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1.  安城家の舞踏会 《ネタバレ》 
階級の消滅によって没落した華族 安城家の最後の一夜を描いた吉村公三郎監督の映画。実際に新憲法が公布され、華族制度が廃止された年の映画で、当時としてはかなりタイムリーな内容。それを今見るのはいくらなんでもいかにも古い映画に感じてしまうのではと見る前は思っていたのだが、実際に見てみると歴史の1ページを垣間見ているような感じで、最後まで興味深く退屈することなく見ることができた。今までの立場がなくなることへの安城家の人々のそれぞれの思いも繊細に描かれていて群像劇としても見ごたえのあるものになっているが、中でも父 忠彦(滝沢修)や長女 昭子(逢初夢子)が動揺しきっている中、一人物おじせずにしっかりしている次女 敦子(原節子)と達観しきったような長男 正彦(森雅之)。この二人がとくに印象的で、この二人の存在がこの映画を引っ張っている。話がほぼ安城家の敷地内のみで展開し、出演者も舞台出身者が多く、全体的に舞台劇臭さもあるのだが、吉村監督の演出は冒頭から冴えていて、いかにも映画的で、このおかげで冒頭から引き込まれた。信じていた新川が実は自分の肩書だけを信用していたと知り、落胆する忠彦など、人間関係の気薄さや、人間の弱さなどもしっかりと描かれているのもよかった。戦後2年ほどのころの映画なのだが、どこかヨーロッパあたりのおしゃれな外国映画のような雰囲気が漂っているのも新鮮でちょっと驚く部分でもあるのだが、華族という世界のエレガントさを表現するにはこの日本映画離れしたような雰囲気が最適で、これが見事に成功している。舞踏会を背景に描かれるそれぞれの人間模様も見どころなのだが、やはり舞踏会が終わった後のラストシーンの忠彦と敦子のダンス。舞踏会でのドロドロした人間模様が描かれたあとのこの二人のダンスシーンはそれまでの人間模様のドロドロさがウソのような一切の汚れもない美しさがなんとも印象に残る名シーンで、ここに作り手である吉村監督や脚本を担当した新藤兼人監督のメッセージが集約されているような気がする。カーテンから差し込む朝日はこれから始まる安城家の人々の新しい人生の希望の光なのだ。(このときカーテンがダンスをするように風に舞っているのがなんともニクイ。)最初に書いたように見る前は不安のほうが大きかったのだが、じゅうぶんに面白かったし、見終わったあとの余韻もたまらなく、本当に見てよかった。ところで、原節子はこの映画の2年後に同じ新藤兼人脚本の「お嬢さん乾杯」(木下恵介監督)でも主人公の没落華族の令嬢を演じているが、それもなかなか興味深い。小津作品や成瀬作品で市井の人を演じていてもハマる人なのだが、こういうお嬢様役もやっぱり良いなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-04-08 00:30:03)
2.  長屋紳士録 《ネタバレ》 
小津安二郎監督の戦後第一作で、長屋を舞台に親とはぐれて拾われてきた少年の面倒をいやいやながらに見ることになった女性・おたね(飯田蝶子)を主人公に、人情味あふれる長屋の人々がイキイキと描かれた小津監督らしい人情喜劇で、戦後第一作にしてかなりの傑作だと思う。子供を無理やり押し付けられ、最初は邪険に扱うもだんだん情が移っていくおたねの心情の変化が丁寧に描かれていて実に良い。おたねの心情の変化が最初に感じられるのはやはり干し柿のシーン、盗み食いしたと疑われて怒られ、疑いが晴れても泣き止まない幸平に対して干し柿を差し出すおたねの優しさがなんともあたたかくてたまらないし、次の日おねしょをした幸平が家出したのを本気で心配しているのも良い。(また最初のように幸平が笠智衆演じる田代に拾われて戻って来るのが笑える。)そのあとの写真館のシーンもこの子とずっと一緒にいたいというおたねの心情が良く出ていて、しかし、誰もいない写真館の部屋を映すことによってこの後の展開を暗示しているのが切なく、忘れられない名シーンだ。その夜に幸平の父親が迎えに来て別れた後のおたねの涙は幸平が実の父と会えて良かったというのと、別れることになったつらさ、両方ある涙だと思うのだけれど、とてもあたたかい涙で、とても感動できた。主演の飯田蝶子の演技も素晴らしく、小津作品で飯田蝶子と子供というとやはり「一人息子」が思い浮かぶが、本作もそれに並ぶ飯田蝶子の代表作といえるだろう。小津監督の喜劇センスや子役に対する演出も相変わらずうまく、幸平を茅ケ崎に連れて行くのをくじで決めるシーンのイカサマや、置き去りにしようとした幸平がおたねにずっとついてきて結局一緒に戻ってきてしまうシーンも笑える。もちろん、笠智衆や河村黎吉といった脇役陣も良い味を出していて、中でも笠智衆の口上シーンは印象的だった。それにおたねとおきく(吉川満子)の何気ない会話シーンも良かった。チョイ役ながら殿山泰司や小沢栄太郎が小津作品に出演しているのは珍しい。冒頭から戦後間もない時期であることを感じさせる映画なんだけど、いちばん最後のシーンであふれかえった戦災孤児たちが登場したのを見てこの時代こういう光景が当たり前のようにあって、まだまだ戦争の傷跡が身近にあったことを考えさせられた。
[DVD(邦画)] 8点(2017-06-04 18:41:28)
3.  わが恋せし乙女(1946) 《ネタバレ》 
木下恵介監督の戦後第2作。牧場を舞台に血のつながらない兄妹を描いた映画で、戦後の開放的な雰囲気も伝わってくるし、「陸軍」のあとに見ると、木下監督が自由にのびのびと本作を手掛けているのが分かる。いつしか妹(井川邦子)に恋心を抱いた兄(原保美)、しかし妹には好きな男(増田順二)がいて・・という展開はシンプルではあるが、この増田順二演じる野田を戦争で足に障害を負った設定にしているのは木下監督らしく社会性があるし、戦後1年ちょっとという時期の映画だけにまだまだ戦争の傷跡が生々しかったのだと感じることができ、これをリアルタイムで見た人々はきっと何か感じる部分も多かったのではと考えてしまった。妹に恋をしていて、母親(東山千栄子)も二人の結婚を願っている中にあって、それでも妹が本当に好きな相手と結ばれて幸せになることを願い、身を引く兄は切なさも感じるが、それ以上に妹の幸せを願う兄としての男らしさを感じられる。このクライマックスからラストにかけてが良いし、見た後の後味もよかった。今までなんとなく見るのを躊躇していて「はじまりのみち」を見たのをきっかけに見た映画だったが、見て正解だった。音楽はこれがデビュー作となり、ここから兄である木下監督の映画の音楽をずっと担当することになる木下忠司で、この点でも重要な映画だと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2016-09-17 14:04:03)
4.  陸軍 《ネタバレ》 
田中絹代演じる母親が出征していく兵隊の列にいる息子をいつまでも見送るラストシーンが有名な木下恵介監督による戦意高揚映画。このラストシーンだけは何回も見ていた(ここだけ見ても泣ける。)のだが、最初から最後までちゃんと見たのは今回が初めて。戦意高揚映画ということもあり、ラストシーンだけが浮いていないかと心配だったのだが、そんなことはなく、戦意高揚映画でありながら、それを保ちつつも木下監督らしさはちゃんと出ていて、親子の情や、人間としての在り方がちゃんと描かれた映画になっている。高木(笠智衆)と桜木(東野英治郎)は事あるごとに喧嘩をしているが、互いの息子は戦友同士、だから父親同士ももっと仲良くしてほしいと高木の息子が訴え、その思いに応えようとする高木。このシーンは考えさせられるものがあるし、互いを思いやる心の大切さも感じることができる。高木と桜木の二度目の喧嘩のシーンで「日本は負けるかもしれない。」みたいなセリフがあり、(これが喧嘩の原因となる。)驚かされるのだが、おそらく、木下監督の本音であり、当時、日本の国民の中にもそういう人が少なからずいたのではないかと思えてくる。息子が戦地へ旅立った桜木がその安否を何度も何度も仁科大尉(上原謙)に尋ねるシーンも、建前上は天皇陛下に差し出した子だが、本音は息子のことが心配でたまらないという桜木の父親としての気持ちがストレートに出ていて、桜木に感情移入しないわけにはいかない。声高らかに反戦をうたってはもちろんいないが、ここにも木下監督の戦争に対する憎しみ、怒りといったものが、静かに、しかし、確実に感じられる名シーンとなっていて、ラストシーンとともに忘れることができない。そしてそれは、息子を戦地へ送り出す高木の妻 わか(田中絹代)とて同じことで、戦地へ行くことになった息子を喜んではいても、いざその日が来るとつらいから見送りには行かないという母。このあたりはこの母の葛藤がよく分かって非常に切ない。しかし、ラッパの音が聞こえると居ても立ってもいられず飛び出していくのはやはり人間としての母親の息子に対する愛や情の深さ、これをじゅうぶんに感じるし、群衆の中をかき分けて息子を追う母親の姿は、子を思う母親の気持ちがその表情を見ただけで痛いほど伝わってきて、やっぱりすごく感動させられるし、最後に手を合わせて息子の無事を祈る母親の姿を見て、こちらまでもが息子に無事に帰ってきてほしいと思えてくるのである。先ほども書いたが時局柄反戦をうたうことはできない。しかし声に出さなくても、戦争の愚かさ、悲しさを見事に訴えている。まぎれもない木下監督の代表作で、日本映画の名作の一本と言える映画だろう。
[DVD(邦画)] 8点(2016-09-04 00:45:27)(良:1票)
5.  ハワイ・マレー沖海戦 《ネタバレ》 
戦時中に東宝が製作した戦意高揚目的の国策映画。前半は予科練での生活がメインで描かれているが、予科練というところがどのようなところであったのかがリアルに描き出されていて興味深かった。でも、こういうのは実際に戦争をしている時代に国策映画として作られた作品だからこそいやでも出るリアルさなのだと考えるとなにか恐ろしくなってくるのも事実。戦後の日本の戦争映画のような反戦的メッセージも当然なく、反対に主人公の青年が何の疑問もなく予科練を経てパールハーバーで戦果を挙げるまでが描かれていて、今見ると日本ではないどこか別の国の映画を見ているようだが、当時はこの主人公のような若者は多かったのだろう。その主人公青年の物語も一時間半ほどしてやってくるクライマックスの真珠湾攻撃のシーンになるとバッタリと消え失せてしまい、そのまま主人公の物語が再開することなくラストまでいってしまうのは驚くが、ここに至って、映画の物語すらもただの建前にしか過ぎず、本当に国民の戦意高揚を図るためだけに作られた映画だということを強く感じ、これがプロパガンダなんだなと痛感した。円谷英二監督の原点といわれるこのクライマックスの真珠湾攻撃シーンは本当に実際の記録映像を見ているようなリアルさがなんとも言えない迫力で、敵国であるアメリカの戦艦を参考にするなど資料が少ない中、よくここまでできたものだと思えるもので、のちの東宝特撮映画での円谷監督の活躍の片鱗を見ることができる。ラストはこの戦争の結果を知っている目からすると虚しいものがあるが、それも含めて戦争当時の日本人をリアルに知るという意味でも価値のある映画だと思う。(円谷監督の原点であるということとともに。)ちなみにこの主人公を演じた伊東薫という俳優は初主演となる本作の撮影後に出征し、戦死してしまったという。それを知った上で見るとなんだか悲しくなってしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-04-18 00:54:12)
6.  晩春 《ネタバレ》 
「東京物語」と並んで名作と言われている小津安二郎監督の映画だが、今回、ようやく見た。前半はやや冗長に感じる部分があるものの、思っていたよりも見やすく、ほとんどだれることなく見ることができたし、見ていてだんだん引き込まれてしまった。父親を心配するあまり結婚を拒む娘と、娘の結婚を願う父親。この二人の描写が秀逸でとても見ごたえのあるものになっている。笠智衆演じる父の再婚話を知った原節子演じる娘が二人で能を見に行った帰りに父に見せる態度など、娘の描き方はややストレートなのに対して、父親のほうは何を考えているのか分からない描き方で、ちょっと鈍感な感じがするのだが、ラストに至ってこの父親の複雑な心境が痛いほどに伝わってくるような構成が見事で、娘を送り出した後に姪との会話で「きっと遊びに来てくれるね。」などと言っている時点で既にこの父親の寂しさはじゅうぶんに伝わってくるが、なんといってもラストシーン、小津監督は最初この映画のラストシーンで父親が泣くというふうに設定していたのを、演じる笠智衆の注文で項垂れるというふうに変えたというが、このラストシーンが素晴らしく、娘を嫁がせ、一人になった父親の悲しみがよくこちらに伝わってくるまさに名シーンだ。(このシーンで父親が泣いてしまうと、映画の印象が少し変わってしまうかもしれない。)ほかにも父と娘が結婚や幸せについて語り合う夜のシーンも見ていてつい感動してしまう名シーンだろう。劇中で交わされる言葉の面白さや、コメディリリーフ的存在の杉村春子(姪の結婚相手の呼び方について話すシーンや財布を拾うシーンは面白すぎ。)など笑えるシーンが多いのも小津監督らしく、安心して見ていられる。実は今まで敷居が高くて敬遠していた映画だったのだが、まさにこれぞ名作と呼ぶにふさわしい映画で、素直に見て良かったと思える映画だった。本作を敬遠していたおかげで同じように嫁いでいく娘を描いた小津監督の映画はほとんど見ていないのだが、また小津監督のこういう映画を見てみてみたいと思った。そうそう娘の結婚相手が一度も直接画面に登場せず、登場人物たちの会話から想像してみるのだが、ゲーリー・クーパーに似ていて名前が熊五郎・・・。いったいどんな男なのだろう。ちょっと気になる。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-11-06 01:13:12)
7.  歌麿をめぐる五人の女(1946)
溝口健二監督が終戦の翌年に手がけた時代劇。タイトルから浮世絵師・喜多川歌麿の女性遍歴を描いた映画かと思っていたが、どうも違う。出てくる女たちは田中絹代以外はほとんど印象に残らず、はっきり言って誰が誰なのかもよく分からない。歌麿の浮世絵師としての生きざまを描いたものとしても物足りなさが残る。それに物語にも入り込みにくかった。溝口監督らしさは田中絹代演じるおきたの描き方や、溝口映画では定番の長回しなどに見られるが、全体として深みのない映画で、凡作の域を出ていない。この時代の溝口監督は低迷していたようだが、この映画もその一つではないだろうか。ただ、田中絹代は好演していて、晩年の溝口作品の顔としてのその後の活躍を予感させる演技を既に見せており、これから溝口監督と田中絹代は数々の名作を生み出していくことになるのだなあと感じることができる。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2012-12-27 17:33:52)
8.  風の中の牝雞 《ネタバレ》 
小津安二郎監督の戦後2作目。今ではちょっと考えられないような話かもしれないが、終戦直後の時代はこういう話も普通にあったんだろうなと思いながら見ていた。田中絹代は相変わらず母親役がはまっていて、病気になった子供のために一度だけ不貞を働いてしまうという役柄だが、彼女が演じるからこそそういう設定にも説得力が感じられるのだろう。ただ、心理描写としてはうまくいっているとは言い難いものがあり、彼女の演技力に助けられた部分が大きいように思う。佐野周二演じる戦争から帰ってきた夫の気持ちは分からないわけではもちろんないが、葛藤や苦しみといったものがじゅうぶんに描き切れていないために、なんか単なるダメ男にしか見えず、ほとんど感情移入ができないままだった。最後に至っても階段から転落した妻を気にかけているように見えるが、うわべだけな印象しかないので、最後までこの夫を好意的に見ることができなかったし、一応ハッピーエンドな終わり方でもなにかしっくり来ないままだ。でもそのラストシーン自体は見事に映画的な演出がされていて印象には残るし、田中絹代が階段から落ちるシーンも何本か見たほかの戦後の小津監督の映画にはないような派手さがあり、印象に残る。ただ、全体としてはやっぱり凡作という感が強い。そうそう、老け役ではなく、若々しさを感じられる役柄の笠智衆はけっこう新鮮だった。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2011-09-23 13:31:21)
9.  破れ太鼓
木下恵介監督がバンツマを起用して手がけた喜劇。冒頭なかなかバンツマ演じる頑固親父を出さずに家族の彼に関する会話だけでどんな人物なのか見ている側に想像させる構成はなかなかうまく、いざバンツマが登場した時のインパクトも大きい。そのバンツマの雷親父ぶりもその存在感と相まってすごく、見ていてとても迫力のある演技をしていて、豪快さの中にコミカルさも漂わせていて、「無法松の一生」や「王将」とはまた違った印象がある(背広にネクタイ姿というのも新鮮だった。)が、やはりラスト近く、次男の弾くピアノを聴きながら昔を思い出して泣くシーン、いかにも木下監督らしい叙情的ないいシーンであるが、木下監督の演出に見事に応えて見せたバンツマの演技がとくに素晴らしく、とても感動し、あらためて名優と感じた。もちろん木下監督のコメディー・センスも発揮されていて、演劇の練習をしている次女(桂木洋子)や、大泉晃演じる三男もどこかコミカルで、また主題歌もこの主人公の性格をよく表していて面白い。これを作った音楽担当の木下忠司が俳優として次男役で出演しているのはビックリ。さっき書いた主人公が次男のピアノを聴くシーンで、自らの思いをぶちまけた父親に対してこの次男がかける言葉もまた感動的だった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-04-01 18:44:06)(良:1票)
10.  宮本武蔵(1944) 《ネタバレ》 
溝口健二監督による「宮本武蔵」で、加藤泰監督のものと同じく松竹の作品だけど、原作は吉川英治ではなく、「地獄門」や「真珠夫人」で知られる菊池寛なんで、お通や沢庵和尚などは登場しない。もろに戦時中の作品ということもあってかやや退屈に感じる部分が多かったし、正直言ってストーリーがよく分からなかった。しかし、溝口監督お得意の長回しや映像の美しさといったものがこの作品でも感じられるのはやっぱりさすがと思う。一方で戦意高揚映画という枠の中で作られたゆえかあまり演出に余裕というものが感じられず、全体的な出来としては凡作という印象が残った。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2009-09-24 02:40:09)
11.  銀嶺の果て
黒澤明監督や本多猪四郎監督とともに山本嘉次郎監督の助監督をやっていた谷口千吉監督のデビュー作となる山岳サスペンスアクションで、主役の強盗犯の一人を演じる三船敏郎もこれがデビュー作。戦後2年しか経っていない時代の作品なので娯楽アクションとしては面白いのかどうか不安な面もあったけど、脚本を書いているのが黒澤監督だからか、娯楽性はもちろんだが、人間ドラマとしても見ごたえのある骨太な作品に仕上がっていてなかなか面白かった。三船はこの頃からギラギラした演技で横暴な強盗犯を演じていて、もう既に後のキャラクターが出来つつあるのには驚くし、本作の脚本がのちに黄金コンビとして数々の名作を世に放つ黒澤監督というのも興味深いものがある。志村喬が共演してるので途中から何だか黒澤映画を見てる気分になった。ラストの志村喬と若山セツ子のやりとりと「オールド・ケンタッキー・ホーム」が泣ける。それから音楽といえば忘れてはいけない、伊福部昭にとっても映画音楽デビュー作であるのだが、谷口監督と揉めたというスキーのシーンの音楽をはじめ叙情的な音楽がどれも画面と調和していて素晴らしい。三船もそうだが、伊福部昭もこの後、日本映画の歴史に名を刻んでいくことになるんだなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-02-19 11:57:04)(良:1票)
12.  静かなる決闘 《ネタバレ》 
西部劇の邦題のようなタイトルだが日本映画である。戦時中の野戦病院で患者に梅毒をうつされた若き医者を描いた黒澤明監督の初期作。冒頭の大雨の降らせ方や野戦病院の暑苦しい雰囲気などはいかにも黒澤監督らしい描写で、主人公の医者を演じる三船の「赤ひげ」とは違う渋みがかっていない若さや「酔いどれ天使」に続いて医者を演じる父親役の志村喬の味わいのある演技も良かった。が、三条美紀演じる主人公の婚約者が何も知らされないまま別れてしまうのはちょっとかわいそうすぎる気がする。黒澤監督は基本的に男性的な作風の監督であるが、女性の心情とかそういうものを描くのは苦手なことがはっきり分かってしまった感じがして、ここはもう少し女性の心理描写のうまい監督だったらとつい考えてしまった。でも、昔は黒澤作品大好きだっただけにやっぱりこれは自分の映画の好みの変化によって思うことかもしれない。ただ峯岸看護婦役の千石規子はすごく良かったので彼女に1点プラスの6点。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2008-08-21 23:42:38)
13.  青い山脈(1949)
二部構成三時間の大作と聞いて、ちょっと躊躇してしまったが、実際見始めるとゆったりと展開していく映画にも関わらず長さをあまり感じずにだれることなく見られた。とにかく、映画全体に漂う明るく爽やかな開放感がたまらなく心地よい。10年くらい前に1度だけ見た吉永小百合主演の日活版にも爽やかさはあったが、もう全然違った印象を受ける。おそらくこの違いは、日活版は青春アイドル映画的爽やかさであり、この映画の爽やかさと心地よさは既に青観さんが指摘されてるように終戦間もなき頃の貧しい時代に作られたことが影響してるのだろう。これだけでもこの映画が製作されてから60年近く経った現在でもなぜ名作と呼ばれているのかが分かる気がする。出演者に目を向けると、池部良や伊豆肇なんかは当時既に学生役を演じるには無理のある年齢だというのに、違和感がほとんどないし、原節子や木暮実千代の美しさには思わず目を奪われてしまう。特に木暮実千代がこんなに綺麗な女優だったとは今まで何本か出演作見てるのに思わなかったのが不思議なくらいだ。杉葉子や若山セツ子も可愛らしかった。今井正監督の作品を見るのは初めてで、書籍などでかたい作風の監督というイメージがあったのだが、会議のシーンなど笑えるシーンも多く、全体的にそんなに深刻にならずに見られたのも良かった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-04-14 01:34:59)(良:3票)
14.  素晴らしき日曜日
一組の若い貧しいカップルの日曜日のデートを描いた黒澤明監督には珍しいロマンス映画。1947年という戦後まだ2年しか経っていない頃の作品のため、焼け跡の町や闇屋、戦災孤児と思われる浮浪児など、終戦直後である製作当時の時代風景があたり前のようにリアルに描かれてるのが興味深いし、男くさい作風のイメージが強い黒澤監督が初期にこのような慎ましい作品を作っていたことも正直言って驚いた。(黒澤作品と知らずに見たら絶対に別の監督の作品と勘違いしてしまいそう。)主役のカップルを演じる二人も実によく、特にすぐに悲観的になり落ち込んでしまう彼(沼崎勲が好演。)を前向きに励ます辛い境遇にいながらも決して明るさを失わないヒロインを演じた中北千枝子が素晴らしく、決して美人とは言えない顔立ちにもかかわらず見ているうちにだんだんと可愛く魅力的に見えてくる。どちらかと言えば気性の激しい人物を演じる女優が印象に残る事の多い黒澤作品においてこんなに純粋なヒロインが印象に残るのもまた珍しいことである。有名なシーンである画面から観客に拍手を求めるシーンではつい小さな拍手をしてしまったが、機会があればこのシーンは一度映画館で見てみたい。
[DVD(邦画)] 7点(2008-03-26 20:21:32)(良:1票)
15.  わが青春に悔なし
黒澤明監督が自身では脚本を書かずに演出した2作品のうちの一本。前半はストーリーがつかみ辛くやや退屈したが、後半はけっこう引き込まれた。特に原節子演じる主人公が野良仕事をするシーンはかなり壮絶(「七人の侍」エンディングの田植えシーンとはえらい違い。)で、そこに黒澤監督らしいエネルギッシュさを感じるし、その演出に見事に応えている原節子の熱演ぶりがまたすごい。以前原節子を見たのは木下恵介監督の「お嬢さん乾杯」だったと思うけど、その時の令嬢役とはまるで違う逞しい女性を堂々と演じていて驚かされる。黒澤監督の作品の中では珍しく女性の生き方について描いている点も(描き方がちょっと男っぽく感じられてしまうのだが)新鮮だった。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2008-03-16 16:41:16)
16.  ロープ
全編アパートの一室だけで展開されるサスペンスで最初に犯人が殺人を犯すところを見せるというところに「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」の原点のようなものを感じた。しかし、それなりによく出来ていて面白いと思うものの、ちょっと舞台的すぎてやや退屈な部分もあり映画的魅力をあまり感じなかったのが残念。
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-11-01 03:09:25)
17.  
「雨月物語」で夫婦役を演じていた水戸光子と小沢栄太郎のほぼ二人芝居で構成された木下恵介監督による小品。内容的にはそんなに期待してなく主演の二人の共演が見られればそれで満足だったのだが、なかなか完成度の高い作品で物語としてもなかなか見ごたえがあって予想以上に面白かった。勝手に呼び出しておいて「旅行だ。」とか「一緒に行ってくれ。」とかいう小沢栄太郎がちょっとストーカーっぽく感じた。いちばん最後の水戸光子のセリフも印象的。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2006-07-06 02:22:07)
18.  お嬢さん乾杯 《ネタバレ》 
木下恵介監督のコメディー映画といえば田舎が舞台だった「カルメン故郷に帰る」しか見たことなかったので、こういう都会的なコメディーも撮れることをしって幅の広い監督なんだなあと思った。佐野周二と坂本武のたたみかけるような冒頭の会話シーンからテンポがよく、最後まで面白く見られる。もちろん原節子の美しさも特筆もので、この映画では没落貴族の令嬢という役柄もあってか、今まで見た出演作(そんなに見ていないということもあろうけど。)の中でいちばんきれいに撮れているように思えた。村瀬幸子に佐野周二のことをどう思うのか聞かれた彼女が「惚れております。」と言い残して佐野の後を追うラストシーンが気持ちよかった。佐野と佐田啓二が道路をバイクで疾走するシーンもコミカルで印象的だ。シリアスな社会派というイメージの強い新藤兼人が脚本を書いているというのがちょっと驚きである。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2006-02-09 16:58:34)(良:1票)
19.  ダンボ(1941) 《ネタバレ》 
幼いころに見た時はとにかくダンボが可愛らしかったこととピンクの象が怖かったくらいしかなかったが、今見るとけっこう重い話だったんだなと気づかされる。耳が大きいということだけでほかの仲間の象から差別的な扱いをされ、さらに子供の悪戯から守ろうとした母親のジャンボからも引き離されてしまうダンボがなんとも悲しくて仕方がないし、見ていてこれは人間にも当てはまることのように思え、子供向けではあるが、子供だましではなくちゃんと大人にも伝わるメッセージのある作品だと素直に感じられた。ほかの動物たちと違って主役であるダンボに一言もセリフがないのが印象的だが、それも映画としてなかなか効果をあげていたと思う。ダンボを励まし、支える存在となるティモシーが実に良く、たとえ自分と違っていても他人の気持ちを思いやることの大切さというものをダンボとティモシーの関係を通してうまく描いているし、この「自分と違う他人を認める」ということが本作のテーマではないかと感じた。ティモシーに促されてジャンボの檻の前に来たダンボがジャンボに子守唄を歌ってもらうシーンがとても感動的だ。そしてコンプレックスであった大きな耳を翼にして空を飛ぶクライマックスのダンボのなんとも嬉しそうな表情が忘れられない。まさにコンプレックスを最大の武器にした瞬間で見ていて思わず笑みがこぼれた。ちなみに幼いころに見て怖かったピンクの象のシーンはストーリーとほぼ無関係なのだが、今見てもなかなかインパクトがあり、幼いころに見て怖かったのも納得。でも、今見るとそれが逆にシュールで面白い。(2022年8月4日更新)
[DVD(吹替)] 7点(2005-12-30 01:48:11)
20.  一番美しく
黒澤明監督の第2作。黒澤には珍しい女性映画で、尚且つ戦時中という当時の時局柄、戦意高揚映画である。そのためか、見ていてもあまり面白いものではなく、見ていてけっこう辛かった。とくに主人公が無くした小さな部品をひとりで夜中に何時間も探すシーンは胸が詰まりそうになった。それとタイトルクレジットが一切なかったのが驚き。(一応、エンドクレジットはあったけど、あれは放送局のオリジナルっぽい。)
[CS・衛星(邦画)] 5点(2005-09-21 18:09:10)
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