1. プレステージ(2006)
《ネタバレ》 最後の瞬間移動のショーは、はじめにそっくりさんを探してやっていたのと同じように、1人だけコピーして2人でやれば良いのに・・・と思ってしまいましたが・・・「2人目」がトラブルのたねになるからでしょうか。怪しい感じをふくめて手品とか奇術とか好きなので、世紀末的なダークな雰囲気はとっても良かったのですが、ミステリー的なトリックの面白さ以上の何かを感じられることはできませんでした。 [DVD(字幕)] 6点(2017-06-01 16:31:26) |
2. やがて来たる者へ
イタリアとドイツは同盟国ではなかったっけ?という疑問がわくくらいの知識しかなかった私。イタリアは早々に連合国に降伏したけれど、北部にドイツファシストに支配された政権があったことも知りませんでした。それに抵抗するパルチザンを一掃しようと行われた“マルザボットの虐殺”と呼ばれる史実にもとづいた話なのだそうです。日本も同盟国だったくらいの知識しか無いのはまずい気がして、アジアでいろいろ対外問題を抱えている今でもあり、もっと勉強してみようという気になりました。 村の暮らしの細部がイタリア映画らしいリアリティで、子供のフラットな目線から綴られています。銃の音で耳がキーンとなるような効果や、ドイツ兵の言葉が訳されない不安感など、その場の緊張感が身近に伝わって、苦しくなりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-09-30 18:10:43) |
3. ヤコブへの手紙
人は、誰にも必要とされないと感じたときに真の絶望を感じるのだ・・・ということがよくわかった。だから必要とされるため仕事をしたり家族を持ったりするのだろうか。神父が手紙で相談されることに生き甲斐を感じているのは明らかで、人の悩みを解決することで救われる彼はエゴイスティックにさえ見える。レイラの姉に対する過去の出来事のほうが見返りを求めてない点で崇高なくらいである。でも誰も神父を笑えない。みんな何かに必要とされることで満たされるからなんとか生きていけるのだ。ほとんどがよぼよぼの老人と太った強面のおばさんだけの絵ですが映像的にも飽きずに見る事ができました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-03-27 11:25:26) |
4. 瞳の奥の秘密
25年という重み、そして25年たっても変えられないもの・・・そう意外と想像するより人間って変わらないものなんです。物理的に20代では共感しにくいかもしれない。事件を中心にロマンスもあり、部下との信頼関係もあり・・・の展開は、刑事ドラマなんかにもありがちですが、つめこみ過ぎな感じは全く無いのがこの映画のすごいところ。大人かつエンターテイメントとしての質も高い良作です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-03-11 17:10:00) |
5. 蛇にピアス
主役の3人がとても魅力的であり、エロチックである。とくに今の日本映画ではそれだけでも素晴らしいと思う。奇跡的な緊張感。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-11-12 13:11:33) |
6. 重力ピエロ
伊坂作品は好きだけれど、この原作はあまりしっくりこなかった。遺伝子うんぬんとレイプの問題、それと放火のミステリーを絡めるのはすこし強引な感じがしたからだ。けれど映画を見てすこし印象が変わったのは、小日向さんの演技によるものが大きい気がします。「自分で、考えろ」そして見たい世界のために自分が行動する、といういわば革命家的な伊坂作品のメッセージを、静かでやさしい父親が体現しているからかもしれません。あと完全に「元・ブス」を演じた吉高ちゃんは凄い。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-11-12 13:04:37) |
7. フローズン・リバー
《ネタバレ》 しんしんとした雪の田舎町&犯罪の匂いの組み合わせは大好物!チラシのビジュアルに惹かれた(グレイな雪景色に凍ったような白いタイトルロゴ、ポツンと小さく車)のを思い出してDVD鑑賞。地味に話は進みながら、じわじわと雪だるま式に悲劇が起きていく予感に満たされていき、あーもうこんな不幸な話やだー!という悲鳴をあげそうになりましたが、最後まで見ると、はらはらさせるだけのサスペンスなのではなく、しっかりしたドラマでした。貧困のやるせなさや、先住民ライラとの関係が自然に、ていねいに語られています。人種を超えた母としての勇気や強さが、観賞後すがすがしい印象として残りました。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-09 19:04:54) |
8. あの日、欲望の大地で
《ネタバレ》 こういうトーンの映画は嫌いではないけれど、なんだか救われない暗澹とした気分になったのは、殺したいほど主人公が母親を憎んでいたわけではないことだ。母親の不倫を嫌悪していたとはいえ、殺意までは無かったのに「うっかり」母と不倫相手を殺してしまった。うっかり吹っ飛ばされたのではやるせない。「自分が怖い」と本人が独白するが、若さ故?の考え無しの行動が怖いのだ。そして、娘が自分に似てしまうから逃げ出したのではなく、自分の娘に因果応報、うっかり殺されるのではという恐怖なのではないか?自分の子供に許しを得て、はたして母は天国でニッコリ許してくれただろうか。 [DVD(字幕)] 5点(2010-12-27 16:31:58) |
9. マラドーナ
マラドーナがすごいのはわかっていたけれど、なぜそれほどまでにアルゼンチンで愛されているのか。なぜメッシはマラドーナになれないと言われるのか。その疑問を解決してくれました。彼は貧しい階級から出た「革命家」なのです。フォークランド紛争で負けたイングランドに勝って自ら代表を優勝に導き、反ブッシュ運動にも参加する。そして彼の革命家精神はどんな栄光を手にしても変わりません。他の有名選手のように協会のお偉いさんになったりもしません。それがいつまでもアルゼンチンで単なる過去の英雄ではなく「神」で有り続ける理由なのではないでしょうか。もちろん薬物他めちゃくちゃなエピソードの絶えない人だから無理なんですけど。ただ「神」として様々なものを一手に背負うプレッシャーは誰にもわからないものすごいものだったと思います。映画としてはドキュメンタリー特有の間延びした感じはあるので、サッカーの好きな人、そして各国の文化の一部としてのサッカーに興味が持てる人にしかおすすめできないかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2010-10-27 11:25:30) |
10. 見わたすかぎり人生
イタリアもいろいろ問題が山積みなのですね。非正規雇用とか日本と同じなんだけど、実際に生活レベルでどんなことが起こっているのかがよくわかる。いかがわしい商品を電話で売りつける「マルチプル社」の設定は最高!最後までぐいぐい一気に見せられてしまいました。したたかなのか繊細なのかよくわかんないリアルなイタリア人らしさ(私が知る限りですが)がよく出ている気がします。泣かせどころである電話のおばあちゃんのエピソードも、とってつけた感なく良し。日本の若い人にもおすすめしたい映画です。 [DVD(字幕)] 8点(2010-05-11 15:29:33) |
11. ココ・アヴァン・シャネル
《ネタバレ》 とくにシャネルに興味があるわけではなかったけれど、この映画を見てがぜんココ・シャネルに対する興味が沸いてきました。 ファッション誌も一般的でないこの時代、(今調べたらココが10歳のころにやっとヴォーグが創刊されています)装飾的かつ封建的な服装の時代に、誰をまねるわけでなくひとりシンプルを貫いた彼女。もっと言えば、この時代にシンプル=おしゃれという発想自体が無さそうな気がします。彼女曰く「嫌いな物に対して敏感なの」・・・美意識の高さはもちろんですが、着たいものが無いから自分で作ってしまう、そこが凄い。 ボーイが言います。「彼女はエレガントだ」・・・エレガントって何なんでしょうね。女性らしいorらしくない、華美orシンプル?それも関係ないような。なにか潔さ、品のようなものなんでしょうか。自分はファッショニスタではありませんがオンナの端くれとしてこれからもよーく考えていきたいテーマです。まあほど遠いんですけど。 あとスゴイのは彼女は上昇志向が強いわりにはけっこう男性に依存してて、なのに傲慢で媚びなくて自由。銀座のホステスも真っ青。その人間力の高さというか女力の高さ?が見られて面白かったです。なんかこうもっとビジネスウーマン然とした人をイメージしてたのもありますが。 いつ服作るんだろう・・と心配になるほど最後の方にしかメゾンは出てこないのでシャネル好きな人には物足りないかもしれませんが、自分は「伝記」にはあまり興味が無かったので、ひとりの女性の映画としてテーマが絞られているところに好感がもてました。 [DVD(字幕)] 7点(2010-03-04 17:15:08) |
12. ベンジャミン・バトン/数奇な人生
《ネタバレ》 歳をとる人生と若返る人生との交差点で愛をかわす..なんてロマンチックな設定なんでしょう!でもなぜか私がぐっときたのは本筋じゃなくてロシアでの真夜中のホテルのロビーのシーン。毎日言葉を交わしながら2人が距離を縮めていく・・普通だけどちゃんと恋をしていく感じがいい。本筋の2人は、見た目をとっぱらえば、ふつうの幼ななじみ。子供の時の貴重な時間を共有して、時間をへてゆっくりゆっくり愛情に育てて行く。そう考えると、風呂敷は広いものの、ふつうに恋愛映画のように思えます。いや、それがいけないというわけじゃない。変わった人生だけれども本気で人を愛することができれば、それだけでいいじゃない、そして愛する人と添い遂げられることは奇跡的な幸せだなあと感じます。ただ、ハリウッドではそんなシンプルなことを伝えるのに(シンプルだからこそ?)こんなSFXを使わないと見てもらえない時代になったのか・・・とも思いました。ともあれ、自分の相方と、これから先も一緒に歳をとっていけますように。 [DVD(字幕)] 6点(2010-02-02 16:15:40) |
13. グラン・トリノ
《ネタバレ》 戦争で人を殺したことへの自責の念から、いつまでも解放されないウォルト。妻も亡くなり、もはや誰にも心を開くことなく・・・そんな時に隣人となったアジア人一家と知り合い、少しずつなにかが溶けていく。家族じゃなく、偶然出会った他人が民族も超えてほんとうに繋がり合う、、というのはよく描けていて、なにか不快に感じてしまうイーストウッド監督映画の中では普通に見られました。ラストもなるほど。ただ、そんな心のつながりを描いているのに、悪役がなんか普通のチンピラで、インネンつけるとか根性焼きとか表面的で怖くない。最初はそのへんのチンピラなのにウォルトの家に銃弾撃ち込むところから、いきなりマフィアになる。そんなに極悪な若者たちだったのか・・・彼らの背景を描く必要は無いけれど、めちゃ陰湿とか空虚だとかなにかの雰囲気が感じられなかったのが残念です。日本でも普通の子供がつるんで女性や浮浪者を殺したりする事件も多いし、そんな子たちも現実的にいっぱいいるのかもしれないが。ストーリーのために用意されたお手軽な悪役に、わざわざ殺されにいくことないのになぁ、と思ってしまいました。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-31 00:39:56) |
14. 愛を読むひと
《ネタバレ》 ケイト・ウィンスレットって大味でごっつい感じであまり好きじゃなかったんですが、大柄なドイツ人にぴったりだからか、まさに当たり役。なんかマドンナみたいにちょっと迫力ある、強い美しさです。ドイツに行ったことはないのですが、ドイツ人はナチスのした事を今もしっかり子供に伝え教育しているそう。だから虐殺が許されるわけでは全くないけれども。ハンナの罪も知らなかったからといって消えるわけでもない・・・ドイツ人の心には自分が関わったことでなくても、恥ずべきことをしたという自責の意識が今でも深くきざまれているのではないでしょうか。「じゃああなたなら、どうするの?」裁判でのセリフが重いです。この話は、読みきかせるという関係自体がとても魅力的だ。若い時の朗読は甘美でエロチックに、でも2人の間の微妙な距離を表すように。そして時を経たテープでの朗読は、離れた距離を感じながらも寄り添うように。原作は文盲であることがミステリーのような味付けを添えているところが魅力的だっただけに、知っていて見るのはちょっと寂しかったかなという気がしました。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-21 21:56:45) |
15. スラムドッグ$ミリオネア
音楽とシンクロした疾走感があり、濃~~いインド映画をサンプリングしたかのように、臭ってくるような、こってりとしたボリューム感も満点。クイズミリオネアはおそらくアメリカがオリジナルの番組で、マクドナルドがどの国にもあるようにミリオネアもいろんな国にあるんだろうが、みのもんたがオリジナルだと思っている人も多いんだろう。意識しないうちにお茶の間もアメリカを中心にグローバル化してるんである?急速な経済成長をとげているインド、でもおそらく多くの人が良くわからない不思議なインド。この映画のように女性差別や貧困などはまだまだはびこっているのだろうが、いわゆる今までの先進国とは違ったパワーを持っていて、したたかだ。そしてこの映画はそんないろんなテーマを確信的に盛り込み、したたかに、しっかり考えらて作られた映画という感じがした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-21 13:26:54) |
16. ミルク(アメリカ映画)
自分はノーマルであると思っている人は、それを守るために、自覚もなくマイノリティを迫害していたりする。一般的なファミリーの健全な環境を守るべきだと。ゲイは、はなから子供も普通の家族も求められない。失うものはあまり無い。なのにミルクは何か「誇れる事」をせねば、と思う。多くの人は普通であると思っているくせに、なんと多くのものを傲慢にまで求めてしまうのだろう。あえて?ひさびさの商業的映画でこれを撮ったガス・ヴァン・サント。彼も、成し遂げるべき「誇れる事」をもとめてこの映画を撮ったのでは、と思わされた。すこし残念なのは、「エレファント」などここのところのインディーズ的作品たちに見られる繊細な映像美のほうがイメージとしては印象的で、むしろ感覚的にゲイっぽいかな・・・と。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-17 23:52:50) |
17. 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
パンクである。ゆえに素晴らしい。兄ちゃんだけが演歌である。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 8点(2010-01-03 01:09:20)(良:1票) |
18. コッポラの胡蝶の夢
《ネタバレ》 一瞬リンチかっ?と思うような、時間や意識が混沌とした世界・・・「老い」とは?・・を中心に、時間、言語、哲学などさまざまな根本的テーマが絡んで、かなり大風呂敷にひろげられています。SFとかファンタジーとかくくれない感じで、今までにないものを追求し、創りだそうというアーティストとしての姿勢が、さすがコッポラと感じました。わかりにくいところもありますが、不思議が不思議のまま進んでいく感じは、幻想文学のようで嫌いじゃないです。浦島太朗的なラスト・・・しかし偽造パスポートはそこにありました。3つめの薔薇にはどんな意味がこめられているのでしょうか? [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-11-07 19:59:09)(良:1票) |
19. ブレイブ ワン
《ネタバレ》 傑作であり怪作の「ブッチャーボーイ」では殺人にいたる心理を描いたニール・ジョーダン。この作品では、目の前で愛する人を理由もなく無惨に殺された人の心理を監督らしい細やかさとリアリティで描く。自分は目の前で恋人を殺されたことは無く、(たぶん監督も)あくまでも想像でしかないけれど、そんな心理に少しでも近づける、想像できるというのがとてもこの映画の重要なところなのではないのでしょうか。そしてそれは、映画にできる素晴らしいことの大切なひとつだと思います。途中で刑事が「いくら人を憎んでも、ふつうは殺さない。殺したいと思うのと実際に殺すのは大きく違う」ようなことを言っていたような。その大きく違う世界に踏み込んでしまうほど壊れたエリカの心理が伝わってきた気がします。 ラストも良い。刑事があの行動に至る前に現場の動画を見ている、ということが私としてはリアリティあるものに思えました。ただ、どうでもいいですが、そこで気になったこと。犯人の男の彼女から動画が送られて来たけど、アメリカの携帯って電話番号だけで誰にでもデータ送れるんですかね? [DVD(字幕)] 8点(2009-10-29 18:01:33)(良:1票) |
20. ジャージの二人
まず好みからいうと、好きです、こういう映画。予告を見て、ゆるさを売り物にしたような姑息さがあるのかなあと心配したけれど、そうでもなかった。簡単にいってしまえば夏を山荘ですごす父と息子のスローなくらし、みたいなことなのだろうが、そこに言い表せないこまごまとしたこと、心のゆれみたいなものがちゃんと描かれていました。ちょっとした違和感であったり、喜びであったり、不安であったり・・ふつうに暮らしていて、感じていても見過ごしそうなこと。妻との微妙な感じが、せりふに頼りすぎることなしにうまく表現されていて、せつない気分になりました。「なんか、こぉ~」いい感じの映画です。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-09-07 14:49:10) |