1. ビッグ・リボウスキ
コーエン兄弟の映画からいつも感じるのは、乾燥した空気。この感覚が日本のジトッとした雰囲気との違いを感じさせる。その分ホワイトロシアンがうまそう。しかし軽快に見えてかなり長く感じるのはなぜだろうか。正直疲れる。コーエン兄弟の常連達は見ているだけで相当インパクトがあるだけに、そいつらがニョロニョロ、チョキチョキと立ち回ると、ついていくのがしんどい部分がある。 6点(2004-07-10 23:50:42) |
2. イングリッシュ・ペイシェント
この映画を、「ユージュアル・サスペクツ」や「レッド・ドラゴン」に見られる、表情を奪われた重症患者を語り部とする映画と比較してみた。前掲に見られるようなグロは一切排して、一人の人間の、魂の懺悔、あるいは後悔といったものを美しく表現している。肉親でないにもかかわらず、こういう患者を献身的に介護できる人間の感情が少しできたようにも思える。主演のレイフ・ファインズは、デーモン・ヒルに似ているな、と思いつつ(笑)、感情を抑えながら、一方では号泣でその心情を表現しているのは、少しアイデア不足か?とも思っていた。この人が「シンドラーのリスト」の、発狂少尉だと知ってビックリ。死に行く人間の蜻蛉のような命の美しさは、演技力で表現しているものだったのか。 9点(2004-04-18 07:11:08) |
3. L.A.コンフィデンシャル
残念ながら、この映画をしっかりした脚本ととらえることは出来なかった。もし映画を描く中で、観客に何かを読み取らせるために、「それが当たり前だ」「当然だ」と腑に落ちさせるような、映画全編に敷き詰める「常識」があるとするならば、この映画については論理的なそれを見出すことができない。ガイ・ピアースは、犯罪者(警察だったわけだが)に父親を殺されたという動機で、汚職や馴れ合いに手を染めない誠実な警官を目指している。映画の冒頭では、このガイ・ピアースの行動を、情に欠けた堅物として、ラッセル・クロウはじめ同僚は敬遠する、という描き方をしているが、どう考えても後者の連中のしていることは、腐った組織のそれとしか見ることができない。ガイ・ピアースに正当性があることは明白であり、彼を異物扱いで捉えた脚本展開には違和感を感じざるを得ない。百歩譲って、その腐った組織側からの視点で描かれた映画だったとしても、ガイ・ピアースとラッセル・クロウ、ケビン・スペイシーが結びつくのは、彼らの知られざる「正義への信念」が互いに見えた瞬間であったのではなかろうか?そうであれば、最後に、上司に対する恐喝まがいの裏取引でめでたしめでたしとなるのはおかしい。ガイ・ピアースは父親の墓前にどう報告するのか?ラッセル・クロウはやっと芽生えた友情をどう解釈するのか?期待通りの筋書きにするにも、あっと驚く筋書きにするにも、「腑に落ちる」ものがなければ、気持ち悪さだけが残る。ケビン・スペイシーの死に行く様に敬意を表して7点。 7点(2004-04-01 21:02:21) |
4. パルプ・フィクション
トラボルタの卑猥な目つきが嫌いだった。サミュエルLジャクソンの垢抜けないところが好きになれなかった。ハーベイ・カイテルの不器用さだけを売りにしたキャリアに物足りなさを感じていた。クリストファー・ウォーケンのお高く止まった感じが鼻についていた・・・。この映画を見て、彼らが大好きになった!とにかく、登場人物が生き生きしている。それぞれのエピソードを時系列に並べず、おそらく順序は最後だと思われる、人々の結末が見える部分を話の真ん中に織り込み、ロール状に組みたてたことが功を奏して、登場人物がいつまでたっても死なない、永遠のものとして存在しているかのような状況を醸し出している。映画を心に残るものにするために、ハッピーエンドの後を自由に想像させる映画はよく見るが、内側に未来が練りこまれて、しかも終わっていない映画というのは珍しい。たとえば12モンキーズなどは、輪廻ではあっても、始まりと結末が見えているので、その中で話は完結してしまう。この映画は本で言うならば、新たなエピソードを、新たな「折」としてボンボンと放り込んでいける可能性を秘めている。多分これからも繰り返し、好きなシーンをパラパラとめくって見ていくことだろう。その辺にポイと置かれた三文小説のように。余談だが、スティーブ・ブシェミが出演していると聞いていたので、どこに出ているのかと見ていたが気がつかず、最後のクレジットでやっと分かった(笑) 10点(2004-03-21 02:59:52)(良:2票) |
5. テルマ&ルイーズ
映画界のターニングポイントで常にマイルストーンをおき続けてきた同監督の映画にしては、見るべきところは少ない気がした。ストーリーや見せ方は、「俺たちに明日はない」や「ミッドナイト・ラン」に酷似しているが、それ以上に感じるのは、「解釈」という点に新鮮味が感じられないところ。崖から飛び降りて「華と散る」美しさとは別のものを見せて欲しかった。せっかく「女性のロード・ムービー」なのだから、違った友情の昇華の仕方もあったのではないか。あのままでは、「レイプの犠牲になった二人」にすぎず、後味が悪い。たとえば、潔くつかまって新たな人生を歩んでいる二人、という切り口など。生き残るにせよ死ぬにせよ、「こうなるのか!」と驚き納得する結末でないと、ただのロード・ムービーといわれても仕方が無いのではないか。 6点(2004-03-15 00:44:11) |
6. 世界中がアイ・ラヴ・ユー
まあまあ面白かった。しかし映画を見ることで何か大きなものを得ようとか、そういう方にはお勧めできない。みんな幸せになってよかったね、という「合法ドラッグ」のような作品だ。キャストが贅沢なので救われる。 6点(2004-02-28 21:17:47) |
7. レオン/完全版
シチュエーション的にはとても楽しめた。しかしなんか日本映画の匂いがするのはなんでだろうか?ジャン・レノの演技か?ちとクサいような気もする。練習で街の人をうっちゃいかんよ。あれでかなり引いてしまった。 6点(2004-02-27 01:53:15) |
8. ユージュアル・サスペクツ
ストーリーの巧妙さにあぐらをかいてタラタラと見せることなく、カットや編集にさまざまな工夫を施し、最後まで「カイザー・ソゼとは何者?」という気持ちを見る側に増幅させているところを評価したい。話のほとんどがヴァーバルの回想であることから、これをウソだと仮定してかかればオチはわかってしまうが、その「大悪人」カイザー・ソゼは最後にどうなるんだ?という楽しみも同時に残されており、オチがわかっていても楽しめる点は秀逸であると思う。 8点(2004-02-22 01:04:53) |
9. ファーゴ
陳腐なストーリーにもかかわらず映像美とセンスを感じるユーモアでまったくあきさせず見せていくのはさすがだと思ったが、最後のミンチシーンは映画全体の輪郭からはみ出していて違和感がありいただけない。映像の一片一片が作品を語るものであってほしいと思うのはわたしだけだろうか。 7点(2004-02-17 17:45:10) |
10. まあだだよ
黒澤映画にはいつもどっしりした「核」のようなものがあって、それを中心にさまざまな粒子がうずまいたり反発しあったりするのが魅力なのだが、この作品についてはそれに該当するものは「内田百閒」そのものと思われるが、それ自身の主体性というものがほとんど見て取れない。少年時代を思い出すことと、そこまで2時間で見せたエピソードが必然性を持って結びついているとは思えない。故人を偲ぶ、ゆかりの人間達のインタビュー映画のようだ。しかも、ドキュメンタリーならまだしも、演じている周りの俳優が、黒澤組の中でもへたくそ、または手垢にまみれた人ばかりがチョイスされているために、とてもウソ臭い。寺尾明、油井昌由樹、井川比佐志が、根津甚八など別の俳優だったら、もっと違う百閒のあぶり出しかたも出来たのではなかろうか。周りがこれだから所ジョージも個性を出すには荷が重く、周りに同調した面白みのないキャラになってしまった。「オイチニの薬」のとても地味なスペクタクルシーンに、映画人としての意地を感じたのでプラス1点。 6点(2004-02-16 01:05:19) |
11. 大病人
煮え切らない、というよりも判然としない物語の最後で、般若心経が字幕スーパーつきで出て来た時は、「あーやると思ったよ。」と思った。しかしこれだけウンチクにこだわりを見せる監督が、般若心経を引用するのはとても皮肉である。 4点(2004-02-16 00:45:25) |
12. マルタイの女
やっぱり宮本信子主演には無理があります。そして宗教団体の描写になぜあそこまでこだわったのか。これまでの伊丹映画では悪役にも愛嬌があり、演出にも愛情があったはず。「マルサの女」の山崎努しかり、「2」の連ちゃんしかり、「ミンボー」「スーパー」の伊藤四郎しかり・・・。それがなぜか本作品に関していえば、悪意や敵意しか感じられないのは残念だ。 4点(2004-02-16 00:31:58)(良:1票) |
13. スーパーの女
宮本信子はこれくらいのどこにでもいそうな、かつエキセントリックな役柄のほうが好ましい。無理にヒロインぶられると見るほうも辛い。映画はというと、ああ、伊丹監督はそっちにいっちゃったか・・・。という感じ。マニュアル映画を前面に押し出している。伊丹映画の真骨頂は本当はそっちではなかったのでは?マニュアルなら映画館で見なくともテレビで幾らでも見られるのに・・・。計算ずくの伊丹監督の誤りが、のちにマルタイの女の大失敗へと続いていくのだと思った。 5点(2004-02-16 00:26:15) |
14. CUBE
ポセイドン・アドベンチャーと、エイリアンと、未来世紀ブラジルと、レインマンを掛け合わせたような映画だなあと思った。これをみて、映画のキモは予算ではないと感じた。極限の状態における人間の行動、という部分はそれほど細かく描くつもりも無かったようで、まあ単純に面白いサスペンスを撮りたかったんだろうと思う。「船橋」・・なんて単語が簡単に飛び交うもんかな(笑) 8点(2004-02-06 00:31:03) |
15. もののけ姫
何度も話されているが、展開がナウシカと同じ。宮崎作品は嫌いではないが、批評するときどうしても批判的になってしまうのは、「動物の擬人化」に言及せざるを得ないからであろうと思う。彼がエコロジーを語るとき、かならず動物と会話できるキャラクターが登場するが、これは幻想でしかなく、これを子供が見てどういう未来を築こうと思うのか、科学的に想像がつかない。人間と野生生物は別物で、野生生物の世界を支配することで人間社会たりえているわけで、これに目をそむけたままでは、自然との真の共生はありえない。そのへんの犬食ったり山羊食ったり、そういう共生の時代をどう説明できるというのか、と思ってしまう。 6点(2004-02-02 19:57:59)(良:1票) |
16. 二十日鼠と人間(1992)
強烈ではないが深い感動をもたらす作品ですね。ゲイリー・シニーズもジョンマルコビッチも、今後もこの作品が代表作となっていくであろう歴史に残る名演技だったと思います。スタインベックの語る希望のない時代にあって、大切な友をもっとも幸せにするにはどうしたらよいか。目の前に希望を抱かせたまま静かに休ませることが彼の選択だったわけです。ラストの湖畔のシーンで映画はバンと終わってしまいますが、その後の主人公の苦悩をを考えると、この部分を下手に映像にしなかったことがよかったのではと思います。 8点(2004-02-01 02:32:05) |
17. メリーに首ったけ
恋多き女だね。個人的には、犬が燃えるシーンが面白かった。モンティ・パイソンの「デニス・ムーア」に出てくる猫のようでした。 6点(2004-01-30 02:15:08) |
18. シンドラーのリスト
長い映画だが、シンドラーの心境の変化を自然な形でえがこうとするならこれくらい時間をかけるのはしょうがないことだと思う。これを2時間の作品で見せていたら、とてつもない駄作になっていたかもしれない。初めは戦争で一儲けするためのあくまでも道具に過ぎなかったユダヤ人を、血の通った人間として理解していく、これを見事に表現していたと思います。また、ユダヤ人役の俳優達。少ないセリフにもかかわらず、生身の人間を、そして人間と扱われない悲惨さを、表情で見事に演じきってくれました。頭を打ちぬかれる瞬間まで、魂のこもった演技だったと思います。死体の一つ一つにも。あの赤いコートの女の子、あのコートは母親が娘に似合うようにと買ったのかな?女の子もお気に入りの服で、家族で外出するときにはあれを着てあの娘なりのおしゃれを楽しんでいたのかもしれない、などと思ってしまいました。さて、日本。日本には杉浦千畝という人がいました。そして他国の人民も大量に虐殺し、自国の人民も大量に虐殺されました。生き残る1億2千万人の未来のために、文化の担い手である映画人達が、今後どのようなメッセージをたたきつけてくれるか。日本人の良心、愛が問われる番ですね。そして私達。この作品をプロパガンダ映画だという評価にしてしまうかそうでないかは、このような出来事は、加害者であれ被害者であれ、だれにでも起こることだという認識を持てるかどうかにかかっていると思います。 10点(2004-01-25 17:10:45)(良:1票) |
19. フォレスト・ガンプ/一期一会
ショー・シャンクが「必死に生きる」尊さを訴えているとするならば、この映画は「生きる」ということそのものをテーマにした作品だと思いました。我々は現世で生きていくうちに次第に小ざかしくなってしまい、人生に意味や目的などがあるように錯覚しているだけではないのか?そしてうまくいかない現実を目の前にして、神や他人や自分のせいにしてしまっていないか?そうではなくて、今生きているということ自体が美しいのだ、ということを訴えているように感じました。フォレストにまつわる幸運の数々、人を幸せにしていくエピソードを、彼自身が叙事詩的に語ることによって、何の駆け引きもない、命と命の触れ合いを描き出しているように思いました。歴代大統領やヒッピー文化、ベトナム戦争は、さほど重要ではないのではないでしょうか? 9点(2004-01-22 02:23:57)(良:1票) |
20. π(パイ)
題材が面白いものなのに、もったいないなあと思いました。これ結局、頭痛に悩む男の話になっちゃってる(笑)。師に「命を落とすぞ」とまでいわれるほどの「π」の真相は、結局なんだったんだろう、と。銀河系、羊の角、囲碁・・・。観客をケムにまいたまま、ドリルで・・・っつうのは、反則ですよねぇ。なかなかおしゃれな映像だっただけに、惜しいと思います。 5点(2004-01-22 02:08:51) |