1. ローマの休日
「永遠」というフレーズがこの1作で全世界が認めるものとなったオードリーの大名作。TVで初めて観た時は、子供心にキュートな笑顔にやられました。白黒なのに黄金色に輝くその女性の存在に見事にノックダウンなのです。年を重ねて、再見するもその魅力はフィルムに閉じ込められたまま。一切の輝きを失わず、変わりない美しさを観ている者にふりまきます。女優として、物凄く幸せなことですし、幸せな作品です。そして、映画っていうのは決して年をとらない好きな人を、そのまま出逢わせてくれる素敵な物だということを改めて認識させてくれます。 10点(2004-03-25 12:24:10) |
2. 北北西に進路を取れ
サスペンスが娯楽となって、誰にも分かりやすく伝わる上級クラスの映画。ヒチコック監督の手慣れたマジックを観ているかのようにあれよ、あれよと観客も巻き込まれていく。どうなるのか、先の読めない展開で、話は視覚的にもビルから列車へホテルから畑へ、山荘から彫像の山へ、めまぐるしく変化します。まるで「謎」を旅行鞄に詰めて、彷徨うように。ここらへんの突き放し加減が面白く、視覚伝達のうまさも加わり、ハラハラのバランスも丁度に。映画の教科書があるなら、こんな本なんだろうな、の作品です。特に、カメラやカット割、構図などは非常に勉強になります。まあ、そんなこと考えるのも2回目以降で、最初はやっぱり夢中になります。 9点(2004-03-10 16:38:57) |
3. グレン・ミラー物語
《ネタバレ》 うちの親父の世代にとっての名作。そして、自分にとっても名作です。音楽映画(ミュージカルとは違う)としても、伝記映画としても、軽やかで、とてもお洒落な印象を受けました。時代背景的には、決して晴れやかではないのですが。しかし、ムーンライトセレナーデや茶色の小瓶などが、モダンな雰囲気を画面一杯に醸し出すものですから、思わず心地良くなります。これらの曲が、今も充分愛されているのも、主人公の生き方を見れば分りますし、奥さんとの「愛」によっても、スタンダード(=不変)であることが伝わってきます。安心して観れる、そして聞き惚れることのできる映画です。 8点(2004-03-08 15:56:42) |
4. 雨に唄えば
《ネタバレ》 この映画については、自分の父親からその面白さ、歌の良さ等、何度も聞かされていました。音痴な父が、上機嫌な時に、必ず「シンギン・ザ・レイン~」と唄っていたので、「あの親父を唄わせる程の映画とは、どんな映画なんだろか」と劇場での上映を待つ事、何十年。MGM傑作選だったかで、昔のミュージカルのリバイバルのラインナップでこのタイトルを見つけた時は、「やった」と思いました。朝一にも関わらず、上映前から、長蛇の列。何とか座れましたが、その客層たるや、おじいちゃんからヤング(古い表現やなあ)、一番下は小学生か、君は?まで、実に幅広く、満員の状態で、誰もがうれしそうに上映を待っているのです。さあ、始まると爆笑、爆笑、そしてうきうき、涙と、顔面柔軟体操みたいに、誰もが楽しそうに観ているのです。親父が唄っていたあの「シンギン・ザ・レイン~」のシーンになると、どこからともなく、ハミングする人もいたりして。「ああ、分るわ。分る。こんなに楽しい映画だもの。唄いたくなるよなあ」サイレントからトーキーになる、映画界の大きな節目を、ロマンチックに、時にお洒落に、そしてお笑いで描いて、終わるのが本当に惜しくなる映画です。でも、これ以上は無いハッピーエンドで、席を立つ人ももの凄く満足していました。アメリカ映画のアメリカ映画たる所以を、(明るく健全なストーリー)楽しい音楽と歌で見せつけたまさしく傑作です。どの世代にも楽しめるなんて、なんて幸せな映画なんでしょう。 10点(2004-03-03 16:16:50)(良:4票) |
5. 七人の侍
《ネタバレ》 黒澤明監督の凄い部分が全て出た作品だと思います。画面から溢れ出てくる、俳優達の演技も、台詞も、炎や雨さえも、黒澤明自身の情念で描きだした産物であるかのよう。作家のパワーが、これほどまでに観客の1人1人に届いた映画も珍しいのではないでしょうか。観た人に必ず何かしらのインパクトを与えます。今よりも舞台装置や撮影技術が進んでいない時代に、娯楽性を十二分に持たせ、完成させた、当時としてはあまりにリアルな時代劇。「お茶漬けさらさらじゃなくて、分厚い肉のステーキみたいな時代劇を撮りたい」と言っていた黒澤監督。その言葉通り、今観ても、これはすごいメインディッシュです。これ1本で1週間分の食事はなくてもいいとさえ思ってしまいます。特に、雨の合戦のシーンは今だに鳥肌が立ちます。わなわなと心が震えてきます。 この迫力、この感動。同じ日本人として、誇りになる1本です。 10点(2004-03-03 13:20:22) |
6. ベン・ハー(1959)
映画館でしか観てはだめな映画。映画館が存在するための大きな理由になる映画。この作品を、言葉で現わすとこんな感じになります。TVサイズでは、あの有名な競争シーンなど、CMのような印象になります。幸いにも、シネラマ劇場のさよなら企画でこの上映が決った時には、迷わず並びました。場内は人、人、人で一杯。やっと座れたと思ったら、前から5列目。当然、大画面を下から観ることになりましたが、これが思わぬ効果で、C・へストンのドアップもあの競争シーンの迫力も2つの眼には、思いっきりの贅沢。宗教映画として語られる機会も多くありますが、1人の人間が持つ欲や憎しみ、家族への愛、友人への情など、人生において大切なものを本当に学ぶことのできる格好のテキストです。あの競技場を造ったという事実だけでも、映画の殿堂入りになるでしょう。 10点(2004-03-01 21:19:40) |