1. シン・仮面ライダー
ネタバレ 今回は樋口真嗣監督が参加しておらず、完全に庵野秀明監督が描く「仮面ライダー」となっているが、序盤のクモオーグ(大森南朋)のエピソードからテレビシリーズ第1話「怪奇蜘蛛男」と同じ場所で撮影しているのはオリジナルへのリスペクトのようなものを感じられ、またこの部分は普通に楽しめたものの、それ意外にもマニアックなオマージュが「シン・ウルトラマン」よりも増えていて、なにか庵野監督の自己満足のように見えてしまい、少しやりすぎに感じた。(クモオーグに「当たらなければどうということはありません。」と仮面ライダーや石ノ森作品と無関係なシャアのセリフを言わせてしまうのもなにか無神経に感じる。笑ったけど。)本郷を演じる池松壮亮のセリフまわしがぎこちなく、変身してもなんか頼りなさそうに見えてしまうし、なにより肝心の仮面ライダーがカッコよくなく、アクションもパンチの後に血しぶきが飛んだりして迫力を出そうとしているのは分かるのだが、なにかもさっとした感じでダサく、かなりイマイチに感じる。ヒロインであるルリ子(浜辺美波)の設定がテレビシリーズと変わっているのも違和感があるし、仕方がないことかもしれないがキャラがアニメっぽいのはやっぱり気になる。また、本来は単純な物語であるはずが、難解な用語を持ち出してわざと分かりにくくしているきらいがあり、それにともなってか説明的な部分も多いなど話が先に進むごとにテンポが落ちていく感じが見ていてイライラしてくる。最初のシリーズが元ならもっと単純な勧善懲悪でいいのに。役者のセリフ回しもぼそぼそで聞き取り辛い部分が多く、これもストレスに感じた。最後の戦闘シーンは映像が暗く見づらいのも良くなく、最終決戦なのに盛り上がれなかったのが残念。サソリオーグ(長澤まさみ)を仮面ライダーの力を借りずに倒しておいて、後になってサソリオーグの毒に仮面ライダーは耐性がないというのは思わず突っ込んでしまった。普通、ヒーロー番組だとそのような強敵にいかにヒーローが勝つかが見どころになるはずなのだが。ショッカーの怪人を演じていた出演者だとこの長澤まさみとハチオーグを演じていた西野七瀬が楽しそうに演じていたのが印象的。KKオーグを演じるのが本郷奏多というのは狙ってのことなのだろうか。本作はこれまでの二本と違ってテレ朝やバンダイなどニチアサでも見かける名前が製作委員会に入っているが、仮面ライダーは確かにゴジラやウルトラマンとくらべると今でも3シリーズの中ではもっともイキイキとしている感が強く、そういう状況であえて本作を大々的にやる必要もなかったのではと思えてくる。いずれにせよ、本作は三本の中でいちばん万人受けしない映画になっているのは確か。庵野監督の実写作品としては「キューティーハニー」のほうが面白かったなあと見終わった直後に思ってしまった。でも、ちゃんと主題歌に子門真人が歌うオリジナルの主題歌をそのまま使っていたのは良かった。少し甘めかもしれないがこれに1点プラスの5点。 [DVD(邦画)] 5点(2025-07-16 01:01:29)(良:1票) ★《更新》★ |
2. 野火(1959)
ネタバレ 第二次大戦末期のフィリピン戦線を舞台に敗残兵となった日本兵たちの末路を描いた市川崑監督による戦争映画。市川監督の戦争映画といえばこの映画の数年前に日活で手がけ、後年自身によってリメイクもされた「ビルマの竪琴」が知られていて、そこでも捕虜となった敗残兵が描かれていたのだが、どちらかと言えば情感たっぷりに描かれていたあちらとは対照的に、この映画はかなり生々しく、より戦場における敗残兵となった日本兵の過酷な状況がリアリティを持って描かれていて衝撃的であり、怖い。飢えに飢え、極限状態に陥った敗残兵たちが人間を殺してその肉を食べるということがこの映画の大きなテーマとなっているが、きっと実際の敗残兵たちも同じようなことをしていたのだろうと考えさせられるし、見ていて非常に重苦しいなんとも言えない気持ちになるのだが、一方で見ているうちにだんだんと引き込まれていき、目が離せなくなった。白黒の映像も効果的で、極限状態の人間の異常さ、恐ろしさといったものがこれでもか、これでもかと伝わってくる。そんな異様な状況の中でラスト、野火の上がる方向へ向かう主人公の「普通の暮らしをしている人間に会いたい。」というモノローグは、それでも人間らしく生きていたいという悲痛な叫びであり、ここに市川監督がこの映画にこめたメッセージというものを感じ取ることができた。主演の船越英二は撮影前に体重を減らして臨んだそうだが、一見すると船越英二とは分からないような風貌でまさに田村一等兵という役柄になりきって演じており、その鬼気迫るリアルな演技が見事で、彼の代表作と言われている映画だが、まさにその通りだと思う。また、「ビルマの竪琴」で描けなかった戦争の狂気的な部分を見事に描き切った傑作で、市川監督にとってもそれに並ぶ戦争映画の代表作だろう。あまり知られていないのは残念だが、是非とも2本セットでご覧になることをお勧めしたい。 [DVD(邦画)] 8点(2025-07-14 22:24:51)《更新》 |
3. 蜘蛛巣城
ネタバレ 山田五十鈴と浪花千栄子が怖かった。映画の保存状態が悪く、登場人物たちが時々何を言ってるのか分からなくなるのが困ったけど、やはりラストの大量の矢が武時(三船敏郎)に襲いかかるシーンは迫力ありすぎ。森が動くシーンも「そうだったのか。」と驚かされた。 [ビデオ(邦画)] 8点(2025-07-12 23:46:48)《更新》 |
4. ステキな隠し撮り 完全無欠のコンシェルジュ<TVM>
ネタバレ 「ステキな金縛り」のスピンオフ作品だが、同じ曲が主題歌になっていて一部同じ役名で出ている出演者もいるものの、実際は同じメインキャストを集めて製作された別作品で、内容的には全く無関係なものとなっている。その内容はホテルの新人コンシェルジュ(深津絵里)が様々な宿泊客の要望に対応していくというもので、「大空港2013」に近いものを感じるが、こちらはオムニバス形式となっていて、全編ワンカット撮影ではなく、タイトルにもあるように本当に隠し撮りで撮影したらしく、そのせいか出ている役者がすごくのびのびと演じているのが分かるし、コントを見ているかのような雰囲気もある。とくに料理のできない料理研究家(竹内結子)とニョッキを作るエピソードは完全にコントのノリで面白かった。新作映画の公開を控えた神経質な映画監督はこのドラマの脚本と演出を担当している三谷幸喜監督自身が演じていることもあって、見ながら三谷監督、新作公開前はいつもこんな感じなんだろうなと思えてつい笑えてしまう。コールガール(戸田恵子)の部屋で国会議員(木下隆行)が死んでいるエピソードは最初「Wの悲劇」と同じシチュエーションで思い出さずにはいられなかったが、笑える展開に持って行くのは三谷監督らしいところ。死体役のTKO木下がけっこう体を張っていたのが印象に残る。その中にあって老人(浅野和之)のエピソードや、会社の金を持ち逃げしたサラリーマン(西田敏行)のエピソードはついほろりとさせられる。(「ステキな金縛り」でW主演していた西田敏行のエピソードを最後に持ってくるあたりはいいなあ。)最初に書いたように隠し撮りで撮影されているドラマだが、劇中でも本当に主人公のコンシェルジュが今までの客たちとのやりとりを盗撮魔(生瀬勝久)によって盗撮されていて、その映像を視聴者も見ていたという最後のオチも良かった。少し甘いかも知れないが、「ステキな金縛り」と同じく7点を。 [DVD(邦画)] 7点(2025-07-12 18:07:02)《更新》 |
5. 悪名一番勝負
ネタバレ 「悪名」シリーズ第15作。このシリーズは5年ほど前に1作目と2作目を見ただけだったが、その状態でいきなり事実上最後の回である本作を見た。このシリーズに馴染みがあると田宮二郎が出ていないのは違和感を感じるかも知れないが、まだこのシリーズを見るのは3本目ということもあってか、そこは全く気にならずに楽しめた。勝新演じる朝吉のドスの利いた河内弁や豪快なキャラクターはとても魅力的で、座頭市とはまた違った良さがある。それに本作はマキノ雅弘監督が手がけた作品ということもあってか、勝新以外の脇役たちも実にイキイキとしていて、それぞれの登場人物がみんな魅力的に描かれていてその面でも非常に面白かった。マキノ監督の映画ってまだあんまり見てはいないのだが、この頃には東映で任侠映画をたくさん手がけていたみたいで、大映の本作もその頃の任侠映画ブームに乗ってマキノ監督を起用してるんだと思うのだが、東宝の「次郎長三国志」シリーズのようなお祭り的な雰囲気のある作品に仕上がっていたのが嬉しい。「次郎長三国志」といえば本作に津川雅彦がドモリのヤクザ役で出演しているが、重傷を負ったのと引き換えにドモリが治るあたり森の石松を思わせていて、これもマキノ監督の石松への愛着を感じさせていてなんだか嬉しかったなあ。 [DVD(邦画)] 7点(2025-07-11 22:35:54)《更新》 |
6. 大名倒産
ネタバレ 久しぶりに見る浅田次郎原作の映画。今まで見た彼が原作の映画はあまり良い印象がなかったのだが、本作はくどい部分や演出的に変だなと感じる部分も無く、最後まで普通に安心して見ていられた。全体的にテレビ時代劇っぽくはあるし、最後に石橋蓮司がしょっぴかれるところなどまさにそうで、話としては深みも何もないのだが、それが逆に良かったのかもしれない。藩の借金を現代の金額に換算したり、貧乏藩が節約に節約を重ねてピンチを乗り切るのをキャンプやシェアハウスやリサイクルといった現代の言葉に置き換えて説明するのも、何作か同じパターンの作品を見ていてもう見慣れてしまった感はあるものの、その分かりやすさが映画自体の安心感のひとつになっている。主人公の母を演じている宮崎あおいが役のままナレーションでそれを説明しているのでそこになにかシュールさも感じられる。悪役のひとりを演じるキムラ緑子は役の扮装自体が漫画チックでギャグのよう。一か月ほど前に見た「身代わり忠臣蔵」に佐藤浩市の息子である寛一郎が出演していて、雰囲気やっぱ似てるなあと思ったのだが、本作に出演している佐藤浩市を見てやっぱり親子だなあと感じた。わざわざエンドロールのあとにエピローグがあることを冒頭に示すのが良心的。見終わって鮭が食べたくなった。 [DVD(邦画)] 5点(2025-07-07 18:39:40) |
7. 菊五郎の鏡獅子
ネタバレ かなり久しぶりに見た小津安二郎監督の映画だったのだが、これは劇映画ではなく、歌舞伎「鏡獅子」を舞う尾上菊五郎(六代目)を丹念に撮った記録映画で、冒頭部分に歌舞伎の解説ナレーションまで入ってどうやら海外に日本の伝統芸能を紹介する目的で作られた映画のよう。75年ほど前の映像なので今見るとかなり貴重な映像だが、正直、歌舞伎にほとんど興味がないのでちょっと退屈に感じられた。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-07-05 23:11:19) |
8. 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇
渥美清の死後に追悼作品として作られたシリーズ番外編。シューズメーカーに就職した満男が寅さんとリリーのことを回想するという構成。「虹をつかむ男」同様に寅さんのCG合成による「出演」もあるが、内容的には「寅次郎ハイビスカスの花」がほとんどそのままなので、感想はオリジナルと全く同じ。冒頭、満男の回想シーンで「寅次郎忘れな草」と「寅次郎相合傘」の一部分が使われている。 [地上波(邦画)] 5点(2025-06-28 20:01:09) |
9. 喜劇 駅前開運
ネタバレ 社長シリーズと並ぶ森繁久弥主演の喜劇映画シリーズである駅前シリーズのひとつ。第1作「駅前旅館」の豊田四郎監督が再登板している。このシリーズを見るのはその「駅前旅館」以来2本目であったが、シリーズの開始10年という年に作られた本作はやはりシリーズ末期の作品で、あまり面白みを感じられない。(「駅前旅館」もそんなに面白くはなかったけど。)このシリーズは地方ロケが多いらしく、今回の舞台は赤羽。「宝くじ踏切」と呼ばれる開かずの踏切が開くのを待っている人々の光景はいかにも昭和という感じだし、ゴミ焼却炉の煙の問題を背景として出してくるところに当時の世相がうかがえ、その辺りは興味深いが、主演の三人のやりとりをはじめ、笑いの部分になるとなんかイマイチなのが残念で、ぜんぜん楽しめないことはないのだが、せっかく森繁、伴淳、フランキーという喜劇俳優たちを用意しているのになんかもったいない気さえしてしまうし、(その分、脇で出ているナベプロ時代の藤田まことなどが頑張ってるような印象はある。)豊田監督の演出にもやや精彩がない感じ。女優として芝居をしている黒柳徹子を初めて見たけど、やっぱり若いなあ。でもしゃべり方とかは今とあんまり変わっていないような気がする。 [DVD(邦画)] 5点(2025-06-26 17:39:13) |
10. ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
ネタバレ シリーズ第5作。ストーリー的には5作目ということもあってかややマンネリを感じるものの、所属する組織から追われる身となった主人公というのはありがちに感じながらもやっぱりスリリングで面白い。冒頭の飛行機にしがみつくシーンとか、カーチェイスの階段のところとかどことなく往年のジャッキー・チェンを思わせるトム・クルーズのアクションも迫力があり、見ごたえじゅうぶん。ヒロインが味方なのか敵なのかわからない設定も良かった。(確かにイーサンが苦労して手に入れたデータをあっさりと横取りするシーンは不二子みたいだ。)前作にあったギャグシーンを無くして終始シリアスに展開するのも良い。前作同様にイーサンの一人舞台ではなく、イーサンの仲間たちにもしっかりとスポットが当たっているのも良かった。しかし今回はイーサンの超人ぶりに対して悪役の魅力が薄く、その点イマイチだったのと、ストーリーの細かい部分によくわからないところが多かったのが残念だった。この辺りが引っかかってしまい、1点マイナスの5点。まあこういう映画は細かいことを気にせずに楽しめればそれでいいとは思うけど。次回作も出ればまた見るんだろうなあ。 [DVD(字幕)] 5点(2025-06-25 18:17:26) |
11. 父と暮せば
ネタバレ 黒木和雄監督の映画を見るのは「浪人街」に続いて2本目で、黒木監督の「戦争レクイエム三部作」と呼ばれる作品群の中では初めて見る映画。最初は地味な二人芝居にちょっと退屈するのではと心配していたが、見ているうちに不思議と惹き込まれていった。宮沢りえと原田芳雄演じる親子の会話の内容が原爆のことだけに偏っていないのであまり難い雰囲気にならずに見ることができるのがいい。でも、やっぱりこの映画の主題は広島原爆。原田芳雄が一人芝居を演じるシーンや宮沢りえが原爆投下後に友達が死んでいくのを語るシーンではその光景を思い浮かべてしまい辛かった。映画ってのは映像で見せるものだけど、こうやって映像を見せないで語られてることを想像するのは映像見るよりリアルに感じられる。見てとても良かったと思えたし、文句なしで傑作だと思う。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2025-06-24 00:12:06) |
12. 陸軍中野学校 開戦前夜
ネタバレ シリーズ最終作となる5作目。このシリーズでは唯一前作の監督が続投していてオープニングも前作のラストから始まるところなんかについそれを感じる。内容もタイトル通り太平洋戦争開戦をめぐる敵諜報組織との対決というスケールの大きなものだが、少し話の規模が大きくなりすぎていてこれを90分に収めているせいか全体的に散漫な印象が強く、面白くなくはないがはっきり言って凡作という感じ。中野学校女子部が登場するのもかなり唐突に感じる。でも、その中で次郎(市川雷蔵)と今回のヒロインである秋子(小山明子)との関係や対決がそこそこ見ごたえのあるものになっていたのが救い。今回が最後なのは雷蔵の体調面もあってのことかもしれないが、秋子が次郎のこれまでの活動を羅列したり、開戦後のラストシーンなどちゃんと完結編を思わせる部分もあったのは良かったと思う。 [DVD(邦画)] 6点(2025-06-15 21:52:44) |
13. 日本沈没(1973)
橋本忍にしてはやや物足りない脚本だが、やっぱり作り手の気合いが違うのか、去年見たリメイク版よりもこちらのほうが何倍も面白かった。田所博士や山本総理を中心に話が進むため、リメイク版とはだいぶ印象が異なるが、演じる小林桂樹や丹波哲郎の渋い演技もあってか(特に丹波哲郎演じる総理大臣がすごく良い。)とても重厚で見ごたえのある作品になっていたのがとても良かった。リメイク版でやや唐突に感じた小野寺と玲子の恋愛もこれなら一応納得がいく。渡老人を演じた島田正吾も印象的だった。中野照慶による特撮(とくに爆破シーン)が派手すぎるのはちょっと気になるけど、見たあとじゅうぶんに満足できる映画だった。 [DVD(邦画)] 7点(2025-06-12 22:52:17) |
14. 身代わり忠臣蔵
ネタバレ 四十七士に討ち取られた吉良は実は影武者だったという話はこれまでも「必殺忠臣蔵」等で描かれているが、本作は吉良が松の廊下で浅野に斬られた際に致命傷を負い、双子の弟を影武者に仕立てるというなかなか斬新な設定で、忠臣蔵映画としては完全に吉良側の視点から描かれているというのも新鮮。とはいえ、全編シリアスタッチではなく、コメディー映画。脚本が「超高速!参勤交代」や「引っ越し大名!」を書いていた人、それになんといっても吉良と主人公であるその弟を演じるのがムロツヨシというところが大きい。とくに前半は兄の影武者に仕立てられた考証=ムロツヨシのキャラの面白さで突っ切っている感じがあり、ノリに慣れるまで少し時間がかかってしまったが、慣れるとけっこう楽しく見れる。冒頭に大石(永山瑛太)と考証の出会いを描いておいて、のちに遊郭で再会した二人が友人になるという展開も面白く、ここからはどう討ち入りまで持って行くのかに興味が沸いた。後半は大石に考証が自分の正体を明かしたあたりからシリアスさが出てきて、兄の身代わりとして潔く討ち取られようという考証の決意は前半のおちゃらけた彼とは違うかっこよさがあり、とても印象的だった。討ち入りでどうなるかはけっこうハラハラしながら見ていたのだが、そう来るかという感じで思わず納得してしまった。(話は忠臣蔵を基にしたフィクションながら、実際にこうだったとしても違和感はないと感じる。)討ち入りを成し遂げた後、吉良側の生き残りが追ってくるのは今まで観た事のない展開だが、そこから急にラグビーが始まってしまうのはあ然としてしまった。とはいえ、こういうのは嫌いではなく、ブラックさに思わず笑ってしまうものの、やはりちょっとやりすぎで浮いてしまった感じがしたのが残念。 [DVD(邦画)] 6点(2025-06-09 17:53:32) |
15. ぼんち
ネタバレ 「炎上」に続く市川崑監督と雷蔵のコンビ作で、大阪・船場を舞台にした代々続く足袋屋の一人息子の女性遍歴の物語。出来としては「炎上」のほうが上だと思うけど、本作は暗くシリアスだった「炎上」とは違った全体的にコミカルな作風でとても気楽に楽しめた。若尾文子、京マチ子、中村玉緒に加えて越路吹雪や後に市川監督の金田一耕助シリーズでおなじみとなる草笛光子といった女優陣がすごく豪華。出演者の中でいちばん印象に残ったのは雷蔵の母親を演じていた山田五十鈴。「用心棒」や「蜘蛛巣城」ですごみのある怖い役が得意な女優というイメージだったからちょっとなよっとしていていつも自分の母親(毛利菊枝)とベッタリくっついて登場するというある種マザコン気味の役を演じているのを見てすごくビックリした。本当にイメージ変わるかと思うほどのハマリぶりだった。うまい役者だなあ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2025-06-07 23:06:36)(良:1票) |
16. ハウス/HOUSE(1977)
ネタバレ 山口百恵主演の「泥だらけの純情」の同時上映作品として公開された大林宣彦監督のデビュー作で当時中学生だった自身の娘の原案をもとに作られたB級ホラー映画。普通、映画監督のデビュー作というのはまだ作風や映像のスタイルなど何も確立していない場合が多いと思うのだが、デビュー作とは思えないような異様に凝った映像や少女たちを主役にしているなど、既にこの頃から大林監督独特の世界観が確立されちゃってる感じがしてとても楽しい映画だった。主人公の家の表札が「木枯」(父親を演じているのは笹沢左保。)だったり、監督一家がチラリと出ていたり、無声映画風のシーンがあったり、ラーメン屋に寅さんがいたり(松竹に許可はたぶんとってあるんだろなあ。)と遊び心も満載。 [DVD(邦画)] 9点(2025-06-06 08:18:42)(良:1票) |
17. 戦国自衛隊1549
角川春樹製作の「戦国自衛隊」は見ていないのだが、そういう状態で見てもあまり面白いとは言えない作品。脚本が後半ちょっと都合良すぎな感じがするし、市川崑監督の助監督出身で監督デビュー作から3作連続でゴジラ映画を撮っている手塚昌明監督の演出にもゴジラに慣れてしまっているのか軽くぬるく感じてしまう。綾瀬はるかと北村一輝を見て「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」の又兵衛と廉を連想してしまったが、映画の出来のほうはとうぜん「戦国大合戦」のほうが上。また単にタイムトラベルものとしても「ドラえもん のび太の恐竜」のほうが面白いと思う。 [ビデオ(邦画)] 3点(2025-06-05 08:08:09) |
18. 続・新悪名
ネタバレ 悪名シリーズ、かなり久しぶりに見るけど、いつ以来だろうと思って前回見た作品(「新・悪名」)のレビュー確認すると12年前(早!)。シリーズ4作目でタイトルも少々強引感のある「続・新悪名」というのが、まだシリーズとして軌道に乗り切れていない感じがするものの、最後まで安心して見る事ができた。話としては朝吉と彼になついた靴磨きの少女との交流という人情話に、朝吉が巻き込まれた旅一座の興行をめぐる金銭トラブルという任侠映画らしいエピソードが絡むというもの。朝吉と少女のやりとりは微笑ましく、少女の歌の才能を見込んだ清次が彼女をのど自慢に出場させようとするのも面白いのだが、この少女のエピソードがなんか中途半端に終わってしまった印象で、冒頭で母親(ミヤコ蝶々)のひどさを見せていたので、最終的にこの少女はこの母親の元を離れるのだろうと思って見ていると、どうやら最終的にこの母親の元に戻ったようで、なんか見ていてモヤモヤが残り、これだったら旅一座に誘われた時について行った方がこの子にとって幸せだったのではと思ってしまった。それでものど自慢会場での清次とこの母親の漫才のような会話は見ていてつい笑ってしまい、ミヤコ蝶々の喜劇役者としての上手さもじゅうぶんに感じられる。それにこののど自慢の司会者を演じているのが浜村淳(市川崑監督の映画でよく見る俳優の方ではなくてラジオパーソナリティの方。)だったのはビックリ。若いなあ。後半は因島が舞台となり、本作と同じ田中徳三監督が手がけていた1作目、2作目の後日談も出てくるのは見たのがもうけっこう昔なので懐かしく感じた。(麻生イト親分、亡くなってたのはちょっとさびしい。) [DVD(邦画)] 7点(2025-06-02 18:03:20) |
19. チャップリンの黄金狂時代
ネタバレ 前半の山小屋での極限状態のシーンと後半の恋のシーンのつながりが若干悪いような気がするけど、全体的にはとても面白かった。前半のシーンで、あまりの空腹に自分の履いていた靴を煮て食べたり、ジムがチャップリンを鳥だと思ってしまうシーンは笑えると同時にもし自分がこのような状況に置かれたらこうなってしまうだろうなあと考えるるとちょっと恐ろしくなった。後半で食事に誘ったヒロインとの楽しいパーティが夢であったというシーンがちょっと切ない。クライマックスの傾いた山小屋シーンは「加トちゃんケンちゃん」のコントに通ずるものがあり、この映画の中でいちばん笑えた。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-06-01 16:20:48) |
20. 馬鹿が戦車(タンク)でやって来る
「男はつらいよ」以前の山田洋次作品はコレしか見ていないが、寅さんシリーズ始めたあとのそれ以外の作品と違ってジメジメしてなくて、それでいて、ちゃんと社会的なメッセージもある面白い映画に仕上がっている。山田監督はこの5年後に「男はつらいよ」シリーズの1作目でブレイクするわけだが、無名時代の作品をもっと見たいと思った。迷ったけど満点つけてしまおう。 [ビデオ(邦画)] 10点(2025-06-01 14:05:28) |