1. 叫びとささやき
以前テレビで楳図かずおの部屋が紹介されてましたがどこもかしこも真っ赤でした。あんな部屋にいたら少しは精神的に影響があるかと思います(楳図作品から想像するに・・)。私は本作を観てる間、妙に不安で落ち着きませんでしたが、赤い部屋の影響かも?と思ってしまいました。本作は何事も起こりそうにないほど静かなのに、何が起こってもおかしくないと感じられる恐怖に近い緊張感が画面から伝わってきます。ベルイマンを観た後ではそこらへんの監督に対してセンスがあるなどと褒めるのは恥ずかしくなります。宗教や人生の意味などに関する思想については、私には語る能力がありませんので、以下、自分に引きつけた私的な感想を述べたいと思います。私は特に登場人物の徹底的な孤独に心揺さぶられました。妹に触れられることすら拒否するコミュニケーション不全のくせに人格同一化のような親密な愛を求め、偽善を徹底的に憎む長女。偽善を肯定し、愛に対する諦念が心にひそむ三女。凄まじいくらいの孤独を目にして心が痛いです。監督は愛や人間同士のつながりを徹底的に疑いながら、それでも必死に(次女が姉妹にすがりつくように)奇跡のようなものを追求しているかのようです。人間は普段こんな突き詰めたところで生きちゃいないでしょう。正常な人間は描かれてないのかもしれません。でも私は、私自身が人間失格なのかもしれないけど、この映画に真実を突きつけられてるような気がするのです。 10点(2004-08-03 22:38:38)(良:1票) |