1. ANA+OTTO/アナとオットー
全編、青い霧に包まれたような映像。かといってあまり冷たさを感じないのは、アナとオットーの想いが溢れているからか。でも、後半になって唯一無二の片割れを追い求める狂おしさにブレーキが掛かってしまう。偶然の持つ神秘性も、越えられそうで越えられない稜線を感じてしまった。それでもやはり、二人がお互いに感じている強い引力が眩しくて羨ましい。 [DVD(字幕)] 8点(2012-02-06 21:28:33) |
2. ファイト・クラブ
《ネタバレ》 フランス革命の道程を見ているようだった。ジャコバン・クラブ。社会生活のレールをはずれたくせに、また社会を作り妙なルールを作り要らぬ残骸を積み上げていく孤独な男。ある程度レールを走ったらどうしたらいいか解らないという幼稚な焦燥感は、恥ずかしながら私自身も痛いほど感じることがある。でもこれが火花となり破壊に向かうのが男なんだろうか。「どうしよう…」って親父に電話で聞いてみりゃよかったのに。インテリもサイコもなんでもこいのエドワート・ノートンの独壇場だった。 [DVD(字幕)] 7点(2011-08-24 00:48:32) |
3. 20世紀ノスタルジア
妙な作品だったナー。ヘタクソなんだけど、持っている熱は見過ごせないというか。タレントとして最盛期だった広末涼子を真ん中に据えて、日常映像の羅列が意味もなく続いて退屈。でもわずかでも光っているところはある。高層マンションのてっぺんよりもっと先、21世紀になった今から見おろすと、ちゃんとノスタルジーが感じられる映像だった。でも、まあ、自主映画の香りプンプンですね。 [ビデオ(邦画)] 5点(2007-05-26 01:39:44) |
4. ゴッホ
私は冒頭5分でティム・ロスに懐柔され、映画の世界に連れて行かれた。タイトルに名前を挙げておきながら弟テオの描き方が物足りない感じだったが、アルトマンの静かな演出、南仏の田舎の美しさ、静と狂気を手のひらを返すがごとく演じていくティムに感心しきりだった。現代、巨匠と言われて久しいゴッホとゴーギャン、黄色い家での痛々しい生活が芸術の世界の厳しさそのままに思えてならない。 [DVD(字幕)] 8点(2006-12-17 00:14:29) |
5. こねこ
なんだよぉ~、たかがネコなのに~、子どもっぽい話なのにぃ~、こんなに泣かせんなよぉ~!ネコ好きな私には反則技満載、お茶目で愛おしいネコの姿でいっぱいの映画です。これ以下の点数はどうしたって付けられません。 [DVD(吹替)] 8点(2006-11-19 21:31:34) |
6. アルビノ・アリゲーター
《ネタバレ》 三人寄れば派閥ができる…職場の先輩が言っていた名句。この状態をよく表現している面白い映画だったと思う。逃げ場のない空間、知的温厚派とキレた武闘派のあいだで、どっちつかずの男がメトロノームの針みたいに振れる。あのやじろべえがマット・ディロンという配役も絶妙。密室内での彼の心理が主だった筋になっている。でも、中盤フェイ・ダナウェイが説明セリフを言うのが変だし、ヴィゴの設定はもうちょっと活かせた気もするし、何よりラストが後味悪すぎた。少し点数低め。だけどフィクトナーの二の腕はスゴイなあ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-10-21 09:42:40) |
7. ハモンハモン
《ネタバレ》 ん。「人は性で狂う」そういうことっすね。どうするこれ?どう点数を付けるこれ?今年一番の、いや今までで一番バカっぽいかもしれない。思い出し笑いで朝まで過ごせそうだ。ハビエルが底知れぬ純情バカを好演、迷言もいっぱい。君はハムだァ~、ハムでやっちゃるゥ~と何でもかんでもハムを使う。君が見たくて借りた映画なんだよ、想像以上の働きをありがとう。そんな君にはお中元にハムを送ろう。 [DVD(字幕)] 4点(2006-08-05 02:41:12) |
8. オルランド
《ネタバレ》 背景、衣装を含めた美術が豪華で、画の美しさは一級品。後で調べたら監督は女性だそうで、なるほど納得です。あの世界観の中にT・スウィントンがストンと治まり、妖精のような佇まいでさらに美しさが益しています。ストーリーもとても不思議ですが、起伏が無きに等しい。主人公は君主エリザベスに言われた命令には異常に執着するものの、人生にあまりにも起伏がないので面白い映画ではないのです。確かに実際400年も生きるとしたら、あれくらい淡泊でないとやっていけないでしょうが。TVドラマのほうが向いている話のような気がしました。魅惑のファルセット、ジミーの歌声は嬉しいオマケでした。 [映画館(吹替)] 6点(2006-02-05 22:22:03) |
9. フューネラル
《ネタバレ》 クセの強い俳優が何人も出てくるマフィア映画。ただ、犯罪行為の起承転結を映しているのではなく、命のボーダーラインのあたりでフラフラと悩み苦しむマフィアの姿を追っている。「葬式」という意味の題名のとおり、黒っぽい画面と湿っぽいストーリーの中で悩む男たちがとにかく渋い。死と隣り合わせの立場にある恐怖感が、強面たちの顔の中で鈍く光っている。命について深く想うC・ウォーケンが秀逸だったが、凶行に及んだ後、子どもみたいな表情で泣きつつ微笑むC・ペンの姿には涙が出てきた。なんて貴重な俳優を失ってしまったんだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2006-01-31 01:37:33) |
10. ライブ・フレッシュ
今まで見たアルモドバル作品のなかでは格段に見やすかったです。登場人物もストーリーもシュッとまとまって、適度な時間の中に収まっています。ただそうなると、彼の作品の醍醐味「観賞後考え込む」がカットされるので私はちょっと寂しい感じも…。最近の彼の手法に私が毒されてるってコトでしょうか。ストーリーは、いろいろなかたちの愛が絡み合っていましたね。ラテンの直情的な性愛ではなく、もうちょっとひっそりとしたやるせないものを感じました。スタートとラストの出産シーンは監督のスペインへの愛情表現でしょうか。でもあんなにすぐには産まれないよ。 [ビデオ(吹替)] 7点(2005-10-10 11:07:50) |
11. から騒ぎ
ブラナーのシェイクスピア映画は、舞台をそのまま映像化したような台詞回しでも私は結構好きだ。でも今作は…元妻エマ・トンプソンやデンゼル・ワシントンや、もうこういう設定がまるで似合わない(頑張ってはいるんだけどね)キアヌ・リーブスの滑舌よろしいお芝居に食傷気味…。古典の勉強のためには良いかと…。えらく余計なお世話ですが、エマとブラナーは離婚して正解のような気がする。夫婦して才能電波をピリピリさせているのは、ちょっと辛い気がするので。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-09-19 23:05:39) |
12. ワンダーランド駅で
《ネタバレ》 いつも仏頂面で、自分の身の丈に合う安らぎをなかなか見つけられないエリン。とっても美人なのに、寂しげで満たされない感じがよく表現されていたと思う。29歳って、若くもなく成熟までも行かず本当に微妙な年齢だ。余分な悩みも抱え込みがちな雰囲気をホープ・デイビスが好演していた。「いい男は少ない…」と同僚に話をしていたけれど、ゲイの同僚が「プロセスより出逢った後どうなっていくかが大切」の言葉のほうが私としては頷けるな。だから男女が出逢ったところで映画が終わるっていうのがなんとも歯がゆい。彼女は運命の存在について頑なに反対意見を述べていたけれど、ラストはやっぱり運命なんだろうか?いきなり花が咲くような満面の笑みに驚いた。ボッサと海と多少お洒落な画も手伝って、全体的にオトナ向きな雰囲気の映画。 [DVD(字幕)] 7点(2005-07-30 12:46:07)(良:1票) |
13. オール・アバウト・マイ・マザー
目の前で死んでしまった息子の想いを抱いて元夫を捜すマヌエラと、彼女と交流を持つ人々の話。全ての人に「母性」と「再生」の光を持たせて話を描いている。息子の死と臓器移植、男から女への性転換、エイズで命を落とす女性と出産、そして父から子どもへ受け継がれる名前…。命が循環する様子がさりげない流れの中に上手に組み込まれている。けれど、この監督の特徴なのかちょっと唐突な展開に納得がいかなかったりで、「なるほどなあ…」以上の感情が湧いてこなかった。しかし、この作品の主人公も随分酷な状況だなあ。マヌエラの繰り返される嗚咽はその度に胸が痛んだ。 [DVD(字幕)] 7点(2005-07-25 20:41:46) |
14. 宇宙で最も複雑怪奇な交尾の儀式
あはははは!でもこれ良くできている映画です。TVのメロドラマみたいな陳腐なラブストーリーに、XYクン登場の解説映像とスマートで実はひねりたっぷりのナレーション。アメリカ映画じゃないみたいな気の利きいた作品でしたよ。ビリーとジェーンが食事している時の食べ方が動物本能丸出しなんですが、そうそう、相手の食事の仕方が気にならないと結構OKなんですよね~。頑張れよ人間! [DVD(字幕)] 8点(2005-07-16 02:56:10) |
15. あの娘と自転車に乗って
ストーリーに起伏などないが、とても丁寧に作られた画で綴られていて、監督の甘くて懐かしい時間への愛情は感じますが…この小品に田舎ののどかさや美しさ、思春期の甘酸っぱさは多少感じられたものの、何か光るものを感じるところまでは行かず、ちょっと点数は低めです。これは、監督の少年時代の回想なんでしょうか?セピアのモノクロの画面は、ひたすら田舎ののどかな景色と音を伝え、いたずらん坊達が日がな一日ほこりまみれになって遊び、時が過ぎゆく様を映しています。その中、時折ハッとするような鮮やかなカラーシーンが挿入されます。想い出って、ある瞬間がパッと鮮やかに甦る。あの感覚を思い起こさせる映像でした。 5点(2005-03-19 22:12:46) |
16. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 ラブコメの王道物だと思って借りたのですが、主人公二人が最後の最後にやっと言葉を交わすストーリーなんてなかなか無いし、ウィットに富んだセリフが山盛りで(脚本賞ノミネートは納得!)上質な仕上がりの映画でした。でもね、内容がね…。亡くなった人のことを想い続けることって、そんなに暗くて悲しいことなのかなあ??「いつか思い出さなくなる。」とトム・ハンクスが言っていたけれど、私はそうは思いたくなくて…。人は運命云々で繋がるのではなく、一緒の時間を紡いでいくことで繋がるものだから。居なくなってしまった人の思い出を、無理矢理どこかに追いやらなくてもいいんじゃないかなぁ、と思った次第です。故に、7点。 7点(2005-02-06 10:48:49) |
17. パリの確率
《ネタバレ》 ちょっとこの作品は冒険している感じ。普段のパリ、その辺によくいそうな人の日常…ではなく、未来のパリを舞台にして、名優ジャン・ポール・ベルモントまで引っ張り出してきている。ストーリーははっきり言ってあまり面白くない。画はSWとかバック・トゥ・ザ・フューチャーで見たことあるようなシロモノ。だけどだけど何だかんだと見ちゃうんだよなぁ。砂に埋もれたアグリカルチャーなパリで、いい年したジイちゃんが「パパァ!」を連呼する姿にニヤリ、まだ見ぬはずだった子どもを思い浮かべてセックスを始める主人公にまたニヤリ。この監督の、人間を見る目線の温かさが何となく好きで、「あんまり面白くなかった」とばっさり切って捨てることが私にはできないらしい。 7点(2004-11-26 22:42:21) |
18. 輝きの海
《ネタバレ》 切なくて良い映画でした。ヤンコとエイミーのひたむきで強い愛情に終始胸の打たれる想いでした。他の村人にヤジを飛ばされても、腕を組んで歩いていく二人の姿が凛として綺麗です。エイミーはヤンコからプレゼントされたリボンを首に巻き、結婚式でもそれがしっかりと巻かれていたときに、口数少ない彼女の強い内面が見えたようでした。お互いが何より代え難い存在なのを十分知っていて、過酷な状況下で生活していても「僕たちはラッキーなんだよ…」と話すヤンコの言葉に、生きていく上での底力を感じます。最後の最後、医師の言動がちょっと理解できず残念でしたが、逆境の中前を向いて寄り添った二人に泣かされました。役者は上手い人揃いです。とくにレイチェル・ワイズには感心のひとこと。イギリスの海辺の田舎風景は、高いところから捉えた画が特に綺麗で、広々とした草原や踊り狂う波が印象に残りました。 8点(2004-11-15 22:09:06)(良:1票) |
19. 理想の結婚
はい、うまい役者を揃えて、英国社交界のきらびやかなファッションで飾り立てて、正統派のハッピーエンドで…。悪くない、実際楽しめた。でもこの監督、前作「オセロ」から進歩がない。正統派は嫌いではないが、もう少し冒険をしても良かったかな、と思った。物語はわかりやすい。終始明るい雰囲気で、恋と友情と真実の大切さとetcetc…というお話。グッルッキンで凛々しいルパート・エバレットが堪能できる。そしてミニー・ドライバーがこの世界観にどう挑んでくるかと思いきや、結構スンナリはまっていたように思える。すごいなぁ役者さんって。 6点(2004-10-17 21:01:47) |
20. この森で、天使はバスを降りた
《ネタバレ》 主人公がバスを降りて夜の町を歩くさまを見て、「シザーハンズのようだ」と思った。内容も少し似通ったところがあったと思う。自然が美しいこと、大げさなお涙ちょうだいに陥らずに、希望のあるラストを見せてくれたことでこの点数になる。でもやっぱりパーシーが命を落としてしまう展開が腑に落ちなくて…。あんまりだ…。大きな物を失って初めて、絆(ハナとイーライ)や町が再生される姿を描きたかったのだろうか。でも自分を責め続け逝ってしまったパーシーを想うと重たい気持ちは取り除けない。残念。豪華な脇役陣を従えてのアリソン・エリオットの演技はなかなかのもので、出演作品が少ないのがこれまた残念だ。もっと頭角を現しても良い存在だと思う。 7点(2004-10-12 02:41:43)(良:1票) |