1. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 この映画の最たる“黒い”おかしみは、1.1人の軍人の行動が分断されていた2国に共通の利害を生み、結果としてその関係を改善させている点、2.しかし最終的にその行動の前に2国は無力に陥り、数十年に及んだ冷戦の歴史が数時間のうちに世界の終焉に至る点、3.そして本作が世界を核戦争一歩手前まで追い込んだキューバ危機の翌年に製作されている点、の3点にあるように思う。ピーター・セラーズの1人3役には当初全く気づかず。Dr. Strangeloveの英語訛りは演技とは思えない。。。映画史に残る怪演でしょう。(余談だが、彼の名前は“全面核戦争推進論者”という意味で一般名詞化している。)ポスト冷戦と言われながらも独裁国家やテロリズムによって緊迫の色を隠せない今、手放しで笑えないのが怖い。キューブリックが逆説的に思い描いたであろう世界に思いを馳せた。 9点(2004-03-19 09:50:24) |
2. アラビアのロレンス
決死の砂漠横断には息が詰まり、決闘のシーンには息を呑む。昨今のCGを多用した映画の方が確かに見た目はすごいが、この映画にあるような“感じさせる”ものが無い。ロレンスの狂気が、そして最後に彼が感じる虚無感が、身に染みるように伝わってくる。どれだけ史実に忠実であるかについては僕は分からないが、グローバリゼーションという言葉が叫ばれて久しい今日、民族とは何かを根源的に問う本作は絶対に見ておきたい。 8点(2004-03-06 05:28:08) |
3. マイ・フェア・レディ
舞台なら良い、そして適度なのだろうが、映画にすると過剰に映る部分が結構あったような気がした。例えば、オードリーの演技。最初は名演だと思っていたが、途中発音の練習をギャーギャーやり始めたあたりからは不愉快としか思えなかった。いくら何でも学習能力なさすぎだろ、みたいな。後半の“時間通りに教会へ!”なども、舞台でやれば面白いのだろうが、作りこまれたセットの中で担がれて運ばれていくスタンリー・ホロウェイには思わず笑ってしまった。タップも・・・。でも、全体としては素敵なラブストーリーって感じで好きです。訳はかなり頑張っているようですが、やっぱり限界がありますよね。出来れば字幕なしでトライしたいものです。ヒギンズ教授の言うことは確かに男尊女卑だが、男なら必ず思っていること。誕生日を忘れたぐらいで怒るなと。僕は笑いが止まりませんでした。ごめんなさい。 7点(2004-03-04 09:30:25) |
4. サウンド・オブ・ミュージック
サイコサスペンスを見ていたとき、ある人が”古き良き映画”みたいな話をし出した。その人曰く、昔の純粋で、素朴で、健康的(?)な映画が良かったと。その時話に出た映画がこれでした。血を出さなければ映画が売れない。そんな時代だからこそ、こういう映画に満点を付けたい。大好きです。 10点(2004-02-21 18:58:45) |
5. 心中天網島
浄瑠璃劇と映画のミックスであるが、その両方の利点を活用している前衛性に富んだ意欲作。感情剥き出しの人物と、作られた”劇”であることを印象付ける要素との対比は、ユーモアとも取れるし、皮肉とも取れる。白黒の色彩美は、天才的である。 8点(2004-01-11 12:27:11) |