし、とても見ごたえのあるドラマになっている。今回、笑子ばあさん(片桐はいり)が幽霊のナスミ(小泉今日子)に聞いた生まれ変わりの合言葉である「おはぎちょうだい」が物語のキーワードになっていて、この言葉がそのまま今回の「生まれ変わり」というテーマにつながっている構成だが、それがなんとも心地よく、見ているうちにこの何でもないような言葉を聞くだけでこちらもなんだか元気に、そして前向きになれる気がしてくる。今回も笑子ばあさんは面白く、冒頭から笑わせてくれていて楽しいのだが、老人クラブで戦時中に白い飯を食べていたと自慢した男(鹿賀丈史)とけんかになった数日後に二人で富士山の見える公園でおにぎりを食べているシーンは思わずしんみりウルっときて、非常に良いシーンだった。また、その直後に炊飯器を開けた鷹子(薬師丸ひろ子)が「炊き立てのご飯ってきれいだな。」と言うシーンを入れるのも印象的で、演出としてもうまかったと思う。その鷹子が有名な占い師になった中学時代の友人(YOU)に再会し、昔のわだかまりを解くエンドロール直前のシーンも良い。また、今回はナスミと新人幽霊(羽田圭介)のやりとりも描かれているが、その会話の中にもサラリと胸にくるような言葉が多く、これも心に残る。そのナスミの分のおはぎを前にした笑子ばあさんの独り言も本気でナスミのことを心配しているのがよく伝わってきて切ない。誰かに必要とされることの大切さや、生まれてきたことのありがたみといったメッセージをストレートに発しているが、今回もそのメッセージがじゅうぶんに伝わり、見て良かったと思えたし、自分はこういう人情喜劇がやっぱり好きなのだろうと感じた。もうドラマとしての続編はないかもしれないが、できればまたやってほしい。見終わっておはぎと炊き立ての白いご飯が食べたくなったことを最後に記しておく。
[DVD(邦画)] 8点(2019-10-13 17:51:39)
8.  富士ファミリー〈TVM〉 《ネタバレ》 
薬師丸ひろ子と小泉今日子、それに片桐はいりの共演にミムラと高橋克実も出ているというこのキャストだけを見れば「あまちゃん」や「梅ちゃん先生」が浮かんでしまうが、もちろんこの2本の朝ドラとは全く無関係なNHKの正月ドラマ。実は木皿泉脚本ドラマを見るのが初めてだったのだが、素直にとても面白かった。富士山のふもとにある小さなコンビニを舞台に、そこを経営する家族の人間模様を描いた人情喜劇で、笑える中にも人間の弱さや孤独といったものをサラリと描いていて、深みがあるし、生きている、ここに存在していることの素晴らしさを感じさせてくれる。そのメッセージがやや直接的すぎる気もするが、じゅうぶんに胸に刺さり心に残った。登場人物の中ではやはり笑子ばあさん(片桐はいり)が面白く、冒頭の食卓を囲んだ富士ファミリーの面々との会話や、幽霊になったナスミ(小泉今日子)とのやりとりが笑わせてくれるのが楽しい。でも、やっぱり、笑子ばあさんとマツコロイド(元は日テレのバラエティー番組に出てきたアンドロイドらしい。)のやりとりが上記のメッセージも出てきて印象深い。鷹子(薬師丸ひろ子)に20年以上同じ日にプロポーズしている雅男(高橋克実)が、ほかの人と結婚するので新居をコーディネートしてほしいと鷹子に頼むのも見え見えなのだけど、それが逆に安心して見ていられる。さっきも書いたが、本当に面白い、見てよかったと思えるドラマだった。続編もあるようなのでそちらも見てみようと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-10-06 23:26:58)(良:1票)
9.  クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん 《ネタバレ》 
ぎっくり腰の治療に行ったひろしがロボットになって帰ってくるというのが面白い設定だが、実はそのロボットはひろしの記憶と人格をコピーしただけの存在というのは賛否ありそうに感じるも、これにより本人をそのままコピーしたロボットは本人と言えるのかというSFによくあるテーマを扱った作品としての面白さもあり、素直に楽しむことができた。前半はロボットになったひろしが家族に受け入れられるまでを描いているが、しんのすけがすんなりと受け入れたのに対し、それをなかなか受け入れられずにいるみさえがドデカシティーでのしんのすけたちの事故をきっかけにロボひろしを受け入れられるようになるというのが良かった。しかし、後半の生身のひろしが復活したあとに、みさえがロボひろしの前を横切り、生身のひろしに駆け寄っていくシーンはロボひろしの切なさがなんとも言えず悲しかった。そんなロボひろしもしんのすけにとってはひろし同様とーちゃんに変わりなく、だからこそ、最後のひろしとロボひろしの腕相撲のシーンで「どっちのとーちゃんもがんばれ!」と両方を応援する姿にぐっとくるものがあるし、泣ける。その後のロボひろしが家族をひろしに託して消えていくシーンも泣けて仕方なかった。(このシーンはロボひろしの視点のみで描かれているが、最初にロボひろしが家に帰るシーンも視点のみのワンカットで描かれていて、対になっているのが良い。)シーンが前後するが、しんのすけが正気を失ったロボひろしに拷問と称して嫌いなピーマンを大量に食べさせられるシーンも、しんのすけが家族を助けるために勇気を振り絞ってピーマンを全部食べる姿には思わず感動してしまった。もちろん、泣けるシーンばかりではなく、「クレヨンしんちゃん」らしいバカバカしさも健在で、中でもクライマックスの最終決戦で五木ひろしロボが登場して、コロッケの声で「契り」を歌い始めるシーンはついこの間の連休に五木ひろしの「契り」が主題歌になっている「大日本帝国」を見たばかりだったこともあって、かなり笑ってしまった。父ゆれ同盟というのもバカバカしいネーミングだが、それが、「父よ、勇気で立ち上がれ」の略称なのは何か世の父親たちに対するメッセージとも解釈できて、そういう父親たちへのエールとも取れるネーミングで、そう考えると奥の深いネーミングだと思えてくる。こういうバカバカしさの中にも深さが感じられるのも「クレヨンしんちゃん」の良いところだ。
[DVD(邦画)] 8点(2019-05-11 23:46:41)
10.  妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。前作は山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズ以前の作風のようなブラックさがあり、面白かったんだけど今更そこまで戻るのかという疑問も残った。3作目となる今回は1作目のような雰囲気に戻り、安心して見ていられる映画になっている。初期の山田監督のブラックな喜劇も個人的には好きなのだが、やはり、山田監督はブラックな作風よりもこういう安心して見れる作風の喜劇のほうが良い。それに、今回も「男はつらいよ」を思わせるシーンが多く、うたた寝をしている間に泥棒(笹野高史)に入られ、へそくりの大金を盗まれてしまった妻(夏川結衣)を夫である長男(西村雅彦)が責めるシーンなどはいかにも寅さん的(「そういう言い方はない」というセリフも「男はつらいよ」シリーズで何度も出てくる。)だし、1作目のレビューでも書いているが、家族が些細なことからすぐけんかになるのも「男はつらいよ」シリーズを思わせている。家に泥棒が入るというシチュエーションも山田監督が監督を手掛けた回ではなかったが「新 男はつらいよ」の財津一郎をつい思い出して笑ってしまった。そして次男(妻夫木聡)が妻(蒼井優)といっしょにおばあちゃんを捜しに行く場所がまさかの柴又というのがニクイ。これはもう、山田監督の「男はつらいよ」シリーズへの思い、ファンへの思いというものが感じずにはいられない。(このシーンではとらやの面々や御前様、源ちゃんらがどこからか出てくるのではとつい思ってしまった。)サブタイトルが戦前の成瀬巳喜男監督の映画のタイトルからの引用であることからも分かるように、長男が妻を迎えにいくクライマックスの大雨や稲妻、創作教室の先生(木場勝己)が朗読する林芙美子の小説など、成瀬監督を意識しているのが分かるし、山田監督が成瀬監督のファンで、受けた影響も大きい監督なんだというのがよく分かる。(成瀬作品、あまり見ていないのだが、本作を見終わって久しぶりに見たくなった。)それにしても、この映画に登場する平田家は家族になにか問題が起こるとすぐに家族会議を開くなどいつもながらにすごく団結していて、見ていていつもこういう家族っていいなと思うし、自分もこの家族の一員でいたい、そういう気持ちになってしまって、シリーズをずっと見ているからか、この家族がすごく身近な存在に感じる。このシリーズは母親も好きで一緒に見ることが多いのだが、長男の妻が家出するところから話が始まっている今回はこの長男の妻にとても共感したようで、見終わってすごく面白かったと言っていたし、ぼくも母親に対する感謝の気持ちでいっぱいになることができた。シリーズの次回作があるかはどうかは分からないが、もう2、3本はこのシリーズの新作を見たいなぁ。最後にこれも1作目のレビューでも書いたことなのだが、山田監督はシリアスな映画もいいのだが、いつまでも喜劇映画を撮り続ける監督であってほしい。心からそう思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-03-17 01:08:59)(良:3票)
11.  あん 《ネタバレ》 
先ごろ亡くなった樹木希林の主演映画。どら焼き屋の雇われ店長をしている千太郎(永瀬正敏)とそこに現れたあん作り歴50年という徳江(樹木希林)。この二人を中心にした物語で、とくに前半はこの二人やどら焼き屋にやってくる女子高生を中心としたお客さんたちとの交流を交えて、どら焼き屋が繁盛していくまでを描いている。小豆一粒一粒に愛情を持って接し、小豆に話しかけながら丁寧にあんを作っていく徳江の優しいまなざしはとても印象的だし、そのあん作りのシーンもまるでドキュメンタリーでも見ているかのように丁寧にじっくりと描かれているのが好感が持てるし、そんな苦労して作ったどら焼きをおいしそうにほおばるお客さんたちをみてこっちまでどら焼きが食べたくなってしまう。しかし、徳江がハンセン病患者であったことが露呈するあたりから空気は一変する。後半は重い内容だが、ハンセン病患者たちの思いや辛さというものがひしひしと伝わってくる。そして、亡くなった徳江が千太郎とワカナ(内田伽羅)に残したメッセージは今になって見ると実際の樹木希林ともオーバーラップするところがあって、吉井徳江という役柄と樹木希林という役者が本当に分からなくなって涙なくして見ることができなかった。千太郎が桜が満開の中、笑顔でどら焼きを売るラストシーン、それまでどこかやる気のなさげだった彼は徳江との出会いで変われた。また徳江もずっと隔離されていて、最後のほうになって社会とかかわることができた、これを思った時、否応なしに感動してしまった。ほぼ予備知識なしで見た映画だったのだが、本当に見て良かった映画だったと思う。そして、樹木希林さん、この人のような役者はもう二度と出てこないと本気で思う名女優のひとりで、亡くなられてしまったのは本当に残念でさびしい。心よりご冥福をお祈りします。
[DVD(邦画)] 8点(2018-10-10 00:48:11)(良:3票)
12.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
話題の本作が我が地元で上映が始まり1ヶ月近く。ずっと見たいと思っていたがようやく映画館で見ることができた。(久しぶりの映画館)前半のワンカット長回しによるホラー部分は手振れがひどいというのを聞いていたので「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出すような感じかと思っていたが、そこまで酔うようなことはなく見れたのは良かったし、本物のゾンビに襲われている出演者を尻目に撮影を続ける監督の狂ったようなキャラクターも最高で楽しく見た。一転して後半はこう来たかという感じでその構成の巧みさに驚かされる。この後半部分も「ラヂオの時間」を彷彿させる内幕ものコメディーになっていてゲラゲラ笑えて面白い。とくに監督が前半から一転して俳優たちに気を使いまくるまったく別のキャラクターに描かれているのはその落差がなんとも滑稽で笑えるのだが、そんな監督がこだわってどうしても撮りたかったラストシーンを撮影するためにみんなで協力する展開は笑えながらも映画作りに携わる人たちの情熱が感じられて印象深い。低予算、キャストや監督も無名という映画(この部分にいちばん興味を魅かれた。)だが、とにかくこの脚本の構成力の巧みさで勝利した傑作の一本だと素直に思える映画で、口コミによるヒットも納得。こういう映画を見るとやっぱり映画って脚本や演出が命なんだと実感できる。本当に映画館で見て良かったと思えた映画だったし、見終わってすごく清々しい気持ちで劇場をあとにすることができた。こんなことは本当に久しぶりだ。そして見終わってすぐにでももう一度最初から見返したくなるような映画でもある。
[映画館(邦画)] 8点(2018-10-01 19:27:29)
13.  short cut<TVM> 《ネタバレ》 
溝口健二監督や相米慎二監督など長回しを多用することで有名な監督はたくさんいるが、なんと三谷幸喜監督によるこの作品は始めから終わりまでの112分間一切カメラが止まることなくすべてをワンカットで撮影するという実験的なもので、その発想に舞台演出家である三谷監督らしさを感じずにはいられないし、またそれを映画ではなく、テレビドラマでやっていることにもすごさを感じる。内容はというと山道で迷った夫婦(中井貴一、鈴木京香)の会話劇であるが、それを飽きさせずに最後まで見せきる脚本と、主演ふたりの演技が巧妙で、すごく面白かった。とくに山に入って野生化したようになってしまう妻とそれに対する夫のリアクションが最高で、それ以降この二人のやりとりを見ているだけでもうずっと笑いっぱなしだった。(三谷監督の作品の中でも本作はとくにかなり笑える部類だ。)でも、この夫婦の仲は円満ではなく、冷めている設定。それを思うと、ひょっとしたらこの夫婦の設定は自分と小林聡美を参考に書いたのではと思えてくる。(下の方も仰られているように本作は三谷監督が離婚をした年に出した作品。)エンドロールをバックにしたラストの河原のシーンからの幸せそうな二人を見て、三谷監督なりの夫婦に対する理想のようなものを感じることができた。
[DVD(邦画)] 8点(2017-11-23 17:15:55)
14.  ズートピア 《ネタバレ》 
久しぶりに見るディズニーアニメ。偏見や差別に対してかなりストレートに、またそれを決して重苦しくなることなく、ディズニーらしく子供にも分かりやすく描いている。しかし、込められているメッセージは子供よりも大人の方が考えさせられるものになっていて、ただの子供向けアニメとは侮れない完成度の高さがあり、そんなところが素晴らしい。主人公のウサギの新人警官と詐欺師のキツネがコンビを組んで行方不明事件を追うという刑事ものには定番のバディものとしての面白さもあり、刑事と罪人のコンビというのは「48時間」を彷彿させるものがあるが、最初に主人公のジュディが署長から言い渡された捜査の期限が48時間であるあたりはやはり意識している部分もあるのだろう。もちろんこの二人(二匹)のやりとりだけでも見ていてじゅうぶんに楽しい。夢を持つことや諦めない心を持つことの大切さについても深く考えさせられる映画になっていて、見終わった後には元気と前向きな気持ちをもらえた気がしたし、まさしくいろんなメッセージのつまった傑作で、本当に見て良かったと思う。
[DVD(吹替)] 8点(2017-06-17 17:05:38)(良:1票)
15.  ポテチ 《ネタバレ》 
「ポテチ」というタイトルから見る前はどんな映画なのか想像できなかったのだが、見始めてすぐに引き込まれた。主人公である泥棒・今村忠司(濱田岳)のある秘密をめぐる物語で、今村が健康診断に行った話や尾崎という野球選手に異常に固執しているなどさりげなく伏線を張り巡らし、結末に向かっていくのだが、その伏線の張り方がやはりうまいし、また68分という短い映画だが一切無駄がなく、巧みな構成で濃密な映画になっていて見ごたえはじゅうぶんにあり、面白かった。前半は喜劇色が強く、今村も少し変わった言動をする男という印象なのだが、同時に魅力的でもあり、彼の秘密が明かされたとき、彼の母親(石田えり)に対する思いや、どんな気持ちで尾崎に固執していたかが痛いほど分かって、もう共感せずにはいられなかった。タイトルにもなっているポテチを恋人(木村文乃)と食べるシーンで、今村が間違えて恋人の分に買っていたコンソメ味を食べてしまったにもかかわらず、恋人に交換しなくていいと言われ、思わず泣き出してしまうシーンは見たときに思わず大笑いをしてしまったのだが、最後まで見ると、ここも切なく、見終わってから再見すると印象が最初とは全然違うものになるだろう。(二度見れば良かった。)ほか、前半で今村が言っていたリンゴが木から落ちた話や三角形の内角の和の話も無意味な話に終わらず、ちゃんと映画の中で効いているのがいい。ラストの代打の尾崎が(互いに親子と名乗ることはない実の母親が見ている前で)放つ場外ホームランは、それによって人生の何かが変わるわけではないけれど、でも、主人公たちの人生に希望の光を灯すようなそんな一発であったと思いたい。ぼく自身もこのシーンには元気をもらえたような気がした。
[DVD(邦画)] 8点(2017-05-15 01:41:02)(良:2票)
16.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 
2014「ゴジラ」とも関連のある(モンスター・バース)新作キングコング映画。これまで見たキングコングの映画はリメイクが主だったせいもあって東宝版も含めてオリジナルを踏襲した展開が多かったのだが、本作では舞台となる髑髏島だけで話が展開するのがコング映画では新鮮に感じる。コングの登場も早く、コング以外の怪獣も多数登場するなど、怪獣映画としての醍醐味がこれでもかと詰め込まれていて、まさに王道の怪獣映画という感じの作風(久しぶりにこういう怪獣映画を見た気がした。)で、すごく楽しいし、さきほど書いたように舞台は髑髏島から移動しないので、往年の東宝特撮怪獣映画を見ているような懐かしさや楽しさ(巨大タコとの戦いは「キングコング対ゴジラ」を思い出さずにはいられない。)が感じられるのが嬉しい。2014「ゴジラ」では怪獣どうしの戦いの描写に不満しかなかったのだが、本作ではもちろんその点もしっかりと描写されていて、もう大満足。とにかく最初から最後まで小難しいことを一切考えずに見られる娯楽映画に徹しているのが素晴らしく、あまり期待しないまま映画館に入ったのがウソのようにすごく面白かった。エンドロール後のエピローグに次回作であるレジェンダリーゴジラへの布石が描かれているのだがこの感じだと思わず期待してしまうじゃないか。コングを殺すことに執念を燃やす男をサミュエル・L・ジャクソンが演じているが、見ていて昔「ジュラシック・パーク」に脇役で出ていたことをつい思い出した。
[映画館(字幕)] 8点(2017-04-14 00:55:52)(良:1票)
17.  はじまりのみち 《ネタバレ》 
前々から「陸軍」を見てから見ようと思っていた映画をようやく見る。木下恵介監督生誕100年を記念した伝記映画だが、生涯を描いたものではなく、「陸軍」で軍部ににらまれ、松竹に辞表を出し、田舎に帰った木下(加瀬亮)が再び映画監督として復帰を決意するまでの出来事を描いている。アニメ畑の原恵一監督による実写映画だが、原監督はもともとアニメでも実写的な表現を用いることが多い(「カラフル」など。)せいか、実写としての違和感は全くない。内容としては、脳溢血に倒れた母(田中裕子)を疎開させるため、木下と兄(ユースケ・サンタマリア)、そして荷物運びのために雇われた便利屋(濱田岳)の三人が母の乗ったリヤカーを引きながら山越えをするというシンプルなものだが、そこにカレーや学校の先生(宮崎あおい)などのちの木下監督の作品につながるようなエピソードを盛り込みつつ描いているので、木下監督の映画を好きな身としてはかなり興味深く見ることができたし、自身も木下監督のファンという原監督のもっとたくさんの人に木下監督の映画を見てほしいという思いも伝わってくる。「陸軍」を否定され、これ以上映画を作ることをあきらめた木下が、目の前にいるのがそれを作った監督とは知らない便利屋から「陸軍」のラストシーンに感動したと聞かされるシーンや、母からたどたどしい声で映画に戻るように諭されるシーンははたとえ自分のやったことが否定されても、少しでも自分を認めてくれる、応援してくれる人がいればまたがんばれるということを感じることができ、だから木下恵介は再び映画監督に復帰する決意をすることができたのだと思う。この二つのシーンは見ているこちらも木下に感情移入して感動したし、母の「また木下恵介の映画が見たい。」という言葉には病気の自分の世話よりもたくさんの良い映画を作ってほしいという母の気持ちがよく表れていてこれもまた泣ける。賛否両論あるというラストの数々の木下監督の映画のダイジェスト映像も物語とリンクするようによく考えられたダイジェストになっていて、ここにも原監督の木下監督への思いが感じられ、これでいいと思う。十数年前から木下監督の映画を見ているのにその良さに気づいたのはここ数年のことで、本作を見てあらためてもっと木下監督の映画を見てみたいと思った。
[DVD(邦画)] 8点(2016-09-07 20:09:50)(良:2票)
18.  映画 ビリギャル 《ネタバレ》 
「ビリギャル 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」というタイトルからすでにネタバレ全開で、しかも予告や宣伝を見ても全く見たいと思わなかった映画だったが、周りでの評判がよかったので騙されたと思って見てみた。いやもうかなり良かった。受験というのは「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」で描かれるような集団競技とは違い、基本的にたった一人での孤独な戦いとなる場。その戦いに圧倒的不利な状態から挑む有村架純演じるさやかの一生懸命頑張る姿はいじらしく愛おしく見ていて応援したくなる。塾の先生である坪田(伊藤淳史)やさやかの母親であるあーちゃん(吉田羊)が決してさやかを見放さないところがよく、本作はさやかが慶應目指して頑張る姿だけでなく、師弟愛や親子愛がきちんと描かれていて、それが本作にドラマとしての深みになっていて、ただ偏差値の低い主人公が猛勉強の末に慶應に合格したというだけの話に終わっていない。坪田がさやかにかける言葉はどれも前向きで、とくにクララの卵のシーンは、人間、自分の可能性を信じることが大切なんだとあらためて教えられた気がした。それに、息子に自分の夢を押し付けている夫(田中哲司)に向かってあーちゃんが言う「私はさやかのことで何度も学校に呼ばれたけど、恥ずかしいと思ったことは一度もありません。むしろさやかといろんな話ができて楽しかった。」という言葉、この言葉は本当に娘のことを信じていないと言えない言葉だと思うし、そのあとの「私は三人の母親です!」という言葉にもあーちゃんの子供たちに対する深い愛情を感じてものすごく感動させられた。このシーンは本当に名シーンだ。ほかにもさやかの友人たちのさやかを思う気持ちもほろりとさせられる。見終わった後に明日も頑張ろうという前向きになれる映画で、すごく元気が出たし、見て本当に良かったと思える映画に久しぶりに出会えたのも良かった。「下妻物語」を見た時もそうだったが、予告や登場人物の雰囲気だけで見る見ないを判断すると良い映画を見逃す場合もあるので気を付けたいなあと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2016-07-16 18:24:41)(良:4票)
19.  舞妓はレディ 《ネタバレ》 
周防正行監督が「シコふんじゃった。」以来、久々に手掛けた青春映画で、「マイ・フェア・レディ」を下敷きにひとりの田舎臭い少女が京都で一人前の舞妓になるまでを描いている。周防監督がいつか「シコふんじゃった。」と対になる青春映画を作りたくてようやく実現した映画だというが、男性だけの世界である相撲に対して女性だけの世界である舞妓に目をつけるのは着眼点がいい。ミュージカル仕立ての映画で、そこはまさしく「マイ・フェア・レディ」を意識しているようで、何よりもまず、見ている人にこの映画を肩の力を抜いて楽しんでほしいという周防監督の思いも感じられ、最近は社会派映画も手掛けているが、やはりこの監督は硬派な社会派映画よりもこういった軽い感じの娯楽・コメディー映画のほうが合っている気がするし好きだ。主人公の少女を演じるのがそれほどの有名人ではなく、これまで周防監督の映画に主演した役所広司や加瀬亮と同じようにオーディションで選ばれたほぼ無名の若手というのもよく、ここも周防監督らしい。主人公・春子を演じる上白石萌音は本当に素朴な感じでいかにも田舎っぽい雰囲気がよくハマっていて、本作はこの主演女優の存在が大きく、何もわからないまま飛び込んだ世界で成長していく主人公の姿と、本作で初主演に抜擢された上白石萌音の姿がうまく重なっている気がする。春子に言語学者(長谷川博己)が京都弁を教えるくだりはまさにイライザとヒギンズそのままなのだが、若い娘が頑張る姿は応援したくなる。極度のストレスで声が出なくなり、それが治るシーンも春子の気持ちをうまく表していて良かったし、ラストシーンの後味もいい。もう少し書かせてもらえれば冒頭の草刈民代の登場シーンで「緋牡丹博徒」の主題歌のメロディーが流れ、女将を演じているのが富司純子なのはニヤリとさせられる。主な登場人物の大半が歌っているが、その富司純子も何曲か歌っているのはサプライズで、ひょっとしたら周防監督は若いころ藤純子や「緋牡丹博徒」シリーズのファンだったのかもしれないとつい思った。それに周防監督の映画で竹中直人を見るとなんだか安心する。次回作はまた社会派映画かもしれないが、周防監督にはまたいつかこういうカラッとした明るい映画を作ってほしい。
[DVD(邦画)] 8点(2016-05-07 17:59:49)
20.  紙ひこうき 《ネタバレ》 
ディズニーの短編アニメ。全編モノクロ・サイレントという渋いつくりであり、ストーリーもファミリー向けというよりはほぼ完全に大人向けという感じ。でもこの短い時間で深みのあるドラマをきちんと紡ぎ出していて、たとえ短くてもドラマは描けるというお手本のような映画で、素直に見て良かったと思える映画だった。主人公の男性が一目ぼれした女性に思いを伝えようと、隣のビルにいる彼女に向かって仕事の書類で作った紙飛行機を飛ばし続けるのが切なく、これだけでもう普通に恋愛ドラマとして見入ってしまう。もちろん、あきらめかけた男性を励ます紙飛行機たちの描写など、アニメならではの映像表現も素晴らしい。ハッピーエンドだとは思っていたが、それでもラストシーンは好きだ。とても小さな物語だが、じゅうぶんに傑作だと思う。ディズニーの同時上映短編は単なるおまけ・前座という意識があったが、これを見るとそうも言えなくなるなあ。
[地上波(字幕)] 8点(2016-03-29 00:48:57)
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