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1.  サイダーハウス・ルール 《ネタバレ》 
確かにいい映画だとは思う。どのカットも丁寧に撮られているし、役者も見事にハマっている。アーヴィング自身が脚本を書いているだけあって、密度の濃い話が2時間で過不足なく描けている。しかし、原作は読んでいないが、もう少しアーヴィングらしさというか、ちょっとグロテスクでちょっとコミカルな演出があってもいいのではないか。単なるヒューマンドラマやラブストーリーに流され気味で、堕胎や近親相姦、戦争や徴兵などについて、扱われ方が中途半端な印象を受ける。ホーマーの成長物語という面でも、彼自身の内面の大きな変化が充分には感じられない。表面的には、堕胎手術を行うようになるということが変化なのだが、そこに至る内面の葛藤が共有できない。よくできていて素敵な映画だとは言えるが、やはり2時間ではこじんまりまとまりすぎてしまったのではないだろうか。
5点(2004-03-14 12:37:18)
2.  白い刻印
僕は父のようになりたかった男だから、父と同じようにはなりたくないというニック・ノルティ演ずる中年男の気持ちは、なかなか自分のものにできない。けれど、この作品がもたらす独特な雰囲気に浸っていると、いつの間にかその気持ちを当然だと受け入れられるようになる。それはストーリー展開の力ではなく、メタファーに富んだ演出の力によるものだと思う。一面に雪が積もった世界は冷え切った親子関係のメタファーであり、歯痛による苦悩(Affliction)は男が感じている抑圧のメタファー。そして、その歯痛の原因である歯を自ら抜くことがまるで合図だったかのように、それまでゆっくりと進んでいた物語が、急速に破滅へと向かって転がりだす。確かに地味だし、あまり知られていない作品ではあるが、精神を病んでいく過程の陰鬱さが、独自の魅力にまで昇華された見事な一本。
6点(2004-03-11 02:43:01)
3.  テルマ&ルイーズ 《ネタバレ》 
最悪のニューシネマごっこ。というかパロディー? リドリー・スコットは一体何を撮りたかったのやら。テルマとルイーズを初め、夫も恋人も強盗も刑事も、誰一人として共感できないキャラクターばかり。かといってリアリティがあるわけでもなく、みんな絵本の中の登場人物のよう。大体、全て夫のせいにして自立せず責任も取らず、ぬくぬくと生きてきただけの主婦が、ブラピと一回セックスするだけで、いきなり強盗ができて銃が撃てるようになるわけないだろうに。レイプ問題を取り上げるならば真っ向から描くべきだし、平凡な主婦が道を踏み外していくことが主題ならもっとリアルな人間像であるべき。演出も平凡で不必要な描写が多く、緊迫感も焦燥感もない。セリフはいちいち説明的で、音楽の使い方は俗っぽくて印象に残らない。取ってつけたようなカーチェイスは、配給会社からの要求か? いい作品になりうるテーマなだけに残念。スーザン・サランドンの演技だけは評価に値するが、トラウマ全開という分かりやすい役どころだから当たり前ではある。
3点(2004-03-07 14:44:31)(良:2票)
4.  太陽に灼かれて 《ネタバレ》 
緑美しいロシアの田園地帯の風景とは裏腹に、物語は徐々に重苦しさを増し、救いのないラストへと進んでいく。ミハルコフ監督自身が主演し、監督の実の末娘も現実と同じ娘役で出演しているが、まさに天才子役というべき素晴らしさ。その純真無垢で天使のような存在が、逆に二人の男の悲しさを際立たせている。ミーシャが、昔話の形を借りて過去を語るシーンと、最後に自殺するシーンに登場する小さな太陽は、秘密警察となった彼の心に残された真実や愛の象徴だろうか?哀しげなテーマ曲が耳について離れない傑作。やや叙情に流され気味なことと、前半が若干冗長なことが残念。
6点(2004-03-02 00:47:27)(良:1票)
5.  愛する者よ、列車に乗れ
いかにもフランス映画な感じだが、全体に散漫な印象。群像劇と言えば聞こえはいいが、収拾がついていないとも言える。死んだ画家の葬儀に参列するために、その画家の友人知人、家族親族が列車に乗って田舎町へ行くというのが前半。そこで彼らの様々な人間関係が断片的に示されるが、あくまで断片なので、詳しいことが把握できないまま物語は後半へ。田舎町での葬儀の後、もつれていた人間関係がいくつか修復されたり、決着がついたりする。こう書くと少しは面白そうだが、ストーリー展開には特に山場がなく、だらけてしまう。雰囲気は盛り上げるものの、雰囲気だけで2時間はもたない。死んだ画家の人となりも結局最後までよく分からないまま。とにかく、ゲイとおかまが主役級という時点でツライ。墓地の俯瞰のシーンは美しいけれど。
4点(2004-02-09 00:28:28)(良:1票)
6.  インデペンデンス・デイ
資本の力というのは、改めて凄いものがある。これほど薄っぺらな話が、とりあえずエンタテインメントとして成立してしまうのだから。予算が10分の1だったら、爆笑B級SFとして、ある意味映画史に残ったかも知れない。実際かなり笑えたし。娯楽作品とは言え、その時楽しめるだけでオッケーなのか?という自問自答の末、タイタニックと同点。
3点(2004-02-01 19:42:09)
7.  タイタニック(1997)
「それほどスゴイのなら」と当時劇場で見たが、周りからすすり泣きが聞こえてくるほどに、気持ちが冷めていったことを覚えている。おとぎ話のラブストーリーで泣くことなどできないほど、大人になってしまったということか。ストーリーは至ってシンプルだが、歌ったり踊ったり叫んだりと、演出が過剰すぎて白けてしまう。大声で怒鳴れば伝わるという発想の貧困さ。ニューシネマなどまるでなかったことになっているハリウッドそのものだ。コストとCG技術がふんだんに投入されているのは分かるが、肝心の演技がマズくてお人形さんのメロドラマにしか見えない。無意味な長時間上映で大作感を煽って元を取る手法で、アカデミー・マーケティング賞を受賞、ってか。
3点(2004-01-27 18:36:54)(笑:1票) (良:1票)
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