1. ミッドナイト・ラン
この作品でシリアスなシーンといえば主人公が昔の妻子に会いにいくところとラストくらいのもので、それ以外は、全編とぼけたコメディシーンである。そういう意味でメリハリがないなあ、と思いました。やはりメリハリの問題だと思うです。シリアスとコメディのバランスが悪いのである。コメディシーンが天丼というか伏線をばんばん使って頑張っているだけに、余計にそう感じる。それから、この作品、ほのぼのとしていながら、同時に怖いくらいに人工的・意識的なところがあると思う。お笑いというのはそういうものだと言ってしまえばそれまでだけど、変な感じです。ストーリーに奇妙な抑圧(奇妙な独特さ?)を感じます。しかしホントに作中では煙草吸い放題ですね。アメリカの禁煙運動が異常になってきたのはこのころからだったのかしら?それへの批判の意味で煙草を吸いまくっているのかしら? 6点(2004-03-24 05:26:26) |
2. フィールド・オブ・ドリームス
まず、最初の異世界からの声と、最後の復活した父親とのキャッチボール→ぞくぞくとトウモロコシ畑の球場に集まる人々の車の列、というシーンによって、この映画が(とりわけ野球好きにとって)素晴らしいものであるということを言っておきます。そのうえで、私はこの映画を前年の名作『さよならゲーム』と比較して思い付いたことを言っておきます。『ドリームス』は父と息子という関係を、『さよなら』は中年の男女と若者という三角関係を人物関係の設定に置いて話を進めている。野球の内包するファンタジーと云ったものを考えるときにこの関係の設定の相比は極めて興味深いものがある。これはそのまま人間の成長史を野球史に沿わせて描いているように見えるのである。両方ともダーラムとアイオワという田舎町だが、映る風景は前者は下町のパブやマイナー球場、後者はトウモロコシ畑の球場と上品な町並み、といった相違がある。これはそのまま『ドリームス』が野球の原風景を、『さよなら』がその将来-それは常に個別的な具体例としてしか現れえない-を描いているものとして見ることができる。つまり『さよなら』は『ドリームス』よりも関係性において大人であり、発展しているのだ。それは、『ドリームス』ではオールドタイマーたちが出演し、『さよなら』では最近の選手たちが(名前だけ)出演しているという野球史の時代の相違にも現れている。野球の内包するファンタジーとは、実にこの少年たちが実際に野球史によりそって成長するという、極めてアメリカ的な事情と心性そのものから生み出される、関係性の比喩なのではないだろうか。つまりアメリカ人にとっての他者との関係性の比喩こそが野球というゲームなのである。そう考えると、アメリカ人と野球の関係の深さに、私は日本人の野球好きとして一種の無力感を味わうのである。 7点(2004-03-16 04:28:07) |
3. メジャーリーグ
出来栄えは、まあ、そこそこいいですよ。でも、この映画をテレビで、レンタルビデオ屋で観かけるたび腹が立つ。この映画はロン・シェルトン監督の『さよならゲーム』から設定とディティールのほとんどをパクっている。まあ、パクるのは良いことではないが、映画だの小説だの漫画だのではよくあることだ。それについてはごちゃごちゃ言わない。それにもしかしたら何か事情でもあるのかもしれない。が、『さよならゲーム』が好きなものとしては、あの切なく淡く可憐な作品を形作った要素の数々がお子様向けの集客のことしか考えていないのが明らかな1990年代のハリウッド低迷時代の先駆けみたいな映画に堂々と、たいして罪の意識や恥ずかしさなしに使われているのを観ると、本当に腸が煮えくり返る思いなのである。 4点(2004-03-15 23:52:16) |
4. さよならゲーム
《ネタバレ》 アメリカの野球映画のなかでも屈指の作品ではないだろうか。 『フィールド・オブ・ドリームス』のように幻想や幽霊というものを使って野球のファンタジー性を視覚化した作品ではなく、くたびれた中年の男女と有望だが欠点のある若者という等身大の野球に関わるアメリカ人を設定することによって、この映画はアメリカ人(あるいはメジャーリーガーになろうとしてなれなかったロン・シェルトン監督)と野球との結びつきや絆と云った、野球のファンタジーの原型をしっかりと描きえている。 ラストの雨のテラスの場面は感動的である。野球と反対で非直線的だからあなたは素晴らしい、という女に対して、デイビスは「君の話は全部聞きたいが」と前置きして、言うのである。「今は疲れているし、野球や量子物理学の事なんか考えたくないんだ」。この映画はそもそも野球映画である、という前提を覆す台詞でこの映画は終わる。これは日本人にはけして書けない台詞だろう。アメリカ人が(あるいは監督が)野球をどれだけ身近で永遠なものと考えているかがわかるのである。そんな深い絆を見せ付けられた後に、ホイットマンとかいう人の「野球はアメリカ人のスポーツだ」という詩に、日本人で野球好きの私としては寂しいながらも納得してしまうのである。 名シーン・名台詞は枚挙に暇がない。脚本とともにロン・シェルトン監督の最高傑作だと言えよう。 それにしてもハラワタが煮えくり返るのは『メジャーリーグ』である。この映画の設定・ディティールのほとんどを流用して作っていやがる。こんなひどいこと、なんで誰も言わないんだ。 8点(2004-03-15 22:16:29) |
5. ブルース・ブラザース
《ネタバレ》 SNLのことや出演者の履歴やどれだけ金を使ったかなどを知らなかった初見でも音楽シーンはどれもかなり楽しめた。特に最後の監獄ロック→エンディングロールの(劇中にも流れていた)Everybody needs somebodyの流れは素晴らしい。エンディングロールで涙が出そうになったのははじめてだ。レンタルビデオで観たのだが、いきなり3回もくりかえし観てしまった。傑作であることは間違いはない。が、作品として見た場合、まとまりに欠けている。 7点(2004-03-15 21:23:33) |